複雑・ファジー小説

『受拳戦争』
日時: 2017/12/04 23:41
名前: 四季彩

彩都さんと四季の合作です。

合作といっても、企画や世界観・キャラクターの名前や原形、プロットなどは、彩都さんです。
四季はキャラクターの口調を考えたくらいだけのもので、執筆係です。

よろしくお願いします。

スレ立て 2017.11.19
投稿開始 2017.11.20

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Re: 『受拳戦争』 ( No.85 )
日時: 2019/04/15 00:00
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 三回目、お互い市民として生まれ育ち、それでも二人は出会った。それは決まりきった、変えられない運命だったのだろうか。市民など、星の数ほど存在していて。知り合うことなく死んでいく人の数の方が多いはずだ。なのに出会った。多々良と伊良部の生まれ変わりは、出会ってしまった。そしてまた、これまでと同じような終わり方をした。

 強い縁――それはもはや、呪いなのではないだろうか。

 多々良から救いようのない前世を聞かされ、三殊は、段々そんな風に思ってきた。

「それで、多々良くん」
「何だ」
「前世はまだあるのかい?」

 すると、多々良は頷いて、「あぁ。長い話になった悪いな」と言った。それに対し三殊は、そっと首を横に振る。その動作を目にした多々良は、ほんの少し柔らかい表情になった。

「四回目、俺は警官で、あいつは刑事だった」

 これまでとは違った展開に、三殊は少しばかりワクワクしてしまう。他人のこと、しかも不幸なことでワクワクするなんて駄目だと、そう分かっていながらも。

「俺は、薄野 白羅(すすきの はくら)という名でな、普通の暮らしをしていた。三回も転生していれば、勉強も苦労しなかったしな」

 淡々と話す多々良。

「そこで俺は良いことを思いついた」
「良いこと?」
「そう。『警官になって、クゥロを殺そう』と考えたんだ」

 多々良の口から出た物騒な発想に、三殊は暫し戸惑った。

 ただ、多々良が悪いとは思わない。
 悪いのは、こんなことを繰り返させている、運命の方だろう。

「殺す……そっか。でも、狙ってそんなことができるもの?」
「警官になれば殺れるかもしれないと思っていた」
「……思っていた、なんだね」

 つまり、成功しなかったということか。

 三殊は密かに思う。

「あぁ。そうして俺――薄野 白羅は、警官になった」
「本当になれたんだね」
「俺は、一度決めたことを変えたりはしないタイプだからな」

 そう。
 だから今も、伊良部を殺すことを諦めていない。

「警官になってからの毎日は忙しくも充実していた。だが、またしてもそれを壊すやつが現れた」
「彼だね」
「そうだ。沙汰 共起(さた きょうき)という先輩が配属されてきたのだが、彼こそが、クゥロの生まれ変わりだった。そう、伊良部だ」

Re: 『受拳戦争』 ( No.86 )
日時: 2019/04/22 01:06
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 多々良――警官になった白羅と、その先輩である共起――つまり伊良部。

