複雑・ファジー小説

[リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す
日時: 2018/11/20 21:30
名前: にっか ◆ShcghXvQB6
参照: https://twitter.com/NIKKA_Nonbe

無限の廓にて、大欲に溺す

開始日:2016/8/22(8/21 15:00スレ立ち上げ、創作解禁)

参加者一覧
・にっか(文字化けするためNIKKAと名乗ってます)
・ポテト侍
・霧島
 以上3名。敬称略。

設定については、次レスに張るURLから確認願います。

なお、コメント等は差し控えて下さい。

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Re: [リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す ( No.208 )
日時: 2019/03/31 22:12
名前: NIKKA ◆ShcghXvQB6
参照: https://twitter.com/NIKKA_Nonbe

 顔を覆い隠す布の下、ガウェスは大きく欠伸をしていた。陽は顔を覗かせ始め、その存在を寒風、風雪の裏から主張している。
 酷い吹雪だ、道行く者は往々にして外套を凍らせ、顔をどうにか隠そうとしている。目の前を歩くセノールだけは別で、彼はもうどうしようもないと開き直った様に、凍て付いた道をふらふらと歩いている。宛ら狂い踊る案山子の様だ。それも悪さを働けば、刀を抜いて大暴れする化け案山子だ。危うい均衡を保ちながら、彼はふらふらと歩む。先程、結ばれた関係を体現している様にも思えた。
 仮にアゥルトゥラ側からガリプの用兵に注文を付けよう物なら、全く相手にされない所か、そこで連携は崩れる事だろう。何故ならキールやハイドナーが兵を率いるよりも、戦争の為の武器であるガリプが兵を率いた方が、より優れた戦術を用い、より戦果を叩き出すからだ。態々、自分よりも戦働きに劣る存在の注文を聞く必要はない。金は要らない、という文言はそれを押し通す為の言葉だったのだろう。であるからして、結局キールは自前の兵士を用意する必要が出て来る。だが、屋敷にガリプの兵士が屯していたなら、ジャッバールとて迂闊に手出しは出来ない。
「……そうだな、上手く行くかは五分五分と言った所だ」
 ふと、一人ごちる様にジャリルファハドが呟いた。企みが上手く行くか、という事だろう。それはやってみなければ分からないという旨の発言なのか、不確定要素があるからの事なのか、ガウェスには分からず、歩調を早め、先を歩むジャリルファハドの隣に並ぶ。
「……やはり博打ですか?」
「博打も何も、お前達が俺達に不当に干渉してきたら、アサド達が思ったよりも強かったら、我々の旗色が悪くなったら。これのどれか一つでもあったら、この話は御破算だ。俺達はジャッバールへと鞍替えする。……傭兵の忠誠は金で買う物だろう?」
 何もかも成るべくして成る。そう言いたげだった。ジャリルファハドの本懐は戦働きである。目の前の状況から、最適な手を選ぶ目はあったとしても、大局を見据える目は持っていない。皮肉な事にそういった目はフェベスや、バシラアサドが持つ目である。邪まな緑眼、獰猛な碧眼がそれだ。
「……ランバートには釘を刺して置きます。ガリプの手綱を握ろうとするな、って」
「勿論、お前達の用兵も試される。……俺達の速さもな」
 アゥルトゥラは終始、ジャッバールに対し有利に立ち回り、ジャッバールとクルツェスカの勢力が衝突する寸前、その隙間にガリプ等が入り込む。そんな状況、戦の知恵がない者であったとしても、酷く厳しい状況に思えるだろう。
 ふと、寒風が吹き荒ぶ。そんな事、上手く行く訳がないだろうと嘲笑う様に、二人へと向かい合う様にして吹き荒ぶ。ジャリルファハドは一瞬だけ身動ぎをしたが、それでも歩を止める訳でもなく、ただただ風に向かって行った。障害など些事であると言いたげに、ただただ歩き進めていく。気後れする様に幾分、身長の低い彼の背を追う。
「兵士の率い方など……」
「そんなものお前が臆せず決断し、声を張れば良いだけだ。進め、撃て、殺せとな。……指揮官が腹を括らねば、士気は下がる。兵は逃げる。なに戦とは上手く行かねば死ぬだけだ」
「そうも行かないでしょう、死ぬだけだなどと……」
「……今更、命が惜しいか? 良いか、持つべき者であったなら、名と血のために死ね、それは恥ずべく事ではない」
 誰もその死を誹らない、と語る。ガウェスは漸く理解した。砂漠の隣人達はそもそも生死観が違うと。歳若いアースラとて、自分の血と死を以てして──などと発言していた。ジャッバールの兵等もカンクェノに潜り、幾人かはレゥノーラとの戦闘で死亡しているが、彼等は逃走しながらも出来うる限りの戦闘を継続していた。そもそも、生物としての種が異なるのではないか、とまで思えてくる。
「何故なら我々をこの地獄に落とした、お前達の祖先がそうだったからだ。……そういった者達と戦うに辺り、臆し退かば、それは即ち敗北、無意味な死を意味する。……いい加減、作られた作法など、かなぐり捨て牙を研ぎ直せハイドナー。戦場では無意味だ」
 目を覚ませ、本来あるべくアゥルトゥラ貴族の姿に戻れ、と諭されているかの様だった。好戦的なナヴァロや軍議となれば頭の働くシューミット、その後ろで戦備を整えてきたメイ・リエリス。そして、貴族ではないが彼等と共に駆けずり回るカランツェン。彼等は牙を研ぎ終え、漸く暗い喰らい闇の奥底から這いずり出てきた。闇を経て、本来の"獣"の姿に戻ったかの様だ。だが、しかし──。
「今更、生き方は捨てられません。……暴力の化身になど」
「死んだ様に生きるのはいい加減止せ。何を引き摺っているか知らんが、もう忘れろ。この戦が終われば、お前を縛る物は消える──」
 喉元まで、ふと言い慣れた言葉が出掛けていた。何度か口走り、その都度怪訝な表情をされた言葉だ。まさか、言えまい。何者でもなく成れる、などと。好きに生きて、好きに死ね、などと。
「……ジャリルファハド?」
「忘れろ、アゥルトゥラの言葉は言い慣れん。詰まってしまった」
 取り繕う様な素振り、何かを誤魔化されていると思いこそしたが、それを問う様な事はしなかった。いや、問う気がしなかった、というべきが正しいのだろうか。その言葉を聞けば、箍が外れてしまいそうな気がして仕方がなかったのだ。
「半年以上も此処に居るのにですか?」
 少し意地の悪い事を言ってみると、彼は振り向き、じっと睨み付けてくる。察せと言わんばかりのそれに思わず苦笑いを浮かべざる得ず、間を取り繕う様に次の言葉を吐く。
「……バシラアサドとはどういった関係で?」
「昔、あいつの護衛をしていた。……砂漠から出て行く直前までな。当時は家督を継ぐ訳でない人間だったが、ジャッバールの息女ともなれば、その身を狙う者も多い。俺は奴の矛であり、盾だった。昔、子供の頃からそう在れとして育てられてきた」
 であれば、何故今の様な仲違いをし、半ば敵対関係とも思えるような立ち位置に居るのか。ガリプがジャッバールに協力し、ラシードを巻き込めばそれだけで彼女が成そうとしている"東伐"は成功するだろう。何ならこのクルツェスカを一夜で落とす事も可能なはずだ。だが、問うのが憚られる。そして、同時に彼が勝手に語る様にガウェスには思えた。
「あいつは──嘗ての守るべく友だ。……であるからこそ犯した罪を雪ぎ、再びセノールと共に歩んで貰いたい。ただ、それだけだ」
 ガウェスが蹴り飛ばした氷ががらがらと転がって、見えなくなってしまった。行ってしまった。その背を見送る事も敵わず、外から加えられた力で元居た場所から消え去ってしまった。ジャリルファハドはそれを足を止めて見ていた。蛇に唆され、砂漠から去ってしまった獅子と重なって仕方がないのだ。
「……だから、血の一滴すら譲らないと」
「そうだ。あいつはお前からしたら仇だろうが、もし。……もしな、お前があいつに刃を向けたら、銃口を向けたら。その時は──」
 大きく溜息を吐き、大きく呼吸を一つ。一点を見据える、その灰色の瞳に迷いなど全くなく見えた。
「お前という個を散々に甚振って殺してやる。そしたら次はキールだ、あいつ等も殺して回ってやる。ありとあらゆるアゥルトゥラを殺して回ってやる」
 遂に彪が吐き出した呪詛、それにはっと息を呑みガウェスは小さく頷いた。斬り合った時とは異なる、その雰囲気は今まで感じた事がない物だ。彼の吐く言葉こそ、底の浅さを露呈していたが、それでありながら底知れない不気味さに、腹の中で得体の知れない感情が渦巻くのだった。
 



