複雑・ファジー小説

私は貴方たちを忘れない
日時: 2016/06/29 09:33
名前: 小鈴

小鈴です。『貴方たちを忘れない』の続きを書こうと思います。
時代背景は幕末で登場人物たちも前回と同じ人たちが出てきますので読まれる方は前回からお願いします。注意としましてできるだけ史実にそい書いていきますが途中で捏造も入りますのでよろしくお願いします。
初心者ですので書き間違いもあると思いますが流してください。

主人公 楠 楓〈くすのき かえで〉十七歳少女
    立川 紫衣〈たちかわ しい〉十七歳少女
この二人を視点にして書いていきます。
登場人物 大久保 利通。桂 小五郎。西郷 隆盛。新選組。土方 歳三。

他にもいろいろ出す予定ですので、楽しみに待っていてください。  時代は1867年のころからです。

追加 大久保利通〈三十七歳〉桂小五郎〈三十四歳〉  

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Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.133 )
日時: 2017/03/04 15:41
名前: 小鈴

「いかに新政府軍であろうと勝手なことを許すつもりはない」
病室にいる負傷兵にそう伝えると安堵の息をつく。それに怪我をしていようとも彼らは武士だ。意地がある。矜持がある。仲間と認めたものは必ず守るそういう信念で生きていた。

陽菜は土方の元に来ていた。ベッドの上に半身を起こし朝から不穏な気配に神経を研ぎ澄ませていた。寝間着から新しい着物に着替えている。
「相原さん?」
しっと合図されて陽菜はこてんと首をひねる。鋭い目を扉に向ける。
こんこんと扉を叩く。固い声を出し「相原さん」と声をかける。その声にふっと目元を緩める。
「楓だな」
「はい」
楓は廊下側に立つ。がらと横に引くとするりと中に足を踏み入れる。いつもの娘の顔つきではないことを確認し土方も新選組の顔になる。
「戦況は」
「まだわかりません」
真剣に話し始めたので陽菜はお茶を用意している。ことり近くのテーブルに置いた。目で楓は「ありがとう」といってお茶をすする。
「先生より時期に報告がくると思います」
「ああ、そうだな」
紫衣も邪魔しないようにお茶を飲んでいる。
「陽菜ちゃん。ありがとう。」
「いいえ。これくらいしかできないから・・・・」
どこか寂し気に口にし目を伏せる。
「陽菜ちゃんにしかできないことがある。」
「え?」
それっきり口を閉ざす。真剣にこれからのことを話している二人のことを黙って見ていた。

南方が二つの荷物を手にして土方たちのとこにきていた。
「相原君。楓。紫衣。陽菜。」
「なんだ」
「「「はい」」」」三人の声が揃う。どんとカバンを床に置いた。これから伝えなければならないことを言うため息を吸う。
「戦況は」
先に土方が口を開く。僅かに目を開くと南方は質問に答える。
「どうやら幕府軍は降伏を決めたようだ。そして、あいつらはよく戦ったと思う」
痛まし気に南方は目を伏せる。
「それでその後はどうなったんだ。」
ベッドから飛び降りた土方は南方の襟元をつかんだ。その顔は鬼の土方でなく一人の仲間を心配するただの男だ。その手を払いのけ南方は言う。
「土方歳三は死んだ。それを忘れるな」
「わかっているが・・・・」苦悩を浮かべてぎりりと拳を握る。陽菜はとっさに背中にすがりつく。両手を背中にぴたりとそえて目を閉じた。その温もりを感じて冷静になっていく。
「悪かった。陽菜。俺は忘れていねぇよ」
くると体をひねり片腕に抱く。
「楓。紫衣」
二人の名前を呼んだ。はっと南方を見上げる。この顔はしっている。
「先生。嫌です」
「お断りです。逃げるならそこにいる二人だけでいいではありませんか?」
危機的なことを数多く体験してきただけにこの後何を言うのかわかるのだ。
「我儘を言うな」
いつもそうだ。あの時も・・・。

〜回想〜
「はよいけ」
「坂本さん。佐々木さん」
できるだけ声を抑えてなだめようとしている。すぐそこまで敵が迫っていた。
「頼むき」
「死なないで」
「わかっちゅう」
「おい。竜馬。何している。時間がないぞ」
佐々木にも言われて、泣きながらも楓と紫衣は部屋の外に出ていく。

