複雑・ファジー小説

オールイベント
日時: 2015/12/06 12:56
名前: ねむねむ (ID: 3DfkPLsQ)

〜プロローグ〜

「イベントなんて、たった1日じゃないか。わずか1日に、金をかけるなんて、馬鹿のすることだ。」

「……そうかしら?私は、そうは思わないけれど。」

「イベントは、不必要だ。忘れたか?『あの事件』のことを。」

「忘れてなんかいないわ。だけど、イベントがあるからこそ、普段の日も頑張れるんじゃなくって?」

「ふん。ものは言い様か。」


___この世に、イベントは要らない。


***


ここは、不思議な町。イベントが大好きな、騒いでばかりの町、だった。
「いつのまに、こんなことになった…?」
荒れ果てて、木は枯れ、家々は今にも崩れてしまいそうだ。横に立つチョコも、唖然とした様子で、兄の袖を握りしめている。
「お兄ちゃん……お母さんは?」
「…分からない。もしかしたら___」
兄は、それきり口をつぐんだ。
「ねぇっ…お兄ちゃん……!」
嘘だと思った。まさか、そんなことはない、と。
「本当に、イベントは消えたのか…?」

その日、僕らの存在意義は、消え失せた。


Page:1



Re: オールイベント ( No.1 )
日時: 2015/12/06 16:01
名前: ねむねむ (ID: 3DfkPLsQ)

1、バレンタインデーとホワイトデー


これからどうするべきだろうか。
「はぁ…」
ため息を吐いたが、それだけではどうしようもなかった。ふと、景色に違和感を覚えた。
「なんだ、あの塔……」
空を貫かんばかりに、真っ直ぐそそり立つ、黒い塔。
「お兄ちゃん、あの塔、やだ……」
横でチョコが、ぼそりと呟いた。こういうときのチョコの直感は信じた方が得だ。ということは、近づかないことが吉だ。
「行こう、チョコ。とりあえず母さんの家へ___」
やって来た道をまた戻ろうと、チョコの腕を引いた、が

「ハッピィ・ハロウィン♪」
「っ…!?」
「やぁやぁ、お初にお目にかかります。ワタクシ、『ランタン』と申します♪」
妙な格好の女がいた。まるでハロウィンの仮想のような。
「『ハロウィン』さん…?」
チョコが、前に出てくる。
「まっ…チョコ!」
ランタンと名乗った女は、ニコッと人懐っこい笑みを浮かべて、チョコの前でしゃがんだ。
「やぁ、チョコちゃん、かな?」
「うん、私、チョコ……」
チョコも、警戒していない。知らない人にはそうそうなつかない、あのチョコが、だ。
「あぁー、この子が『バレンタインデー』なんだ。てことは、そこのおにーさんは、『ホワイトデー』かな?」
心臓が、一気に高鳴る。この女は、俺達の存在を知っている。ということは、敵の可能性があった。
「チョコ、離れろ!」
ぐいっと腕を引っ張り、無理やり後ろに下げた。チョコはまだ自分の「制御」ができない。あの女がチョコを人質目的としているなら、今すぐ逃げなくてはいけない。
「やだなぁ。なんだか疑ってるよね?君が思うほど、ワタクシ、怪しくないつもりなんだけど。」
「……その証拠は。」
「えー。証拠ないと信じない感じかぁ。それは困ったなぁ。」
わざとらしく肩をすくめて、女は困ったように腕を真上に上げた。そして、高らかにこう告げた。
「トリック・オア・トリック!」
その瞬間、彼女の姿は消えていた。
「え。」
「ほら、こういう『チカラ』がワタクシは使える。」
「っ……」
ニヤリと、ランタンは得意気に笑った。


「ほぅら。証拠に、なった?」



Re: オールイベント ( No.2 )
日時: 2015/12/06 21:19
名前: ねむねむ (ID: 3DfkPLsQ)