 二人の間には沈黙が流れていた。何時の間にか寒風は鳴りを潜め、街を行く人々の喧騒が辺りを制す。大路に合流する様に多数の小路が、存在しそこを抜け道の様にして人々は街の動線を確保しているのだが、幾らか人々が通行を憚っている様な道も見える。
 そんな小路の一つを横目で見遣れば、随分とやつれた仄暗い横丁がぽっかりと口を開いていた。だというのに、その入り口には人垣が築かれ、憲兵達が引っ切り無しに出入りしている。
「……何でしょう?」
 人垣の後ろに付き、少しだけガウェスは背伸びをしていた。何事かと気になるのだろう。また殺しでも起きたのか、それとも何らかの諍いでも起きたのだろうか。幾分、背の低いジャリルファハドは背伸びしたとしても、見えないためか少し離れた所で歩を止め、大路に目を光らせていた。ジャッバールの手勢が銃器を携え、廓へと向かう姿が見えたからだ。目が合い、手を上げたなら彼等は何か話しかけて来る訳でもなく、同じ様な反応をして、そそくさと行ってしまった。
 ガウェスの視線の先、そこには人気の消えた廃屋があった。夏頃、大勢の貧民が死んだ事により誰も管理せず、手付かずとなった場所の一つである。そして、その廃屋を前に憲兵達は小銃や、斧、鉄槍と行った得物を携え、首を傾げているのだ。彼等の眼前にある、廃屋の窓には肉の塊の様な物がべったりと張り付き、脈を打っていた。どくどくと蠢く、その肉塊は生きている様で、この世の物とは思えない代物である。
「何があった」
「……さぁ、分かりません。ただ、おかしな物が」
「そうか」
 廃屋の窓という窓に肉塊がへばりつき、脈を打っている。薄く白い皮の中、時折赤い何かが走る。見た事がない奇妙な存在に、ガウェスは言い様のない不安感を覚え、固唾を呑み込んだ。ジャリルファハドは関心がない様で、さっさと帰れと言わんばかりに刀の柄に手を掛け、僅かに抜いては収めを繰り返し、鞘と鍔を引っ切り無しにぶつけている。
「そんなものどうでも良いだろう……さっさと帰れ」
 戒める様な口調と声色で言い放った後、ジャリルファハドは大路を見遣る。それに釣られる様に視線を向けると、確かにジャッバール兵の背中がそこにあり、長居は危険だという事が分かる。バッヒアナミルからの報告が上がっている可能性こそあるが、それでも不用意に居場所を知らせたり、見られてしまうのは悪手でしかない。まだ、あの小路の様子が気になりこそしたが、小さく頷いて帰路を急ぐ事としたのだ。報告をフェベスが待っているだろう。

Re: [リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す ( No.209 )
日時: 2019/04/02 20:34
名前: ポテト侍 ◆jrlc6Uq2fQ
参照: http://twitter.com/imo00001

 社交界で享楽の貴公子と呼ばれたのはいつ頃であったか。パーティに出席しては未婚者既婚者関係なく女性と関係を結び続けた結果、誰彼構わずそう呼んだ。ただの色狂いと揶揄されなかったのはその恵まれた容姿のおかげである。女のように硬く艶かな黒い髪と濃紺の瞳が切れ長の瞼に彩られている。何よりもたるみのない引き締まった身体! そこに刻まれた傷跡は何故つけられたのか、どのようにしてつけられたのか、妄想をかき立てられ、彼の魅力を更に引き立てるのだ。それでも色狂いと同等の蔑称であることは本人も承知しているし、それをわざわざ撤回することもない。そのような事をせずとも、一時のロマンスを求め、女達は自ら網にかかりにいく。彼女もそうだった。
 彼女の父親が苦虫を噛み潰したような顔をしているのは、蝶よ花よと育てた娘がよもや、このような軽薄な男に捕まるとは考えてもいなかったのだろう。女の細く繊な指にランバートの無骨で太い指が絡んでいる。時折、感触を確かめるように指に入れる力に強弱をつけて遊び、その度に麗しい細君は頬を赤く染めてくすぐったそうに笑う。眉間の皺を深くするのはランバートと対峙する父親のみだった。
 土地の税収だけでは生活を賄えない領主は副業で傭兵家業を請け負う。彼女の家系もそうだった。シュルツのように代々傭兵を続けているわけでも、ごろつき共とは異なる。だからこそ都合が良いのだ。そこらのごろつき騎士や傭兵よりも練度が高く統率が取れている場合が多い。何よりもよりも筋を通そうとする。騎士道のように高潔な魂を持ち合せているのではなく、信頼を勝ち取ることで仕事を得ていると理解しているだけなのだ。
「さてと……」
笑った彼の笑みは胡散臭くどうも信用ならない。警戒を解かない男に対してランバートは困ったように娘の方へと顔を向けた。
「ねぇお父様、彼のお願いをきいてあげて」
領主殿の一番の悩みの種は娘が未だに彼に肩入れしていることである。三年前の社交界で娘を弄び、そして責任を取らずに消えた男。両親は憤慨したが、少女は言った「いいえ、お父様、お母様。彼はきっとまた迎えにくるわ」なんというロマンチスト。宮廷小説の恋愛に憧れを持った少女の儚くも甘ったるい妄言。両親はクラクラとする頭を押さえて説得を試みたが、彼女の心は揺るがず、彼を待ち続け、そして今日、それが実現してしまった。彼女は彼を追い返すばかりかあれよあれよと言う間を屋敷の中に招き入れ、剰え、隣に座り手を握っている。満更でもない笑顔を浮かべる娘を見て、こんなにも浮泛な性格であったのだろうかとショックを受けるのと同時にたぶらかされることへの怒りも沸いてはくる。が、男兄弟の中の唯一の長女であり、末っ子の彼女が可愛くないわけがない。きつい言葉を吐いて彼女から嫌われたらと考えると怒りが急速にしぼんでいく。
「彼のお願いを突っぱねたら、お父様のことを嫌いになっちゃう」
 追撃と言わんばかりの言葉は彼に大きな打撃を与えた。ありありと動揺した男を見てランバートはほくそ笑む。あぁ、もう一押しだと……。

