複雑・ファジー小説

黄泉之輪廻
日時: 2015/12/05 16:55
名前: 煙草 (ID: JD5DDSYn)

 日本神話に残る伝説が、新たな黄昏を生み出そうとしている。


   ◇◇◇◇


 〜目次〜

Page:1



Re: 黄泉之深淵 ( No.1 )
日時: 2015/12/05 14:41
名前: 煙草 (ID: JD5DDSYn)

 ――10年前。
 俺もみんなも、まだ年端も行かない小さな子供だった頃。
 思わず記憶を封じ込めるような、災厄による最悪の出来事を経験していた。

 やがて今日(こんにち)、それぞれが一箇所に集う。
 幼い頃の記憶を封印し、曖昧に毎日を送ってきたみんなが、初対面という形で。

 ――魂に神々の御霊を宿したみんなが、そうだとも知らないまま。

Re: 黄泉之輪廻 ( No.2 )
日時: 2015/12/06 17:53
名前: 煙草 (ID: JD5DDSYn)

-Information-

登場キャラ並びに御霊となる神は以下のとおりです。
※( )内は備考

・大武浩太:伊邪那岐大神(通称イザナギ)
・桐嶋明日香:伊邪那美大神(通称イザナミ)
・蒼井優希:天照大御神(通称アマテラス)
・美月蓮:月読尊(通称ツクヨミ)

以下の御霊はオリキャラとして募集します。
テンプレートを作成次第、募集の告知をお知らせします。よろしければ御一考下さい。

・阿修羅閃空
・不動明王
・摩利支天
・建御雷之男神
・此花咲椰姫
・櫛名田姫
・閻魔大王
・大禍津日神
・夜叉
・羅刹
・韋駄天
・天之狭霧神

Re: 黄泉之輪廻 ( No.3 )
日時: 2015/12/18 20:27
名前: 煙草 (ID: JD5DDSYn)

「……」
 大武浩太。神谷学園に通う、ただの何でもない高校2年男子。
 それは、今目の前に数十枚のカードを置いて考え事をする俺の事だったりする。
 ロクな肩書きもなければ彼女もおらず、ましてや童貞で、勉強も運動神経も普通。顔は――しらん。

 勉強机に並べたこれらのカードは、カードゲームで使うものではない。ましてやトランプでもタロットでもない。
 では何か。しかしそれが、全く想像が付かないのだ。いつの間にか手元にあった代物であり、用途も一切不明。
 こういうときに家族ってのがいると相談できるのだろうが、生憎俺には家族が居ない――即ち、どうしようもない。かといって知り合いに相談しようにも、どうせ自作だろうと言われ鼻で笑われる未来が見えている。
 カードは全部で30枚。絵柄は特に無い。裏は銀やモノクロで装飾され、表は金色の枠があるだけ。ちゃんと形は揃っている。トランプより2回りほど大きく、紙でもプラスチックでもない謎の触感が何故か手に馴染む。
 まさかこれを、何の技術力も無い俺が作れるはずもないし。
 ――しかし、何故だろうか。このカードが手元にないと、どうしても落ち着けない。
 必ずどこかで必要になる――まるで本能に刻まれたように、身体がそう訴えかけてくるのだ。
 なので一応、毎日肌身離さず持ち歩いている。
「……まあ、いいか」
 こうしてこのカードに思考をめぐらせたのは、何も今日が初めてというわけではない。
 特に緊急でもないし、行き詰ったら休むのが俺のモットーだ。俺はさっさと風呂に入り、寝ることにした。
 カードを束ねてホルダーに仕舞い、部屋を出て行こうと――したその時。
「浩太」
「ッ!?」
 俺の名を呼ぶ声がして、今まで生きてて一番大いに驚いた。
 何故なら、この家には誰も居ないはずだから。ついでに言うと至近距離で聞こえたから。
 一体誰だと俺が振り返るより早く、目の前がボウッと淡く青白い光で満たされる。
「――は?」
 俺は青色発光ダイオードを用意したつもりは無い。ましてやヒカリゴケなんて以ての外だ。
 なのに目の前が光っている。光っているというか、厨二的にあえていうならば、光の粒子が漂っている感じだ。
「やぁ、浩太。お邪魔するよ」
 すると何を隠そうか、目の前に半分身体が透けた空中浮遊する女の子が現れた。
 ――半分身体が透けた空中浮遊する女の子。空中浮遊。身体が透けた――
「ん?」
 俺は夢でも見ているのだろうか。一体何時から地球は異世界扱いされるようになったのやら。
「夢じゃないよ」
「しれっと俺の考えてること見透かさないでくれるか」
「あはは、いいじゃない。だって分かるんだから」
 ――冗談には聞こえない。どうやら目の前にいる存在、認めざるを得ないようだ。
 可憐な長い銀髪に赤目が映える。さらにそれらが引き立たつのは、体型顔立ち共に魅力が光っているからこそ。
 有り体に言えば可愛い。一方で、何か人を畏れさせてやまない何かが滲み出ている。そんな彼女は"イヴ"と名乗った。
「――」
「僕は君に、予言を告げに来た」
 自分の事を僕と言っているが、この方忘れてはいけないのが女であることだ。
「明日の14時、君は災厄を目の当たりにする。命が惜しければ、札を手から離さないようにね」
「札……」
 聞いて、真っ先に机の上にあるカードへ目が向かう俺である。
 向き直って目線で訴えると、イヴは可愛らしく微笑んだ。
「あれは君に力を与える。邪悪に向くか神聖に向くか、それは君次第だけど」
「な、おい!」
 するとイヴは、いきなり煙のようにパッと消えてしまった。
 一体なんだったのか――何となく夢である感覚が拭えないが、とにかく寝ることにする。
 寝て起きれば、きっと全部忘れてるだろうし。

