複雑・ファジー小説

最強の救急隊 
日時: 2019/05/06 20:06
名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=327.jpg

初めましてな方もお久しぶりな方もどうぞよろしくお願いします。
気紛れ更新なため、いつ終わりいつ始まるのかわかりませんがよかったら見て行って下さい。



URLに銀竹さんが描いてくれた主人公います。
とてもありがたいです。クオリティは言うまでもないです。





お知らせ>>17


設定・人物>>1
壱話 第7班>>2
弐話 魅惑の菓子類>>5
参話 後輩やって来た>>6
肆話 生意気抜かすな小僧>>7
伍話 神原燠>>8>>11-12>>15-16>>18-20
陸話 花緒イリュージョン>>21-30
質話 昔々ある所にアポなしでやって来た鬼がおりました>>31
【ラストフローズン篇 氷牙の先導者】
捌話 高いものほど碌なことはない>>32
玖話 事件は現場で起こってるんだ!!>>33-34
拾話 さらに北へ>>35-36
拾壱話  ちょっとお前こっち来いよ>>37-38
拾弐話 人見知り会議>>39-40
拾参話 後ろの正面だあれ>>41
拾肆話 ぐちゃぐちゃうるせえ>>42
拾伍話 編集者は眠らない>>43






Twitter始めました。名前は違いますがお気にせずに。
@Taruto39Purin

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Re: 最強の救急隊  ( No.40 )
日時: 2019/04/10 21:16
名前: ルビー

「……そういえば、みぞれは……。他の隊員たちはどこに行ったんだ? 避難してるのか?」
「ううん。男は急に現れては爆弾で恐山(ここ)を地獄にしたんだ。爆風で周り見えなかったからみんなはどこに行ったのかわからないし、まず生死もわからない」

 燠の問いに、涼は悲しそうに答えた。
 その返答にどうすればいいのかわからず、燠は口を閉じてしまう。
 すると成葉はスッと手を上げると、珍しく真剣な眼差しで2人を見る。

「変なタイミングになったけど、わたしから。町に降りたら異常は一目瞭然。住民・異形もれなく全部活動していなかった――というか『時間が止まってる』みたいに動きが止まってた。パントタイムみたいに」
「……やっぱり、そうか」

 成葉の言葉を聞き、納得したように燠は立ち上がった。
 驚くと思っていたのに意外と冷静で逆に成葉が面食らって、慌てて立ち上がる。

「えっ。何で冷静なん。普通驚かない?」
「炎、見てみろ。今、風は吹いてない。でも、酸素はある……にも拘わらずあちこちの炎が勢いよく動いてる。けど、燃え広がってはいない。普通の炎なら絶対にありえない」
「それってつまり?」
「町の人間と同じく恐山も時間が止まってるんだよ」

 呆れたように長いため息をつく燠。
 その言葉に思わず一瞬、成葉は息を止めた。
 時間を止めるなんて馬鹿げた神業、誰ができるというのだ。

「時間を止めるって言ってるけど、それは禁術だよ。三大禁忌の一つ。一つは命の永続、二つは命の復元、最後は――……時間の使役」
「わかってる」
「そんな所業、神にしかできない! 神原さんは神がこんなことしたっていうの?」

 取ってかかる勢いで、涼は燠に攻寄る。
 燠は唇をかみしめながら目線を逸らすだけだ。恐らく、彼にもこのことを完全に把握できていないのだ――何しろ証拠も時間もないのだから。
 成葉は2人の間に入るように、口を開いた。

「それと、あと一つ。人間自体動いていなかったから直接情報収集はできなかったけど、建物の中には入れた。不法侵入になっちゃうけど今回は不可抗力ってことで! はい、これ」
「……これって……」

 成葉が差し出した黒い手帳を受け取る。
 軽く手帳のページを捲ると、何行か文が記されてあった。
少し悲しそうに涼の頬が赤くなった。

「ダメもとで青森支部仮設施設に行ってみたんだ。案の定崩壊してたけど、たまたま転がってたから拾ってきた。役に立つかどうかはわからないけどさ」
「この字……晶馬さんの……」
「……おい、2人ともあれ見ろ!」

 急に弾ける様な声を上げた燠。
 2人は思わず反射的に燠が指差した方向を見る。その視線の先にはこの場所には似合わぬ白いセーラー服とばっちりセットされた髪を靡かせる女、であった。
 女は真っ直ぐ、前を歩いていく。
 涼は思わず勢いよく立ち上がった。

