複雑・ファジー小説

面影は儚く かがちの夢路へ
日時: 2018/10/29 16:11
名前: 藤田浪漫 ◆8nH/qRkwbA



あらすじ

「神の棲まう町」と知られる誘並市。そこには『カオナシさま』という都市伝説がまことしやかに噂されていた。
「夢の中にのっぺらぼうの女の子が出てくる」「その女の子の顔を見ると願いが叶う――」
誘並市に引っ越してきた主人公、月島博人はその『カオナシさま』の夢を見てしまい――




こんにちは。初めまして。藤田浪漫改め写楽というものです。7月30日付で改名しました。
小説を書くのはマジで数年ぶりとかになるのでだらっとふらっとのんびりとリハビリがてら執筆していこうと思います。
地味で冗長な山も谷もない小説ですが、どうぞよろしくお願いします。
頑張って4章ぐらいで一区切りするよう尽力します。
ではでは、よろしくお願いします




目次
前編「不在のアバンコール」

 
一章 「Like a dream on a spring night」>>1-11 >>17-25

一話 「隔絶」 >>1
二話 「安穏/Unkown」>>2 >>3
三話 「白縫筑紫/知らぬ慈し」>>6 >>7
四話 「灯籠/蟷螂」>>8 >>9
五話 「文目/菖蒲/勝負」>>10 >>11 >>17 >>18-20
夢話 「春の夜の夢のように」>>21
七話 「加筆/過失」>>22 >>23
八話 「Mess-age :11」>>24
終話 「廃絶」>>25

二章 「Does yellow innocence dream of no face?」
一話 「劇場/激情」>>28
二話 「segno」>>29
三話 「災厄/再訳」>>30


番外「あの日のぼくらへ」

犬飼圭 「MAD ROCK DOG/微睡む毒」>>12-14




お客様
バンビ さま
人工現物感 さま
浅葱游 さま←すこ


Page:1 2 3 4 5 6



Re: 面影は儚く かがちの夢路へ ( No.26 )
日時: 2018/08/13 20:15
名前: 浅葱 游 ◆jRIrZoOLik


 こちらでは初めまして、浅葱といいます。
 更新の度に面影を楽しく読ませていただいております。

 浅葱個人としてはレンくんが最高にかっこよくて好きですが、一人称独白主人公が視点の作品を書いている共通点から博人くんも好きです。ポチくんも元気でめんこいという印象だけではなく、番外編を見ると彼なりの悩みがあるにも関わらず、表にそれを見せない姿がある事実が男の子っぽいなと思いました。こうした男の子らしさを自然に描けるというのは、やはり性別の壁があるんだなと自身の未熟さや、壁に手が届かない歯痒さが強いですね。うらやましくもあり、素敵な書き方だと思いました。

 特に好きなシーンとしては、ポチくんは>>20の博人くんとの会話の部分です。
 >>「……そうッスね、僕だったら──」
 >>少し含みを入れて、彼は自分の右手を物憂げに一瞥してから言った。
 >>「──中学の時に戻りたいッスねぇ」
 の部分ですね。勝手な想像と妄想で、この時にポチくんが感じていたであろう気持ちや、思い出された過去のことなどを想像すると、心が辛くなりました。番外編を先に読んでいたこともあり、なお、重たいけれど心底の願いなんだなと感じました。好きです。

 博人くんの独白のような視点の全てが好きですが、特に夢話>>021が好きです。要らない考察が進んでしまいますが、夢が持つ意味とか、夢で出会う少女との関係がどのようなものであるのか等々、謎が残っていることが、読んでいてとても楽しみです。その謎をどのように写楽くんが綴っていくのか、非常に楽しみです。