 冬は嫌いだと、白化粧を施された景色を見てアグラスは思う。暖をとっても寒さ和らぐ様子はなく、指先が赤く悴み震える。上手く文字が書けないことにイライラが募り、ついにはペンを置いて髪をかき上げた。
「お待たせ」
 あともう少しで破裂する彼の堪忍袋に針を刺したのはランバートであった。ノックもせずにずかずかと部屋に入り、いの一番に「さっむい」と大きな声で言ってのけた。そして、彼の手を見ると「寒そうだな」と言ってつけていた手袋を渡した。しかし、アグラスはそれを受け取るが嵌めることはない。代わりに彼の言葉からは怨み言を綴られた。
「午前中で一度戻る約束はどうした?」
 低い声が更に低く地を這っているようだった。蛇をも震え上がらせる剣幕で睨まれれば誰でも冷や汗をかいて視線を泳がせるだろう。だがどんなに憤慨しようとも彼が直接手を出してくることはないことをランバートはとうの昔に知っている。そう思うと、彼の剣幕は狩りの仕方を知らぬ猫が毛を逆立てるのと同等にみえてきて、可愛らしく思えてくる。
人を小馬鹿にするような薄っぺらい笑みを浮かべたままランバートは「悪い悪い」と折りたたまれた数枚の契約書をアグラスに渡した。開くと確かに相手方の署名と捺印が押されている。怒りに震えたように文字がガタガタになっていたのが少し気にはなったが……。
「順調か?」
 何があったのかは聞かず皮肉っぽく問うてきた男にランバートは珍しい顔をしかめ首を横に振った。
「微妙だな。今のところ五人だ。三人ダメだった」
「ほう?」
「一人は別の男性と結婚していて俺のことは興味ないそうだ、もう一人は俺を恨んでた。最後の一人は俺が会う前に屋敷から追い出されたのさ」
「むしろ貸してくれる者がいるのが意外だな」
「娘が喜ぶためなら何だってするだろう連中だからな。というよりもそういう連中を選んでるのさ、娘が可愛くて可愛くて仕方がない連中を。まさか昔抱いた女の元に協力を仰ぎに行くなんてな、思ってもみなかった」
「私は、セノールの兵だけで十分な気もするがな」
「多くて困ることはないさ。それに……」
 何かを言おうとしたがランバートは口を閉じた。珍しく口を噤んだ長兄にアグラスは一瞬怪訝そうな顔をしたが深くは追求せずに書類に目を落とした。
「これで一旦終わりだが、兵の数は少ないな」
「これで頑張ったんだぜ。相手方は乗り気じゃあなかったし、何よりも後払いじゃあなぁ。貸して貰えただけありがたいのさ」
 そうは言っても五つ合わせても一万にも満たない兵はあまりにも心許ない。ランバートは未だに地図を広げ、ルーとを確認しているようだった。恐らくもう一つ二つ、家を回るのだろう。彼の人脈には舌を巻き、同時にどれほどの女を誑かしたのかと軽蔑した。
「なんと言って女達をそそのかしたんだ」
「床を共にしたい子でもいるのか?」
「馬鹿を言うな。やはり貴様など地の果てまで追い掛け回されるか、殺されてしまえ」
「逃げきってみせるさ。なぁに簡単なことさ」
 其の軽薄さが非常に鼻につくと、言葉には出さないが態度に出る。折り畳まずにポケットに突っ込んだその様子は直情的な−−ハイドナーの性質がよく出ていた。
 暴言など効かぬ聞かぬとケラケラと笑って去って行った彼は知らない。次の目的地で、昔騙した女性の父親に銃口を向けられることになるのを彼は、まだ、知らない。

Re: [リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す ( No.210 )
日時: 2019/04/02 22:36
名前: K ◆PTMsAcFezw

 深々と降り続く雪が窓を覆っていく。甲板へと出て、風にでも当たりたい心地は外の寒さのせいで何処かに消し飛んでしまっていた。ビュウビュウと吹き付ける様な風はますます、其の勢いを増していくばかりだ。ガタガタと鳴り響く音は、船が進む故のものだけではあるまい。面倒臭そうに、ヨハンが瞼を押し上げれば、其の奥から澱んだ様な色の瞳が顔を出す。面倒だ、と言わんばかりの視線を窓の外、すっかり灰色に覆われた空へと向けるも、その視線に答える者はなにもない。思わずこぼれつため息に、けれども重苦しさは無い。組んだ指を手慰みにぐるぐると回しながら、二度と戻れない昨日を思う。扨、本当の答えなんてものは何処にも存在しないのだろうが、それでも求めずにはいられないものらしかった。
「……うまぁく立ち回るにゃ、ちっと後手に回りすぎ……ってね……と」
 虚空を睨め付けるように、けれども何処か嘲笑するような色をはらんだ瞳で見やる。それと同時にガタン、と音を立てて船は進みを止める。嗚呼、漸く着いたらしい。鞄を手にとっては外套のポケットから手袋を取り出して白を黒く染める。船を降りてからも警戒は怠らず、されど其れを表情に出してしまうほど、ヨハンという青年は不器用ではなかった。船員に「どうも」と気軽な風に告げては降り積もった雪をギュウ、ギュウ、と踏みしめて歩を進める。息を吐き出す度に其れは白い煙となって空へと消えていく。マフラーをぐい、と上へと上げて口を覆った。思えば長年、あの屋敷で暮らしたものの、なんだかんだで寒さには慣れていなかった。雪が積もれば雪かきに駆り出され、寒空の中寒い寒いと愚痴をこぼしながらも買い出しに行っていたというのに。はた、と思い起こされる今までの生活は、どうにも生ぬるく、温かい。己にはふさわしいものではなかったのではないかという思考が浮かんでは消えた。はぁ、と息を吐く。もう白い息は溢れてこない。

