複雑・ファジー小説

私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

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Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.148 )
日時: 2017/04/12 22:12
名前: 小鈴

女たちは隣の部屋で待機となる。
「楓ちゃんそれなに?」
楓が手にしている荷物に目が行く。両手で抱えているそれを陽菜に説明する。
「陽菜ちゃん。とりあえずこっちに着替えて」
「着替えてってもしかして女の人用の?」
「そう」
戸惑いを顔に書いたまま陽菜が楓を見てくる。
「つまりね。そろそろ女に戻っても良い頃合いかなってね。適当で悪いけど・・・」
適当と言う割にかなり上質な生地でできていた。紫衣がいう。
「これ大久保さんが・・・」
「そう。頼んだけど。急に頼んだからあの人の趣味でね。まぁ。桜が似合うとは伝えといたんだ」
「かなり質のいいものだよね」
「私にも同じ物用意されたんだよね」
肩をすくませる。楓の着物は上質のものとわかる。陽菜用は薄い色で桜の柄が入った着物だった。リボンは青色だ。二人の手を借りて着替えていく。
「まぁっ。陽菜ちゃんに桜はよく似合うわ」
紫衣は両手をぱちんと合わせると口元を緩ませる。
「適当にしてはよく似合っているよね」
皆が適当適当と言っていることがなんだかかわいそうになってくる。楓は感心しているようだが・・・。陽菜はこてんと首を捻る。
「桜が・・・そういえば・・・あの人も・・同じことをいっていたのよ」
ふんわりと笑うと陽菜は懐かしそうに目元を緩ませる。
「あとは後ろを向いて」
「うしろ?」
楓がくるりと後ろに回りリボンを片手にしている。
「青だね」
「うん」
「そうだね。けどこの色似合うね」
るんるん言いながらもリボンを回す。
「楓ちゃん。振り回さないで」
めっと叱ってくる。てへっと片目をお茶目に閉じる。次には真面目なものに戻して布でまとめ上げてリボンで結ぶ。
「さてっ・・・」
表情を引き締めて扉を顔を向ける。
「どうなるかな」
「わからない」
「相原さん大丈夫かな」
気になっていることをそれぞれ口にしている。

一方隣の部屋では男たちは顔を突き合わせて舌戦を繰り広げていた。
「君は何者だ」
大久保はいぶかし気に相原と呼ばれた男を腕を組み見ている。
「幕府軍の生き残りです」
ただそれだけを言う。
「そうですか」
木戸は興味がないのか視線は紫衣たちの方に向いている。

大体の見当はついているくせに大久保はあえてそれを聞く。
「俺はただの一兵士にすぎません」
苦笑する男を「そんなわけないだろ」じろっと木戸が横目で睨む。楓たちが気にかけるのだ。それなりの人物でなければ助けてくれとは言わない。
「ではこんな話をしよう。ある日罪人の首をさらしていた。次の日には別の首になっていたらしい」
大久保はにやりと笑う。「何が言いたい」と土方は眉間にしわをよせる。
「そうだ。ある浪士集団の局長の首だ。その首をさらしていた」
ぎろりと途端に獣の目を向けてきた。
「場所は板橋の刑場だ。思い当たることはないか」
木戸は真っすぐ土方に視線を向けた。
「まさか」その顔が言った。しかしその動揺は顔にも声にも出さずに全てを消し去る。
「ありません」
「ないのか」
「ええ」
大久保と相原はお互いに睨みあう。


Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.149 )
日時: 2017/04/19 11:59
名前: 小鈴