〜回想終了〜

何もできない。ならば私にできることをするしかない。ばっと面を上げた楓に迷いはない。
「相原君。これを」
二つのカバンを渡す。すでに動きやすいように軍服に着替えていた土方は最後に刀を腰に差した。
「いいか。君は相原誠で土方歳三ではない。」
何度も念を押される。
「ああ。分かっている。」
陽菜は深く頭を下げた。何も言うことはできないと従う。土方の背中を追いかけていく。二人はすでに廊下に出ている。
「先生。私」
まだうろたえている紫衣の腕をつかんだ楓は無言で手首をつかみ歩き出す。
「楓ちゃん。はなして」
嫌だとだだをこねる紫衣を無視て引きずるように歩いていく。
「私たちはあきらめたわけじゃないよ」
後ろを振り返っていた彼女は友のセリフで正面に向ける。もう、すでに準備がととのっていた土方たちは外で待っている。
「先生の思いを無駄にするの」
一段と冷えた目を向けられる。ぞくっとするほどの冷えた眼差しだった。早くしなければ町すら抜けられなくなる。
「・・・・」
「よく聞いてそれに相原さんたちが危ないよ」
ようやく頭が冷えた。あそこでまっている土方たちが危ない。眉を下げていた顔を上げた。
「わかった。どこにいくの」
「逃げないよ。そのために先生に地図をもらったんだから」
南方が書いた簡単な地図を手にしている。



「まったく。本陣の地図を書いてくれといわれるなんてな」
南方は呆れた目をしていたがどこか嬉しそうだった。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.134 )
日時: 2017/03/07 17:01
名前: 小鈴

二人が外に出ると土方が「おせぇ」といった。「すみません」二人が謝った。土方がじろり睨んでくる。荷物は土方が肩に背負われている。
「で、どこに行く?」
鋭く問いかけてきた男に紫衣が無言で地図を差し出した。
「なんだ。こりゃ」片方の眉が上がる。
「本陣にいき助命嘆願をしようと思います」
「助命嘆願?聞き届けられるわけねぇだろ」
眉間に皺を寄せる。
「何とかしてみます。」
挑むように土方を見てくる。目的は決まる。本陣に行くと。もう一つのカバンは紫衣が背負う。病院を出た四人は函館の町を歩いていく。がやがやしている。どこも同じらしい。江戸も会津も。人々がいきかい商人がいる。その中で生活をしている。新政府軍がここに押しかけてくる前に通り過ぎていく。
「ここか?」
土方が言う。
「そうですね」
「うん。ここのようです」
こくりと紫衣が頷く。地図を見ながらたどり着いたそこは山に続く入口
だった。
「なぁ。近道ってここであってんだよな」
何度も地図を確認している。目の前に広がる光景に唖然としていた。どうみても山に入る道にしか見えない。道があるようには見えない。けもの道だろう。ひょっいと手元を覗き込んだ。ぼそりという。
「あっていると思います」
前方を見つめる。うっそうと茂る木々に四人はそこに足を踏み入れる。
しかしここから土方へ災難が降りかかる。南方による故意の嫌がらせをうける。
「なんだ。この道は」
土方は文句を言いながらがさがさ草を踏み分けていく。枝や草が頭に引っかかる。身長のある土方の頭にだ。がさり草を踏みわけ小柄な三人にはあたることはなく歩いている。それがさらに腹の立つこと。
「わざとだろ。くっそう」
手で枝をどかしながら悪態をついていく。

また別の道では。がつんと男の額に命中した。かなり痛かったらしい。頭を抱えたままうずくまる。
「いってぇ」
叫んだ。ここでも三人には問題なくそこを通り過ぎていく。洞窟の中であった。ここはどうやら一段上が低くなっていた。
「わざとだろう。ぜってい」
土方だけが被害にあい続ける。
額をぶつけ怒鳴り声を上げている男の額を陽菜は撫で続ける。
「大丈夫ですか」
「痛そう」
「うっわ」
「私たちには調度いいのですが・・・」
陽菜は洞窟の上を見た。最初は土方にも問題なかった。油断していたところに急に岩がぼこりと下がっていた。よけることもできずにがつんとぶつける。ランプを掲げた陽菜は辺りを照らす。
「先生は知っていたのかな」
「さぁ。どうだろう」
紫衣の言葉に内心では知っていたに違いない。これほど詳しく書かれているのだ。知らないはずない。
「土方さん。これからどんどん狭くなっていくようです」
「ああ。そうらしいな」
明りに照らされた奥には何も映らないほど暗かった。荒んだ目を土方はしていた。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.135 )
日時: 2017/03/12 10:13
名前: 小鈴

