複雑・ファジー小説

最強の救急隊 
日時: 2019/03/15 20:28
名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=327.jpg

初めましてな方もお久しぶりな方もどうぞよろしくお願いします。
気紛れ更新なため、いつ終わりいつ始まるのかわかりませんがよかったら見て行って下さい。



URLに銀竹さんが描いてくれた主人公います。
とてもありがたいです。クオリティは言うまでもないです。





お知らせ>>17


設定・人物>>1
壱話 第7班>>2
弐話 魅惑の菓子類>>5
参話 後輩やって来た>>6
肆話 生意気抜かすな小僧>>7
伍話 神原燠>>8>>11-12>>15-16>>18-20
陸話 花緒イリュージョン>>21-30
質話 昔々ある所にアポなしでやって来た鬼がおりました>>31
【ラストフローズン篇 氷牙の先導者】
捌話 高いものほど碌なことはない>>32
玖話 事件は現場で起こってるんだ!!>>33-34
拾話 さらに北へ>>35-




Twitter始めました。名前は違いますがお気にせずに。
@Taruto39Purin

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Re: 最強の救急隊  ( No.33 )
日時: 2019/03/19 19:14
名前: ルビー

「うひー。さむさむ。東京って何年か前は雪なんて積もらなかったのに」

 はー、と成葉は両手を擦りながら息を吐いた。
 現在は2月。沖縄以外の日本列島は寒さの絶頂期だ。あまり雪に見舞われない東京も今年は少し違っていた。
 何ミリかは積もっていた。

「お、ああああああああああああああああああああああああっ!!」

 その直後、鬼の様な形相で花緒がこっちへ走ってくる。
 即座に成葉は嫌な予感がした――というかあの様子の花緒はいい予感があったためしがない。
 彼女が取るか行動は1つ。

「来るなっ!!」
「ええい、だまらっしゃい!!」

 逃げる。
 それしかない。
 しかし今回は分が悪すぎた。寝起きの成葉と先程のお金の話でテンションが高くなっている花緒。
 特に俊敏さとコーナー勝負の数値が格段に上だ。屯所の曲がり角でついに捕まった成葉は暴れながら叫ぶ。

「畜生! 一思いに殺しやがれ――っ!」
「ふふふ。殺しなんてしません。むしろ成葉ちゃん『達』は仕事しながら旅行できるんです。そして私はお金が手に入る。ウィンウィンではありませんか」
「……わたし、達?」

 きょとんと眼を丸くする成葉に花緒が慈愛に満ちた笑みを浮かべる。



01
「何簡単に捕まってんだクソガキ」
「ちょっと何言ってるかわかんないですね。というか一番先に捕まったの雪ちゃんだって聞いたけど!?」

 東京駅に着いた雪丸兄妹と燠。
 3人はスーツケースとリュックを花緒に背負わされると東京駅に投げ込まれて放置されていた。
 花緒の奸計に嵌められた2人はお互いを睨み合う。
 そんな兄妹など露知らず、燠はワクワクとした面持ちでパンフレットを広げていた。

「なあ、ナル。ユキ。アオモリってどういうところなんだ? 地図上からして北のようだが……。まさかこんな極寒の土地にも特殊救急隊があるなんて知らなかったよ。お土産いいのがあるといいよな。ん、ネブタ? 行きたいな……、何だ、夏にしかないのか。残念だ」

 まるでカブトムシを見つけた少年の様に瞳をキラキラさせる燠に2人は喧嘩する気が亡くなってしまった。
 何時ものクールさが少し薄れている気がしたが最早どうでもよくなっていた。

「……燠君の夢を壊すのは止めよ……」
「……わかってる」

 心底自らが愚かだと悟った瞬間でもあった。
 非常にもアナウンスは「4時50分発、新青森駅行き」の声が流れた。
 そこから3人は何の会話を交わすことなく新幹線に乗り込んだ。


