複雑・ファジー小説

全てを捨てた『勇者』は、『人間』に転生する
日時: 2016/06/04 16:08
名前: 小説愛好者 (ID: pQJ8x1bd)

「愛している」と、彼女は言った。

勇者の剣で胸を貫かれながら。

その紅い瞳を涙で滲ませながら、彼女は言ったのだ。

「私のこと、忘れないでね」

彼女は笑う。

俺に気を使って。

自分を殺そうとしている俺に気を使って。

彼女は一人、泣きながら笑っていた。

嗚呼、愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる。

俺はお前のことを愛している。

でももう、その気持ちは伝えられない。

俺とお前は、一緒に居てはいけない存在だったから。

魔王と、勇者。

俺がこの手でお前の白い肌に触れることも。

俺がこの口でお前の名を呼ぶことも。

俺がお前に愛を告げることも。

もう、できないのだ。

彼女の瞳から、光が消えていく。

手を伸ばしたい。

抱き締めたい。

彼女の息が完全に途絶えたことを確認すると、俺は彼女から剣を抜き、蹴り飛ばした。

まるで汚いモノを見るように、演技をする。

『人間』も『魔族』も何もいない魔王城の王の間。

残されたのは、俺と彼女の死体だけ。

人間も魔族も、全て俺と彼女が殺してしまった。

「レイア」

彼女の名を呼んではいけないと分かっていたけど、もう彼女はいない。

なら、もう良いだろう。

こんな演技、もう止めて……。

「今行くよ、レイア」
俺にはもう、守るべき者も倒すべき敵もうない。

だから迎えに行こう、彼女を。

死んだら、どこに行くのだろうか?

もし生まれ変われたら、今度は平和な世界がいい。

俺と彼女が笑って過ごせる、世界に。

生まれ変わりたいと、願う。

「全て、終わりにしよう」

俺は自分の首に剣を添えてーーーー。

その汚れた手に、力を込めた。

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