複雑・ファジー小説

【短編置き場】月夜に徒然なる欠片を
日時: 2015/10/14 00:42
名前: 月瀬鱗 (ID: jwkKFSfg)





はじめまして。何処ぞの詩人もどきが久方ぶりに書いてみることにしました。
鈴の転がる月夜に覚えのある方はお久しぶりでございます。

短編集ですね。
Story1: 「誘い上手はどちらだろうか Side:A」
Story2: 「誘い上手はどちらだろうか Side:B」
→大人になってしまった2人が劣情を煽りあうお話。R15になるかならないかくらいかなと思われますので、ご注意を。

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Re: 【短編置き場】月夜に徒然なる欠片を ( No.1 )
日時: 2015/10/13 23:53
名前: 月瀬鱗 (ID: jwkKFSfg)

「誘い上手はどちらだろうか」



Side A



降っていたのは雨。私の乱れがちな呼吸も、鼓動も隠してくれるような夜だった。隣で寝ている人を見る。震える指で恐る恐る電気を消してから1時間、流石に彼は寝ているようだった。
 
夕食時にレストランで飲んだお酒は白ワイン、その後は街の一番高いビルのバーで勧められるままサイドカーを煽った。まともに顔を合わせられなくて、緊張して、そしてグラスは空いてゆく。彼の流し目と、それに見惚れる私に柔らかく問う「ん?」という声。ぐらぐらした思考の全てを絡め取った。そんな有様だったのだから、勿論期待していたし予感もしていた。
 終電のない雨の夜、足取りだけはしっかりとしているようで、私は彼の家に着くまで気丈に振舞っていたはずだ。熱いシャワーを被って、冷たいお水を嫌というほど飲んだ。シャワーで少しだけクリアになる頭で考える。5年。彼に恋してから5年。口付けをくり返しながらも、涙を溜め背を向けてから3年。私はまだ高校生だった。こんな夜をどれほど夢見て、その度にどれほど心痛くなって息を詰めただろうか。こんなにもさらりと誘惑に満ちた時が訪れるなんて、大人になったことを少しだけ汚れたことのように思ってしまう。嗚呼それでも、あんなに色付いた目をする彼は確かに悦ばしくて。まるでずっと長い間、慎ましく隠されたこの襟元、第二ボタンをはだけた肌に焦がれていたかのような、そんな。そう、私ときっと同じような目。私はふ、と息をつきシャワーを止める。水滴が滑り落ちる白い肌は弱い光の下で青ざめているほどだったのに、肩が、肘が、腿がほんのり色付いていた。それはシャワーに温められてなのか、それとも彼の言動を辿らずにはいられないからなのか。
 少しだけ意地悪をしてみた。丁寧にたたまれて置いてあった彼のパーカーだけを羽織り、ジャージのズボンを手に彼に言う。ウエストが大きくて止まらないの、と。彼は一瞬動きを止め、しかしそうかい、と優しく微笑んだ。仕方ないね、それだけでも大丈夫かな、と私に背を向けクローゼットを覗きながら問う。とくとくと五月蝿いほどの心臓を抑えて私は頷いた。今彼がこっちを見てなくてよかった。剥き出しの足が、風通しのいいパーカーの下が恥ずかしくて恥ずかしくて。顔がきっと林檎のようになってしまっているに違いない。
 無論、その後シャワーを浴びてきた彼は格好良かった。言うまでもないだろう。黒髪はしとどに濡れ、切れ長の目はついと細められて髪を撫で付ける。腕はと言えば袖が捲り上げられている所為で、色白でなく、筋肉のついている様がひと目でわかった。お風呂上がりの腕は何処か生々しく、彼が腕を動かし筋肉の機微を見せ付ける度に触れて唇を寄せたくなってしまう。どうして彼はあんなにも色っぽく袖を捲って見せるのだろう。

 だから少しだけ、と私は闇い部屋の中で彼の傍にそっと寄る。つ、と通った鼻筋と薄い唇、細やかな睫毛を息もし忘れて眺め、そして頬にそっと触れてみる。温かい。1人暮らしでいると中々触れることのない温もり。私は身を起こして、ぼんやり熱に浮かされた思考を巡らせた。頬、鼻先、唇。起こさないようにそっと指先で辿る。甘い毒を含んだように痺れるそれ。嗚呼、ああ。明瞭でない思考の代わりに、心臓はこれでもかというほど大きく脈打って、ぴんときつく糸を張った中にあるようだった。息をそっと漏らし、そして逡巡する。しかし余りにも目の前の彼は美味しそうだった。手を伸ばして、舌で掬い取って、鼻を埋めたいくらい。ぐずぐずと腰が甘く溶けるような感覚に震える呼吸。どうにでもなれという思いが思考を侵食する。指先はそのしっかりした首筋にまで滑り落ちた。私はしばしその指先を見つめ、自らの唇に押し当て、―――ちゅ、と吸い、ぬるりと舐める。身体がぶわりと一気に熱くなった。まるで媚薬のようではないか。ねぇ、と私は声にならない掠れた囁きを落として、彼にぴたりと身体を寄せる。意外と彼の体温は高かった。ゆるり触れ合い混ざり合う火傷のような体温。もっと、と煽られるような暴力的な熱。いつかのキスを思わせる、そして焦がれるほど身体の蕩ける熱。同じボディソープの香りがより匂いたった。誘われるまま首筋に唇を寄せ、かぷと甘く噛みつき、ちゅ、と濡れた音を立て、



突如ぐるりと視界が巡り、彼の腕が下腹部に回っていることに、情愛の篭った長い吐息が耳元に触れていることに気付いたのは一瞬後。
「嗚呼、君が先に触れたんだから。…堪んないよ」