02
「すごいすごいすごーい!! あとちょっとで青森だって」

 凄まじい速度で流れていく景色を見て成葉は興奮したように窓に張り付く。
 弁当を食べながら燠は雪丸の顔を見る。

「氷室(ひむろ)みぞれ?」
「ああ。青森の隊長だ。見た目は……アレだが腕は立つ。なんせ雪女と神とやらのハーフだからな」
「……オレ以外にも混ざりものがいたんだな」
「数は少ないけどいるっちゃいるよ」

 座りなおした成葉は新幹線内の勾配のお姉さんがから買ったポッキーを食べ始める。

「でも、きっとオレとは格が違うさ。半分でも神様ってのはそういう意味だと思うぜ」
「そうなの?」
「ああ。特力の権限はほとんど無視できるしな。特力使える人間は自分からでしか『何か』を発生できないから、それが尽きたらしばらくは使えない。けど神様は世界の降臨者だ。例えば火が尽きたら焚火やチャッカマンの火で十分補填できる」

 燠の言葉に雪丸は怪訝な顔をした。

「そんなの誰にだってできんだろ」
「お前は異常だ! 普通の奴は限度があるんだよ。本当に常識が通用しないところだと毎日身をもって実感してるよ。……そういえば白雪みぞれは何の神様なんだ?」
「それは――……」

 成葉がそう言いかけた瞬間。
 新幹線から甲高い音が聞こえた。それは、3人がいる場所だけではない。
 新幹線全車両からだ。
 さっきの音は止まるためのブレーキ音だろうか。ただ事では無さそうな非常事態に周りの乗客はザワザワと騒ぎ始めていた。

Re: 最強の救急隊  ( No.34 )
日時: 2019/03/11 20:27
名前: ルビー

『皆さま、非常事態が発生したため緊急停止させていただきました。只今調査中ですのでご理解のほどお願いいたします』

 機械的なアナウンスではない、人間の声だ。
 上を見ながら成葉は窓から外を覗き込む。

「電車ならともかく……、新幹線でこういうことって初めて体験したかも」

 のんびりとした面持ちだったが、次の瞬間張り詰めた表情になり、怒鳴るように叫んだ。

「みんな伏せて!!」

 次の瞬間だった。
 窓が勢いよく割れていく。反射的に乗客たちは頭を抱え、その場にしゃがみ込んだ。
 窓が割れたのは一つや二つではない。ほぼ全車両からであった。
 しかも、ただ割れただけでなく――のそのそと不気味な動きで不審者が窓から侵入(はいって)来たのだ。
 その不審者は――どこからどう見ても人間とは思えないほどの黒い体を持ち、小さな三つ槍を所持している。
 まるで、その姿は悪魔のようであった。

「――っ!」

 轟、と勢いよく音を立てて雪丸は悪魔を燃やしていく。
 悲鳴を上げながら何事もなく消えていったが、如何せん、数が多い。
 最低でも50はいるだろう。

「何でこんなところに悪魔がいる!? この様子と大きさからして低級中の低級だが一般人にとっては害だ! くそ、この中に魔女でもいるってのか?」
「詮索は後だ! 悪魔(こいつら)を排除しつつ乗客を避難させないと命に係わる!」

 動揺しながらも風で撃退する燠に成葉はそう言い放った。
 かと言って無謀に動けばこっちが不利になる。
 幾ら低級の悪魔とはいえ、「人間を弄ぶ」という一点についてはプロフェッショナルだ。
 下手に刺激すれば人質を取って地味に嫌な呪いをかけられかねない。

「わたしが術者を探す! 魔女だか魔王だか悪魔を使役している間は一歩でも動けないはずだから座りっぱなしの奴を片っ端からぶっつぶす。雪ちゃんと燠君は何とか! して頂戴!」
「適当が過ぎる!」
「しくじんなよ!」