 冷える道を歩み、歩み。たどり着いた屋敷のノッカーを数度鳴らす。寒いから早くしてくれ、と暗に言わんばかりに少しだけ力強く、けれど騒がしくなり過ぎぬ程度に優しく。――一応は、此処まで来るのに見覚えのある顔が無いか確認しながら来たつもりだ。かと言って過度に気にしている風にも見えぬ様に。こういう時ばかりは、目立たぬ顔立ちであることに感謝せざるを得なかった。訝しむような視線で此方を見る人間に、ベケトフの使いと告げて、証となりそうな手紙を押し付ける。紆余曲折の後に応接間へと通されれば出された紅茶肉値をつけた。ゆらゆらとのぼる湯気が、少しばかり乾いた目に心地いい。暫しの後、ドアが開く音に振り向いた先、見やる男の表情は険しくもなく、かと言って穏やかでもなく。その瞳の底が見えぬほどで、どうにも好意的に見られない。仕える家の当主はよく、なんでもない顔で、それこそ友人に接するかのようにしていられるのかが不思議なほどである。さりとて、わがままを言っていられるわけもなく、礼を失するつもりもない。立ち上がり、一礼。――相変わらず重苦しい空気を感じながらも、青年は伏せた瞳をゆっくり持ち上げる。
「ああ、どうも、どうも……随分と遅くなりました」
「嗚呼、全くだ。遅いな……遅すぎる」
 男の言葉に青年は苦笑し、肩を竦める。「どうも、すみません」だなんて告げては、当主より預かった手紙――端的に言うならば“そちらに付く”という旨の綴られた其れを手渡した。
「ま、言ってしまうならば……こっちの兵隊はそっちの……リエリスさんご一行が好きに使っていただいて構わない、と……そういう事です」
そう告げては、息を吐き出した。暖炉の火は暖かだと言うのに、冷ややかな空気に満ちたこの空間にて、感覚すら研ぎ澄まされる様な感覚に青年は双眸を閉じる。深淵、というものがあるならば此処の様な場所のことを言うのではないだろうかという錯覚に、渦巻く感情を、呑み込んだ。
「どうもまぁ……ユスチン殿は出来もしない“完璧”を求めがちなんですよ。……殊、何かを喪う可能性があるとなると、余計に」
 当主の過去を知っているわけではない。己の二倍、三倍以上の時を過ごした彼の心の奥底がわかるわけもない。そも、他者の深層などわかるわけもないと、青年は考えていた。今を生きる人間として、些か慎重が過ぎるで有ろう事はわかっているが、其れに口出しをする立場ではないだろう。必要な情報を拾い集めることは仕事の内だ。こうして、当主が大々的に動けぬならば代理を務めるのもまた然り。些か忠義に厚いなどと揶揄される屋も知れないが、少なくとも金払いの良い雇い主を手放すつもりはない……とは、あくまでも青年の弁であるのだが。
 難しい顔をする男を横目に、青年の内心は決して穏やかでは居られなかった。此れでNOを突きつけられる事は無いだろうが、可能性がないとも言えない。ありとあらゆるリスクを懸念とし、けれども最善を選ばねばならない。全く、ままならないとうつむき唇ばかりが笑う中、はた、と男の視線が文から此方へ向いた事に気が付き、ゆっくりと視線をそちらへと向けた。
「合流する、というならば受け入れよう。この吹雪だが……いつ帰るつもりかね」
「まあ、出来る限り早く帰って、ユスチン殿に報告しなきゃいけないんです、けどねぇ……」
 ちらり、と空を見やる。相変わらず灰色の空からは白い光が舞い降りては地上に降り積もり続けている。其れを見てヨハンは軽く肩を竦めてみせた。どうにもなりません、なんて言外に瞳で伝えつつ、息を吐き出す。されど、帰らねばと笑えば明日の船まで待てばいいと男は語る。きょとん、とした青年をよそに男は既に手渡された書類へと目を通し続けていた。
「まぁ、そんなら……お言葉に甘えまして。船で帰るのも些か目立つやもなんで……ただの観光ですって顔すんならもう少しいるべきですかねぇ」
 その言葉に返答はなかった。青年はまた肩を竦めて「そんじゃ、お邪魔しました」なんて言葉と共に書斎を後にする。――窓の外は変わらず白く、廊下ですらぶるりと身震いしてしまう程に寒かった。カタン、カタン、コツン、と音を立てては歩を進める。もう少し長く、と口にこそしたががあまり長居する気はない。出来る限り早く連絡に行きたいのが一つ、此処の居心地が青年にとって最悪に近いというのが一つ。
「……ヨハンさん?」
 青く、澄んだ宝石の様な声が静かな廊下にポツリと落ちる。は、と青年が顔を上げれば其処には淡く、美しい、月明かりがただゆらりと立っていた。水宝玉の瞳をまぁるくして、じぃ、と青年を見つめるただ一人の少女。その存在が青年の瞳に映るとほぼ同時に思わず、青年は駆け出していた。そうして、ぽかん、としている少女を思わず抱きとめる。強く、強く。触れる事すら恐ろしいと、其れすら恐れ多いのだと苦笑していた青年の姿はそこには無い。ただ強く強く、少女の背骨が軋む程に強い力でその細く、淡く、月明かりのような少女を抱きしめる一人の“男”がいるだけだ。震える腕で、けれども少女を強く抱きとめ、離さないと言わんばかりにただ強く。
「っ……ヨハンさん、ちょっと……苦しいわ」
 どれほどの時間が経ったのかなど、青年にはわからなかった。ただころり、と少女の唇寄りこぼれ落ちる言葉にふと我に返る。慌てて少女から離れ、距離を取り、気まずそうにやや視線をそらして居住まいを正す。少女が不思議そうに小首をかしげればゆらり、金糸が揺れる。きらきらと輝く淡い色を、けれども青年はもうまっすぐ見れやしなかった。
「すみません、お嬢様……嗚呼、いえ……ご無事で何より、と、いいますか……えっと」
「……ふふ、変なヨハンさん。いいのよ、気になさらないで?」
「…………すみません」
 気まずい感覚が抜けきらぬままで謝罪をこぼせば少女は気にしないでと告げて、柔く微笑んでいた。微妙な沈黙が、青年と少女との間に横たわる。どうしたものか、と青年の視線が彷徨う中、はた、と欠けたピースに気が付けばその瞳は欠片を探し、再び刹那を彷徨う。
「……ヴィッヒーと、ご一緒でないので?」
「ハイルヴィヒ? ……なんだか疲れている様だったから、お部屋で休んでもらっているわ」
 少女の言葉に青年は思わず顔をしかめる。凡そその理由は察する事が出来るし、それは全くをもって望ましい事態ではなかった。何事か、と不安げな少女の水宝玉の瞳が揺れる。ソレに気づけば青年は静かに、けれど何処か寂寞を孕む笑みをひとつ。その思考の内では長い、長い夢の先に、たどり着くべき場所を模索していた。明確な終わりへの線引すらも曖昧な今生にて、けれど何かを探さずにはいられないのが、人間の性として。
「――ヨハンさん」
 少女の声がしゃん、と廊下に落ちていく。何か、と青年が告げるよりも早く。その白い手は、腕は、青年の頬に伸ばされる。ややひんやりとした感触を青年が憶えた頃にはその手は優しく、頬へ添えられて。離れなくては、と思った。悍ましいまでに早い鼓動を少女に聞かれまいと思った。されど、その瞳の奥底へと引き込まれるように、或いはその白い手が青年を縛り付けるかの様に。彼は一歩も其処から動かない、否、動けなかった。
「…………ごめんなさい」
 少女の謝罪に、青年は知るはずもない感情の波に飲み込まれた。溢れていく心に飲み込まれ、押し流され、飲まれ――そうして、戻ってこれないのではないか、という感覚すら憶えていた。白い指はつ、とそのまま青年の首元をなぞり、離れていく。暫くパクパク、と口を開閉させる青年を見やる少女は小さく微笑み、小首を傾げてみせた。
「……ヨハンさんも、暫く此方に?」
「え、ええ……明日の朝一番の船で帰りますが、それまではお邪魔しようかと」
「あら、なら……ふふ、ハイルヴィヒと一緒にお見送りにでも行こうかしら。……おじ様、いいよ……って、言ってくだされば良いのですけれど」
 努めて明るく振る舞えどはたと、深層の回廊を、延々と歩み続けるような感覚に襲われた少女は静かに、俯いた。喉を震わせる音は穏やかならざる響きにしかなってくれない気がする。人生は長い、長い夢であり、幻影で――けれど、確かな痛みを伴ってこの胸をさくり、さくりと刺してくる。いっそ心の臓すら刺し貫いてくれればなどと願うけれどそれも、滑稽な事なのだろう。
「……お気持ちは、有り難く。正直、現状ですと目立ちたくないので……ハイルヴィヒと要相談、ってとこですかね」
 青年の言葉にやはり、少女はきゅ、と手を握る。何も、何も知らぬままで、仮初の平穏に浸っている自覚はあったが改めて突きつけられてはどうにもならぬ感情ばかりが渦巻いて止まらない。どうか、最後の一ページまで愛しい人々と共にと思えど其れが難しいのであろうことは想像に易い。不安を掻き消す様に優しく、柔らかな旋律に身を任せてしまえれば、と思えど其れが出来るわけもなく。ただ短く、寂しげな笑みと共に「そうですか」と告げるのみであった。微妙な沈黙に、どちらともなく口を開きかけては閉じるを繰り返す事、数度。
「あの……ヨハンさん。今の……今のお家の状況を、出来る限り聞かせては頂けませんか」
 ふいに少女は沈黙を破る。瞠目する青年は弱った、とばかりに視線をそらすけれど――少女の視線は此方を捉えたまま離さない。ならば、と青年は口を開く。仔細な情報……ではなく。「此処では何だから」という、酷くありきたりでありふれた言葉を吐き出す為に。