「思い当たる事がないと言うなら勝手に罪人の首を挿げ替えてくれた人物を捕らえねばならんな」
さてどうする?と大久保は言っていた。土方はてめぇと低い声を出した。一度気分を変えるため息をつく。
「どうぞ」不敵に笑い切り返す。
意外というように大久保は肩眉を持ち上げた。
「ならばそうさせてもらおう」
挑発するようににいっと笑う。
ずっと隣の部屋で盗み聞きをしていた楓が扉を開け放つ。
「こらっ勝手なことばかりいうな」
勢いのまま叫んだ。
「待って」
「だめ。話の邪魔しては」
慌てて陽菜と紫衣は楓を止めようと両腕をつかんだ。
大久保は余裕の態度から楓の乱入に視線を彼女に向けこれでもかと目をむいた。かっと。
「なにしているのかな」
木戸も三人を見てぽかーんとした。
「なっ」
土方は声を失う。
大久保はすぐ我に返るこの男の精神は強かった。
「ここで何をしているのだ」
「いいえ。その・・・」
「かえで・・・」
ふいっと顔をそらしていた。後ろ暗いことが少しはある。反省は多少はしている。ようには見えなかった。ふっと優しく笑った。次にはがっと楓の頭をわしずかんできた。
「いたっ。何をする」
口答えをしたことすら許せないと罰をというようにぎりりと力をこめてきた。
「ずいぶんと反抗的だな」
「ほんと.いたいですって・・・・いたたたっ。わかりました。ですから力を抜いてくださいってば・・・・。まだ許してくれないのですか。どんだけ偉いんです。あ、はい。ごめんなさい」
その間ずっと地味に力をぎりと指の力を込めていたのだ。いじめっ子。心の中で思ったがやっと手を離してくれたが心がこもっていないことと悪意を向けたことがばれた。べし遠慮なく叩かれたのは頭。
「いたっ。暴力反対です」
「どこがだ。これはしつけだ。頭の悪い小娘にはこれで十分だろ。だいたい反省も謝罪も口先だけだろうが・・・」
やはりばれていたがここで認めてはいけない。楓にも意地がある。むうっとへの字に唇を曲げて視線をそらした。態度だけは図星だといっていた。
「べ、べつにそんなことは「あるどろうが」・・・」
くいこみぎみに大久保に言われた。
「あるだろうね」
やれやれだと木戸も呆れた目をしている。


「だいたいその件にしては不問にするといっていたではないか」
「ええ?」
なんの話だ土方は突然変わった話に目を点にさせた。
「さぁな」
あっさりとかわされてしまう。
「ちょっとなんですかそれ」
聞き捨てならないと楓は大久保に向かって行く。身分が上だろうと恐れない。負けない。まわりなんて見ていない。
「新選組の局長の首を取り換えたのは誰だ」
何が言いたいのかわからないが楓は真っすぐ男の目を見て答える。
「ふん。そうですね。私が考えやりました」
「一人でか」
「・・そうです。納得してくれましたか」

そんな話を聞き陽菜と紫衣が反応する。はっと。

「いくらなんでも無理がある。お前でもわかるだろう。矛盾している」
「そうですか」
あくまでものらりくらりとはぐらかす。
「おい。小娘二人。身に覚えはないか」
今度はらちが明かないと小さくなっている二人に問いかける。
「やめて・・・。」
ついに声を強くさえぎり二人をかばうように両手を広げる。
「お前の態度で全て語っている。策士には向かんな。」
「むかなくてけっこうだよ」
失敗したと顔に書いてある。くっくっと楽し気に笑うのだった。
「失態を悟るのも勉強のうちだ」
「うるさい」
次には楓の頭をぽんぽんしてくる。腹の立つこと。
余りのことに驚き固まる人たちに視線を直してがらりと態度を一変させた。真面目な話を始める。
「ここの参謀の黒田清隆さんに皆であいにいきましょ。」
「いってどうする」
「皆を助けます」
はっきり言い全員を見回した。計算なんてなくただ真剣なまでの想いだけがあった。
「お前の策は」
「ですから策なんてありません。とにかく話をしようと思います」
その話を聞いてふんわりと土方に聞くのは紫衣。
「相原さん。榎本さん大鳥さんを知っていますね」
ここでの突っ込みは一切無視されているのであえて何も言わないがじろっと木戸だけは睨んでくる。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.150 )
日時: 2017/04/19 13:26
名前: 小鈴