 成葉は2人の返答を待たずに他の車両へ走り出す。
 後方からヤジが飛んだ気がするが形振り構ってはいられない。
 どんなにレベルの高い悪魔の使役者でも、悪魔が動いている間は動くことができない。
 普通の人間だったら怯えて縮こまっているはずだ。だから、冷静さを保って据わっている奴を片っ端からとっつかまえる。
 
「どこだ……っ?」





03
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「うるせぇ、とっとと朽ちろ」

 甲高い叫びをあげ、悪魔の5体は火柱とともに燃え尽きた。
 燠はその様子を見ながら改めて遠い目をしていた。

(……ケイジ(こいつ)、強すぎだろ)
「ギィィィィィ!!」

 悪魔は紛いなりにも3人がかりで雪丸に襲い掛かろうとするが遊ばれているかの如く避けられ、燃やされる。
 その一連の動作を雪丸は行っていた。
 勿論燠も悪魔を退治しつつ、乗客を避難させていたが、退治数は雪丸の方が断然多い。
……というか悪魔が雪丸の方へ集まっている。
 低級でも「こいつはやばい」というのがわかっていて、「早く潰そう」と思っているのだろう。

「……オレから言わせると自分で死にに行ってるようにしか見えん」
「あ? 何か言ったか。おい、んなことより何かおかしくねえか」
「もうすでにおかしい状況だけどな」

 怪しむ様に目を細めた雪丸に雑な返答を返す燠。
 自身の風で悪魔一帯を吹き飛ばした。
 いくら人間ではないとはいえ、所詮は低級悪魔。特力や身体をとことん鍛えた雪丸達には為す術もなく、着々と数が減ってきていた。
 すると、燠の目の前からゆらり、と恐怖で頭を抱えてしゃがみ込むしかなかった一般人が力なく立ち上がった。

「……おい、まだ危険だ。じっとして……」
「燠!! 今直ぐそいつから離れろ!!」

 虚ろな瞳をした一般人に向かって歩み寄ろうとした燠に怒鳴る雪丸。
 しかし、その「一般人」は口角を大きく歪ませた。
 そして人間とは思えない動きで真っ直ぐ突っ走る。

「――くそ、憑りつきか!」

 憑りつき、とは精神的に追い込まれている人間に悪魔が憑りつく名前の通りの行為である。
 憑りつく前より力は制限されるが気配は人間自身のものなのでプロのエクソシストでも判別しにくい。憑りつかれる時間が長い程、人間の肉体は崩壊を迎えていくという危険極まりないものだ。きっと、この混乱に生じて悪魔の何体かが一般人に憑りついてしまったのだろう。
 すぐさま背中を掴もうと燠は必死で手を伸ばす。
 再び、燠の背後から雪丸の叫ぶ声が響き渡る。

「違ぇ!! 右だ!!」
「なっ――……」

 次の瞬間、その言葉通り一般人に憑りついた悪魔はグン、と右に曲がった。
 標的は――年端のいかない少女。悪魔は純粋で清らかな魂を好むとされている。幼い子供は善悪の判別も着きにくい代わりに素直で純粋な場合が多い。
 悪魔は――本能的に「美味しい魂」を欲したのだろう。

「止まれ!!」

 燠は捕えようとするが、今の速さだと少女に近い悪魔の方が圧倒的有利。
 迂闊に風を出せば少女に危害が及ぶ。
 だけど、このままでは確実に少女の魂は食べられてしまう。

「――燠ぃ! 暫く後のことはテメェに任すぞ!!」

 雪丸はそう言うと、一瞬にも満たない時間で燠の横を通り過ぎた。
 そして、少女に伸びていた悪魔の手を弾き飛ばし、燃え盛るような炎を全身に纏わせる。
 新幹線の窓――いや、壁を大きく破壊すると、悪魔ごと外へ2人とも落ちていく。
 投げ込まれた少女を抱きかかえると燠は慌てて壁際に走り寄る。