「みぞれさん……!」

Re: 最強の救急隊  ( No.41 )
日時: 2019/04/20 20:12
名前: ルビー

「みぞれさん!!」
「みぞれちゃん!」

 涼に続いて成葉、そして燠は雪の滑りやすさを利用し、斜面を降りていく。
 道を歩いている女――氷室みぞれを呼び止める。
 みぞれはゆっくりと後ろを振り向いた。すると弾ける様な笑顔に変わった。

「ちょ! やっと見つけたし! どこ行ってたのよも〜。それにユキナル! 来るの遅いし何か悪魔に襲われたんだって? よく無事だったじゃん。それに知らない顔がいるし結構なイケメンじゃね? ってかあれ? ユキケイは?」
(雪女と神様のハーフとは思えないなこのテンションは)
「あ……」

 矢継ぎ早にみぞれは話し出す。その速度はまるでマシンガンのようだ。
 3人を見渡すと、雪丸がいないことに気が付いた彼女はユキケイこと、雪丸を探し出す。
 そんな彼女に燠は面食らっていたが、状況が状況なので珍しく黙ることにした。
 成葉は一瞬言葉が詰まったが、話すことにしたのだ。
 しばらく、成葉は今までの事情をみぞれに話した。するとみぞれは眉間に皴を寄せ、疲れ切ったかのように叫んだ。

「はぁ〜? こっちもマジヤバいけどそっちも超ヤバいじゃん! ユキケイ行方不明とかさ……ま、しぶとく生きてるんでしょうけど」
「まぁ、それもそうだけど……。みぞれさん、よかった無事だったんだね。それと、隊員の誰かに会った?」

 ほっとしたように涼は胸をなでおろす。
 そんな彼の言葉にみぞれはフルフルと首を左右に振った。

「全然。つーか人に会ったのアンタたちが初だし。もしかしたらみんなあのエセ野郎の人質になってるかも」
「えっ」
「なあ気になってたんだけど。涼の言ってた燕尾服の男って他に何かわからないのか?」

 燠は痺れを切らしたようにみぞれに言う。
 みぞれは考え込む様に「うーん」と唸っていたが、ゆっくりと口を開いた。

「正直わかんないわ。でもこの日に襲ってこんな惨事起こすぐらいだから大体アイツの目的は分かってる」
「目的? 何?」
「そりゃあこの山の醍醐味は登ってからだし! じゃあ早速レッツゴー!」

 首を傾げる成葉にみぞれはウインクをする。
 そして強引に3人を引きずって歩き出したのであった。






06
「山……怖い……! 高い、寒い、息苦しい……!!」
「大丈夫か……ナル……。ゲホッ、ゲホッ」
「ナルさん、燠さん。はい、水」

 みぞれの特力――氷雪で一気に空中へ飛ばされ、投げられるように山頂へ辿り着いた一行。
 しかし、急に温度と酸素濃度が変わったため、成葉と燠は噎せ返ってしまった。
 涼は慣れた動作で2人に水を手渡した。さすがは雪ん子と雪女というべきだろうか。
 こんなに寒くても身震い1つもなく。寧ろ生き生きしているようだった。
 数分して、ようやく息を整えた2人は静かに立ち上がった。

「それで、奴の目的って何だ?」
「――目的は簡単よ。今日は儀式の日。死者を霊界に導くのは同時に『死者が正者の世界に一番近い日』でもある。つまり――ありったけの死者を生き変えさせること」

 燠の問いにみぞれは冷静に言う。
 その言葉に思わずたじろいだが、それはあり得ないことだと知っている。
 なぜなら、死者の蘇生は禁忌中の禁忌。犯して行けない領域。
 そして何より――そんなこと、現代を生きる人間ができるはずがないのだ。

「そんなこと只の人間にできるはずがない。いや、万が一できたとしても代償が大きいはずだ」
「それは……特力を使う人間が人間だった時の場合じゃん?」

 その瞬間、空気が変わった。
 ただでさえ冷えているというのに。更に冷たく、凍てつくような。
 すると、涼は雪ん子に似合わぬ青ざめた顔で小さく呟いた。

「アンタ、誰」

 その言葉と同時に冷たい風が通り過ぎる。
 思わず、成葉と燠は固まった。なぜ、そんなことを言うのか。性格的に涼は冗談を言えるような人間ではない。
 それは、彼の言葉が証明している。
 彼は――親愛するみぞれに「アンタ」とは言わないのだ。