土方の災難は続く。ここはどうやら洞門になっているらしい。水が流れている。身をかがめて進む。
「ここに入るの?」
地図を見ながら陽菜が言う。
「そうみたい」
紫衣が答える。先に土方が入る。ばしゃと水が跳ねる音がする。深さはなさそうだ。
「陽菜。つかまれ」
と片手を差し出す。
「だ、大丈夫です」
その手を断るがそれを無視して腰に手をやり彼は軽く持ち上げた。悲鳴が漏れる。
「ひ、土方さん」
情けない声を出して抗議をした。
「ほら、しっかり立て」
「はい」
次に楓と紫衣にも手をかす。そういうところはそつなくこなす。楓が明りを照らすがそれを彼に渡した。水は靴の中にも入ってくる。ちなみに四人のはいている靴はブーツになっていて防水にもすぐれていた。洞門の水の方があるためブーツの中にも水が入る。洞門を抜けたところに出た。靴は逆さまに干した。
「よく調べてあるな」
土方は感想を口にした。少し広くなっているので体を休めることにした。
「さすが。先生です」
「ここで少し休みすぐに出る」
三人はそれに同意する。
「私水をくんできます」
「陽菜ちゃん。私もいくよ」
陽菜の後に楓も続く。
「いっちまったか」
土方はそれを見つめるとふうと息をつく。土方を見ていた彼女はぼつんという。
「疲れましたか」
「ん?お前こそ疲れたんじゃねぇのか」
口にはしないが疲れた顔をしていた。小さく体を丸めて膝に頬を押し付ける。
「土方さんのこと苦手でした」
伏せ目がちにそう言う。「ん?」と聞き返してきた。
「私。楓ちゃんのように強くないのです。男の人が本当は今でも怖い」
「俺は鬼と呼ばれた男だ。そんなん今更だ。気にしてねぇよ。こんな男のそばにいたがるのは陽菜だけだ」
寂し気にいった。切なそうに瞳を閉ざした。今なら楓の言ったことがわかる。大久保さんに似ていると。何て言ったらいいのかわからないが、似ているのだ。生き方が。自分のことは後回しで誰かのために生きている。そのためなら鬼と恐れられても構わない。本当はいつも孤独だった。重すぎる責務から逃げることもできない。
「陽菜ちゃんが大切なんですね」
ふいとそらされてしまう。
「楓ちゃんがうらやましい。」
「どういう意味だ」
空を見上げた。
「陽菜も言っていたな。だが、紫衣は紫衣で陽菜は陽菜だろ」
それ以上でもなくそれ以下でもない。くだらない。
「はい。陽菜ちゃんはあなたを選んだ」
ますます意味が分からない。睨まれてしまう。
「今ならわかることもあると思います」
独り言のようにいう。
「俺はあいつがいるから生きていられるんだよ」
土方も一言つぶやいた。


「よかったね」
言葉もなく口元をおおい方を震わせていた。さまざまな思いを抱えて今を生きていた。ただ前を向いて進んでいく。本陣を目指して。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.136 )
日時: 2017/03/15 19:04
名前: 小鈴

少しの休みをはさんで再び歩き始めた。川の反対側に渡らなくてはいけない。見た目深さはない。
「土方さん。ここに注意書きが・・・」
地図のはじに書かれていることがあると言う。
「めんどくせぇ。先に行く」
土方は川へと端を踏み入れた。見事に罠にはまる。「どわっ」叫ぶ。ざぶんと水しぶきがあがる。そこだけ深くなっていたらしい。
「だからいいましたのに」
呆れた目をしている楓と眉を下げている陽菜。紫衣はランプを片手に困っていた。
「それを先に言えっー」
土方は水浸しになりながらも叫んだ。
「大丈夫ですか?」
「ああ」
土方は腰くらいになった。川の深さに乾いた笑いを浮かべている。陽菜たちを腕に抱えて反対側にわたっていく。ようやく水場から離れられたと思ったら新政府軍とばったりと出会う。しばらくお互いに見つめ合う。土方は陽菜の腕をつかむと全力で走り出した。楓は友の手首をつかみ走る。
「まてっ」
「まてっと言われて待つバカはいない」
何時かと同じセリフを吐きひたすら逃げていく。
「はぁはぁ。な、んか私たち・・・こんなんばっか」
つい愚痴をこぼした。走って走ってたどり着いたのは崖の上だった。思わず足を止める。後ろは新政府軍が迫ってきている。前を見てから後ろを振り返る。ちっと土方は舌打ちをした。
「どうしよう」
陽菜が土方に縋り付く。
「困ったなぁ」
全然困ったように見えない。紫衣は前と後ろを見比べている。
「さぁ。いよいよ逃げ場がなくなったなぁ」
「おとなしく投稿しろ」
「そのいいかただと私たち何かした見たい」
大変不本意であると楓が言う。しかしその間にも頭の中は計算していた。正面から土方が陽菜を抱きしめる。横にいる二人に視線を投げかける。無言で頷く。
「いくぞ。そのまましがみついていろ」
耳元にささやくと地面を蹴った。楓もほぼ同じに腕をつかみ走る。
「息を止めて」
崖から一気に飛び降りた。それと同じに水しぶきが二つあがった。
ばしゃ。どぼーん。
彼らは迷うことなく崖下に飛び降りていく。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.137 )
日時: 2017/03/16 23:43
名前: 小鈴