「ケイジ!!」

 もう、雪丸の姿は見えなくなっていた。
 あたり一面雪、雪、雪。白銀の世界だった。

Re: 最強の救急隊  ( No.35 )
日時: 2019/03/15 20:25
名前: ルビー

「お母さん〜〜っ!!」
「茉莉!!」

 先程襲われかけた少女は恐怖の糸がプツリと切れたのか、大泣きしながら母親に抱かれていた。
 燠はすぐさま母親と少女にお礼を言われたが、正直上の空だった。
 答えは明白。雪丸が新幹線から落ちていったからだ。
 一応、周りを確認したが先ほどの混乱が嘘のようにパタリと悪魔が出なくなった。

(……悪魔の追加はない。ナルが術者を倒したんだな)

 ぐったりしたように、燠は開いていた座席に座り込む。
 改めて車内を見渡す。ジュースやら弁当やらであたりはごちゃごちゃ。
 嘘みたいな事件でも夢ではないと再認識させられる。

「燠君! よかった、もう悪魔は出ないみたいだね」
「ナル……」

 はー、と成葉は隣の車両から安心したように出てきた。
 ぐい、と成葉は燠の目の前でロープでぐるぐるに巻かれた妙齢の女性の首根っこを掴みながら突き出した。
 顔面はボコボコ、鼻の穴からは血が出続けている。恐らく彼女が徹底的にぶちのめしたのだろう。

「この人がさっきの事件の首謀者だったみたい。ブツブツ呪文唱えてたからすぐわかった――けど、素人に毛が生えた程度だったから多分誰かに雇われ……日雇いみたいなものだったのかも。……あれ、雪ちゃんは?」

 雪ちゃん。その言葉に思わず燠は息をのんだ。
 どう話せばいいのかわからなかったし――まず、生死を確認できない。
 しかし、立場上役職柄、偉いのは成葉だ。新人且つ見習いの燠は報告するしかなかった。

「……それが……」



04
「そっか、雪ちゃんがそんなこと」
「……悪い。オレが憑りつきに気が付けなかった。いや、さっきだってケイジが憑りつきに気が付いて、子供を助けたんだ。オレは、何もしてない」
「燠君!!」

 しどろもどろになる燠。自分でも何を言ってるのかわからなくなっていた。
 その刹那、成葉は両手で思い切り燠の頬を挟み込んだ。
 パアン、ととてもいい音が響き渡った。というか正直とても痛い。燠自身顔が亡くなったのかと思った。

「慰める気ないから言っておくけど、今回のことは燠君悪くないから。雪ちゃんが考えて行動して勝手に落ちていった。それに雪ちゃんは何大抵の事では死なないし殺せない。どうしても悪いって言うならこんなことした首謀者が悪いに決まってるだろ! ついでに言うとわたしたちはもう目的地にしか行けなくなった。このことはもうみぞれちゃんも気が付いてる。乗客を降ろしたらすぐにむつ市に向かうからね!」
「……でも、オレは……」
「ええい、どうしても気が晴れないなら次に挽回しろ! わたしを楽させて!!」

 迷いのない、彼女の言葉。
 気遣っているわけでもなく、嘘をついているわけでもない。
 ある意味情け容赦ない言葉だったけれど、燠は少しそれがうれしく感じてしまった。

「――わかった。次こそは役に立てるように頑張る」
「あー、うん。それでいい。それでさ……」
「? 何だよ、ナル。気になることでもあんのか?」

 先程までの威風堂々としていた彼女とは打って変わって申し訳なさそうな、青い顔になっていった。

「……むつ市まで案内して下さい」
 

Re: 最強の救急隊  ( No.36 )
日時: 2019/03/19 19:02
名前: ルビー

「……青森支部の本拠地は青森市だろ? 何で最北端のところに行くんだ?」

 ガタン、と軽く揺られながら成葉と燠はバスに乗っていた。
 あれから燠が必死にバスや電車を調べてようやくむつ市まで来たのだ。
 周りは森、森、森。緑一色で車どころか人の気配の無さそうなところをバスは走っている。
 持ってきていた地図を見合わせながら燠は怪訝そうに言った。