Re: 黄泉之輪廻 ( No.4 )
日時: 2015/12/18 22:16
名前: 煙草 (ID: JD5DDSYn)

「……うそだ」
 目が覚めて一番、俺が呟いた台詞である。
 寝れば忘れるだろうという数時間前の自分に文句を言ってやりたい。昨夜の出来事は、しっかり頭に残っていた。
 これでは寝ても覚めても、イヴと名乗った女の子がどうしても脳裏を過ぎってしまう。
「……」
 今日の14時――というと、丁度授業中か。
 進級して早1ヶ月、丁度ゴールデンウィークを迎えようとしている今日この頃。
 桜は既に散っているが、春の陽気は未だ去る気配を見せず、夏という熱気や湿気を拒み続けている。
 俺にとっては、暑くも寒くも無い丁度良い気候でありがたい。こういう日は日向ぼっこに限る。
 しかし、こんな気の抜けるような時期に一体何が起ころうとしているのか。
「よっと」
 ベッドから降りて着替え、ホルダーに仕舞ったカードをポケットに入れる。
 ベルトに装着できるタイプのホルダーだが、実際につけていては笑われるのでポケットに仕舞うようにしている。
 やがて素早く朝食を済ませ、俺は重い足を引き摺るように学校へ向かった。


    ◇  ◇  ◇


 学校に着けば何てこと無い、いつもの光景が周囲に広がる。
 ふざけあう男子。じゃれあう女子。独り大人しくしている生徒数名。
 教室には笑い声だけが響き渡っており、誰も非日常なんて微塵も想像していないのだろう。
 俺も友達と適当に駄弁りながら朝のホームルームが始まるまでの時間を潰す。
「……」
「……?」
 ホームルーム開始間際、ふと背中に視線を感じた。
 振り返ってみれば、桐嶋明日香の姿。俺に恨みでもあるのか、何やら睨むような視線で俺を見ている。
 顔は良いのに、形の良い眉を顰めてるせいで全てを台無しにしている気がするぞ。
「――なんだ?」
「いいえ、何でもないわ」
 堪らず聞き返せば、予想通りというべきか。
 あまり愛想が良いとは言えない、どこか他者を拒絶しているような雰囲気で首を振り、自席へと去っていった。
 ――帰国子女とか言ってたが、果たして本当なのか。
 風采だけ見れば笑顔を向けていたり、普通にクラスの女子達と会話していたりと愛想が良い。
 だが俺からしてみれば、まだ本性を明かしていないような――そんな気がしてならないのだ。
「おーい、席に着け」
 担任が入ってきて、教室中が次第に静かになっていく。
 さて、これから5時間後。果たして何がどうなっているのやら。

Re: 黄泉之輪廻 ( No.5 )
日時: 2015/12/19 09:33
名前: 煙草 (ID: JD5DDSYn)