崖の上から男たちは下をのぞいた。
「これなら生きていないだろ」
「そうだな。」
「俺たちの役目は終わりだな」
と言って去っていく。

しばらくして四人は水面に顔を出した。ぶはっと息を吐き出した。しかし川の流れが速い。ぷかぷか浮いていたが異常事態を知る。「ちょっと」慌てて腕をつかんで沈みかけている彼女を引き上げたのは楓だった。
「紫衣。どうしたの?」
「私。泳げない」
「ええっ?」
楓は力を抜いて浮いていた。
「陽菜は泳げるか?」
土方が腕の中にいる女に問う。
「わかりません」
不安そうな答えが返る。出来るだけ体の力を抜いて浮いている。
「楓はそのまま行けそうか?」
「はい。」
「ならそのまま流れにそっていくぞ」
水に沈まないようにしながら泳いでいく。川の流れが緩やかになってきたところで水から出た。四人は見事に寝れネズミと化していた。ぼたぼたと頭から水をかぶっていたため雫がしたたり落ちていく。荷物から手拭を取り出して頭だけでも手早くふいていく。例えるなら野良犬のように汚れていた。

ぬれた着物は適当に乾かしてそれでも進んでいく。

新政府軍本陣前。
物陰に隠れて様子をうかがう。
「どうします。相原さん」
「俺に答えをきいてんのかよ」
土方と楓の二人は悪だくみを画策していた。
「紫衣ちゃん。嫌な予感がするの」
「私も同じ意見」
にやりとしている二人から後退した。
「ここまで来れば前進あるのみ」
「同感だ。精一杯。暴れるとすっか」
何て楽しそうに口にしているのか。もう、あきらめた。
「やる気になっているんだけど」
「もう、無理よね。私も手伝う」
小さな声で淡々と言う。
「わ、私もお役に立てるようにします」
陽菜は覚悟を決め強い目で拳を握った。
「陽菜は俺のそば離れるんじゃねぇ」
土方に言われてこくりとした。
「紫衣は私とね。」
「うん」
隣に立つ。ちらりと目で合図を送る。
「いくぞ」
刀の鞘は抜かずにそのまま土方と楓は構える。もう、人を斬る必要がなくなったのでそうした。勢いをつけて本陣に突っ込んでいく。
武器を構えた兵士たちが何人もいたがスペンサー銃や最新の銃の弱点を知り尽くしている彼らにかなわなかった。身を隠しひらりと舞うように横に飛んでいき兵士たちを蹴り倒していく。その動きについていけないのだ。銃での攻撃は接近戦は不利になる。気が付いたら目の前にいて横から体当たりをされていた。縦横無尽に動き回り一人一人を確実に地面に倒していく。たったの四人に圧倒されていた。刀を振り回しているのは土方と楓だ。容赦なんてない横に身軽に飛んでいき鞘で殴り倒す。紫衣は関節技を披露した。構えたと同時に動き腕をつかみひねりあげた。素早く首筋に手刀を決める。後ろの気配に回し蹴りをいれそのまま昏倒。ふう、息をつく。陽菜は戦いには向かないので土方に敵の位置を伝える。