 ベッドで寝息を立てる娘を叩き起こすのは忍びなく、かと言って挨拶もなしにというのもどうにも気まずい。悩ましげな青年を他所に、少女は2つのティーカップに茶を注いでいく。ほの暖かな其れを、青年の前にも静かに置いた。陶器が軽く触れ合う音、かすかな水音に混ざる少女の寝息。ごく静かな、冬の音。二人向き合って、こうして茶を飲むのなどいつ以来だろうか。或いは、次は何時だろうか。思考するのも詮無き事。どちらともなくカップに口をつけ、どちらともなく語らい始める。
「……まあ、状況としては――そんな感じで」
「…………そう、ですか」
「今はダーリヤさん……お嬢様ご存知です? 東の方の――」
「ええ、ヴォストモルスクのダーシャお姉さまでしょう? お姉さまが……いらしてくださったなら安心……なのかしら。嗚呼、ふふ、こんな時ばっかりお姉さまが羨ましいわ」
 苦笑する少女はそうして紅茶を一口。青年もまた釣られるように茶に口をつけて、一拍。
「……近い内に、ダーリヤさんがそっちの戦力つれてこっちに合流って感じですね。暫くボリーシェゴルノスクを空ける事になりますから、コールヴェンの方に協力を仰ぎに行ってるはずです」
「まあ、多少の条件はつけられるでしょうが……問題はないかと。全兵力をこっちに持ってくるわけでもなく、ある程度自衛は出来る程度残した上で、ですから。……大事には大事を取って、ってやつですね」
 青年の言葉に、少女は薄らと双眸を細めて、言葉を流し込む様に紅茶を飲み干した。私になにか出来ることがあれば、などと口に仕掛けて、けれどもそんな事ありはしないのだとわかっている。民の状況を察するに、己が此処でぬくぬくと暮らすことが酷く、愚かしく、悍ましい事であるように思えてならなかった。憂う瞳を映す湖面はすでになく、白い陶器の内側にぬるり、と反射する淡い光があるばかりだった。
「……スヴェトラーナお嬢様」
 青年の手がゆっくり、少女の頬へと伸びて――触れることなく静かに下方へ落とされた。テーブルにその手が触れればカチャン、と小さく陶器が触れる音がした。驚いたように少女が顔を上げれば、其処にあるのは真剣に、真っ直ぐに、眼差しで射抜かれるかと思うほど真摯な目をした青年の顔ばせ。
「大丈夫です。貴女は――きっと」
「……私ばかりが上辺だけの平穏に安心し、安寧に身を任せるというのに、何故……嗚呼、いえ……ごめんなさい」
「……嗚呼、まあ……そう、思えるでしょうけれど」
「――貴女が生きてりゃ“ベケトフ”は勝ちです。……貴女が生きる大地の民は、勝ちですよ」
 そう告げる青年の言葉に何故、と問う様な瞳を向ける。わけがわからない、とばかりに目を丸くして。ただ、曖昧な表情で彼を見つめ続けていた。
「……つまりは、まあ」
「――生きてください、貴女は。……何があっても」
 そう告げたっきり、青年は黙り込み紅茶を呷る。少女もまたやや俯いて、瞳をうるませて――ただ静かに、時は過ぎ行く。

Re: [リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す ( No.211 )
日時: 2019/04/14 18:39
名前: NIKKA ◆ShcghXvQB6
参照: https://twitter.com/NIKKA_Nonbe