今一訳が分からないと陽菜はおろおろしていた。
「そういやぁ。その着物似合っている。俺が用意したものじゃねぇのが癪に障るがな」
土方にそんなことを耳元にささやかれて赤く頬を染める。
「お前たちが行くとまた別の問題が生れかねん」
したかなく土方たちはここに待機とされた。
「待機ですか?」
「何か不満でも」
「ありません」
即答したら扉が閉められた。
「ずいぶんと独特な個性の持ち主の男たちのようだな」
「大丈夫ですよ。あの人たちに任せておけばなんとかなります。今は信じて待ちましょう」
楓がいい紫衣も頷く。
「そこまで信じてんのかよ」
呆れたように二人の女を見た。
「そう言う人たちです。言った言葉は必ず守る人です」
紫衣土方を見上げる。
「へぇー。立場がち違がければ俺たちは分かり合えたのかも知れねぇな」
寂し気に口にして瞳を閉じる。


新政府軍陣。
「ここに一列に並びそれぞれの所属した部隊名と己の名を一人一人書いていけ」
司令官が声を張り上げる。
降伏した部隊の兵士たちは大人しく指示に従い一列に並んでいく。皆が疲れ切った顔をしている。机の上の帳面に筆で名前を書いていく。目を光らせて監視している。目的の人物を見つけた男はくわっと目を開かせた。
「ここを頼む」
「ええっ」
後に残された兵士は不満の声を上げたが知ったことではないとさっさと歩いていく。
「大鳥と榎本だな」
いきなり名前を呼ばれて大鳥は警戒の目を向けた。鋭く目つきをさせて榎本をかばう体制になる。それを制したのは榎本だった。
「何故。俺たちのことを知っているんだ」
あくまでも冷静に黒田に目を向ける。
「いいや。実はな・・・」
黒田自身なんていうべきか迷っていた。頬をぽりぽりかいている。
「とにかくついてきてくれ。ここでは話せない」
すたすた去っていく。あっけにとられていた二人はお互いに見合わせる。
「とりあえずいってみるか」
「そうですね」
そのままついていくと客室と思われる場に通された。靴のまま中に入ると黒田がいう。
「いろいろ聞きたいことがあると思うが少しだけ待ってくれ」
椅子に座るように指示を受け二人はかなり何か言いたそうな顔をしていた。

しばらくしノックの音がして女性の声が響く。なぜ、女性がと思わなくもない。
「失礼いたします」
楓と紫衣がそこにいた。
「こちらだ。楓さん、紫衣さん」
気さくに声をかけている。それを見た榎本達は一体何なんだ。と思わず睨んでくる視線さえなれたものだった。お茶を片手に彼らのそばに歩いてくる。
「どうぞ」
と言いまた驚いたことにお茶を差し出してくる。
「毒など入っておりませんからさめぬうちにお召し上がりください」
丁寧に作法通りに差し出されて大鳥は目を丸くしている。ただの使用人ではありえないと礼儀作法に敵兵に対してのもてなし方に声を失くしている。緩やかに紫のりボンをした女が笑う。
「出されたものを飲まんのは礼儀に反するな」
と言い榎本は一口すする。スーツと口ひげが特徴的だ。
「うまい」
と言われ嬉し気に笑うのは色違いのリボンをした女である。
「大鳥君も飲んでみたまえ」
大鳥と呼ばれた男もお茶に手を伸ばして飲んだ。「おいしい」という。
「どういたしまして」
すっと背筋をのばしお盆をテーブルに置いた。
「私は立川紫衣と申します」
ふんわりと一度片膝を引いた軽く頭を下げた。西洋の身分の低いものから身分の上に対するものにする令の仕方だ。
「楠楓です」
一度頭を下げる。西洋の挨拶の仕方を真似したものだ。
「何者なんだ。彼女たちは?」
まぁまぁと宥められた。
「少しだけ西洋の知識を学んだだけですよ」
黒田は軽く流すが、これだけのことをできる女がこの国にどれだけいるのか。聞きたいことがまた増える。
「俺は榎本武揚だ」
「僕は大鳥圭介だよ」
スーツ姿のやや童顔の男はよろしくと片手を差し出してきた。楓はその手をとりよろしくと言う。
「どうかなさいましたか」
「いや、これが通用したのは初めてでね。なんだか、嬉しくなってしまったよ。」
「あはは。仕方ありません。握手なんて日本の伝統にはありませんからね」
片目を閉じる。
「それって、【ウインク】。じゃないのかい。」
「そんなことも知っているのか」
何故榎本までも興味が出てきたらしい。食い込み気味にいろいろ話をされて目を白黒させる。