本陣。
「敵襲。敵襲」
伝令係が走り回ってきていた。いきつく暇なく声を張る。
「なにごとか」
新政府軍の指揮官である黒田はここにいた。薩摩、長州、土佐などの藩の上官たちも集まってきていたのだ。降伏のための準備に追われたいた。油断はしていたわけではない。
「敵がいきなり襲ってきまして」
「なに?数は」
その言葉に上官たちは怯える。そう言う話は歴史上でもあったのだ。あの関ヶ原の合戦の時にもあった。僅か数人で突撃をかけてきたではないか。ここには幹部クラスがそろっている。それを全て殺せばあるいは旧幕府側にも勝利が得られる。
「はっきり言え」
大久保が一喝した。状況を把握しなくてはならないのだ。
「はい。四人です。ですが恐ろしく強い」
「四人だとっ?詳しく話せ」
立ち上がったまま大久保に迫られてひっと声を震わせる。
「は、はい」
声が裏返ってた。
「小柄の三人と一人は成人男性かと思われます。」
「うん?」気になり聞き返したのは佐々木である。
「どういう意味ですか?」
佐々木は丁寧に男に聞いた。
「三人はまだ若く子供のように見えたもので。あと示現流も使っていました」
それを聞いたものはばっと大久保を見た。作戦会議のために集まる男たちは思い当たることがある。「まさか」全員が心で思う。楓か。と叫んだ。かろうじて声にはしなかった。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.138 )
日時: 2017/03/19 18:07
名前: 小鈴

大久保はかなり思い当たる事があり無言で己の額を指でとんとんとしていた。
「何かいけないこと言ってしまいましたか」
大久保たちの様子に伝令役はうろたえる。
「いいや。君は悪くありませんよ」
佐々木はそう言うが視線を外していた。ここに来るまでの噂がかなりあった。女とばれずにいたことがすごいのかそれとも男ですら従えてしまう彼女たちがすごいのだろうか。どちらであろう。そんなことを考えていた。
「どんな四人組だ」
別人であることを期待しているように思える。
「くわしく教えてくれないか」
木戸さんもそう言う。
「一人は成人男性で鬼のように強いです。示現流を使っているのは小柄な少年でもう一人は素手で当身をくらわせ倒しています。ただ一人だけ小刀を使っていますが戦うことになれていないようで男のそばにいます」
報告をいっきにして頭を下げた。



ここから西郷たちが会話をしていますが薩摩弁を話しています。作者の都合により通常の言葉使いにさせていただきます。

「一ついいですか?嫌な予感がするのですが」
黒田がぼそりと言うも西郷ですら視線をはずす。

拳が震えている。二人の男は怒りを押さえつけていた。
「あのバカ者たちを今すぐ捕らえよっっ」
キレた大久保は怒鳴り散らした。災難だったは彼の部下である。


その頃。
「だいぶ片付きましたね」
「こいつら口ほどでもねぇな」
はっはっはと高笑いを浮かべていた。地面に転がるのは新政府軍の兵士だけだった。打ち身だけでほとんど無傷で倒していた。四人が強すぎたのである。奥の方から部下を連れた男が現れる。
「そのくらいにしてやってくれないか」
「あんたがここの隊長さんかい?」
不敵に笑いこちらを振り返った頬には泥がついていた。何て楽し気にしているのか。薄汚れた者たちを見てもわからなかった。楓は片手を上げた。
黒田はにこりと笑う。片手をおもむろに振る。次には四人はこうそくされていた。「捕らえよ」片手で合図をした。あっけなく捕れられていた。二人がかりで楓の両腕をつかんでいた。男二人に地面に押さえつけられている。
「はなせー」
文句をたれて頭を振る。
「やはり楓さんか」
自然とため息をつく。ということはちらりとなりを見た。間違いない。
「その髪。どうしたんだ」
膝をついていまま面を伏せていたかわからなかった。顔を上げた時さらりと短くなった髪が流れた。
「これは木の葉か。それと土もついている。」
からまりまくっていた楓の髪の毛を手早くととのえる。
「黒田様。今は何も答えようがありません」
小さく答える。紫衣を見ても絶句した。
「覚悟はしております」
彼女もそう言う。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.139 )
日時: 2017/03/21 17:55
名前: 小鈴

