複雑・ファジー小説

ウェイルタン物語――英雄の剣と青い謎――
日時: 2015/12/28 20:41
名前: 森のきのこ (ID: HpE/sQXo)

はじめまして。閲覧ありがとうございます。
作者の〈森のきのこ〉と申します。
初心者なので、誤字脱字などありましたら教えていただけると嬉しいです。
よろしくお願いしますm(_ _)m

………………

その昔、ウェイルタン王国には勇敢な王子がいたそうな。
英雄の剣を使いこなし、恐ろしい怪物を退治したんだと。
これから始まるのは、その王子の物語――。

………………

〈登場人物紹介&用語〉>>01

〈目次〉

序章――父からの贈り物 >>02

第一章 舞踏会での悲劇 >>03 >>04 >>05
第二章 城を去る    >>06 >>07
第三章 リリィ     >>08 >>09
第四章 ルーナの過去  >>10 >>11

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Re: ウェイルタン物語――英雄の剣と青い謎―― ( No.7 )
日時: 2015/12/28 11:23
名前: 森のきのこ (ID: HpE/sQXo)

 抜け穴の中はひんやりとした空気が漂っていた。
 ソフィアは手に息を吹きかけ、冷えた手を少しでもあたためようと努力していた。

「そういえばさ」
 手をこすり合わせながら、ソフィアはジーンの方を向いた。

「ジーンっておもしろいよね」
 何でいまその話なんだ、と思ったが、沈黙が訪れるよりはましだと思い「どうして?」と聞き返す。

「だってさ、昔からジーンは皆の言うことを聞かなかった。木に登るな、と言われたらてっぺんまで登っていくし、ケンカをするな、と言われたらおもちゃの剣で私をやっつけた」

 ジーンは思わず吹き出した。ソフィアも自分のことを見てくれていると思うと、嬉しかった。
「ソフィアだって……」

 言いかけたところでジーンは喋るのをやめた。
 少し後ずさりすると、ゆっくりと腰から剣を抜き、目を細めて穴の奥をじっと見た。

「どうし――」ソフィアが言いかけた言葉を、ジーンは「しっ」と言ってやめさせる。
 穴の奥に血に飢えた目が光った。狼だ。

「隠れろ!」
「戻りましょう――」
「駄目だ、もう穴は塞がってる」
「じゃあどうするの?」
「いいから隠れてろ!」

 ソフィアは通路につきだした大きな岩に身を隠した。
ジーンは一歩ずつ前に進む。それに従って狼の影もジーンに近づいた。

 ソフィアが岩の裏で息を飲んだ―――そのとき、狼が猛スピードでジーンまで走ってきた。
 ジーンは目を光らせ、すかさず剣を狼に切りつける。岩の壁に血が飛び散った。狼は「キャウン」と鳴いてから、床にぱたりと倒れた。

 ソフィアはゆっくりと岩陰から出てきた。
「死んだの?」
「いや、まだ生きてる。早いとこ、ここから抜け出そう」
 怯えた様子のソフィアを、ジーンは手招きした。

 それから二人は穴を抜けるまで一言も喋らなかった。
 それでも、ずんずんと先に進むジーンと、それに追いつくのに必死だったソフィアに会話はいらなかった。
 穴の最後が見えたとき、ジーンは安堵のため息をついた。「やっとここから出られる」

 ソフィアは恐る恐るジーンに話しかけた。
「私、やっぱり足手まといだった?」
「そうだね」ジーンはきっぱり言った。
 ソフィアはがくりと頭を垂れる。

 抜け穴を通ってたどり着いた場所は、見当もつかない。
 二人がいる場所は、他には何もない草地で、少し遠くに民家がある、という具合だった。

 草地の隅に、闇夜の中、何も分からずうろたえている二人を眺めている人影があった。
 人影はクスっと笑ってから、二人のもとへ歩いて行った。
「お困りの様子ですね、どうしましたか?」

Re: ウェイルタン物語――英雄の剣と青い謎―― ( No.8 )
日時: 2015/12/28 11:16
名前: 森のきのこ (ID: HpE/sQXo)

