複雑・ファジー小説

『受拳戦争』
日時: 2017/12/04 23:41
名前: 四季彩

彩都さんと四季の合作です。

合作といっても、企画や世界観・キャラクターの名前や原形、プロットなどは、彩都さんです。
四季はキャラクターの口調を考えたくらいだけのもので、執筆係です。

よろしくお願いします。

スレ立て 2017.11.19
投稿開始 2017.11.20

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Re: 『受拳戦争』 ( No.24 )
日時: 2018/04/02 19:06
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 力押し戦法に切り替えることを宣言した土豪は、メリケンサックを握り直し、改めて古臣へと視線を向ける。しかし古臣は、土豪から威圧感のある視線を向けられても、微塵も怯まない。もちろん焦りもしない。先ほどまでと一片の変化もない落ち着きのある表情で、対戦相手である土豪をじっと見つめていた。

「ほんなら行くで」

 低い声で告げるや否や、土豪は古臣へと突進していく。

「うぉりゃあっ!」

 土豪の全力の拳が古臣へ振り下ろされる。
 古臣は咄嗟に退いた。
 一発目をかわした古臣へ、土豪は更にパンチを繰り出す。
 万全の体勢でないまま土豪の二発目の拳に見舞われた古臣。彼は両腕を交差させて何とか防いだが、勢いを殺しきれず、数メートル後ろへとよろけてしまう。

「……っ」
「まだまだやで!」

 バランスを崩した古臣に対しても、土豪は、躊躇なく攻撃を続ける。次から次へと、流れるように。強烈な拳を古臣へぶつけていく。

「とっとと終わらせたるわ!」

 古臣は防戦一方だ。
 パンチを避けるのに精一杯で、反撃するタイミングがない。

「おりゃっ、うぉりゃあ!」

 土豪の素早い連続パンチの前には、他人より聴力が良いだけの古臣など無力だ。いくら耳が良くとも、反撃できなければ、どうしようもない。

「くっ……」

 猛攻を受け、顔をしかめる古臣。

「これで終わりや!」

 勢いに乗った土豪は、止めの一撃を古臣へ叩き込んだ。
 ゴシュウ、という凄まじい音が鳴り、飛んでいく古臣。

「あぁー、残念だべ……」

 土豪と古臣の戦いを外から観ていた翌実がぼやく。

「これでどうや!さすがに決まったやろ!」

 殴られて数メートル吹き飛んだ古臣は、拳が命中した左頬を押さえながら、ゆっくりと起き上がった。
 そして口を動かす。

「……やられましたね。降参します」

 それは、二勝目を告げると同義であった。

「第二戦、勝者!呶呶 土豪!」

 こうして戦いは運命の三戦目へ――!

Re: 『受拳戦争』 ( No.25 )
日時: 2018/04/09 06:12
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 3年1組は、目盛 秤、呶呶 土豪、と二連勝を収めた。『白兵学園』の強敵との激しい戦いを乗り越えての、大きな二勝である。これで3年1組は残り一勝。次へ進む希望がだいぶ見えてきたと言っても差し支えないだろう。

「じゃ、次がラストな。第三戦、田井中 鈍器VS杭谷田 素描!開始!」

 筋肉隆々な太い腕を素早く掲げ、舌禍は勢いよく、第三戦の開始を告げる。熱い戦いに興奮したせいか、その褐色の肌には、汗の粒がたくさん浮かんでいた。
 女子が見れば「暑苦しい」と嫌悪感を露わにしそうな見た目である。

「杭谷田です。よ、よろしくね」

 両手のすべての指のまたに鉛筆やシャーペンを挟んだ素描が、弱々しい声で挨拶をする。まるでクラス変え直後の挨拶のような、穏やかものだった。敵に向けての挨拶とは到底思えない。

「おう。よろしクネ」

 鈍器は適当に返す。
 しかしその視線は自身の手元に集中していた。
 素描そっちのけで一体何をしているのかというと、手のテーピングを調整しているのだ。包帯でのテーピングなので、しっかりと巻いておかなくては途中で外れてしまう危険がある。

「な、何て呼べばいいかな?」
「ミーのコト?ドンでどうヨ?」

 ちなみに「ドン」というのは、鈍器のあだ名だ。

「うん。どう呼ぼっか……」
「田井中でいいヨ」
「あっ、本当に?分かったよ。じゃあ田井中くんにするね。あ、でも、それはさすがに馴れ馴れしいかな……」
「気にしなくていいッテ!」