佐々木もそこにいた。あまりにも汚い姿に何も言えない。
「・・・」
目をむいたのは何故かバッサリと短く切られている髪の毛を目にしたからだ。そこから視線を無理やりそらしたらどこか見たことある人物に目が行く。
「あれは」
とたんきりきりと目を吊り上げていく。
視線を感じて土方は佐々木を下からじろと睨む。
二人は無言でばちばちと火花を散らす。
『土方さん?』居心地が悪い感じをし楓たちに助けを求める。うるんだ目で楓たちを見ている。
その目を見て楓が動く。
「お二人共もやめてください。陽菜ちゃんが怯えています」
いさめたはずなのになんで睨まれなくちゃいけないの?土方は眉間に皺をよせすごみ佐々木はくわっと睨む。
「怒っている」と紫衣は判断した。
「まったく説明してくれるかな」
声まで低くなる。しかし楓は恐れない。真っすぐ見返すことが出来るただ一人の人だ。
「尋問したければどうぞ」
それだけをいってのけた。しーんとなる。
忘れてはいけない。ここにいるのは何も知らない兵士もいるのだ。普通にとうただけでは答えない。答えられないということだ。
「一つ聞いていいかな。その髪どうしたの」
「自分で切りました」
聞いたとたんめまいをおこした。
「大丈夫ですか」
拘束されながらも楓は落ち着いていた。
ごっほんと咳払いがした。
「五稜郭にいきましょう。話はそれからです」
参謀としての言葉で言う。
ようやく拘束がとかれた。陽菜は土方の背に隠れる。刀を全て奪われていた。
「この後は降伏のために五稜郭にいきます」
淡々と説明を受けていく。四人は歩いていく。皆に囲まれて。
「丁寧にあつかえ尋問がまだすんではいない」
それとなく兵士たちをおさえる。意地の悪い奴は捕虜を適当にあつかう。蹴りつけたり転ばしたりするのだ。
「私たちどうなるのですか」
「大丈夫」
と言い陽菜を抱きしめる。

五稜郭にたどり着いた時。入り口に立つ男たちを見て後悔した。
「なんですか。あれ」
「恐ろしすぎる」
思わず紫衣もこぼした。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.140 )
日時: 2017/03/22 23:07
名前: 小鈴

五稜郭についた時。
門の外に立っていた男二人見た。仁王立ちしている。
「なんです。あれ」
地獄の門番に見えた。正しくは幻が見えたのだ。大久保と木戸であった。
「捕虜を捕らえたときいた」
「ああ」
黒田は引きながらも四人を差し出す。木戸は般若の顔をし大久保は鬼の形相をしている。
「そこの二人は牢にほうりこんでおけ」
大久保は憤怒の顔で命じてきた。
「その前に薄汚れたなりをどうにかしろ」
「きたないよね」
二人にはっきりと罵られてさすがにへこんだ。逃げてきたのにまた戻されるとはむなしくなる。

そののち。大久保は楓を強制的に連れていく。
「ちょっ。いたい。手をはなしてください」
抗議をしたのに怒り狂っている男には聞こえていない。後ろの襟をつかむと歩いていく。やばいと本能が告げる。転がったらそのまま引きずられかねない。器用なことに後ろ歩きで突いていく。
異様な光景をみせていた。

木戸は左の手首をしっかりとつかみそのまま歩き出した。
「木戸さん。痛い」
力がかなり強い。指がくいこみ痛みが走る。逃がさないと言っているようだ。
「とりあえずその汚れをどうにかしてくれないか」
とだけ言われた。「かなり、怒っている」ぎりぎり握りしめてくる指に何も言えなくなる。大人しく従うべきと知る。恐らく風呂場に行くのだろう。

土方と陽菜はあっけにとられていた。兵士の男がちらと視線を向ける。
「とりあえずお前たちはその汚れをどうにかしろ」
案内をするため先に歩いていく。
「え、あの」
どうしようと土方を見てくる。汚すぎるのか短く切られた髪のせいなのか。女とばれていない。助けを求めて見てくる。
「どうした。はやくしろ」
いかにも面倒だとその顔は言う。ふうとため息をつくと耳元にささやく。
「いくしかねぇだろ」
「はい」
大きな目が戸惑い泳いでいた。声をかけてきた兵士が早くと催促してくる。慌ててついていく。しばらく歩いていきよく知っている風呂場にたどり着く。恐らく仲間たちは別のところに集められているはずだ。男は監視のため入り口にいる。脱衣所に入り情けない声を出す。
「相原さ〜ん」
横を見ると今にも泣きだしそうな陽菜がいる。不覚にも吹き出しそうになる。ぷっ。片手で口をふさぐ。
「笑わないでください」
むうっと頬が膨らむ。忙しい女だ。気を取り直して身をかがめて告げる。
「陽菜。覚悟を決めろ」
「そんな〜」
「幸い気が付いていねぇようだ」
「ですが・・・」
真っ赤になり自分の体を抱きしめて震えていた。小娘には刺激が強すぎであろう。男である土方は平気でも女である陽菜には無理だ。
「俺が先に入るから後から来い」
外にいる監視が怪しんで乗り込んでくる可能性もあるのだ。そうなってしまえば女だとばれる。さっさと着ている着物を脱いでいくと中に入っていく。背中を向け見ないようにしていた。こうなれば覚悟を決め陽菜も着物を脱いでいく。手拭で体を隠して中に足を踏み出す。がらっ。扉を開ける。背を向けてくれていた。ほっと肩の力を抜いて手早く体と髪を洗う。
「・・・・」
「・・・・」
お互いに無言でいたが陽菜が声をかけた。
「あの」
「おわったか」
「はい」
場所を譲ってくれた。はじによってくれた。ただ水の音だけがした。ばしゃりと。跳ねる音に体がびくっとした。お互いに緊張をしているのがよくわかる。急いで湯から上がり着替えを済ませていく。

