複雑・ファジー小説

まあ、愛情表現は人それぞれですし。
日時: 2017/06/13 11:37
名前: 人狼 (ID: 5USzi7FD)

どっかーん




それはそれは盛大な爆発音とともに、俺の意識と肉体は宙を舞った。
勿論、上に表記したような、可愛らしい爆発音ではなかった。だって、人一人飛んじゃってるからさ。あー、めっちゃ空綺麗だわくそったれ。
思わず口角が引きあがるほど、今目の前に広がっている空は、のんきに雲ひとつない晴天だった。
俺は頭に廻る走馬灯を噛み締めながら、こうなってしまったもんは仕方ない、と心底ご機嫌な彼女を見る。先ほどまで俺も、彼女がいる位置で平和に大地を踏みしめていたってのに。
「あはははははははははは!!!!。」
地上で高らかに笑う彼女は、こうして見るとさながら悪魔か魔王。いや、死神かな。とにかく、ニンゲンの皮を被った人外にしか見えない。
今更だけど、なんで俺が大空を舞っているかって?
いや、これはまぁ…………。
彼女の愛情表現、かな。
どんどん加わる重力と、遠くなる空、対比して近くなる地面の圧迫感に、俺は指を胸の前で組み目を閉じた。
ご臨終。
走馬灯もまあまあゆっくり観覧さしてもらったし、あとは地面に叩きつけられるだけだ。ああ、おふくろの味噌汁が飲みたい。まだ友達百人で富士山の上でおにぎりだって食ってないってのに……。
さて、なんでこんな超ハイスペックな愛を、拒否権なしに注がれているかというと。

俺と彼女の出会いは、三ヶ月前に遡る。

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Re: まあ、愛情表現は人それぞれですし。 ( No.1 )
日時: 2017/06/14 11:04
名前: 人狼 (ID: 5USzi7FD)



第一志望の進学校に晴れて入学した俺は、高校にありえないほど思いを馳せていた。

中学ではできなかった彼女ができるかも〜とか。
いや、全然モテなかったわけじゃないよ?断じて。

俺のクラスはまあまあ平凡で、担任がやる気なさすぎてホームルームに毎回遅れることを除いては、問題もなかった。

ただ、一つ、例外があったけど。

「え?お前のクラス、八雲いんの?羨まし!!。」
「うわー!!俺も○組がよかったーー!!!。」

とまあ、他クラスのアホ共がこんな感じで騒ぎたてる訳。
男女ともに俺のクラスに物凄い執着を見せ、一部でクラス分けに対する暴動が起こったとかなんとかいうほど、存在感を秘めた人物。

八雲 奈子。
彼女は、この学校一の美少女と謳われる、マドンナだった。

簡単ってか簡潔に説明すると、完璧すぎて最早人間ですか?っていうレベル。
周りにいる護衛隊(笑)の圧が凄すぎて、一般市民の俺たちが絡めないほどの人気っぷり。
そんな彼女と、俺は良くか悪くか、同じマンションに住んでいた。

それが初めて鉢合わせたというほど、それに関しては知りもしない事実だった。

エレベーター前でばったり会ったこと、あの頃は運命かもとか感じた俺をしこたま殴りたい。
彼女は多分、周りにいる護衛隊(笑)の背が高すぎて壁となり、それ以外の関わりない生徒のことなんて見えてなかっただろうから、俺のことも勿論同じクラスだなんて知らなかっただろう。
近くで見る彼女の眉目秀麗さときたら、16年間彼女おらずの俺には眩しすぎた。(これに関しても殴りたい所存。)

……………それが、俺の人生の分かれ道だったわけだけれども。

「「……………。」」

あまりに驚きすぎて俺は声も出ず、同じように目を丸くする彼女の表情の変化にも着目していなかった。
彼女は固まった表情のまま俺にズイズイと近づいてきて、盛大に突っ込んで差し上げたいほど唐突な一言を呟いたのだ。

さっきとは違う、とてもキラキラとした乙女の目をして。

「私と………………………付き合ってくれませんか?。」

「…………………………は?。」

ロマンスなんて生まれるはずもない。
いたって狂気的で、アグレッシブな誘いだったこと、俺はあのとき気づくべきだったのだ。






「あっははははははははははははははははははははは!!!。」


おかげで今、こうして大空を舞っているのだから。

Re: まあ、愛情表現は人それぞれですし。 ( No.2 )
日時: 2017/06/16 22:14
名前: 人狼 (ID: 5USzi7FD)


さきに、学校一の美少女に突然告白されれば、誰でも困惑するということについて、言い訳をしておこうと思う。







俺は長い滞空時間を乗り越え、奇跡的に近くの公園の木へと落ちた。
おかげで落ちる時の勢いは半減。唯一の負傷といえば、運動不足によるぎっくり腰をあげれば他はない。

彼女は恍惚とした表情を浮かべて俺に近づくと、にっこりと口角を上げた。

「おはよう、真希くん。愛してるよ?。」

笑顔だけ見れば周りの野郎どもにふんぞり返って自慢できる、そんな自慢の彼女。
受け入れてしまった時はまさか、知らなかった。
彼女には、特殊すぎる愛情表現があることを。

あの日、一目惚れをしたという彼女に告白され、恐怖(俺は童◯)で走り去った俺。
それから、彼女の猛烈な告白に拒否権を感じず、思わずオッケーした。
それから数日は、マドンナが彼女である事実に有頂天になってはいたけど……。

「あー、本当、高校で運命の人に会える何て思わなかったよ!好きすぎてどうにかなりそう!。」
「ああ…………。それはそれは………。」
「ふふ、そんな顔しないでよー。……………………もっとやりたくなる。」

全身が縮こまり、ゾッッと悪寒が走るのを感じた。
彼女はくすくすと可愛らしく笑うと、ご機嫌なご様子で歩き出した。

簡単に言えば、彼女の愛情表現は、俺をぶっ飛ばすこと。
さっきみたいに爆発(ツッコミ不要)で吹き飛ばしたり、頭上からありえない量の包丁を落としたり、車の前に突き飛ばしたり。
いじめとかじゃない。愛情表現。あくまで。
彼女の愛は殺意と似ていて、どうにかして俺を傷つけたいらしい。

殺意、つまり……………………俺の死こそが完全な愛の成立。

「あ〜〜、真希くん上手に回避するから、やり甲斐があって素敵!今までの彼氏とは比べ物にならないくらい好き!ねえ、これからも上手に生きてね?。」
「頑張るよ……。俺、まだ死にたくない。」
「あはは!殺す気なんてないってば〜!。」

……………目が、笑ってないです。

鳥肌がなんかの病気みたいに立ちっぱなしだけど、これ、どうやって沈めたらいいんだろうか?
彼女の冗談に聞こえない言葉を苦笑いで流し、俺は素早く端末を取り出して友人に助けを求めた。
最初に言っておく。誰かに助けを求めるのは、これで38人目である。

『はぁー??惚気かよくそリア充!相変わらず羨ましいな!八雲がそんなことするかよかまちょ!。』

帰ってきた返信は、うえに表記した通り。
この反応38回目。
わあ、鼻柱粉砕したい。

俺は培ってきた友情のもろさに目尻に熱いものを感じながら、彼女の後ろを影のようについていった。

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