 ――さて、いよいよ14時だ。
 念のため俺は授業以外にも、周囲へ気を配ってみる。
 何か空が突然赤くなったとか、誰かが変な行動を始めたりとか、そういうのがあるかどうか確認するためだ。
 しかしやがて、そのまま数分が経過したのだが――結局何も起こらなかった。
『なんだ』
 拍子抜けである。結局は夢だったというオチに違いない。
 こんな様子では、あのイヴとやらが言ってたことも、所詮は夢の中での出来事に過ぎないだろう。
 しかし、何を思ってあんな夢を見るようになったのだろうか――と、その時。
「……?」
 異様なものが視界に引っ掛かったので見てみれば、ズボン越しでも分かるほどカードが強く光っていた。
「――」
 虫の知らせというべきか、嫌な予感が増していく。
 昨日、何の前触れも無しに現れたイヴという女の子。そしてこのカードと、14時にコイツが光った――という事実が。
「先生、保健室に行ってきてもいいですか?」
「あぁ、いいよ。どこか具合が悪いのかな?」
「少し熱っぽいようで」
「あらら、お大事に」
 ――さらに、よりにもよって桐島明日香が動きを見せた事実が。
「うーん……」
「めぐめぐ、どったん?」
「なんか、変な感じしない?」
「変な感じ?」
「その、なんていうの? 根拠も無しに悪寒が走るって言うか」
「うぇえ!? ちょ、ちょっと、そういうのやめてよ!」
 ――終いには、霊感があると噂の女子が色めき立つ景色が。
 より一層、俺の嫌な予感を煽っていくのである。
 やがて俺が堪らず、ポケットからカードを取り出そうとしたときである。
 平和な日常という事態は一変。渦を描くように歪み始めた空間を前に、俺は成す術も無く巻き込まれていった。


    ◇  ◇  ◇


 歪んだ景色が元通りになったかと思うと、俺は教室ではない、全く別の場所に立っていた。
 改めて視界に映りはじめた景色は、最早言葉だけでは説明できない形容がある。
 相変わらず暑くも寒くも無い。しかし周囲は溶岩の煮え滾る洞窟であり、人っ子一人居やしない。
 何よりどこかしら、神聖かつ怨念で満たされているような空気が漂っている。
「……」
 数メートル前方を見れば、不揃いな階段が下へと続いている。
 溶岩の代わりに提灯で明かりを灯しているが、先は真っ暗で何も見えない。
「――何もしないよりはマシだよな」
 何となく誘われているような気もして、俺は階段を下りようと歩みを進めた。
 そうしてやがて、どれほど経っただろうか。少なくとも、後方の明かりが完全に消えるまでには降りた頃。何やら踊り場のような場所に出て、何気なく壁際に目線を向けたとき。石造りの壁に、こんな文字が彫られているのが見えた。
「黄泉比良坂――?」
 知った名前である。黄泉比良坂といえば日本神話に出てくる名前であり、確か伊邪那岐大神が伊邪那美大神から逃れるために辿った道だったはずだ。情報源は、某非公式サイト。
 もしやここは、その黄泉比良坂なのだろうか――なんて、在り得ないようなことを考えていると直ぐに終点に着いた。
「え」
 見たものは、まず古びた注連縄がかけられた鳥居。そして鳥居の先に続く、明かりも灯されていない階段。最後に、俺の左右に1つずつ配置された金剛力士のような銅像。
 はたして本当にここが黄泉比良坂だとでも言うのか。てんで神話に詳しくない俺には全く分からないが、何故だか何となくそんな感じがしなくも無いので恐ろしいものだ。
「――大武君?」
「ッ!?」
 これまた大いに驚いた。全くイヴといい、今度は誰だ。
 背後から声がしたので思い切って振り返ってみると、そこには何と桐島明日香の姿があった。
「どうして貴方がこんなところに?」
「そりゃこっちの台詞だっつーの」
 ともあれ、知り合いが居たなら安心できる。
 いくら何でも、こんなところで独りぼっちというのは流石に堪えるものがあるからだ。
「此処は一体?」
「――」
「だんまりか。お前、何か知ってるな?」
「えぇ、とてもよく知ってるわ」
「だったら少しは話してくれてもいいんじゃないか?」
「……まぁ、貴方ならいいか」
「あ?」
「何でもないわ。それより、まずはここを脱出しましょう。話はそれからよ」
「お、おう」
 話を逸らされた気がするが、早いとこ此処からおさらばしたいのは変わらない。
 離れずについて来いという桐島を追って、俺は鳥居を潜るのだった。

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