第三章 リリィ

 ジーンは夜の闇のなか、声をかけられた方を向いた。
そこには自分たちに笑顔を向ける少女の姿があった。ソフィアは優しそうな彼女を見て、安心した。

「あの……」ジーンは彼女に問いかけた。
「ここはどこですか?」

 彼女は「ここはオウテンです。あ、オウテンの草地」と言ってにこにこ笑う。
 確かオウテンは、この国で一番大きな町だ。抜け穴はこんなところに繋がっていたのか。
 
「近くに宿は?」
ソフィアが彼女に聞くと、彼女はぱあっと顔を輝かせた。

「とても素晴らしい宿屋があるんです!ご案内しましょうか?」

二人が答える間もなく、彼女は二人の手を引っ張っていった。
 
 猛スピードで駈けていったかと思うと、途端に彼女は止まった。勢いでジーンは前のめりになった。
「ふぅ、到着。ここです」
彼女が指差す先には、立派な建物があった。
 入口のドアには、何やら木で出来た看板がぶら下がっている。
「(旅人の家……)」

 彼女はカエルの置物に左右を守られた扉を勢いよく開けた。
「ただいま帰りました!」

Re: ウェイルタン物語――英雄の剣と青い謎―― ( No.9 )
日時: 2015/12/28 15:35
名前: 森のきのこ (ID: HpE/sQXo)

 建物の中の明かりが、彼女の顔を照らした。
 肩のところで切りそろえてある彼女の黒髪が風になびく。
「私の名前はリリィです。まあ、ここは私の家のようなものですが、立派な宿です。さあ入って、入って」
 リリィに急かされて中に入ると、そこには三十代後半くらいの、背の高い女性が立っていた。

「久しぶりのお客様ね。リリィ、ご案内して」
「はい、お母さん」

 リリィは「こちらです」といって、廊下を進んでいった。ジーンとソフィアも後に続く。
 一番奥の部屋まで来たところで、リリィは止まった。
扉には〈桜の間〉と書かれたプレートが埋め込まれてある。
「どうぞ」リリィはドアを開ける。
 部屋は、だいたい六畳くらいの広さだ。
 床は畳でできており、隅に布団が二組あるだけであとは何もない質素な部屋だった。
「布団はそれを使ってください。あと、何か聞きたいことは?」

 ふと、ジーンのお腹がぐうと鳴った。
「ごめんなさい」ジーンはお腹を押さえる。
 リリィは微笑んで「今、何か持ってきます。少々お待ちください」と言い、ぱたぱたと廊下を引き返していった。

 部屋に入り、畳に座って、ジーンは身体の力を抜いた。
 抜け穴を出てからここに来るまで、リリィのおかげで瞬く間だったが、ここで休んでおかないと、次はいつ室内で眠れるか分からない。そもそも、城を抜け出してきたはいいが、怪物を倒す手立てなど何も考えていなかった。ジーンは改めて自分の愚かさに気づく。
 
 ジーンはため息をついた。「これからどうしようか。今日はここに泊めてもらうとして――」

 扉が開いた。出てきたリリィは、片手で、おぼんを持っている。
「お待たせしました。こんなものしか出せませんけど」
 おぼんには四つほど、握り飯が乗っていた。

 ジーンが「ありがとう」と言うと、リリィは首を振り、二人の前におぼんを置いて、「ごゆっくり」と言い、去っていった。

 ジーンは握り飯に手を伸ばした。
「で、どうする?」
「どうするって言われても」

 今はただ頭を抱えても仕方がない。
 ジーンは握り飯を手にし、明日どうするかをひたすら考えていた。

 ソフィアは立ち上がり、隅に寄せられていた布団を持ってきて、寝る支度を始めた。
「私は先に寝る。ジーンも明日に備えて」
 ソフィアは布団に潜り込むと、驚異の速さで寝息をたて始めた。