1、バレンタインデーとホワイトデー


どうやら、信じざるを得ないチカラだった。俺達と「同じ」だ。
「……本当に、お前は『ハロウィン』なのか?」
「そうだって言ってるじゃん。『イベンターズ』のメンバー。役割は『ハロウィン』。名前はランタンだよ♪」
なんと、本当だった。だが俺は、イベンターズ自体を信用していない。とは言え、自分も妹のチョコも、イベンターズに加入しているのだが。チョコが俺の服を、ぐいぐい引っ張った。
「チョコ?どうした。」
「……あのお姉さん。イベンターズ、だよ。お友だち。」
なんて呑気な事だ。チョコは状況理解が出来ていなかった。まあ、当然と言えば当然なのだろうが。
「友だちだと、いいけどなぁ。」
苦笑いしながら、くるっとランタンの方に向き直る。
「なぜ、お前はここに来た。イベンターズからの指示か?」
「違う違う。それなら、直接的に他の下級メンバーが来るよ。ワタクシは個人的にここに来たの。それに」
ぴっと、俺の背後を指差した。その先は、あの黒い塔。
「イベンターズの本拠地、それだもん。」
「……は?」
この真っ黒の塔が、イベンターズの本拠地だと。いや、あり得ない。
「ふざけるな!イベンターズの本拠地は、こんな場所にはない!」
「そんなこと言われてもな〜…実際、ここにあるんだし。」
ランタンはクスクスと笑いながら、しゃべり続ける。
「さ、君のことも聞かせてよ。ワタクシはまだ、君の名前すら知らない。」
そう簡単に、口は開けなかった。チョコが横で、不安そうな顔だ。
「……俺はホワイト。役割は、『ホワイトデー』だ。こっちは、妹のチョコ。まだ仮認定だが、役割は『バレンタインデー』。」
「へぇ。やっぱりか。……だけど、ちょっとおかしいよねぇ。」
ランタンは、荒れ果てた家に、中指をトンっと指した。
「バレンタインデーは、そんなに幼くはなかったと思うけど?」
「お前に話す義理はない。」
これだけは、言えなかった。例え、同じイベンターズの人間だとしても。チョコは、顔を曇らせて俺を見ている。
「その妹ちゃん。2代目じゃないの?1代目は確か……『ショコラ』さん、だっけ?」
「黙れ!」
ぐっと腕をつかんで、叩きつけた___はずだった。
「話はさぁ、最後まで聞いて?」
「なん、で…!」
叩きつけられたのは、俺だった。ランタンは、一歩たりとも動いていない。荒れ果てた家に突き立てた中指も、そのままだ。
「このままさぁ。中指押したら、君はガレキの下敷きだよ。そうなりたくないなら、お話聞ーいて?」
「お、お兄ちゃんっ……」
「ほーら、可愛い妹を心配させちゃって。ワタクシ、あんまり手荒なことはしたくないからさぁ♪」
敵わない、直感で思った。これ以上の抵抗は、無駄だ。
「……分かった。」
「話が早いと助かるね♪」
やたらと、その笑顔は怖かった。

***

「それで、まあここからはワタクシの予測。」
黙ってうなずく。チョコは何もしない。
「初代バレンタインデーのショコラさんは、君達の母親じゃないかい?だが、ショコラさんは何者か暗殺された。ショコラさんは、幹部だったからね。空席だとイベンターズは困るんだ。そこで君達に通知が届いた。『母が死んだから、イベンターズ本部へ来い』とかなんとか。君達は、まさかと思って、母であるショコラさんが住む実家へやって来た。そして、ワタクシと出会った。」
「……なんで知っている。」
ランタンはいたずらっぽく笑って、
「予測だってば。」
楽しそうに言った。この女の言った通りだった。俺とショコラの母___ショコラが死んだ、と通知が届き、俺達は急いで実家に戻ってきた。チョコには、まさか『母さんは死んだんだよ』なんて言えなくて、『お母さんから手紙が来たから』なんて言ったのだ。だが俺達の町は、
「このザマだもんなぁ…。」
「お兄ちゃん……お母さん居ないの?」
この妹は絶妙のタイミングを突いてくる。ただただ、直感的で純粋な妹のその瞳は、いつも澄んでいる。答えを渋る俺を見兼ねて
「答えにくいなら、ワタクシが言ってあげても構わないけれど。」
そんなことを言う。
「いや、いい。……なぁ、チョコ。」
これは自分で言わなくちゃいけない事なんだ。
「母さんはな、もう……死んだんだ。どこにも居ないんだよ。」


「…お母さん、が?居ない?居ないの?」
まずい。『また』起こるかもしれない。
「ぁ…あ……お母さん、おかあさん………」
「落ち着け、チョコ。大丈夫、大丈夫だからな。」
スッとランタンが立ち上がった。
「その子、危険だぞ。下がった方が……」
だが、掻き消された。
「フォンダン・ショコラ!!」
もう遅かった。チョコのチカラが暴走する。制御のできない、幼いあまり強すぎるチカラが。
「チョコ!」


あぁ、またか。またなのか。
また気がついたら、回りが焼け野原で、その中心でチョコが泣いているあの光景。
また、見てしまうのだろうか。





Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大7000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。