Re: 【短編置き場】月夜に徒然なる欠片を ( No.2 )
日時: 2015/10/14 00:01
名前: 月瀬鱗 (ID: jwkKFSfg)

「誘い上手はどちらだろうか」



SideB
 

 久々に会った彼女はやはり綺麗だった。でも明らかに大人の女の顔をしていて、いつの間にそんな色気を持ち合わせるようになったのかと僕は少し妬いた、きっと。どこか陰りのある目がゆるりと潤む様を見たくて、いや僕を映して潤ませて欲しくて。だからサイドカーなんて飲みやすい割に酩酊しやすい飲み物を君に勧めたんだ。君は多分僕のそんな思惑に微塵も気付かず、さくらんぼのような唇をグラスに押し当てたけれど。
だからこうして僕に触れているんだろう、そんなに身体を火照らせて無防備に近づいてきて。
 

 ふらふらと誘われるままに彼女は僕の家に来て、シャワーを少し長めに浴びた。彼女と離れて3年、彼女に惹かれて5年。沢山のキスをして、その度に高校生だった僕はどうしようもない熱情を持て余した。当時から白かった彼女の肌がほんのり淡く染まる様に心乱れ、セーラー服の裾はとてつもなく魅力的だった。それでも僕らは清純な関係だった。余りにも勿体無かったから。初々しい桜の蕾のような色を、僕の情愛をぶつけることで壊してしまうのは勿体無いほど、彼女は少女だったから。しかしどうだ、こうして大人になった彼女はかつてにも勝るほど麗しい色で、しかしやはり淡く、僕の目を全身で引きつけてやまない。何が君をそうしたのか。嗚呼考えないでおきたいほど狂おしい。そうしてこんなにも熱心に僕は君を見つめるのに、君は僕が横を向いた時しか僕を見つめてはくれない。そんなところは変わらず、愛らしい少女で。堪らないよ。
 彼女はお風呂上がりの濡れた髪をそのままに、あろうことか生白い脚を曝け出して僕の前に立った。ズボンが止まらないから、と。大きなパーカーに包まれた華奢な肢体をありありと想像させるその脚の罪深いこと。そして色素の薄さを反映した普段は茶色がかった髪は濡れ羽色に、頬と首元は桃色に。僕は一瞬狼狽え、そして背を向けて代わりの服を探すふりをした。無防備すぎるのか、確信的なのか。僕の心はぐっと締め付けられ、瞬きをする事に脳裏を占める様相に息を詰めた。
 彼女のシャワーは熱めだったのだろうか、バスルームに篭った熱気の中、僕は冷たいシャワーを浴びる。彼女は酔いを覚ましたかったのだろうか。可哀想に。アルコールを分解する速度が決して早くない彼女のことを知っていてあんなカクテルを飲ます、僕のような人間じゃなければそれは叶ったかもしれない。人間は欲しいものを手に入れるためにならどれほど欲深く、ぞっとするほど酷くなれるのだろう。我ながら苦笑してしまう。止まない仄暗い考えを他所に、冷ややかな水は滾って仕方のない身体中の血液を慰めるように足元まで滑り落ち、しかし淀む。家まで連れ込んで、それでも僕は躊躇していた。壁に手を付き項垂れ、顎先から落ちていく水滴を見つめる。賭けをしよう。無防備なうさぎが罠を踏んだら、そのときは。
 だから彼女の呼吸が安定しないことは気づいていた。だってこんな暗闇の中、君に焦がれる身としてはその一挙一動に集中してしまうに決まっている。僕は驚く程落ち着いていた。どきどきそわそわと落ち着かない君が傍にいるからかもしれない。ほら、もう少しこっちにおいでよ。雨音が繰り返される中、君は少しずつ、本当に少しずつ僕に触れ始める。身体を寄せ、見つめ、指先で顔立ちを辿り、熱っぽく吐息を零してからは唇を首筋に寄せて。君の体は炊きつけられた木を軽く扇いだ時のように簡単に熱くなってしまって、恐らくは無意識に腿を摺り寄せている。可愛らしい。嗚呼可愛い人。今すぐにでも、その柔い腿の間に身体を割り込ませて、胸板に嫋かに添えられた白魚の腕を押さえつけて、見開いた瞳と、口唇から声も出ないうちにそれを奪ってしまいたい。ふゆりと押し付けられる胸の先の女を感じながら、彼は眉根を僅かに寄せた。うさぎは哀れにも罠にかかったものだから、今噛み付いてしまっても何ら問題はない。けれどもう少し、彼女の緊張が甘い快楽にすり替わるまで、もう少し沼の真ん中に踏み込んで溺れてしまうまで。さっき冷たいシャワーを浴びたはずなのに、彼女の拙い指先と体温に煽られて身体は熱くて仕方が無かった。突然、雨音とふたり分の呼吸音だけだった四角い暑い部屋の中にちゅ、と微かな濡れた音が響く。―――嗚呼。良くない。本当、良くない。ぐ、と彼女の腰に腕を回し、反転させて後ろからきつく抱きしめる。項に顔を埋めて、耳元で囁いた。
 「嗚呼、君が先に触れたんだから。…堪んないよ」
欲に塗れた、低く掠れた声に彼女の身体はふるりと震える。ああ見ないでくれ。多分今の僕は情欲に濡れた瞳を歓喜に眇めながら、舌なめずりして熱い吐息を堪えきれないでいるから。あれほど憧れたセーラー服の中身に手を忍ばせながら、僕は剥き出しの腿に、誘うように裾の捲れ上がった尻に強く自身の男を押し付ける。ぁ、とようやっと出た彼女の声ににんまりと笑みながら。

どうやって白いシーツに展翅するごとく縫い付け、伸し掛かり、呼吸さえ奪う口づけをし、逃がさないように腰を抱いて僕の女と刷り込もうか。

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