 少し間を空けて、鈍器は続ける。

「どのみち今日しか会わナイんだからネ」

 すると素描は、恥ずかしそうに頬を赤く染める。端から見ても気づくくらい、分かりやすく照れている。美少女と会話したわけでもないのに、不思議だ。

「う、うん。じゃあ田井中くん」

 その瞬間。
 気弱そうだった素描の目つきが豹変する。

「改めて、よろしくね」

 猟犬のような目つきになった素描は、指のまたに挟んでいた物を、鈍器に向けて投げる。まずは鉛筆だ。
 鈍器に降り注ぐ鉛筆の雨。
 彼は素描の豹変に驚き戸惑いつつも、ひとまず鉛筆をすべて避ける。

「逃げないで遊んでほしいな」

 鉛筆の雨をかわした鈍器に、続けて、シャーペンの群れが襲いかかる。幾本ものミサイルに同時に襲いかかられたような状況だ。

「これから仲良くしようね、田井中くん」

 鈍器は、包帯で固めた手で、迫りくるシャーペンを払い落としていく。
 しかし、そこへまた鉛筆の嵐が襲ってくる。

「何するのカナ⁉」
「遊んでよ、田井中くん。もっともっと、一緒にいてほしいな」
「キモイヨ!」
「そんなネタはいいから。こっちを向いて」

 鉛筆やシャーペンを投げ続ける素描の顔には、不気味な笑みが浮かんでいた。それはもう、視界に入るだけでゾッとするような笑みである。

「これからも永く仲良くしようね、田井中くん」

Re: 『受拳戦争』 ( No.26 )
日時: 2018/04/16 04:27
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 鈍器と素描の戦いは続く。

 狂気じみた笑みを浮かべ、「仲良くしよう」というような意味の発言を繰り返す素描。彼は、発する言葉とは裏腹に、鉛筆やシャーペンを鈍器へ投げつけ続ける。
 たかが鉛筆やシャーペン。一二本命中したところで致命傷にはならないだろう。しかし、その狂気じみた笑みとあいまって、なかなかの怖さを生み出している。
 ……いや、表現としては、「怖さ」より「不気味さ」の方が相応しいやもしれないが。

「田井中くん、もっと寄ってきてくれない?」
「ペンの雨のせいで近づけないんダヨ!」
「どうして?田井中くんがこんなくらいで挫けるなんて、信じたくないよ。そんなのは僕の好きな田井中くんじゃない」

 やや恐ろしい発言をしつつ、不愉快そうに顔を歪める素描。鈍器がつれない態度なのが気に食わないのだろう。

「僕のところへ来てよ!真の想いがあれば、こんなくらいどうってことないよね!?早く来てよ!早くっ!!」

 大人しそうな容姿に似合わない、激しい言い方。
 さすがの鈍器も、これには戸惑いを隠せずにいた。

「ミーもこれはさすがに引くヨ……」

 鈍器の額に浮かんだ汗の粒は、頬を伝い、地面へ落ちる。

「早く!田井中くん!」
「う、う……。行きたくないナ……」
「僕のもとへ来て!」

 狂気を感じる素描が怖く、鈍器はなかなか素描へ近づけない。危なさすら感じさせる男に接近する勇気が出ないのだ。

「田井中鈍器!男だろ!しっかりしろよ!」

 なかなか足が動かない鈍器に檄を飛ばしたのは秤。

「でもミー、アレはさすがに怖……」
「負けたらみんなの努力が無駄になるんだぜ!?ここは、いっちょ勇気出して頑張れよ!」
「うぅ……、嫌だナァ。でも……」

 心を落ち着けようと一度瞼を閉じる鈍器。
 そして、彼は今までの努力を思い出す。
 この『文武学園』に合格するため、3年1組全員が一丸となって頑張った日々。それぞれの苦手分野は教え合い、得意分野は得意な者同士で競って伸ばした。
 大変ながらも充実していた、輝いた記憶を思い出した鈍器。

「よし!やってやル!!」

 再び瞼を開いた時、彼に迷いはなかった。

 ――勝つ。

 今自身にできることは、目の前の素描に勝つこと。ただそれだけなのだ。

「オオオォォォォォッ!!」

 少年漫画級の雄叫びをあげ、素描へと駆け寄っていく鈍器。今の彼には、素描への恐怖心など、もうない。

 そして――。

「第三戦、勝者!田井中 鈍器!」

 舌禍が盛大に鈍器の勝利を告げる。

 素描を一撃で仕留めた、鈍器の捨て身の必殺技。
 それは、素描を抱き締めることだった。

「た、田井中くん……!まさか抱き締めてくれるなんて思わなかったよ……!」
「これしかなかったンダヨ」
「田井中くんが僕をこんなに想ってくれていたなんて、嬉しい……!」
「ミーは別に、想ってなんかないんだけどネ」

 形はどうあれ勝ちは勝ち。
 こうして鈍器は、強敵・杭谷田 素描に勝利を収めるのだった。

Re: 『受拳戦争』 ( No.27 )
日時: 2018/04/23 01:51
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