 それは、二人の、四度目の邂逅だった。

「最初出会った時は、正直、クゥロがまた現れたことに恐怖した」
「前に刺してきた人だもんね……」

 多々良の前世語りに慣れてきた三殊は、段々、彼に共感できるようになってきた。今はもう、多々良の話すことすべてを、素直に真実だと受け入れることができる。

「あぁ。だが『今は違う!』と思い、二人の時間を作るよう試みた」
「二人の時間、かぁ……」
「そうだ。そこで俺は『クゥロ、お前を殺す』と宣言してやった」

 だが、今の三殊には、四回目の結末も薄々見えてしまっている。
 それだけに、複雑な心境だ。
 悲しい結末であることを知りながらドラマを観るかのようである。

「勇ましいなぁ」
「俺は本気で殺るつもりだったからな」
「そっか。それは凄い」

 三殊は「僕が多々良だったら、もう無理だ、と諦めていただろうな」と思った。

「だが、そう易々とくたばるあいつではなかった」
「だよねー……」
「あいつは静かに『僕の名前は沙汰だ』などとほざきやがった。しかも、余裕の微笑みでな」

 三殊は内心「うわぁ……」と思う。

「そして、俺の額に拳銃を突きつけた」

 つい渋い顔をしてしまう三殊。
 予想はしていた展開だが、実際に聞くと、また特別な心苦しさがあった。

「あいつは『僕の計画を完璧に成功させるには、君は邪魔なんだ』と言って、拳銃を撃ちやがった」

 多々良は悔しそうに話す。

「結果、額を撃たれて即死。これまた呆気ない死に方をしてしまったものだな、自分でも呆れる」

 はぁ、と溜め息をつく多々良。
 心境を上手く説明できず、黙り込む三殊。

 二人だけの空間に沈黙が訪れる。

 歩く二人の微かな足音以外に音はない。多々良も三殊も口を閉じているし、他の者がいるわけでもないから、音がないのは当然といえば当然なのだが。しかしそれにしても、ここまでの静けさというのは、異様な雰囲気を漂わせるものだ。

 多々良が五回目について話し出すまで、その沈黙は続いた。

Re: 『受拳戦争』 ( No.87 )
日時: 2019/04/29 02:14
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 長い沈黙の後、多々良は五回目の人生について話し出す。

「五回目の人生、俺は、太陽ヶ原(たいようがはら) サンという十二歳の少女だった」
「女の子!?」

 驚きの声をあげる三殊。

「あぁ。よく考えてみれば、これが初めての女だった」
「そ、そうなんだ……」

 露骨に驚き過ぎるのも良くないと思い、三殊は、平静を装ってそう返した。が、多々良が今のままの容姿で少女になっているところを想像してしまって、吐き気に襲われた。ちなみに、その原因は、女の子になった多々良が気持ち悪かったからではない。三殊が何となくイメージした少女風多々良の存在が、衝撃的過ぎたからである。

「初めて女に転生した俺は、『女って、こんなんなんだなぁ?』と思いながら、中学一年まで普通に暮らした」
「普通に暮らせたんだ……」
「俺が男だった頃の記憶を持っているなんてことは、誰も知らなかったからな」
「……そっか」

 女子中学生の暮らしを満喫していた多々良――否、サン。

 しかし、そんな彼女に転機が訪れる。

 それは突如現れた妖精・フワリンとの出会いだったと、多々良は話す。

「フワリンって……ぷぷ」
「笑うなよ」
「あ……ごめん」
「いや、分かったならいい。気にするな」

 その謎の妖精・フワリンは、サンを魔法少女にした。

「魔法、少女……?」
「あぁ」
「魔法少女って……漫画とかアニメに出てくるような?」

 三殊の問いに多々良は頷く。

「そうだ。可愛らしいヒラヒラの衣装をまとい、魔法を使って敵を倒す。まさに、漫画やアニメに出てくるような『魔法少女』ってやつだ」

 淡々と話す多々良を、三殊は信じられない思いで見つめた。
 こんな身近に魔法少女の経験がある者――それも男子がいるとは、夢にも思わなかったから。

「それから俺は、魔法少女として、魔法で敵と戦い続けた」
「敵って……」
「色々いたが、なかなか強い奴が多かった」

 三殊は動揺を隠せない。

「戦ったんだ……けど、戦いなんて怖くはなかったのかい?」
「いや、もちろん、怖いこともあったさ。だが、普通の女子中学生だったわけじゃないから、基本はそんなに怖くはなかったな」

 魔法少女であった過去について話す多々良は、落ち着き払っていた。

Re: 『受拳戦争』 ( No.88 )
日時: 2019/05/06 02:19
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 多々良――否、太陽ヶ原 サン。