「アンタ、誰だ!! みぞれさんは『あの時』から山頂には絶対に登ろうとしないから!! 晶馬さんが死んだ日からずっと!!」

 涼は悲鳴を上げる様に叫んだ。
 確かに、少し違和感を覚えていた。
 先程まで子犬のように積極的に、涼はみぞれに話しかけていたのに。
 彼女が山に登ろうと言った瞬間から、何も言わなくなったのだ。

「ふーん。案外勘がいいじゃあないか」

 突き放すような冷たい声。
 その声はみぞれ――だが、口調も様子も先程までとはがらりと変わっていた。
 そんな彼女の行動に成葉は何とか棒を素早く構える。

「……じゃあお前の正体は1つしかない。だろ? 燕尾服の男とやら」

 成葉は冷静にそう言うと、みぞれの形をした者は不気味に微笑む。

「大正解でございますよ、救急隊の方々。いやぁ……此処まで嗅ぎ付けられるとは思ってもおりませんでした」

Re: 最強の救急隊  ( No.42 )
日時: 2019/04/28 21:06
名前: ルビー

「凍れ、凍れ、凍れ……!」

 その瞬間、みぞれたち4人の周りには絶壁の様に高い氷塊が囲む。
 優に3メートルは超えており、少し高く飛んだだけでは飛び越えられそうにもない。
 みぞれの姿でクツクツと怪しく笑う「それ」はたじろぐ3人を嗤っている。
 成葉は睨むように、

「もう少し正体渋るかと思ったよ。『証拠はあるの』とか言わないんだな」
「ええ、勿論。私がどうこう言っても何れはバレてしまうでしょう。そんな無駄な時間を過ごすのであったなら最初から言ってしまった方が都合がいいのでねぇ。ま、バレたとしても問題はないのですがぁ」

 そう言うと、「それ」は成葉の真横にいる涼を妖しく見つめる。
 涼はそんな不気味なものに臆することなく、スナイパーライフルを構える。涼ほどの銃の腕前で有れば、目の前の「それ」の脳天をすぐに撃ち抜くであろう。
 敵意を抜き出している彼に対し「それ」は余裕の表情であった。

「止めた方がいいですよぉ。確かに意識は僕のものですが肉体は氷室みぞれのもの。撃ち抜けば僕はこの肉体を棄てて新しい物を探します。そうしたら神の混血とはいえ氷室みぞれは死んでしまうでしょうねぇ」
「お前……っ! ふざけないでよ、さっさとその体から出ていけ! アンタは何なんだ! 急にこの場所を襲って、燃やして、時間を止めて……っ! 挙句の果てにはみぞれさんまで! 馬鹿にするのもほどがあるじゃないか」
「下がって、涼!」

 成葉はそう言うと、一歩踏み込み、「それ」の頭に何とか棒を振り下ろした。
 「それ」はその行動を呼んでいたかのように氷を纏った腕で何とか棒を受け止めていた。
 更に成葉は無防備な「それ」の脇腹に右足で蹴り上げた。
 さすがにそこまでの攻撃は読めなかったのか、「それ」は軽く吹っ飛ばされた。

「ナルさん……っ」
「酷いなぁ、話は最後までするもんじゃないんですかぁ? 流石凶暴と名高い第7救急隊。攻撃的ですぅ」
「涼。話は此奴をとっちめてからにしようぜ。キリが無い。いくらみぞれちゃんの体とはいえ今はそういう状況でもなさそうだし!」

 蹴りを入れた足を素早く地に付け、着地すると簡潔にそう言った。
 蹴られた「それ」は口に溜まった血を乱暴に噴き出す。
 涼は一歩、後ずさりをする。しかし、その行動を阻む様に、燠の体が壁になっている。

「燠、さん……」
「逃げんな、もうやるしかないんだよ。此処でオレらが迷えばもっと被害が出る。だから此処で止める」

 そう言うと、燠は成葉の元へ勢いよく走り出した。

「ナルゥ!! オレとソイツじゃ相性が悪い! 正直オレの風を吹雪に利用されて終わりだ。だからオレは『外』の方を何とかする。オレを蹴飛ばしてこの氷塊の外に出せ!」
「……オーケーオーケー! 承ってやるよ!」
「やらせるか……っ」

 燠の言葉を聞いて、成葉は力強く一歩踏み込む。
 すると、先ほどまで余裕の表情を浮かべていた「それ」が初めて大きく目を見開いた。
 まるで「イケないものがバレてしまった」ように。
 「それ」は2人の行動を阻む様に強く手を伸ばした。