その後二人は部屋に閉じ込められる。
「ここは」
「どうやら個室になっているらしい」
全てに鍵が付けられて私物は何もない。ベッドしかない。
「陽菜。疲れていねぇか」
ずっと動いていたのだ。先に休ませることにした。

Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.141 )
日時: 2017/03/24 13:42
名前: 小鈴

土方は陽菜の体を心配してそう言うのに本人は土方を心配してくる。似たもの同士。
「私は大丈夫です。それより相原さんのほうが心配です」
まだ傷は治ってはいないはず手当てをするための道具がない。眉を寄せている。
「もう、平気だ」
土方はその視線に耐えきれずそらした。『こいつ何もわかってねぇ』こんなにも熱のこもった目をしているのに無意識なのか。ふうっとため息をつく。
「時期に奴らが尋問のためにここにやってくる。それまで体を休めておけ」
不満げな顔をしている。ベッドに二人で歩いていく。小さな部屋にあるベッドに腰かけ陽菜をそのまま横にさせて布団を上からかけてやる。頬をなでて乱れた髪を手でととのえることも忘れない。
「ううー。落ち着きません」
「そうか?」
口元を緩ませている。その顔はしっている。からかう時の表情だ。
「相原さん。からかっていませんか」
「くくっ。そんなわけ・・・くっ。ねぇだろ」
あきらかに笑っている。むっと睨む。『土方さん、楽しそう』なんだか悔しい。唇をとがらせていたがくるり背を土方に向けた。また楽し気に笑う声が聞こえた。それを無視して目を閉じる。するとうとうとし始める。これだけは聞こうと口を開く。
「疲れていませんか」
「大丈夫だ」
土方も疲れていた少し考えてするりと陽菜の隣に滑り込ませると抱きしめた。一度だけびくっとし大人しくしていた。大好きな人の腕の中にいて安心したらしい。



大久保と楓。
後ろ襟をつかまれ引きずられていく。
「だ、誰か。助けっ。」
目に映る人たちに助けを求めたのにとっさにあさっての方を向いた。
「は、な、し、て〜」
悲鳴だけが残された。

部屋を開けて捨てられた場所は風呂場だった。しばし茫然。
「汚れをおとせと言うことか」
確かにこれはないというように汚れていた。急いで軍服を脱ぎ汚れを落としていく。女物に着替えを済ませていく。風呂場を出たら命じてきた目で。
「口で言ってください」
じろと睨まれた。すぐにそらされる。椅子に座れと言うことらしい。座ったら丁寧にくしでとかされた。濡れた雫も手拭でふかれていった。広げられた手拭により視界を奪われる。「怒っている」横目で見たら憮然とした顔が見える。
「怒ってる?」
「その髪はどうした?」
意外なほど穏やかに言われた。
「自分で切った」
「バカ者。女の結びが出来ないではないか」
一房手で絡めて渋い顔をしている。
「戦場をかけまわるにはこれしかなかったもので」
「また無茶をしたものだ」
きれいにほぐされた髪の毛を指にからめせたまま唇で触れる。びくっと肩が跳ねる。
「相変わらずなれぬか?」
「ふいうちはずるい」
真っ赤になったまま顔をそらす。この人がどれだけ心を痛めているかを知らないわけがない。
顔をそらしたまま口を開く。
「このままで聞いてください」
言わねばならないことがある。面と向かっては言えない。『私はあなたを怒らせることしかできない』振り返れないと思っていたらぐいと肩をつかまれてくるりと反転した。
「尋問を始める」
ふいにそう言われた。きょとりとさせ次に強い目をした。
「どうぞ」
「その前にそれどうにかならんか」
無念すぎるとその頭をさされた。
「いや。あの・・・どうにもできなくなりまして・・・・」
だんだん小さくなっていく。珍しいことだ。懐から布とリボンを取り出した。
「うごくな」
固まる。そのままくしでまとめて布でくるみリボンでしばった。
「あの?」
鏡を渡された。後ろを確認して目を丸くした。そこには黄色のリボンが揺れている。気を取り直してお互いに向かい合う。ここから話を始める。大久保はスーツを着ていた。ネクタイが目に付く。黙っていれば文句なしのいい男。その口の悪さが全てを台無しにしていた。
「いままで何故報告してこなかった?」
「やりようがありません」
どうやって連絡をしろというのか。すいっと背筋を伸ばしてそう言う。心にやましいことなどない。
「お前ならいくらでも思いつくだろ」
辛辣な言葉が返ってきた。確かにいくらでも策はあった。黒田に会いに行っているくらいだ。