 ルフェンスは古い貴族である。アゥルトゥラの国父たる、エツェルの父の代から仕え、騎兵を率いては敵中へと突撃を加え、孤立したとしても更に敵戦線の奥へ、奥へと突き進む。包囲さえ許さない、無敵の兵。その末裔なのだ。であるからこそ、貴族としての本来の在り方に拘り、寝ても醒めても戦の事ばかり。だからこそ強く、だからこそセーム・オルト・ルフェンスという女は弱腰な実父、実兄を己の手で殺め、家を乗っ取ったのである。  
 一つの都の主とも言えよう貴族であるというのに、彼女は粗雑な小屋の中、配下を従える訳もなく、地図を広げ、戦の算段を進めていた。進路を選定し、地形と天候から、どうして戦をするか考えていたのだった。そこに居るのは、やはり現代的な貴族などではない。謂うならば、真のアゥルトゥラだ。着飾らず、素朴に生き、兵として生を真っ当す。馬を集め、得物を携え、焼け付く砂漠を彷徨い、雪の山脈を越え。地の果てまで食らい尽くすべく作られた、貴族としての本来の姿に見えるのだ。
 ふと、ドアが二度ばかり叩かれ、彼女は顔を上げた。兵ならばドアを叩く事もなく、勝手に入ってくる。彼等は部下というより、共に戦う同胞であり。そこに女も男もない。従って気遣いなど知らない。してこない。
 咥えていた木製の喫煙具を口元から離すなり、その手はふと止まる。そして、小屋の出入り口を見遣る。黒く、長い髪が舞い、すっくと立ち上がった。無防備にも見える彼女だが、腰には短刀が顔を覗かせている。半世紀も昔、祖父がシャボーの砂漠から持ち帰った物である。
「あぁ、今行く」
 上着を羽織りながら、彼女はゆっくりと出入り口へと向かって行く。外は酷く凍て付き、五分も居たら外が凍り、身体の芯まで冷えてしまうだろうが、万全には万全を期すべきだろう。鞘からは刃が顔を覗かせていた。
 少し歪み掛けた扉が、ぎぃと悲鳴を上げながら開かれていく。僅か顔を覗かせた、白亜の魔は人を殺めるべく、吹き荒び轟々と唸り声を上げている。冬将軍に虐げられた、哀れな扉が完全に開いた時、見知った顔にセームは目を見開いた。
「ダーシカ! 久しぶりじゃあないか!」
 短刀など投げ捨て、彼女の肩に積もる雪の事など知った事ではない、セームは笑い掛けながら、ダーリヤの肩を抱き寄せ、無理矢理に小屋の中へと引き込む。昔から強引な人物だが、悪い気はしない不思議な人物に困った様にダーリヤは笑って、抗議の声一つ上げずに、成すがまま身を任せるのだった。
「事前に手紙の一つでも寄越せば、出迎えに行ったってのに。──あぁ、座ってくれ!」
「ええ、遠慮なく──」
 茶は結構、と断ろうとするも、既にセームの背は火に掛けられた鉄瓶の前。鉄器の湯呑みを携え、支度をしている。忙しない人だ、と相変わらず薄っすらと笑みを浮かべている。忙しないが悪い人ではない、出してくる茶の独特な苦味が口に合わないだけだ。
「しかし、突然何の用だ? こんな西の端っこに」
「西のベケトフから呼び出されまして」
「ボリーシェゴルノスク? 何だ、一人娘が結婚でもするのかい? ──あっち!」
 鉄瓶に触れ、セームは身動ぎしている。ただただ鉄は火炙りにされ、白い悲鳴を吐き出している。戦争をさせたら、防戦をさせたら、アゥルトゥラ東部に於いて右に出る者は居ないが、家事ばかりはからっきし。
「……相変わらずですね」
「男子三日合わざれば剋目せよと言うけど、女は三年経ったって変わらないよ」
 女ってそういう生物さ、と続け、彼女は茶を差し出して来た。薄い鶯色をした、見慣れない茶にダーリヤは目を細める。それは苦味と渋味がややきつく、アゥルトゥラでは滅多に見られない茶だ。余り好みでない、というのが正直な所だが、彼女に悪気がある訳ではない。寧ろ来客を持成すのは、彼女なりの好意の現れであろう。
「スヴェータ、どうしてる?」
「それがクルツェスカに居るらしくて、近況がいまいち分からない感じで……」
「へぇ、家出?」
 多感な年頃だ、とまたしても言葉を続け、窓の外を睨む様にして見遣っていた。何が起きているか、語らずとも分かっているだろうに。随分と意地が悪い、と見返せばセームは肩を竦めて、鼻で笑う。人形の様に、或いは死んだ様に、狭い囲いの中で何不自由なく生き続けていた娘が、そんな事で出て行くとは考えられない。何か動かねばならない事情、やらざる得ない事象があったからだと、答えを得ずとも分かっている。それが流血を伴う事柄だという事もだ。
「寒かったでしょ」
「えぇ、まぁ」
「クルツェスカも大概だけど、コールヴェンも酷い」
 クルツェスカは大雪こそ降らないが、僅かな積雪が凍りつき、それを繰り返して氷に包まれる都である。しかし、コールヴェンは凍結も然る事ながら、降雪も酷く、一晩で腰の辺りまで雪が積もる事も珍しくはない。幸いな事に運河沿いに作られた都であるから、雪を投棄するのは容易く、住人達の慣れや備えもあり、クルツェスカの様な酷い状況にはならないのだが。
「東部はこんなに降りませんからね」
「降っても風で飛ばされちゃうもんねぇ」
 内陸か、沿岸かというだけでこれ程までに気候が異なるとなれば、半年も此処に居続けているセームの体調に問題はないのだろうか、とダーリヤは疑問を抱くも、これといった問題はなさそうだ。
「──しっかし、ベケトフ。……ベケトフ、ねぇ。国賊になるのかい?」
「まさか! それしか選択がなかっただけでしょう」
 不意に突きつけられた言葉に、少し食い気味にダーリヤは口を開いてしまった。人を殺したばかりの殺人鬼に、喉元に刃を突きつけられて、言う事を利かない奴が何処に居るというのだ。国賊、という言葉に抗議の念を込めて、言い返せばセームはやはり解せぬといった顔をしながら、戸棚に寄りかかる。
「我々、各地に封ぜられた貴族というのは、例え死が眼前に迫ろうとも、滅びが避けられぬとも、国の為、封地の為、そしてそこに住まう民の為、得物を携え、血を流さなければならない。……ダーシカ、君も東の人間だ。分かっているね?」