「行かせるわけないよ」

 涼は「それ」の足元に向かって発砲したのだ。
 反射的に避けてしまったため、タイミングと勢いが無くなってしまう。
 
「ちゃんと役目果たしてよね!」
「誰に言ってんだ。ナルじゃあるまいし」
「生意気!」

 燠が軽く自分の特力である風で体を浮かす。そして追撃するように燠の足を成葉は思い切り蹴飛ばした。
 燠は勢いよく飛んでいき、氷塊の壁など軽く超えていった。
「それ」は殺す勢いで成葉を睨んだ。そんなのも平気なように成葉は「ハッ」と鼻で笑う。

「貴様……、気が付いたとでもいうのか……っ?」
「まさか、わたしはぜんっぜん燠君の考えてることわかんない。さっきのはただ蹴っただけ。でもよかったよ、ようやくお前のその醜悪な顔が見られたから」

Re: 最強の救急隊  ( No.43 )
日時: 2019/05/06 20:04
名前: ルビー

「人間にしてはやってくれましたねぇ。ああ、すみません。先程はちょっぴり予想外で驚いたものでしたからぁ」
「別にいいよそういうの。グダグダ話すとラノベみたいにページ数嵩張るしさ」
「ちゃあんと説明をしないと読者には伝わらないのではぁ? 文章の多さも馬鹿に出来たものではありませんよぉ」
「お前編集者みたいな奴だな」

 先程の殺伐とした表情から一変、今までの様な余裕の笑みに戻っていく。
 再び成葉は何とか棒を構える。
 すると突然「それ」は歓迎するように」両手を広げる。

「あなたたちは先程から僕の、いや、僕たちの目的について知りたがってますよねぇ」
「おれ……達?」

 思わず涼は眉根を寄せた。
 ニヤリと「それ」は笑うと「ええ」と小さく返事をする。
 天を指差すと、

「これも特に支障はないので言っちゃいますけどぉ、簡単です。過去の英雄――いや、異形を蘇らせることですよ。この恐山は確かに死者が一番集まる場所。それと同時に死んだ異形も存在する」
「此処までもったいぶった割にはありきたりすぎるんだけど。『世界征服したい』って言うやつみたいで拍子抜けだな!」

 ブン、と真横に何とか棒を振る。しかし、身軽に「それ」は避けると、呆れたようにため息をついた。

「人が話しているときに攻撃なんてぇ……。あなた絶対日曜朝の女児向けアニメの変身中でも攻撃してくる質でしょう」
「うっさい! こちとら隙あらば殺せって教育されてんだ。文句言われる筋合いはない!」
「隣の国並みに凶暴ですよあなた」

 コホン、と「まあ、どうでもいいですけどぉ」と一息つき、改めてスナイパーライフルを構える涼を見る。
 一瞬、涼は肩を竦めたが、再び標的を見据える。

「そりゃ勿論何でもかんでも蘇生させるわけではありません。力がある者のみです。バカバカ蘇生してたら秩序が乱れる。制御できる範囲内にしますよ。恐らくあなたたちは死者を全て蘇生したりこの場所や町に被害を加えたから僕を倒そうとしてると思っているようですが――。どうです?」
「何が?」
「僕を見逃してくれませんか? 僕も好きでこうしているわけではないのですよぉ。あのお方の命令で。どうしてもぉ。何なら僕の目的が達成したらこの場所も町も綺麗さっぱり元に戻しますよ。何なら他の隊員の身柄も氷室みぞれの肉体も。そして無駄に戦って、余計な血を流さなくて済みますよ。ねぇ、いいじゃないですかぁ」
「…………」

 一瞬、涼は迷っていた。確かに、その条件は魅惑的だ。この不気味なものと戦わずに済むし、無事に隊員とみぞれの身柄も帰ってくる。
 そしてこの山も町も戻すと言っている。けれど、本当のことを言っているとは限らないのもわかっている。しかし、しかし――……。
 どうしても、「頷きたく」なってしまう。

「――4年前、浅草を襲ったのはお前たちの一味か」
「はい? 浅草ぁ……? うーん、どうでしたっけかなぁ、えーと。ああ! 雷苦(らいく)が行って殺された場所だぁ! ふふっ、今でも笑えますよぉ。雷苦の奴、人数合わせに幹部になれたことにも気が付かずにのこのこ向かって殺されるなんてぇ」
「そうかよ」