ここから反論を開始した。やはりいつまでもしおらしいのは合わない。



Re: 私は貴方たちを忘れない ( No.142 )
日時: 2017/03/27 19:05
名前: 小鈴

ここから反論を開始する。
「薩摩藩とは縁をきり面目をつぶさないと・・・・するなっ。とあなたがいった」
半分睨むように見たことを後悔した。「何口答えしてんだ。殺すぞ」と言う目で見られた。楓は耐えられず目をそらす。
「なんだ。おかしな奴だな」
ふんと笑われた。
「り、理不尽だ」
「なにがだ。それは私のセリフだろう」
「だって・・・・」
「言い訳するな」
「なにそれ・・・」
悔しい。ぎりりと拳を握った。
「言いたいことははっきりいえ。中途半端が一番嫌いだ」
楓は不満ですと言う顔で大久庭を見た。
「理不尽じゃないか」
敬語をすっ飛ばして文句をたれてくる。相当ご立腹らしい。面倒な女だ。
「い、いろいろやらかしたかもしれないが間違ったことはしていない」
言いきったらほほーうとひくーい声で言われた。
「それに戦いは終わりでしょ。これからはどうなるのです」
ようやく冷静になったらしく。居住まいを正した。
「どうなる?ではないどう作るかだ」
「ならば、お願いがあります」
そのまま頭を下げてくる。それを見た大久保の眉が持ち上がる。
「なんだ」
「降伏している人たちの許しを与えてください」
眉を寄せて渋い顔になる。またこいつはとんでもないことを言い出す。
「誰を許せと。特別あつかいはできんぞ」
「幹部クラス。全員」
堂々と言った。決して自分に非はないというように。
「おい、誰一人処分せず謹慎のみにすませろということか」
「そうです。あそこにいる人々は優れた人材の宝庫です。すなわち宝です。それを殺しては国を作ることなど夢のまた夢。もっと広い視野で見るべき。新しい日本を作るのでしょう。戦をするのはこれで最後にしてください」
まくしたてるように言いきった時息をつく。大久保は黙って話を聞いている。やがてくっくっと喉を鳴らす。
「何がおかしいの」
ムカッとした。
「正論だな」
「そうでしょう」
「坂本君はお前のように生きたかったのだろう。だが、彼は志半ばで命を落としてしまった。残された私たちにはこれしかやりようがなかった。彼を失ったことはまことにおしい」
それっきり口を閉ざしてしまう。背を向けると大久保は肩を震わせていた。泣いているかと思った。思わず立ち上がり両手を広げて抱きしめる。
「そうですね。おしい人を失くしました」
広い背中に頬を押し付けて目を閉じる。
「彼ら自身を説いてみよ。双方ともに。それができれば考えてやらんこともない」
にやりと唇を持ち上げた。いつもの男に戻っていた。肩を震わせていたように見えたが気のせいだったかと思うほどあっさり顔だけ向けてくる。不遜で偉そうに命じてくる。
「やって見ろ。お前ならできる」
期待を込めた言葉だ。譲歩をしてくれている。言葉を聞き考えてくれる人なのだ。この人は。助けたい。それはまぎれもない本心だ。
「わかりました。やってみせます」
こちらも答えなくてはならない。意思の強い目をしてそう言う。
「ああ。」
こうして二人だけの話し合いは終わる。

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