 何故、今まで意地を見せなかったのか、という事を戒められているのは分かる。現にその為に戦ってきた。眼前の"セーム・オルト・ルフェンス"を旗印とし、貴族一丸となって東部沿岸域の防衛に従事して来た。彼女もまた、剣を、銃を携え、泥で汚れた塹壕は勿論、鼠の巣食う特火点、屍の隣で戦場での時間を過ごして来た。常人では苦しく、気が触れてしまいそうになる場所でも、その矜持を忘れずに生きてきた。であるからして、矜持に殉じ、死を選ぶのは当然の話なのだ。
「……分かっています。矜持を示すよりも、頭を垂れ、存続を選んだ愚かさも承知していますとも」
「ダーシカ、君が来たのもクルツェスカの奴等を恐れての事。……ジャッバールも然る事ながらね。だからこそ、敢えて聞こうか。……何をしに来たんだい?」
 椅子に腰掛け、問うてくる。目を細め、やや口角を吊り上げて、まるでせせら笑っている様だ。ダーリヤには、そんな彼女の様子に見覚えがあった。燃え盛る海岸線、砲声と銃声ばかりが鳴り響き、青いはずの海が赤く……ただただ赤く染まり上がっている。それに染められた笑顔だ。暴力の化身というには手は綺麗なまま、善性的というには遠く掛け離れている。ルフェンスの女狐がそこには居た。逃げ出したくて仕方がない。逃げてしまいたくてどうしようもない。しかし、それでも言葉を発すべく、口を開く。
「……ルフェンスの兵を貸して貰いたい」
 青い瞳が女狐を射抜く。じっと見据えど、彼女は動じる様子も見せず、ただただ笑っている。戦場で浮かべる、悪い笑みを手放そうとしない。彼女の真っ黒な瞳は、宛ら屍を啄ばむ鴉のそれだ。何を考えているかも分からず、察する事すら許さない。
「まぁ……呑みなよ、話はそれからだ」
 ふと、笑みは消え失せ、黒い瞳がじっとダーリヤを見つめている。その瞳に何の念が宿っているかは察せず、得体の知れなさに鼓動が早まっていく。茶からは未だに湯気が漂い、仄かに甘く感じられる香りが発せられている。毒など盛られていないだろうか、と不安を覚えながらも器を手に取り、茶に口を付けた。
「良かった。私は信頼されているみたいで。……で、何で兵を貸して欲しいのさ?」
「ボリーシェゴルノスクの防衛の為。……あくまで防衛の為です」
「誰から」
 誰から、という問いにダーリヤは息を呑む。ジャッバールは勿論ながら、実情はクルツェスカの者達が武器を向けてきた時の備えでもある。幾ら、敵意はなく参陣の意思を示したとしても、ジャッバールの行動次第、立ち位置次第で形はどうとでも引っ繰り返ってしまうのだ。嘘偽っても、真を語っても、セームは兵を貸してくれない所か、兵を差し向けて来る可能性すらあるのだ。
「……ジャッバール」
「まぁ、彼等は恐ろしい。我々アゥルトゥラにとっては不倶戴天の敵、ガリプのディエフィスの家系の元になった家だ。その血は今も尚、息衝いていて……そうだなぁ、我々の首を噛み千切ろうとして必死だ。だけど──」
 まだ居るだろう、とセームは続け、何時の間にか淹れていた自分の分の茶に口を付ける。相変わらず視線は纏わりつき、早く言えと言葉なくして捲くし立てる。もう分かって居るだろうに、と抗議の視線を向ける事も敵わず、思わずダーリヤは目を伏せる。
 そうか、全てはお見通しか、と内心悪態を吐き、溜息を一つ。半年以上も戦勝凱旋から戻らず、コールヴェンに根差し、この女狐は西の状況を睨んでいたのだろう。即応出来る様に兵を携え、ただただじっと睨んでいたに違いない。有事に際し、その渦中にある者全てを討ち滅ぼす為。戦後処理をせずに済む様にだ。であるからこそ、ジャッバールも攻撃を受けない限りは反撃をしない、という状況を保っていたのだろうが。
「何故。……何故、分かっていながら動いてくれなかったのです」
「頼まれないからさ。自力で戦う力も無ければ、周辺都市や周りの貴族と歩調を合わせる力も無い。……そんな奴等を救いに行くなんて物好きだけ」
 ぐうの音も出ない言葉。残酷なまで的を射た言葉である。それをしなかったが故にハイドナーは滅んだと言っても過言ではない。東部の貴族を一丸にまとめ、東の異民族との戦いに臨むセームからしてみたら、何故それをしないのかと不思議で仕方がなかっただろう。驕りに溺れたか、現実から目を背けたか、理想に狂ったか。もし、ルフェンスが西部に根差した貴族なら、こんな事にはならなかっただろう。
「それじゃ話を戻そうか。結論から言うと、私は兵を貸さない。……私も行こう、私を含めた"軍"が動くとしよう」
 正直に言ってくれたからね、と続けセームは笑っていた。
 その言葉にダーリヤは酷い眩暈の様な感覚を覚えた。鬱屈とした思いが、すっと晴れたかの様だ。鈍色の空に太陽が突然、顔を現したかの様にだ。決してセームの口先に、振り回されていたからではない。ユスチンは他勢力からの干渉、他勢力の進駐を嫌がる素振りを見せているが、もう背は腹に変えられない。寧ろルフェンスという大きすぎる力が、ふらりとボリーシェゴルノスクに来るという事を喜ぶべきだろう。
「補給だけはベケトフ持ちね。まさか、ないなんて言わないよねぇ?」
「……あるにはありますが、充分ではないのが正直かと」
 ボリーシェゴルノスクは現在、ジャッバールからジワジワと兵糧攻めを受けている状況である。領民は離散し、中には道すがら死した者まで居る。商圏から外され、運河を商人が利用しなくなった手前、領民の生活が困窮するのは勿論ながら、ダーリヤが引き連れてきた兵等の物資も不足しつあるのだ。
「ふーん、まぁ良いさ。手は幾らでもある」
 そう語る彼女の笑みは、何処か仄暗く見えたのは気のせいではないだろう。此処で家を傾けなければ、家は滅びる事となる。精強な兵だからこそ、払うべく対価は大きい。それは仕方がない事だ。水が上から下に流れるのと同じ事である。
 女狐は茶に口を付け、落ち着くなぁ、と一人ごちるのだった。然も戦の恐怖など無い様に。