 彼女は、魔法少女として、戦いを続けていたらしい。

 そうして何度も敵を倒していくうちに、サンは、同じ魔法少女がが黒幕であると知ったそうだ。

「黒幕なんてよく分かったね」
「戦いを繰り返していくうちに真実へ近づいていく。それはよくあることだろう」
「そっか……」

 そのような経験のない三殊には、いまいち理解できなかった。

 黒幕の魔法少女の名は、五月野 名月(さつきの めいつき)。
 月がやたらとついた個性的な氏名だが、彼女こそが転生した伊良部だったのである。

 互いの正体が発覚した後、サンと名月はお互いの姿に大笑いした。
 だが、そこは仕方がない。なんせ、女性同士で顔を会わせるのは、この時が初めてだったのだから。

「あの時はさすがに笑ってしまった。懐かしいな」
「それは、まぁ……うん。お互い女性だなんて、笑ってしまうよね」

 それは三殊にも理解できる。

 少女になった知人男性を見たら、驚くとともに吹き出してしまうだろう――三殊はそう思った。

「だが、いつまでも笑っているほど暇ではないからな。しばらく笑ってから、速やかに笑いを止めて、全力での勝負を行うことにした」

 多々良は淡々と語る。
 そんな彼を、三殊はじっと見つめる。

「あれは凄まじい戦いだった。魔法の雨が降り注ぎ、血の湖が広がる……そんな戦いだった」

 二人の全身全霊の攻撃がぶつかり、結果、あまりのエネルギーに街一個が崩壊したらしい。そして、サンも名月も、同士に息絶えたという話だ。

「街一個が崩壊って……信じられないエネルギーだね」

 とても現実とは思えないことを言われ。しかし、今の三殊には、それが真実であると分かった。多々良の言葉を信じることができた。

「俺も、まさかあんなことになるとは、想像していなかった」
「だろうね」
「街のやつらには悪かったな」
「まぁ、仕方ないことだよ」

 すると多々良は、三殊へ視線を向け、ほんの少しだけ口角を持ち上げる。

「そう言ってくれてありがとな」

 多々良からいきなり礼を述べられた三殊は、何だか気恥ずかしくて、多々良から目を逸らす。少し、困ったような表情で。

Re: 『受拳戦争』 ( No.89 )
日時: 2019/05/14 18:33
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 魔法少女として伊良部と出会い、戦いによって命を散らした五回目の人生。その話を終え、多々良は次――六回目の人生のことを語り出す。

「六回目、俺の新たな転生先は、剣士だった」

 またしても飛び出してきた、普通ではない、意外な転生先。しかし、三殊はもう驚かなかった。なぜなら、これまでに散々、意外な転生先を聞いてきたから。

「剣士って……剣を振るって戦うやつ?」
「あぁ、そうだ」
「何だか漫画みたいだね」
「あぁ。確かにそうだな」

 もはや、何が出てきても驚きはしまい。

「俺は宮本 小次郎(みやもと こじろう)という剣士だった。まさかの剣士、呆れたよ」
「戦う系が多いように感じるね」
「またかよ!……って、感じだよな」

 宮本 小次郎となった多々良は、巷で噂の剣士・佐々木 武蔵(ささき むさし)と勝負することになったそうだ。

「一体どんな奴なんだ?と思っていたんだがな、現れたのは伊良部だったんだ」
「彼が……佐々木 武蔵だったのかい」
「あぁ。そういうことだ」

 まさかの相手に動揺する中、戦いは始まった――多々良は三殊にそう話す。

「あれは真剣勝負だった。少しでも気を抜けば、気を抜いた方が死ぬ。そんな、かなり際どい戦いだった」

 淡々とした調子で語る多々良を見て、三殊は思わず「えぇっ……」と発してしまう。

 三殊は、少しでも気を抜けば死ぬというような状況に陥ったことは、これまでに一度もない。それゆえ、その緊迫感のすべてを理解することはできない。だが、想像することくらいはできた。

「そんな状況だったのだが。見物客の中に紛れ込んでいた武蔵の部下に邪魔をされてな。結局俺――いや、小次郎は、首を刎ねられてあっさりと死んでしまった」

 多々良が語った六回目の人生。その最期は、あまりに呆気ないものだった。言葉にならないくらいあっさりとした、命の落とし方である。

 呆気ない死、というのは、案外世に溢れているものだ。

 しかし、この多々良の死は、呆気ないという域を軽く越えている。
 これほどの呆気なさを表現する言葉は、この世にはまだ、存在していないのかもしれない。

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