ごっほんと咳ばらいをされ我に返る。楽し気に花を咲かせていたが終わりを告げる。
「話をもどしていいか?」
「どうぞ」
神妙な顔で女たちは席に着く。

私たちはめぐまれていたのかもしれない。楓は思った。運が良かったのかもしれない。紫衣は思った。こうして話を聞いてくれる人がいたことがついていたのだから。幸運だったといえよう。



Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.151 )
日時: 2017/04/20 21:18
名前: 小鈴

「本題に戻っていいか」
黒田に言われて全員の空気ががらりと変わる。背筋を伸ばした楓が言う。
「どうしても会ってお話がしたかったのです」
「この目で見てみたかった」
紫衣がぼそりと呟きこてんと首を傾げた。
「何故だ」と目で二人に見られた。
「まさか名前を教えていただけるとは思いませんでした」
「普通は伏せるものではありませんか。特に女の言葉に耳を傾けて話さえ禁じることさえあります」
彼女の記憶の中に会津の子供たちの姿がよぎった。【十の掟】下を向いてしまう。
「紳士としては当然だよ」
なんて明るく笑い大鳥が言う。
「西洋では女性を優先させる」
なんてことはないと榎本もそう説明をしていた。
それを知り実際に行動を移せる人がどれだけいるだろう。幕府の人間の中にいた。それだけに、奇跡だった。
面白いと楓は光輝いた。
「そうですか。判断は」ちらっ。隣を見たら同じだと頷く。
「正しかったということですね」
すうっと笑みを消し去り真剣な目で言う。さらに追加で紫衣が問いかけた。
「望月陽菜ちゃんをご存知ですか」
次には男たちははっきりと表情を変えた。「何故知っている」と顔が言っている。
ここから交渉が始まる。ここからが本番なのだ。
「どういうことだ」
「彼女はどこにいるんだ」
ガタンと椅子から立ち上がると大鳥はテーブルに両手をついた。
「お、おちついて、ください」
紫衣大きい音に驚き悲鳴を上げる。
「大鳥さん。榎本さん。説明します。大鳥さんは座って下さい」
黒田に視線を向けるも「私は口を挟まん」と態度で示される。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.152 )
日時: 2017/04/23 19:35
名前: 小鈴

交渉するとはいったがさてとどうするか。変に口をすべらせれば失敗に終わる。陽菜から話を聞いてはいた。楓は言う。
「陽菜ちゃんは無事です」
まず無事と聞きあきらかにほっとしていた。やはり彼女のことをとても心配していた。
「そうか」
「無事だったか」
あんどしていた。束の間男たちは喜びを分かち合う。