「おっし、じゃあ3年1組の勝利だな。しかし両者とも、良い戦いをありがとう!」

 舌禍は腕や肩の筋肉を際立たせるようなポージングを取りつつ、ハキハキした口調で3年1組の勝利を告げる。
 彼は一見空気を読めない男のようだが、そんなことはない。今だって、勝者を祝福するだけではなく、敗者の健闘も称えているのだ。さすがは『文武学園』の教師といったところである。

「……完敗でした」
「翌ちゃん勝てると思ったのに、残念だべ。でも、これを機にまた頑張るべ」
「田井中くんに抱き締めてもらえて嬉しかったな……!」

 敗北を謙虚に受け入れながらも、少し落ち込んだ顔の古臣と翌実。
 そんな二人とは対照的に、素描だけは幸せそうな顔だ。不自然なくらい、穏やかで満ち足りた表情である。恐らく今彼の心は、鈍器のことでたくさんなのだろう。

「翌ちゃん、これからもっとモリモリ食べる!今までは十杯しか食べられなかったけど、三十杯を目指すべ!」
「田井中くんが想ってくれていたなんて嬉しいな……」
「そんで、練習時間も増やすべ!まずは三倍!ほいっ、ほいっ、ほいっ、と!」
「うわぁ。告白されたらどうしようっ……」
「合宿も、ABC全コースに参加するべ!」
「プロポーズされたりして……うわぁ。どうしようどうしよう」

 これからの具体的なメニュー変更を述べる翌実。鈍器と進展する妄想に取りつかれている素描。二人とも、既に自分の世界へ入り込んでしまっている。
 そんな二人を近くで見ていた古臣は、一人呆れ顔だった。『白兵学園』代表の三人の中では、彼が唯一の常識人だったのかもしれない。

「筋トレ、基礎稽古、メンタルトレーニング……たくさんあるけど頑張るべ!」

 誰に向かって宣言しているのやら、といった感じだ。もはや独り言の域である。

「告白、お出掛け、家デートに運命のプロポーズ……!これから楽しみだなぁ。こんなところで運命の人に出会うなんてロマンチック……!」

 素描は素描で、かなり痛い。
 妄想の単語を端から繰り返すその様は、明らかに普通ではない。彼を知らない一般人が今の彼を見れば、間違いなく引き、さりげなく離れようとすることだろう。
 彼の周囲には、ただならぬ空気が漂っていた。それはもう、狂気さえ感じられるような空気が。

Re: 『受拳戦争』 ( No.28 )
日時: 2018/04/30 03:58
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 勝利を収めた三人のもとに、翡翠たち六人がやって来た。先に行っている三殊らを追っていた翡翠たち六人は、ようやくここまで追い付いたのである。

「おやおや?これはこれは。目盛氏に呶呶氏、それに田井中氏ではありませんか」

 翡翠が目をパチパチさせながら言った。
 三人だけで三殊らはいないことに、少々戸惑っているようだ。

「三人だけ……みたいだね」
「えー、三人しかいないのぉー?事実、正直がっかりー」

 不安げな表情の麗と、やや不機嫌そうな事実が、それぞれ発する。

「事実ちゃん。三人に会えただけでも良いことにしようよ」
「えぇー」
「もうちょっと我慢しようね」
「ぶーぶー」

 麗と事実は、まるで姉妹のようだ。

「にしても、三人だけとは寂しいな!早く全員揃いたいっ!」

 飛翔はジャンプやアキレス腱を伸ばす運動で退屈を紛らしながら発言する。彼は常に動いていたい質なので、必然的にこういうことになるようだ。
 ……珍妙な光景だが、突っ込まないでやってほしい。

「空井くん、見てこれ見てこれ。この子、くびれが可愛いんだよ」
「え?よく分からないんだなっ」
「見てここ見てここ。腕から腰までのライ……」
「よく分かんないって!」
「……まぁ、空井くんは子どもだから。仕方ない仕方ない」

 陸羽は、飛翔にエロ本を見せたが微塵も理解を示してもらえず、悲しげな顔をしていた。ほんの少しも共感してもらえず、悲しい気持ちになったようだ。

「取り敢えずあたしたちだけで先へ進むしかなさそうだな。早く皆と合流しよう」

 アマゾンやジャングルで育ったため体力のある十六は、淡々とした声色で言った。既に結構な距離を歩いてきたが、彼女の顔に疲労の色は欠片もない。

「ほんなら、そろそろ行こか」
「ミーはもう元気になっタヨ。キモい記憶ハ脳から消したからネ」
「さっさと行こうぜ」

 こうして、翡翠たち六人と土豪ら三人は無事合流したのだった。
 しかし、先に行っている三殊たちに合流するためには、さらに先へ行かなくてはならない。それも、急いで。このままモタモタしていては追い付けるわけがないからである。

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