 レンくんは今後出番が増えたらいいなと密かに願っています。今だけでは、十分にレンくんの好きなところを抽出するのが難しいので、またの機会にお伝えさせていただきます。

 本をよく読んでいることもあり、語彙や作品の雰囲気が素敵だと感じながら更新の度に読ませていただいています。言葉の止め方によるリズムの生まれ方、テンポ良く進んでいく会話も、読んでいて飽きることがないのはすごいなと思います。文量が多くても読めるのは、写楽くんのそうした書き方によるところが大きいのだろうなと思いました。
 ずっと明るい調子で進んでいるわけではないのだろうけど、灯ちゃんがいるとぐっと無理にでも前向きになっているんだなと思いました。その分、ともみちゃんと博人くんの会話の切なさが際立っている感じがします。話をする相手によって、間に流れる雰囲気や空気が変わることが分かるのも、読んでいて感心してしまいますし、自分もそうなりたいなと思います。

 ここまで長々と書いてしまいましたが、面影ファンということで大目に見てください(笑)
 あと、心の中では博人くんはちゃんヒロ、レンくんはレン、ポチくんはポチくんって呼んでます。好きという気持ちを言葉で表すのが難しく、まとまりのない文ですが、面影の読者でよかったと思いました。
 面影を生んでくださってありがとうございます。これからも、完結まで追い続けると決めていますので、無理のないよう更新してください。


 浅葱

Re: 面影は儚く かがちの夢路へ ( No.27 )
日時: 2018/08/15 14:00
名前: 写楽 ◆8nH/qRkwbA

>>ねぎさんへ
この場では初めまして、藤田です。コメントありがとうございます。
こうかしこまって話すことは苦手で、ましてや普段馴れ馴れしく接しているねぎたからこそあれですね、なんだか照れ臭くなります。
ずっと前に憧れていた雲の上のお方が僕の小説を読んで頂いているというのは、物凄く有難いですね。それと同時に「下手なもん見せらんねえ……」と少し肩の力を入れながら面影を書いてます。
セリフ回しに力を入れてます。それとちょこちょこ入る小ネタとか、例えば場面に出てくる創作物とか。
コメントありがとうございます。これからも頑張ルンバ

Re: 面影は儚く かがちの夢路へ ( No.28 )
日時: 2018/09/03 22:25
名前: 写楽 ◆8nH/qRkwbA

 カタカタカタカタ……とフィルムが回る音だけが聞こえる。

 ここはどこだろうか。眼前に広がるのは行儀よく並んだ赤い椅子の群れ。その先にあるのは大きくて白いスクリーン。両脇を見れば黒い手置きがあって、僕の体重を柔らかなクッションが包み込んでいる。
 僕は今、どこかの古い劇場の席に座っているようだ。輪郭を歪ませるどろりとした薄暗さの中で、スクリーンだけが青白く光を放っている。僕以外の観客はいない。誰もいない。スクリーンの端で四角の列がすごいスピードで下に流れていく。

 カタカタカタカタ……とフィルムはひたすらに、滞りなく回り続ける。

「また逢えたね、博人くん」

 控えめに囁く声が隣から聞こえた。感じるのは懐かしさ、それと愛しい気配。

「うん、久しぶりだね、ともみ」

 僕は答えた。彼女はふわりと微笑んだ。
 フィルムは耳障りな音を立てながら、目まぐるしく回る。忙しそうに回り続ける。
 これは夢なのだろうか。いや、疑うらくもないだろう。彼女に会えるのは夢の中だけだ。

「ともみ、ここはどこなの?」
「どこって聞かれても答えにくいなぁ。あえて言うなら夢の世界……かな?」
「それは分かってるよ。今から何が始まるの?」
「待ってて、すぐに始まるよ」

 ともみはパン、と何かを合図するように手を叩いた。それと同時にフィルムが回る音がパタリと止んだ。今まで不気味な青白い光を放っていたスクリーンがべっこう飴みたいな色に変わる。やがて、ぽそぽそと聞き取りづらい音声とじゃりじゃりとざらついた映像が流れ出す。

──初めまして。月島博人くん、だね──

 スクリーンの奥の女の子はそう言った。雀の音みたいに高くて甘い声。ざらつく映像の中でも彼女の長い髪はとても綺麗で、つややかだった。そして、その女の子には見覚えがある。