 成葉の問いを、小馬鹿にするように「それ」は嘲笑った。その瞬間、「それ」の腹部に重い衝撃と振動が走る。
 一秒にも満たない合間に成葉が、詰め寄り「それ」の腹部に拳で体重を乗せて殴りつけたのだ。
 暫くしないうちに、胃の中にある液体が逆流するのを直に感じる。手で押さえる間もなく、大量の血を吐き出した。

「は……っ?」
「もう喋るな。そんで、みぞれちゃんの体からさっさと出てけよ」

 いよいよもって目障りだ。
 そう言った彼女は、無表情にそう告げた。「それ」は目の前の成葉が少しだけ、誰よりも悪魔の様に見えた。

Re: 最強の救急隊  ( No.44 )
日時: 2019/05/13 19:32
名前: ルビー

「……ってぇっ」

 ズザザッ、と燠は肩から着地した。
 勢いのまま、乱暴に氷壁の外に蹴り飛ばされたのでうまく着地できなかったのだ――その証拠に燠の肩の服は少し破れ、血が滲んでいた。
 だが今はそんなこと気にしている場合ではない。
 すぐさま立ち上がり、燠は「とある場所」を目指す。

「まさか、お土産とベスト観光地のために勉強した雑誌の内容がこんなことで役立つとは……世も末だ」

 皮肉そうに。
 そう笑うと雪と炎を避けながら全速力で走る。




07
「フンッ」

 槍で突くように。
 成葉は「それ」の背後に回ると何とか棒で背中を攻撃する。
 直撃、したのだが同時にパキパキと音を立てて何とか棒の先端が凍り付く。咄嗟に、成葉は「それ」の背中を蹴ることで氷漬けを避けた。
 うまい具合に涼が脇腹めがけて発砲したが避けられてしまう。

(……危ない、氷壁の所為で身を潜められる場所が無い。その内おれにみぞれさんの特力で攻撃されたら一溜りもない……!)
「雪女と神様のハーフって扱いにくいんですねぇ。その生で余計な怪我しちゃいましたよぉ。でもぉ……慣れてきましたぁ!」

 ダン、と大きく右足を氷の血に叩き付ける。
 すると地表から太く、鋭い無数の氷の刃が2人を襲う。

「なっ……!」
「ナルさん!!」

 氷の刃を砕きつつ、攻撃を避けていたが、不規則且つ無限に生えてくるため全てを裁き切れずに手足に切り傷を負ってしまう。
 思わず苦悶の顔を浮かべる成葉に、涼は駆け寄ろうとする。
 すると、足元にパシュッと氷の弾丸が飛んでくる。

「先程のお返しですぅ。第7隊は兎も角……涼(あなた)は賢い方だと思ってましたぁ、戦う必要もなかったのに」
「確かに……信用はできないけど、アンタの言うことも一理あるよ。でも、みぞれさんが戻ってきてそんなおれを見たら『ダサい』って言うから……! 見損なわれたくないだけだ……!」
「……なんだか苛々してきました」

 パキパキパキ、と音を立てて「それ」は両手に氷の爪を纏わせる。
 一気に涼の元へ詰め寄ると、鋭い氷の爪を涼の喉元へ突き立てる。
 「それ」は無表情に、囁くように、口を開いた。

「もういいです。いなくなってください。どのみちタダで帰す気はなかったですし。それと一つ、あなたに聞きたいことがあったんです。……もう一人の『神』はどこです?」
「……アンタみたいな人の肉体を借りなきゃイキれない奴に誰が言うもんか」
「そうですか。じゃあ一人で探します。さよなら、馬鹿で弱っちい雪ん子さん」

 ぐっ、と氷の爪が涼の首に食い込んでいく。貫かれる――そう思った涼だったがその瞬間、「それ」は今度は遠く、吹っ飛ばされていた。
 そんなことをできるのはこの場で彼女しかいない。
 思わず成葉の方を向くと、「それ」をぶっ飛ばした何とか棒を再び構えていた。
 悔しそうに「それ」は成葉の顔を見た。

「き、さま……!! 何処まで邪魔を……っ」
「本当にその体慣れたの? 嘘でしょ。前見た時のみぞれちゃんはもっと早かったし特力の攻撃も多彩だった。その肉体、主導権はまだみぞれちゃんにあんだろ」
「――――っ!!」

 ブワッと。「それ」は全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。
 認めたくはないが、感覚でわかっていた。
 具合が悪いように体が重く、頭が痛い。
 でも、それでも勝てると思っていた。
 神の血をひくこの女の肉体であればたかが人間など蟻のようなものだと――そう思っていたのに。
 何なのだ、この人間は。

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