複雑・ファジー小説

死血誤惨
日時: 2017/10/14 00:14
名前: 梶原明生  

あらすじ

毎年10月11月と開かれる神社へのお詣り、そう「七五三」。我が子の幸福と無病息災を願って行われる行事でもある。今年も全国でいつもの七五三で賑わうはずだった。そう、あの時までは…鈴美、琴也、美弥は今年7歳5歳3歳になる三兄弟。電気工事士の父と主婦である母は、共に「真倉の光」教会の信者。二人はある恐ろしい、10年に一度行う儀式の真実を知る。「今年は黄泉の年。7歳5歳3歳の三兄弟を生け贄に捧げるだけではない。我等真倉の光信者が台風が来る十の月一五に自害いたし、真倉神の復活に魂を捧げるのじゃ。」二人はある男に助けを求めるものの、当日拉致されてしまう。そのある男の天宮竜也は途中、8人の男女の助っ人を得て、台風の中、警察も呼べない事態で一路親子の救出に向かう。「空手VSゾンビ」の飽くなき対決が今始まった。

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Re: 死血誤惨 ( No.17 )
日時: 2018/02/14 23:52
名前: 梶原明生  

…「どうする気だ。」天宮が覗きこむ。「決まってる、開けんのさ。」指先が高速に動く長瀬。「ううっ…。」そんな時、上村が苦しみだした。「おいおいまた偏頭痛か。」具志上が心配して近づくものの、後悔するはめになる。「ぐががーっ。」見る見るうちに顔が青白くなり、牙が剥き出しになる。そして具志上の腕に噛みつく。「うわーっ、な、何だよ。」山崎が回し蹴りで叩きのめし、腕をリストロックしながら投げ飛ばし、背後から羽交い締めで取り押さえる。「やめろ、一体どうしたんだ。あんたまでまさかゾンビだなんて。」悲痛な叫びで上村に問いかけるも、もはや手遅れだった。山崎の弟が叫ぶ。「思い出した。あのゾンビ薬を飲んだ者は血液感染力を持つゾンビになるんだった。」「何だって、そんな…」聞いた天宮は絶望する。「どきな。」長瀬がまた剣を抜いた。「待てっ待ってくれ。こいつは一緒に戦った仲間じゃないか。」天宮が制するものの、長瀬は聞かない。「もうこいつは手遅れなんだよ。」「がーっ。」長瀬が叫んだ矢先、上村が山崎の隙をついて飛び出した。ゾンビ化していてもまだ理性は半分残っていたのだ。長瀬が開けたドアに体ごと体当たりする上村。「ドカーン。」耳をつんざく爆発音が響いた。「上村ーっ。」山崎、天宮、藤堂は思わず叫んでいた。「嘘だろ。…」扉は開いたが、尊い戦友を亡くした代償はあまりにも高かった。「くそ、坂上め。」天宮は走り出して連絡通路をひた走って別館に向かった。…次回「壊滅」に続く。

Re: 死血誤惨 ( No.18 )
日時: 2018/02/28 18:11
名前: 梶原明生  

「壊滅」

中廊下をひた走った天宮は高級クラブのような一室に入った。「ここが教祖のいるべき場所か。」そこは軽く多数の客がパーティーを開けるだけの贅沢さがある。おまけに本格的なカウンターまである始末。棚には東西問わず高い銘酒がズラリと入っていた。「こんな贅沢のために金を巻き上げたのか。」勢いに任せて天宮は酒棚を倒す。潔いくらいに「ガシャーン」とボトルの割れる音が響いた。「何をするっ、私の、私のコレクションがーっ…どうしてくれるこのゲス共がっ」待上達と現れたのは坂上だった。「あっ、ゲスだと、己の欲望のために多くの人命を犠牲にしてあまつさえ、幼い子供を犠牲にする。お前がゲス以外の何者でもなかろうがっ。」「うるさいうるさいうるさいっ。構わん、お前たち殺してやりなさいっ。」半狂乱になりながら命じる坂上。白服の待上たちが一斉に飛びかかった。しかし山崎、藤堂、岬、新堂、具志上、梅野が来ていた。「俺達も戦うぜ。」皆がそう言う中、傍観者だった梅野まで参戦する。彼女はイラスト用の筆を両手に構える。「私だって許せなくなった。もう負んぶは嫌。戦う。」「ありがとう。」天宮は礼を言いつつ拳を構える。「行くぜっ。」掛け声と共に一斉に飛びかかる天宮達。待上達との乱闘が始まった。…続く。