「……青森支部には他の所とは少し違うところがあってな。さっきついたむつ市――まぁ、向かう先は恐山っていう山なんだけどさ」
「山? 隊長に会いに行くんだろ?」
「わたしもみぞれちゃんに聞いた事しかわからないけど。青森の最北端、つまり恐山は昔から日本で最も霊界に、いや、死んだ者の魂が集まる場所だと言われてんだ。でも集まるだけじゃ魂は霊界(むこう)には行けない。だから導くために年に一回、みぞれちゃんたちはむつ市に行って儀式を行うみたい」

 成葉はそう言って窓の外から見える遠い山らしきものを「ほら、あれ」と言って指さした。
 一見、普通の山に見えるが先ほどの話を聞いて何だか恐ろしいものに見えてきた。

「今日がその儀式の日。だからわたしたちが呼ばれたの。雪掻き要因と人手不足の青森支部を手伝うために。……まぁ、無いとは思うけど万が一導いてる魂が暴走したら止めてほしいってのもあったんだろうよ」
「場所によって隊がやってることも違うんだな……」

 しみじみと呟く燠。
 すると、車内から『恐山入り口前』とアナウンスが鳴った。
 成葉は止まるためのボタンを押す。しばらくして目的のバス停に辿り着き、お金を払ってバスから降りた。

「こっから歩きかぁ〜。雪が多いっ! ちょっと遠い! キツイ!」
「スマホ情報からだと今−5度だぞ」
「げぇ〜〜〜っ!!」

 マイナスな燠の言葉に顔を青ざめる成葉。
 しかし来てしまった以上は仕方ない。歩くしかないのだ。
 成葉は意を決したように、頬を叩き、ズンズン前を歩いていく。
 燠はバスから見たよりも大きく見える恐山を見上げた。

(……長兄も、恐山(あそこ)にいるのかな……)
「何してる燠ぃ! 止まってたら凍死するぞっ!!」

 大声で叫ぶ成葉に慌てて我に返り「今行く」と軽く返事したのち、慌てて彼女の後を追いかけた。





05
「やっと……着いた……!」
「恐山“周辺”だ! まだ着いてない」

 鼻を真っ赤にしながら成葉は嬉しそうに呟いた。
 バスから降りて20分。冷たい風と10センチほど積もった雪に耐えながらようやく目的地である恐山周辺までたどり着いた。
 行くべき場所はある屋敷。見たらすぐわかるので成葉は辺りを見渡す。

「……おい、ナル」
「ん? もう屋敷見つけたの? さっすがエルフ目もいいんだね――……」
「違う。恐山ってのは地獄みたいな場所なのか? 本当に、あんなところに死んだ魂が集まれるのか?」

 燠の声が震えていた。
 その異常さにすぐさま成葉は気が付いた。
 燠に「ちょっと此処にいて」と言い残し、高い木々に俊敏な動きで登る。
 そしてすぐに燠が言っていたことを理解した。

「何だ……これ……」

 成葉が「これ」と言った光景。
 それは、まさしく地獄の様な光景だった。山一帯を覆うような赤い炎。
 無残に燃えて黒くなった木々。まだ雪や氷は残っているが、あらゆる生命というのを感じられなくなっていた。
 炎は今もなお勢いが衰えない。
 それに加えて、成葉は目の前の光景にとても見覚えがあったのだ。

「こんなの……繋の時と一緒じゃん……! 何でだ……っ」

Re: 最強の救急隊  ( No.37 )
日時: 2019/03/21 18:46
名前: ルビー

「……少なくとも、燃えてなかったでしょ……っ」

 パチパチと音を立てながら、山は、燃えていた。
 いくらあまり縁起の良い山ではなかったとはいえ、このような悲惨な風景ではなかったはずだ。
 明らかに不気味で不自然な現象だ。
 成葉は生唾を呑み込みながら、登っていた木から飛び降りる。