実は土方たちのことは大鳥が見守っていたのでとても気になっていたのだ。土方が亡くなったと聞きその上陽菜まで失ったとあっては申し訳がたたない。別の疑問が浮上した。榎本は鋭く問いかけてくる。
「何故彼女のことを知っているんだ」
流石は榎本総裁だ。その名前は伊達ではない。
「詳しいことは話せません」
「友人です」
紫衣が後を引き継いでそれだけは言う。
「「友人」」見事に重なるそこ言葉に女たちはこくりと頷く。
「いつどこで知り合ったかは話せません」
先手を楓が質問される前に後手を紫衣が言う。
「陽菜ちゃんから聞いていたのです。お二人にはよくしていただいたと」
ゆるりと話して男たちを見た。
「もう一度確認したい。生きているんだな」
榎本の言葉に大鳥ははっとした。ばっと顔を向ける。
無事でいるとは聞いたが、それはどの程度のことを言っているのかと怪しんでいる。
侮れないな。内心楓は舌を巻く。『さすがです。そう切り返されるとは思いもしませんでした』慎重に答えていく。
「生きています」顎を引き紫衣も頷く。
「会いますか」
「会えるのかい」
大鳥が前のめりに聞いてくる。
「もちろんです。その前に約束してください」
「約束とは何だ」
榎本が聞いてくる。こちらも慎重になる。
交渉するにはどんなことを約束されるか気になる。大鳥も真面目な目をした。
「生きてください」
楓がそう言った。
生きたくても生きれない人がいる。きっともっと生きたかった人たちがいる。ぎゅっと拳を胸に楓は当てる。『私は貴方たちを忘れない』私たちが志を継いでいく。
「最後まであきらめないで生きてください」
男たちに新しい風が吹いた。何て女たちなのか。そんなことを言われるとは思わなかった。敵側の人間にだ。声を失った。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.153 )
日時: 2017/04/25 20:32
名前: 小鈴

こんな人間がいたなんて僕らは最初から勝ち目何てなかったのかな。
敗北を認めた。
「命を粗末にしないで」
強い目で言ってきた。
「皆さんをただの罪人に何てさせない。斬首何てそんなことにはさせませんから」
「処分させないってどうやってだ」
黒田の言葉に楓の唇が持ち上がる。悪い顔だった。
黒田は思った。『なんか嫌な予感がする』背中に汗をかいた。
正義は楓にある。拒否権はなかった。これは決定事項となる。
「まずここにいる黒田さんに一肌脱いでもらいます」
「「巻き込んだ」」
やがて覚悟をして楓に問いかける。
「何をすればいい」
「助命嘆願をしてください」
「幹部クラス全員です」
最後を締めくくるのは紫衣だった。おっとり追加してくる。
「全員だって?おいおい、そんな無茶なこと・・・・」
「ここまできてそれを言いますか」
にこりと笑いかけ来る楓はかわいいのだが何故か黒いと感じた。
「今の話を聞いたでしょう。お願いします。黒田参謀」
役職名までつけた紫衣に圧力を感じた。
「確かに彼らを死なせるのは惜しいと感じる。だが戦には責任を負わねばならない。それをどうするつもりだ」
楓はきょとりとした。
なにそれ。と言う顔である。
紫衣は首をこてんとさせる。
その時察した。すっとぼけるつもりだと。
「ええー。何それ私わからない」
といいたいらしい。
こういう時だけずるい。丸投げ作戦を二人の女は取ったのだ。
「全てをおまかせします。黒田さん」
「はい。全てをお願いします。黒田さん」
二人の女は黒田を見てぺこりと下げる。
黒田はその場にがっくりとうなだれた。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.154 )
日時: 2017/04/28 18:35
名前: 小鈴

敗北したのは黒田だった。参謀であったとしてもこの二人の前では肩書なんてない。
「うそだろ。しっているだろう」
ぶつぶつ言っていたが無視をされた。
そののち黒田は助命嘆願のため頭をそり丸坊主にして助命をして回ったそうだ。苦労人であった。
「ちなみに大久保さんには許しは得ています」
「たぶん木戸さんも大丈夫です」
二人の女はいけずうずうしくいった。
『まじですか?あのがちがちの堅物の男ですらいいなりですか?』黒田は思う。勝てぬと。
「わかった。やってみよう」
きっとこの時彼は血の涙を流していたであろう。