Re: 死血誤惨 ( No.19 )
日時: 2018/03/16 16:06
名前: 梶原明生  

…右に行くと見せかけて左の待上の拳を上段受けして正拳突き。右の前蹴りを下段受けして右足刀蹴り。山崎は襟を掴んで引き倒し、踵顔面踏みつけ。後ろから来る奴に肘打ち、ストレート、ジャブ、フックと打ち込んで膝蹴り。新藤は金属薙刀で薙払い、岬はサバキのテクニックでかわしながら突き蹴りを放つ。藤堂は圧倒的な力業で倒し、具志上もまた瞬速のパンチで次次倒していく。最後に残った坂上は奥の部屋に逃げこもうと走りだしたが、天宮が逃さなかった。飛び足刀蹴りで倒し、胸倉を掴んだ。「立石夫妻はどこだ。言え。」「ひぇーっわかったわかったから…このすぐ下の階の奥の部屋だ。」「そうか。だがお前の罪は許し難い。ここでぶっ殺してやる。」天宮は拳を上げ、渾身の正拳突きを坂上に打ち込んだ。「ヤァーッ。」拳は鼻先1ミリで止まる。「ふん、誰が殺すかよ。裁きを受けるんだな。どの道お前は死刑だ。」失禁してへたり込んだ坂上を天宮は床に叩き伏せた。皆が駆け寄ってくるが、岬が慌てている様子。「天宮さん、拘束終わりましたが、祈祷堂に戻ったら長瀬さん達いないんです。」「何っ。…」嫌な予感がして走り出す天宮。下の階にたどり着くと、廊下奥に剣を抜いた長瀬が立っていた。「どういうことだ長瀬。子供達は、皆は。」「ふふ、わかってるでしょ言わなくても。あの人達は奥の部屋で監禁してる。そして私は何者か。ふふふふっ。決まってるでしょ、このゾンビ事件の黒幕よ。ゼ〜ンブ私が仕込んだ罠。ハハハハッ楽しかったわ、あなた達とのゲーム。」「ゲームだと…自分のした事がわかってるのかっ。」「わかってるに決まってるじゃない。あんたに何がわかるのさ。私はね、今から12年前。あの死血誤惨の餌食にされたのさ。おかげで坂上のご寵愛を受けて何不自由なく暮らしてた。妹達も。なのに…飽きたからって私以外の妹は処分された。たまたま私は天才的頭脳を持っていたからこの施設の建設に携わって延命できた。事実を知ったのは一年前。待上達の立ち話を盗み聞きしたからよ。私の怨念は頂点に達した。だから信者も皆殺しにする計画を立てた。親や妹達が寂しい思いをしないようにね。そして復讐は達成できるはずだった。なのに何で坂上を殺さない。」「お前、すでに間違っていると何故気付かない。」…続く。

