複雑・ファジー小説

『受拳戦争』
日時: 2017/12/04 23:41
名前: 四季彩

彩都さんと四季の合作です。

合作といっても、企画や世界観・キャラクターの名前や原形、プロットなどは、彩都さんです。
四季はキャラクターの口調を考えたくらいだけのもので、執筆係です。

よろしくお願いします。

スレ立て 2017.11.19
投稿開始 2017.11.20

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Re: 『受拳戦争』 ( No.99 )
日時: 2019/07/15 18:29
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 とある部屋を発見した三殊ら3年1組。彼らは、少し緊張した面持ちながら、心を決め、その部屋に入ることにした。
 もしこれが一人や二人であったなら、入る勇気は出なかったことだろう。ただならぬ空気が溢れている部屋だから。

 けれど、今は3年1組の皆がいる。
 だから大丈夫、と、誰もが思えた。

 全員で部屋に入る。

 するとそこには、『たった一人で足を組んで微笑む』伊良部が存在していた。

「待っていましたよ?多々良さん?そして皆さん?」

 静かに微笑む伊良部に、多々良はジャンプして迫り、パンチを放とうとする。

 ――そう、多々良には『暴力』という、特殊能力のようなものがあったのだ。

 だが、伊良部とて常人ではない。彼は多々良の拳による攻撃を、簡単に受け止めた。さらにそこから、地面へと叩き落とす。そして、多々良の手を足で踏む。

「落ち着けよ、ザコ風情が?」

 伊良部は、多々良に冷酷な眼差しを向けながら、そんなことを言った。

 踏みつけられている多々良の手が、床にめり込む。

 まさかの行動。
 圧倒的な強さ。

 伊良部の人離れした言動に、多々良はもちろん、3年1組メンバーらも愕然とする外なかった。

 それほどに、伊良部は特別だったのだ。

 彼はもはや、人間とは思えぬような存在であり。3年1組メンバーらはもちろん、三殊にも、多々良にさえも、理解できる存在ではなかった。

 室内が静まり返る。

 誰も何も言わないし、呼吸すらまともにできない。3年1組メンバーたちは、それほどに恐怖心を抱いていた。もう少し具体的に表現するなら、得体の知れないものへの恐怖心、というところだろうか。そのせいで、気軽に言葉を発することなどできない状態だった。

 そんな中、伊良部は静かに告げる。

「さて、最後です。この試験を突破すれば、貴方たちは晴れて、『文武学園』に入学することができます」

 それに対し、三殊は問う。

「試験、とは?」

Re: 『受拳戦争』 ( No.100 )
日時: 2019/07/22 22:21
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 三殊の「試験とは?」という問いに、伊良部は「試験?あぁ、簡単なことです」と返す。伊良部はそれから、口角を持ち上げ、道端の花のような可愛らしい笑みを浮かべる。

「私を倒すことです」

 少年のような可愛らしい笑顔のまま、伊良部は一度手を叩く。

 直後。
 3年1組メンバーは全員一瞬にしてボコボコにされてしまった。

 もちろん、三殊も巻き込まれた。3年1組メンバーは全員痛い目に遭わされ、『地に伏せる』という言葉の似合う盤面となってしまっている。

「……っ」

 想定を遥かに超えた素早さに、驚きを隠せない多々良。
 伊良部は、驚愕する多々良の前へ、ゆったりとした足取りで移動する。

「今回も無理でしたね?」

 伊良部の顔面に浮かぶは、邪悪な笑み。
 悪魔のような、黒い笑み。

「くそっ……!」

 多々良は激怒し、再び立ち上がる。そして、目の前の伊良部に向かって拳を放つ。気合いを込めた一撃。だが相手は伊良部、そう上手くはいかない。多々良の全力の拳は、あっさりと受け止められてしまった。

「君は何故、私に歯向かう?何故立ち向かう?何故?何故?」

 大袈裟に不思議がる伊良部。

「お前みたいな邪悪をこの世から消すためだよ」

 多々良は静かに言い放ち、頭突きを放つ――その一撃は、伊良部の顎にクリーンヒット。初めて伊良部にダメージを与えることができた。

 予想外の攻撃を受けて苛立った伊良部は、多々良を集中攻撃し始める。もう二度と立ち上がることができないように、と。何度も何度も何度も何度も、攻撃する。不気味なくらい、何度も何度も。多々良は、受け止めようとしたり何とか回避したりしつつ凌ぐ。が、そうしていられるのも時間の問題。体力が尽きれば終わり、と思われた。

 ――その時、そんな伊良部の背を殴る存在が現れる。

「……?」

 伊良部は少し戸惑ったような顔をしつつ振り返る――そこにいたのは、三殊だった。

Re: 『受拳戦争』 ( No.101 )
日時: 2019/07/29 22:16
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 背を弱々しく殴る存在に気がつき、伊良部は振り返る。その瞳に映ったのは、他の誰でもない、三殊だった。

