複雑・ファジー小説

世界はそれでもまわってる
日時: 2015/12/01 20:43
名前: 桜坂 ◆yFawIhGp0I (ID: aruie.9C)

はじめまして、桜坂と申します!
数年前に同じタイトルの小説を書いていたのですが、中々更新できずに過去ログへ…(・・;)
なので今回こそはリベンジ!と筆をとることにしました。

ジャンルはダークファンタジー!
がんばって、完結まで走っていきたいです!

全6章構成です。2章までは前回書いたものに、少し訂正や加筆をしたもの。

1章
>>1 >>2



恋人を殺された貴族の娘セシリア、師を敬愛する捨てられ子のシャノン、神様に祀り上げられた少年ロジーナ。
華やかに見えて薄暗い貴族社会、暗躍する魔法の存在、そして……。
この3人を通して、一つの物語を完成させられたら、幸いです。

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Re: 世界はそれでもまわってる  ( No.1 )
日時: 2015/12/01 20:29
名前: 桜坂 ◆yFawIhGp0I (ID: aruie.9C)



 胃に残ってるものはもうなかった。涙は枯れ果てた。けれど、心の底ではいまだに悲しみがくすぶり、残っている。一週間くらい、部屋に閉じこもっていたらしいけれども、私は全くそんな実感がわかなかった。あの日から時間が止まったような感覚だ。
 部屋から出ると、私の顔を見た侍女は驚いていた。よほど、ひどい顔をしていたらしい。すぐに湯あみの準備をしてくれた。湯につかって、想いを巡らせる。今までの喪失感も一緒に流してくれればいいのに、なんて、甘い考えを抱いた。
 湯あみを終えて、新しいドレス――淡い紫色のお気に入り――に着替えて、一息つくと侍女が食事を持ってきてくれた。

「セシリア様、どうかお気を落とさぬように」
「ええ、もう大丈夫。心配しないで」

 ふと鏡を見れば、少しだけ血色が戻っていた。ただ、頬は痩せこけている。ああ、これが私の顔だったかしら。まるで、今までが他人事のように思えた。

「ねえ、もしも、もしもあの人が――」
「セシリア様……っ!」

 侍女が悲壮な声で私の名を呼んだ。はっと我にかえる。
 やめよう、もしものことなんて。あの人は帰ってこないのだ。もう一生、会うことはないのだ。その事実が、私の胸に、心に、頭に、体中に、しみわたっていく。鈍い痛みが、私を襲うのだ。
 ――あの人は死んだ。その事実を受け入れても、例えごまかそうとしても。どちらにしたって、悲しみは減ることのない。それならば、私は。

「ごめんなさい。ねえ、今日は晴れてるかしら?」

 唐突な私の質問に、侍女は少し驚いたけれどもしっかりと答えた。

「はい。春らしく、過ごしやすい陽気でございます」
「そうなの。こんな日は庭園を散歩したり、茶会を開いたりしたいわね」

 庭園を散歩したり、茶会を開いたり。どれもあの人としたこと。私の言葉が無機質にきこえてくる。まだ、私は立ち直れていない。
 
 私が、こんなにも喪失感を味わっているというのに。別離の苦しみが襲ってきているというのに。
 あの人を殺した人達は、のうのうと生きているのだ。あの人が死のうが、私が悲しみに咽び泣こうが、世界は上手くまわっているのだ。皆、普通に、暮らしているのだ。
 ――私一人を除いて。

「っ……!」

 侍女が、言葉にもならない叫びを漏らした。気づけば、私の頬に涙が流れていたのだ。もう枯れていたと思っていたのに。これでは、皆に心配をかけてしまう。

「もう、大丈夫だから。変ね? 目にゴミが入ったのかしら」

 我ながら、白々しい芝居だと思ってる。何故なら。

「アルフレッド……」

 愛しい彼の名を、自然に唇が紡いでいるからだ。

Re: 世界はそれでもまわってる  ( No.2 )
日時: 2015/12/01 20:43
名前: 桜坂 ◆yFawIhGp0I (ID: aruie.9C)



「まあ、セシリア様! 大変可愛らしゅうございます」

 初めての夜会の日、私はこれでもかというくらい念入りに化粧をさせられていた。自慢の長い金髪は綺麗に結っていて、ドレスはこの日の為に至高をこらしている。黄色のドレスは、上品なものでいつもの子供っぽさを失くしている、らしい。というのも、私は緊張していて、違いなどわかったものではなかった。
 私の家、ミューズ家はそれなりに名がある家だ。そんな所の娘だからこそ、政略結婚だとか、道具に使われる。そのために夜会という場は非常に大切なのだ。私は一人息巻いて、夜会に臨んだ。

「わあ、すごい……」

 思ったよりも、大きな独り言だったみたいだ。周りの令嬢方の冷たい目線が痛い。それもそのはず、私の一挙一動が周囲の者に監視されているのだ。夜会は、策略渦巻く場所。お互いを牽制しあい、自分の力を誇示する。だから、なんでもないような振りを装って、互いに一言も聞きもらすまいと神経を尖らしている。けれど、私から見た夜会はとてもそんなふうには見えなかった。きらきらしている、それが感想だった。なんて幼稚な表現なんだろうと、少し呆れた。

「ごきげんうるわしゅう。ミューズ家のセシリア様でいらっしゃいますね」
「セシリア様、今宵はさらに美しくなって……」
「本当! そのドレス、似合っていますわ」

 次々と話しかけられる。それに笑顔でこたえなければいけないのだ。時には嫌味を言われるが、それも気にしてはいけない。皮肉の応酬なのだ。
 夜会も中盤を過ぎた頃、お父様に手招きされた。

「セシリア、紹介しよう。こちらがアルバーニ家のご子息、アルフレッド殿だ」

 アルフレッド、と呼ばれた男が前に出る。

「お初にお目にかかります、アルフレッド・アルバーニと申します」
「こ、こちらこそ。セシリア・ミューズです」

 はじめてみた時、失礼ながらもおかしなひとだ、と思った。口調は改まっているというのに、どこか楽しげな声色。この国じゃあ珍しい黒髪と金色の目。顔は、男性なのに独特の色香を放っていて、美しい。
 手が前に差し出された。握手を求めているらしい。おそるおそる、私も手を差し出す。

「アルバーニ家は、ミューズ家とも御懇意にさせていただいている」

 お父様が言った。ようするに、絶対に失礼なまねはするな。ということらしい。お父様の真意を汲み取って、私は笑顔で握手をした。

「そう固くならずに。セシリア様は夜会は初めてですか?」
「え、は、はい」

 緊張で舌がもつれてしまう。ああ、帰ってからお父様にお叱りを受けてしまうのかもしれない。アルフレッド様は、そんなことは意に介さずに、話を進めてくださった。話術の上手い方で、感心してしまう。
 どうやら、令嬢の皆さまにおいても、アルフレッド様は人気らしい。ちくちくと嫉妬の混じった視線があたる。

「セシリア様と話していると、楽しいですよ」

 ちらりと、アルフレッド様がおっしゃったので、私の顔は真っ赤に染まった。

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