「それから・・・」
「まだあるのか」
「ここからが重要なことです。他言無用で」
ちらと紫衣を見てそう切り出す。彼女は外に出ていくのを目で確認したので落ち着くためにお茶を飲んだ。だいぶぬるくなってはいたが構わない。
男女を連れて戻ってきたのを視界にとらえたとたんに大鳥と榎本はがたっと椅子を蹴倒した。
「生きていたのか」
そこにいたのは土方と陽菜であった。
「どうして」」
ははと笑い「驚いたか」と言った。元気そうに見える。
二人のそばに慌てて駆けつけた。陽菜は青のリボンをしていて女の姿に戻っていた。やはり女だけあり男装より様になっている。
「見違えたよ」
「その方がいい。綺麗になった」
「ありがとうございます」
陽菜は目にいっぱいの涙を浮かべて土方の隣に立っていた。
「土方君。なんで僕を睨むんだ。榎本さんだって褒めていたじゃないか」
「人徳の差だろ。陽菜は俺のなんだよ。大鳥さん。やらねぇからな」
土方は大鳥を睨みつけて威嚇している。あまりにも普段通りなもので和んでしまった。その眼つきの鋭さに怯えて後退した。

「気になっていたんだが。何故君たちはそろって同じ髪型にしているんだ。その髪にしているものはなんだ?」
真面目な顔をして榎本が聞いてくる。
「えっと。これのことですか?」
紫衣は髪にしているリボンに手をそえている。
「これのことですか」
そう言いリボンをしゅるりとはずした。思い切りのいい楓が手でリボンをはずして榎本に見せた。
「これはリボンというものです。どうぞ」
「いいや。そんなことよりもその髪型は一体どうしたんだ」
目が釘付けになっているのはリボンよりもその髪の短さである。
「目が落ちそうです」
紫衣がぼそりという。
「目は落ちんだろう」
いつの間にか大久保がそこにいた。呆れた目で楓を見ていた。きっと楓しか見えていない。
「私もです」
そう言いリボンを外した。同じ髪型になる。陽菜を見た土方は悲し気にしていた。
「大丈夫です。また、伸ばしますから」
「そうしてくれ」
短すぎる髪を指に絡ませると手早く元に戻してやった。
「本当に呆れてしまうよね。君たちには」
「え?あ。木戸さん」
振り返ったら彼がいた。ポンと頭を叩かれた。
「さて、よろしいですか」
楓が言うと空気が変わる。
「ここにいますのは土方歳三ではありません」
いきなり意味不明なことを言い出す楓に戸惑う一同。
「つまり一本木関門にて銃撃をうけた土方は死んだのです。5月11日が命日です」
どきっぱり言い切った。実に堂々と土方は死んだという。
「ならここにいる彼は誰だ」
「話が早くて助かります」
にこりとして引き続きいう。
「相原誠さんです」
ばばーんとどうだと言わんばかりに両手を広げている。晴れやかに笑っていた。皆が心で言った誰それ。一切の突っ込みは許されない。それが楓のすごいところだ。次の瞬間皆が笑いだした。
「あっはっは。流石は楓だな。くっくっ。」
「くすくす。楓らしいね」
「ははは。と言うことらしい」
大久保、桂、土方が次々笑いだす。
「楓さんはどうやら俺たちの上をいくらしい。ふふふ」
「あははは。楓さんには叶わないね」
榎本、大鳥も笑う。そこに黒田も加わる。
「くっくっく。楓さんには負けた」
誰もが笑っている。そんな時間を過ごしていた。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.155 )
日時: 2017/05/02 19:23
名前: 小鈴