Re: [リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す ( No.212 )
日時: 2019/04/15 23:20
名前: ポテト侍 ◆jrlc6Uq2fQ
参照: http://twitter.com/imo00001

 今日の仕事を終えてヘロイス・エンツォ・ザヴィアは帰路に立つ。手を伸ばせば届くのではないかと思うほど、無数の星が瞬きを繰り返し、黒い空を照らしていた。家と家を縫うように続いてる石造りの道を通るのは彼女以外の者は皆無であり、不安よりも哀愁が勝る。寒空の下、早く身体を暖めたいと急ぎ足で家へと向かう。その足をはたと止めたのは家の前に見知った影を発見したからか。忘れられるわけがない。蜜よりも甘い言葉をポンポンと吐き出しては女性を惑わすその姿は美しく悪魔的である。 
 電灯の下で呆然と佇む彼女に男は気が付いたらしい。片手を上げて、馴れ馴れしい笑みと共に嗅ぎなれぬ上品なライラックの香りが鼻腔を擽る。やはり数年前から何も変わっていない。「ランバート卿?」と呟いたその顔には驚きと僅かな嫌悪を滲ませ、五年ぶりの再会を果たしたのだった。

 ランバートがこちらに何かを頼むときは面倒事を抱えているときであることをヘロイスは知っていた。五年前もそうだった。連絡もなしにやってきた彼らは唐突にザヴィアの文字を教えて欲しいと請うてきたのだ。嫌だと断り続けたが、毎日、朝早くから家の前に立っては夜遅くまで家の前に立たれ、結局こちらが根負けしたのだ。それだけならば単なる面倒な話で済んだのだろうが、あろうことか彼は彼女の勤め先である仕立屋の下女に手を出し、加えて、ヘロイスが彼と深い関係になっていることがばれてしまったのだ。現在は誤解は解けたものの、脅迫めいた手紙と親の仇を見るような視線に身を何度震わせたことか。このような出来事から、彼と関わると碌な事が無いというほど学習した。だからこそ、彼女は今現在、自らの押しに弱い性格をこれほどまでに呪ったことはない。部屋にズカズカと入ってきた彼を追い返すことも出来ずにあまつさえ茶を出して迎え入れようとしている。思わず漏れた溜息がランバートにも耳聡く聞こえたらしい。視線だけをこちらに寄越し「幸せが逃げるぜ」と笑った。誰のせいだと罵ってやろうとも思ったが、反論する元気もなく彼に背を向けてお湯が煮立つのを待つことにした。
 ぼーッと待っているとふとガウェスののことが思い出される。妹のためとアゥルトゥラへと戻っていった彼は元気だろうか。
 火にかけられていた薬缶の音で意識が浮上する。お湯をティーポットに入れてランバートの元に持っていくと再び厨房に立った。今日は魚が安く買えたのだ。
「それで今回はどのような厄介事を?」
 自らも驚いてしまうほど、彼女の声は淡々としていた。魚の鱗を丁寧に剥がし、頭をおとす。切り落とした部分から包丁の先っぽを差し込み腹を割いて臓物をとりだす。あまり血は出なかった。
「君に会いたくなったから来た。じゃいけないかい?」
「冷やかしに来たならお帰りくださいな。そのような時間はありません」
「つれないなぁ」
 言葉の割に声色は非常に楽しそうだった。やがて、ハーブの爽やかな香りが部屋の中全体に広がっていく。一度、料理の手を止めてランバートの様子を窺ったが、後ろ姿だけでは何をしているのか判断できなかった。彼女は再びまな板に目線を戻す。
 細かく微塵切れしたタネに臭い消しと小麦粉を少し入れて混ぜ合わせて、スプーンで一口サイズに纏める。最後に沸騰したスープの中へと投入していき、後は煮えるのを待つだけとなった。後片付けも済ませてようやく彼のいるリビングへと戻る。丁度ハーブティーのお替わりを注いでいるところだった。
「随分と長く続けているね」
 何がと問う前にランバートが持っている紙切れが目に入る。仕事に行く前まで読んでいたペンフレンドの手紙だ。途端に彼への不快感が跳ね上がる。彼から手紙を奪い取り、軽蔑の意味を込めて睨み付ける。
「随分と君を神聖視しているようが、まぁ当然か」
「えぇ。ザヴィア直系の血を引いているからでしょう」
「よく処刑されなかった」
「だからこそ私をそういう目でみるのでしょう。奇跡が起きたと。ただ妾が生き残っただけなのに」
「妊娠がバレていたら、石畳の上に転がる首が増えていただろうさ」
「そのようなところもハイドナーらしいと私は思いますよ」
 皮肉を込めて言い放てば、珍しい彼が苦笑する。少しだけ、心に溜まった蟠りが薄れた気がした。
「迷惑な話です。血の濃さでその人の優劣が決まるわけでもないでしょうに」
 理解が出来ないと吐き捨てた顔には疲労の色が浮かぶ。居留守を行う悪癖はそういった問題も影響しているのかもしれない。
「俺なら好き勝手やるがね。家を転々としてタダ飯食って女と寝て、きっと楽しい」 
「ここ五年ほどでガウェス卿は大分変わりましたが、貴方は何も変わっていないのですね」
「安心しただろ?」
「えぇ、がっかりしました」
 愉快だと言わんばかりにカラカラと笑ったが、直ぐに顔を引き締めた。変わりように思わず息をのみ心臓がキュッと掴まれた心地になる。
「少しでも兵が欲しい。数十数百でも構わない。おっと、いないとは言わせないぜ。俺達が過去に傭兵の斡旋をしていたのは知っているな? その中にザヴィアの血を引く者がいた。君が声をかければ参上するのではないかね」
「……確かに可能でしょうね。でも理由は? 何をなさるおつもりです?」 
「近々セノール連中と大きい戦が起こる。そのための兵が欲しい。ここに来る前にも幾つか寄ってきた」
 恐らくは協力を仰ぐ為に、昔関係を持った女の元に向かったのだろう。彼から女物の香水の匂いがしたのはそのためだったことを理解した。
「私を頼るよりも手っ取り早く集める方法があるでしょう?」
 確かに、ヘロイスが声をかければ、彼女を貴んでる者達は動いてくれるだろう。しかし、自らはアゥルトゥラの貴族ですらなければ、そこまでする謂われもないのだ。何よりも自らが介入し戦火が大きくなることを恐れた。
「出納を見張られてるんだ。妙な金の動きがあったら殺される。単刀直入に言う。アゥルトゥラを少しでも守りたいと思う意志があるのなら、どうか、俺達と共に参陣していただけないだろうか」
 何も言わずに彼を見下ろしていたが、彼女とて何も思わなかったわけではない。先手をとられているのも珍しいと思ったし、何よりもプライドの高い彼が躊躇いなく頭を下げたことにも驚いた。生真面目な彼の一面を茶化してやろうとも思わず、ただただ困惑し、頬にある鶯色の鱗を二度三度掻いた。
「生者必滅。形或る物は何れは滅びます。それはヴェーリスカとて同じ事。ここで滅びるならそれまで。私はそれを受け入れ、共に沈みましょう」
 ヴェーリスカとは、クルツェスカの旧名である。何故そう呼ぶのか、理由は多々あるが、主に仇敵がつけたアゥルトゥラという名前を忌み嫌っているか若しくは親の呼び方を真似ただけなのか。彼女は後者だった。
「だからって、何もせずに指をくわえて見てるだけなのか。それでお前さん、かつてここで生きた英霊達に顔向けできるのか? いいや、出来ない。君のご先祖様は無抵抗に滅びを受け入れたか? 最後まで諍い勝利を手に取ろうと藻掻いた。そんな豪傑達が君の今の行動を賞賛してくれるかね」
 ヘロイスは黙る。もう一押しだとランバートは続けた。
「エンツォのところに行ってきた。誰にも手入れされていないと思ったが、君が定期的にしているのだろう? お墓は新品と見間違うくらい綺麗だったよ。君が掃除しているのだろう。大切なんだろう、過去の人々が」
 ようやく頭をあげた。強い光を持った瞳が彼女を射貫く。それに応えるようにヘロイスもランバートを見据え、視線を絡ませる。
「死んだ後に胸を張って祖先に会いたいとは、思わないか?」
 ハッとし、視線を逸らした。ありありと心情を揺さぶられ、瞳が揺れ動く。
「滅びるとしても、色んな形があるって事さ。後世にも臆病者だと罵られるように消えるか、英傑だとあがめ奉られるか、今ならまだ選べる」
「……分からない。分かりません」 
 何が正解なのか不正解なのか。これは善なのか。そもそも善悪があるのか。逃げ出したい衝動に駆られるが、彼が許すわけがない。それでも言わずにはいられなかった。
「少しお時間を。夕餉の時間であるが故に」
「駄目だ。今だ。今決めるんだ」 
 強い口調。こうなると彼はテコでも動かないのだ。立ち上がった彼女の腕を掴み、逃がさない。頭をふるふると横に振ったが彼は黙って彼女を見据えるのみ。無言の攻防はほんの一分足らずで終わった。ヘロイスは物鬱げに溜息をついて、再び席へとついた。腕につけられた赤い跡を撫でつつ、カーテンのように垂れていた金色の髪を掻き上げた。生気の感じない赤い瞳がランバートを一瞬だけ見据えたと思うと席を立った。失敗かと焦ったのは一瞬。帰ってきた彼女の手にはペンが握られていた。
 火にかけた鍋が噴きこぼれるのはもう少し後の話である。

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