 ジーンは思わず小さく笑ってしまった。
「そうだね」と呟くと、ジーンも寝る支度をし、部屋の明かりを消した――。


Re: ウェイルタン物語――英雄の剣と青い謎―― ( No.10 )
日時: 2015/12/28 17:18
名前: 森のきのこ (ID: HpE/sQXo)

第四章 ルーナの過去

 夜が明けた。
 朝の日差しが部屋の窓から差し込み、ジーンの顔を照らす。
「うう……もう少し……」
 ジーンは布団の中で、もぞもぞと動く。
「何言ってるの、早く起きて」ソフィアがすかさず応えた。

 ソフィアの声で夢から覚めたのか、ジーンは布団から飛び起きた。
「えと、早いね、ソフィア」

「私が早いんじゃない、あなたが遅いの。さあ、早く。もう準備は出来てる」
 ソフィアが手をパンパンとジーンの目の前で叩く。

 欠伸を繰り返しながらジーンがのろのろと支度をしていると、扉がコンコンと鳴った。
 それに応えると、扉が開き、リリィが出てきた。
「おはようございます。あの、今からライトン通りに行きませんか?」

 唐突な質問にジーンは疑問を抱いたが、断る理由もないので、頷いた。
 リリィは拳を握り、小さくガッツポーズをした。
「ありがとうございます!……支度の方は……?」
 ソフィアが「大丈夫です」と言うと、「では、参りましょう」とリリィが扉を開けたまま押さえ、二人を待った。

 二人は部屋を出て、リリィについて行った。
 リリィは食堂にいる母親の事を見て、はっとした。
「紹介が遅れてしまいました。こちらにいるのが、ルーナと言いまして私の母親です」
 すると、ルーナは「よろしく」とだけ言い、仕事に戻った。

「母はちょっと冷たい性格なんです。クールって言うんですかね」
 リリィは笑ってごまかした。
 確かに、人懐っこそうなリリィと違い、母親の方は、人を寄せ付けないような雰囲気を出している。
 ジーンとソフィアは、ルーナに頭を下げた。
 が、気づかれる気配はない。

「さ、行きましょう」
 リリィは早くこの場から抜け出そう、というような感じで、二人を宿から出した。

 
 するとリリィは突然、二人を建物と建物の隙間に連れ込み、ジーンを壁際に押し付けた。
 ソフィアが小さく悲鳴を上げる。
「その首飾り、あなた、ただ者ではないですね」

Re: ウェイルタン物語――英雄の剣と青い謎―― ( No.11 )
日時: 2015/12/28 20:40
名前: 森のきのこ (ID: HpE/sQXo)

 ジーンは、リリィの華奢な見た目からは想像もつかない強い力に圧倒された。
 肩を押さえつける腕をどかそうとしたものの、びくともしない。
「宿に一晩泊まってもらって、確証が得られました」

「確証って、何の」
 ジーンが尋ねると、リリィは肩に押さえつけていた腕をどかした。
「まさか青い宝石のことを……知らないのですか?」
 ジーンは頷く。
 リリィはひどく驚いた様子だった。
 
 彼女は建物の隙間から二人を連れ出すと、再び宿に連れ込んだ。
「どうした、リリィ」
 入口まで出てきたルーナが、リリィを怪訝な顔で見る。
「青い宝石のことです」
 
 ルーナはジーンをちらりと見て、中に入るよう目配せした。
 ジーンはルーナについて行った。
 ソフィアも行こうとすると、リリィが「あなたには別の話が」と言って引き留めた。

 ルーナについて行った先は、ジーンたちが先程までいた部屋だった。
 ジーンが部屋に入ってきたのを確認したルーナは、扉をピシャリと閉めた。
「その首飾り、青い宝石がついているな」
ルーナは目で宝石を示す。
「それがどうしたって言うんですか」
ジーンは不思議そうに言った。

「それはただの宝石じゃないよ。バケモンの目玉、青眼石(あおがんせき)だ」
「め、目玉!?」
 驚いたジーンは素っ頓狂な声を出した。
説明が要りそうだね、と呟いたルーナは、壁に寄りかかり、語り始めた。

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