次の話に移る。
「それならば別の場所に移してはどうだね」
「しかし謹慎しなければこの人納得しないですよ」
楓が言うと大島と榎本もはその通りと頷く。
「「たしかに」」
「おいそこで同意すんじゃねぇ」
突っ込みを入れる土方に陽菜は苦笑した。
「私も一緒にいきます。置いていかれるのはもう、嫌です」
必死に陽菜は言う。ここで置いていかれたら二度と会えない予感がした。土方は黙って陽菜の肩を抱く。
「なら皆さんのお世話係になってはどうですか」
またとんでもないことをいいだす。
「陽菜ちゃんだけでなく私たちも手伝います」
「まてそんなことまで許すと思うな」
しかしそんな大久保のせりふなどあっさり無視をした。
「下女としてはどう?」
「賛成」
「いいのかな」
三人はそんなことを話をしていた。
唖然としている男たち。
「おい。勝手にぬかすな」
「勝手なことですか」
「そうだ。それはお前の仕事ではないだろう」
不満そうに大久保を見つめた。
「その顔はやめろ」
ピンと指ではじかれた。
「いたっ。何するんです」
「文句を言うな」
「大久保さん。だったら話を聞き世話を誰がするんです」
「なんだとっ?」
あ、まずいと思った。雷に備えるため耳をふさいだ。それと同時に怒鳴り声がした。
「それこそキサマのでるまくではないっ」
きーんとした。耳をふさいでもこの威力すごすぎる。
「お、おち、ついてください」
楓がなだめる。
「ほほーう。だ、れ、のせいで」
そこで言葉をきる。第二弾にそなえて耳をおさえる。
「こうなっているんだ」
叫んだ大久保はすさまじい迫力だった。




Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.156 )
日時: 2017/05/18 14:55
名前: 小鈴

「食事、掃除、洗濯をどなたがやるのですか?」
ただ不思議そうに紫衣は木戸に問いかける。
旧幕府軍相手に怖がらずにお世話ができるものなだど存在しない。この三人は度胸もあり根性もある。
大久保や木戸、黒田でさえ何言えなくなる。
想像できる。
『下働きとして働いてくれ』
『いやです』
そんな会話もできそうだった。
「大丈夫です。強くなりましたもの。やらせてください」
紫衣はそう言い頭をさげてくるのだ。
「わかった」


そののち彼らは謹慎するために船にのせられて東京にある牢に移動していく。

明治二年の事であった。

ほとんどのものが神妙に謹慎を続けていた。見張りの目も厳しく逃げるものも騒ぎを起こすものもいなかった。

ここに女たちがやってきた際にちょっとした騒ぎになった。要するに女にお世話などされたくないということらしい。

楓は気が短い。声高に叫ぶ。
「ならばそうなさりませ。食事も洗濯も掃除もいっさいいたしません」
宣言した。
絶句した男たちのことは無視して二人の腕をつかみ歩いていった。
「いいの?」
「かまわない。女と初めから見下している人に何てかまっていられない」
言いきりってしまえるほど憤慨していた。ボイコットしたとしても文句を言われる筋合いはない。
なので話しの通じる幹部のみお世話をしている。
「榎本さん。今日は天気がいいのでここ開けておきますね」
障子をあけ放ち風を通した。声をかけたのは陽菜だった。
「ああ。ありがとう」
「布団も干していいですか」
「頼む」
そちらの布団は紫衣と楓の二人で外に運んでいく。

楓は料理のために厨房に入っていく。そろそろ昼餉になる時間だろう。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.157 )
日時: 2017/05/24 23:15
名前: 小鈴

「邪魔するぞ」
そこに現れたのは木戸と大久保だった。
「どうしてここに」
二人は驚いて手を止めてしまった。
「榎本さんと大鳥さんはなかかい?」
木戸に問われてこくりと頷いた。
「失礼する」
「お邪魔するよ」
実に堂々と中に入っていく二人に何も言えない。
「楓にお茶を持ってこさせろ」
目を白黒させていたが二人は同時に移動する。
「楓ちゃん。大久保さんと木戸さんが来たよ」
「はい?」
不意を突かれたようで点にさせた。
「なにしにきたのかな」
「わからない。ただお茶を頼むって言われたの」
陽菜のように優しくは言っていない。
「命令でしょうが。たくっ。忙しい時に」
苛立ちが募っていた。楓を見て手伝うと言う。
大久保ようはごく渋茶だ。普通の人には飲めない。
榎本たちには別のを用意した。
食事の用意はすべて終わりで配膳のみでいい。
反抗的なものには本当に用意などしないのが楓流。
楓がお茶を運んでいく。
廊下を歩いていると声が聞こえてきた。

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