「……こうなっている以上『氷室みぞれ』たち隊員はどこかへ避難、あるいは行方不明の可能性が高い。どうする?」
「……うーむ」

 燠が言う通りであった。まさかこのようなことになるとは微塵たりとも考えていなかったので思わず頭を抱え込む。
 万が一にもこの地獄のような炎の空間に人間が留まっている可能性はない。
 雪丸とも逸れてしまった今、連絡手段はない。かと言って、浅草の第7隊に連絡もしたくはない。
 おそらく連絡すると花緒と繋は増援を送る、或いは自らが来てくれるであろう。
でもそれは浅草の守備を薄くさせるのと同義だ。あまり得策とは思えなかったのだ。

「――……だったらオレの意見に乗ってみねぇか」
「燠君の? 考えがあるの?」
「ああ」

 先程の光景を見てからあまり口を開こうとしなかった燠が静かに頷いた。
 特に考えがあるわけではなかったので、成葉も同意するように大きく頭を上下に振った。

「まず、オレたちは情報又は状況を知るべきだと思う。この炎が人為的な物か自然の発火……とは考えにくいがそれすらもわからないからな。情報を収集すべきだ」
「言われれば確かに」
「それに山がこうなっているのに他の人が騒がないのも、消火活動も行われていないのは不自然すぎる。まずは山に残って探索。もう1つは町に行ってどんな状況になっているのかを調べる必要がある。今のところさっきみたいに襲い掛かってくる奴もいないし」

 成葉も異論がないのだろう、再び大きく頷いた。

「でも2人でやってたんじゃあ時間がかかりすぎる。かなりの無茶だけど二手に分けて調べよ」
「ああ。オレは山に残って探索する。……オレの金髪は青森じゃ目立つみたいだしな。街の方はナルに任せる」
「わかった! 待ち合わせと時間は?」
「5時間後に、ここで。もしも迷ったらオレの風を飛ばすよ」




05
「はっ」

 成葉と別れてから数十分後。燠はギリギリまで山を燃やしている炎へと近づいていた。
 そこらへんに落ちていた木の棒を乱暴に炎の中へと投げ入れる。
 すると、木の棒は枯れたようにぱっきりと黒く変色し、木端微塵に折れていった。燃えた、のではなく。

「燃えない……? この炎、間違いなく自然に発火してわけではないな。わかってたけど」

 燠は少し驚いたようにまじまじと目の前の炎を見つめる。
 燃えないとは言っても質量や、物凄く熱い温度までは炎とほぼ同じだというのに。

「遠目から見たらケイジと同じぐらい……、いや、それ以上の炎の特力を使う人間がいると思ったがそんなホイホイいるものでもないよな」

 炎の事は少しわかった。
 けれど、それだけだ。燠はさらなる情報を求めて止めていた足を再び動かそうと、一歩踏み出した。
 その瞬間、だった。

「――っ!!」

 パン、という乾いた音とともに、燠は反射的に左に避けた。
 避けた瞬間、後方の木に何かが当たり、ミシミシと音を立てて木が倒れていった。
 もし燠が避けなかったら大怪我では済まなかっただろう。
 燠はすぐさま立ち上がり、草木が生い茂っているすぐ目の前に飛び込んだ。

(……今の、狙撃銃か!? くそ、何だってこんな時に。でも悠長にしてたら次の銃弾が飛んでくるぞ……!)

 大木に背中を預け、銃弾の位置を把握しようと少しだけ顔を出す。
 すると、燠の真横スレスレに再び銃弾が飛んできた。

「ぐっ!!」

 この位置だと狙撃する方はかなり視界が悪いはずなのに、寸分狂わず燠を狙ってきたのだ。
 素人でも凄腕の狙撃手(スナイパー)だということが理解できる。

「敵、か……!? けど、オレはこのまま簡単に死んでやるわけにはいかない」

 燠はそう言って、懐から小刀を出す。

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