Re: 死血誤惨 ( No.20 )
日時: 2018/04/07 01:16
名前: 梶原明生  

…「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいーっ…ハァ、ハァ、お前に何がわかる。私がどんな思いで生きてきたと思ってる。お前が殺さないから悪いんだ。私の計算ではお前は坂上を殺すはずだった。なのに何故殺さない。それでリセット。全てチャラにしてやるのに。感染して3時間以内のゾンビに効く解毒剤の在処も教えてやったのに…何だよその目。そんな目で見るなっ。」取り乱す長瀬をまるで可哀想な子犬でも見るような目で静観する天宮。「まだ選択肢の余地はある。自首しろ。」「は…自首…何言ってんだ、あたしは罪人か。」「いい加減にしろ目を覚ませ。こんなこと妹さんが喜ぶと思ってんのか。」打って変わって激高する天宮に、薄ら笑いを浮かべる。「ハハ…喜ばないよ。私が喜ぶんだよ。」「貴様っ」「さぁ、ゲームをそろそろ終わりにしよう。加勢なしであんた一人で私に勝てたら奥の部屋の爆薬の解除コード教えてあげる。さぁ、ゲーム開始。」怒りの拳を握り締めた天宮は山構えに構える。「やーっ。」長瀬が剣片手に突進してくる。天宮はこれをかわし、二撃、三撃とかわして互いに対峙する。四回目の時、天宮の服が紙一重で切り裂かれる。「天宮っ。」藤堂や山崎等が駆けつけたが、彼は叫んだ。「来るな。加勢すれば人質の命がない。俺と長瀬の勝負だ。」言われて渋々納得する皆。再び一騎打ちが始まる。天宮は玉受けでついに長瀬の手首を捕まえて、剣先方向に引くと思わせ、柄の方向にいきなり押す。勢い余って鳩尾に柄があたり、空かさず裏拳打ちを放つ。そして…上段足刀蹴りを思いっきり放った。剣を手に持って見つめる天宮。無言で剣を足蹴りで叩き折った。「勝負はついた。さぁ、爆弾の解除コードを言え。」椅子に肘を預けて倒れ込んでいる長瀬を見下ろしながら叫んだ。「フ…フフフフッハハハハッ」「まさか…始めから。いかん。」急いで走り出した天宮は、奥の部屋のドアにあった爆弾を剥ぎ取った。「後50秒。」外廊下目掛けて走り出す。「天宮っ。」藤堂が叫ぶ中、一目散に駆けていく。「うぉりゃーっ。」外の木々の茂みに思いっきり投げた。そして中に入ってから匍匐して伏せた。「ドカーン」…続く。

Re: 死血誤惨 ( No.21 )
日時: 2018/04/16 19:14
名前: 梶原明生  

…凄まじい爆発にドアや窓のガラスも割れて爆風が轟いた。大丈夫ですかっ、天宮さん。」山崎や藤堂達が駆けつけた。「大丈夫だ。ゴホゴホッ…しかしひでー話たぜ全く。あ、長瀬、坂上は。」「大丈夫です。拘束して二階に。」「まさか一緒に。」「ええ。薙刀の新堂さんと岬さんと具志上さんが見張って…」「不味い。」天宮は山崎の肩を借りて一目散に走った。「坂上。私の初めてを奪った男。一緒に死んであげる。」拘束して座らせられていたはずの長瀬の言葉に、首を傾げる新堂。「待てーっ。」天宮が駆けつけたが遅かった。口に仕込んでた毒針を吹いた。「お、お、お前ーっ、何したんだっ。」「猛毒の針。空気に触れると針先から猛毒が出る仕掛けなんだよ。安心しな。私も口の中の毒袋噛んで死ぬから。」「そんな、嫌だ嫌だ嫌だ。死にたくない助けてーああ、ああ… 」二人とも泡を吹いて痙攣し始めた。「糞、長瀬、吐けっ、吐けっー。」




数時間後、天宮達は大学病院にいた。勿論人質達も無事だった。長瀬、坂上は間一髪で一命はとりとめたものの、後遺症は残るとされた。岬がスマホを使い、既に警察に通報していたため、救急ヘリの出動も早かった。恐らくは祈祷堂についた時点で妨害電波はなくなっていたのだろう。また、警察の動きが早かったのも、台風が去ったからではない。既に長瀬はゾンビ達を放ち、街中に到達したゾンビが暴れる被害が続出したためだった。長瀬が言っていたゾンビ薬の解毒剤は、彼女の剣の持ち手部分に隠してあった。直ぐに具志上に打って効果を確かめた警察と病院は、早速ゾンビ被害にあった街の人達にその血清を分けて打ち、事なきを得た。しかしそれ以外の信者のゾンビは…SATと自衛隊がやむなく殺処分しなければならなかった。悲しくうなだれる藤堂に具志上。山崎と天宮は二人を宥めた。日本全国を恐怖のどん底に陥れた一連の「死血誤惨事件」は解決した。あれから2年。琴也、美弥の七五三がやってきた。立石夫妻と天宮、そして婚約者の新堂が来ていた。「ええ、天宮お前いつの間に付き合ってたんだ。」「いや、あんなことがあったろ。なかなか言い出し辛くってさ。実は俺達、結婚を前提にお付き合いしてるんだ。仲人頼めるか。」「何だよ水臭いな。遠慮しなくて良かったのに。うんわかった。鈴美、琴也、美弥の恩人だ。引き受ける。」「良かった。なぁ、翼。」「はい。うれしい。」二人は手を取り合って立石夫妻等と神社を後にした。 了

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