 三殊には弱い力しかない。伊良部とやり合うどころか、多々良にさえ勝てないであろうくらいの、非力。にもかかわらず、三殊は伊良部の背に拳を叩きつけ続ける。

 そんな、三殊のまさかの行動に、伊良部も多々良も愕然とする。
 空気が直前までと少し変わった。
 驚きと戸惑いの混じったような空気が、場に漂う。

 蚊に刺されたかな?という程度の攻撃に段々苛ついてきた伊良部。ここまでは冷静さを失わなかった彼だが、苛立ちを堪えきれず、ついに三殊に攻撃を仕掛けた。

 が、三殊はそれを受け止めた。

 しかも、ただ受け止めただけではない。そこからさらに、伊良部に抱き着いていく。

「今だ!多々良くん!」

 三殊は伊良部を懸命に抱き締めながら、多々良に向かって叫んだ。

「よくやった!」

 多々良は、少し救われた、というような顔で叫び返す。

 そして。

 両腕を拘束されている伊良部の頭部を、全力で蹴り飛ばした。

 その蹴りは、能力を使用しての蹴りであった。それゆえ、威力は常人の蹴りの威力を遥かに超えていて。伊良部の体は、三殊諸共吹っ飛んだ。

 だが、多々良は少し違和感を覚える。

 ――刹那、急に脱力感が襲ってくる。

「……っ!?」

 急な脱力感に焦る多々良。
 彼はそのまま、脱力感によって倒れ込んでしまう。

 蹴った時に負傷したわけではない。もちろん、戦意だってまだある。体力とて、まだ残ってはいるはず。

 なのに、みるみるうちに、体から力が抜けてゆく。

 これは一体何なのか。
 何が起きたというのか。

 多々良の心は乱れている。

Re: 『受拳戦争』 ( No.102 )
日時: 2019/08/05 15:11
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 倒れ込んでしまった多々良。
 呼吸は何とかできるものの、体を動かしたい気持ちがみるみるうちに消滅してゆく。

「な、何だ……?」

 しかも、奇妙な現象はそれだけではなかった。体を動かしたい気持ちが消えてゆくのみならず、指一本すら動かせないようなことになってしまっていたのだ。意味が分からない状況に陥ってしまった多々良は、静かに首に力を加える。すると、首だけは動いた。

 多々良は、伊良部と三殊を見る。

 三殊も、多々良と同じように倒れてしまっていた。目がガクガクと動き、動揺しているのが容易く見てとれる。

 そんな中、伊良部だけが肩を脱力させたまま立ち上がった。

「あ、危なかったなぁ……?あの攻撃を受けていたら、さすがに私でも死んでいたかもしれないなぁ?」

 焦ったように、髪を片手で掻き上げている。

 多々良は『えっ?どういうことだ?』と思いつつ、伊良部を見る。すると伊良部は返す。

「あれっ?気付かない?なぁに、簡単なことですよ?私は『能力』を発動しただけですよ?貴方と一緒、能力者です」

 伊良部のその発言に、『まさか……お前を倒すために手に入れたこの能力と同じ概念を!?』と驚愕する多々良。

「私の能力は今まで誰にも破られたことがない!」

 さらに宣言する伊良部。

 多々良は「はぁっ!?」と叫びたい衝動に駆られる。が、叫べない。叫びたくて仕方がないのに、大きな声を発する力がどうしても出なくて。

「それもそのはず、何故なら私の能力は『無力』ですから?『どんな力でも無にする』力、それが私の『能力』です!」

 邪悪な笑みを浮かべながら高笑いする伊良部。
 彼の発言はまだ止まらない。

「更に更にぃ!どんな『力』でも『無力化』するんですよぉ!それはもちろん『筋力』でもねぇ!アハハハハハ!」

Re: 『受拳戦争』 ( No.103 )
日時: 2019/08/12 22:18
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

 どんな力も無力化する力――。

 伊良部の発した言葉を聞き、多々良は「力が入らない原因はそれか!」と理解する。

 だが、理解して何になるのだろうか。
 理解できても、そんなことには何の意味もない。
 何にもならない。

 多々良はそんな風に思考し、静かに、『伊良部には勝てない』という絶望の淵に落ちる――。

 伊良部の背後を見ながら、多々良と同じく絶望する三殊。

 そんな時だった。
 三殊と多々良以外の3年1組メンバーたちがすっと起き上がる。

「ぼっ、ボクには効いていませんっ……!」
「オレにも効いていないんだぞ」
「このぼくも……平気でんな」

 半天、枯淡、永保が言う。

「私にも聞いてないよ!」
「事実もまだまだー」
「わたし、負けません……」

 麗、事実、灯も述べる。

「さほど効いてないですな」
「ここはかっこよくいくんだカン……!」
「あてぃしも!」

 翡翠、環視、小坂も発する。

「ミーには効いてないネ!」
「アマゾンやジャングルの生活に比べたら、このくらい!」
「わ、わたくし……実は今も怖いのです……」

 鈍器、十六、黄銅も放つ。

 彼ら彼女らは、まだ折れきっていなかった。いや、それどころか、全員が無意識に能力を発動させていた。

 一斉に伊良部へ攻撃を仕掛ける。

「煩いぞ、ザコ共!」

 だが、伊良部は全員に対して無力化の能力を発動。
 よって、全員を地に這わせた。

 圧倒的な伊良部の能力に、3年1組メンバーらは「どうして勝てないんだ……?どうして……どうして……」と絶望してゆく。彼らに与えられた道は、それしかなくて。

 けれども、一人だけ、絶望しきっていない者がいた。

 そう、三殊だ。

 彼も最初は絶望しかけた。けれども今は、絶望の海に沈むだけの彼ではない。三殊は探そうとしていたのだ、伊良部の隙を。

(伊良部は絶対に隙を見せる!その隙を見つけないと!)

 それが、今の三殊の気持ち。

 だが、何事も、そう簡単にいくはずはなく。
 伊良部の隙は、なかなか見つけられなかった。

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