「これは……?」
「うん、そうだよ。博人くんの友達の──誰だったっけ?」

 見紛うはずがない。スクリーンに映る女の子は白縫姫菜だ。そして、姫菜と相対しているのは僕。

──君は誰?──

 スクリーンの中の僕は姫菜に尋ねた。不思議な感覚だ。他の誰でも無い自分と誰かが喋ってるのをこうして第三者の視点で見るのは。

──あ、ごめん。次の決勝戦で君と戦う人の姉だよ──

 僕はこの姫菜のセリフに聞き覚えがあった。今映写されているのは、姫菜と僕が実際に初めて会った時の光景だ。確か、剣道の試合で筑紫と戦った後の出来事だった。

──初めましてでこんな事頼むのも変だけどさ──

 姫菜は僕をしっかりと見据えて言う。

──次の試合わざと負けてくれないかな?──

 ともみは手を叩く。静かな劇場の中でパン、と乾いた音が虚しく響いた。その音と示し合わせたようにスクリーンの映像は途切れて、辺りは光を失った。視界は完全な黒に包まれる。

「ともみが消したの?」

 僕は何も見えない中、隣にいるだろうともみに聞いた。うん、と横から返事が返って来た。

「ほら、博人くんと他の女の子が仲良くしてる所なんてあんまり見たくないでしょ?」
「仲良くって……」

 あれが仲睦まじく見えたのなら心外だ。姫菜のせいで初対面の筑紫に八百長を申しかける羽目になったのだから。

「この映像ってともみが流してるの?」
「うーん……、そうなんだけどね」
「……」

 僕は首を捻る。

「私が出来るのは言わば電源のオンとオフだけなんだ。次にどんな映像が流れるかは分からないの。一回消したら自動的にチャンネルが切り替わるテレビみたいなものなんだ」
「ふぅん……」
「ほら、博人くん。また次が始まるよ」

 言うが早いか、またスクリーンから違う映像が流れだす。またセピア色の光で辺りが照らされる。
 スクリーンを眺めて僕は驚いた。映っていたのは僕の後ろ姿だったからだ。それだけならば何も驚くべきことはない。重要なのはその状況だ。
 スクリーンの中の僕がいたのは空港のラウンジだった。
 ぐちゃぐちゃに、めちゃくちゃに、原型も留めてないほどにひしゃげた鉄の塊。唯一残った機体の鼻先がその巨大なスクラップが元は飛行機であったことを知らせている。キノコのような形をした爆炎が捲き上るのを、ガラス越しに見ていた。隣には力なく床に膝をついた妹もいた。もくもくと黒煙が止めどなく空に向かっていく。

「これって……何?」

 心なしか少し震えた声でともみは僕に問いかけた。僕はその映像を見ていられなくなって目を伏せたが、ともみの大きな目が僕をじっと見つめているのは何となくわかった。
 ラウンジの中は嵐のようなざわめきで支配されていた。何が起こったか理解できずに窓に向かっていく人。僕と同じように飛行機の中に家族が乗っていたのだろう、呆然と立ち竦む人。青ざめた人。
 僕がどんな顔をしていたか、その映像からは窺い知れなかった。だけど、恐らく無表情でその地獄絵図を眺めていたことだろう。ちょうど今の僕と同じように。

「ちょっと……これはあんまり見たいものじゃないね」

 ともみはパン、と手を叩いた。それと同時に映像は切り替わる。次に映ったのはまたもや見覚えのある風景。目立つ木製の箪笥。大きめなテーブルに椅子が四つ。茶色のファミリーサイズのソファー。登潟で僕が家族と住んでいた家だ。ブラウン管の古いテレビがニュースキャスターの顔を濁らせている。
 スクリーンの中で小学生くらいの年代の僕と、今はもう死んだお母さんの姿があった。ずっと昔の光景だ。お母さんが口を開く。

──あんた、またお母さんの顔に泥を塗ったね──

 吊り上がった目が幼い僕を見下ろす。幼い僕は何も言わず、その目をじっと見ていた。

──何なのその目は……。そんな化け物みたいな目で……。気持ち悪い──

 何も言わない。じっと。じっと見ている。

──見ないでって言ってるでしょ!?──

 お母さんが勢いよく手を振りかぶった。僕に向かって飛んでくる敵意を、幼い僕は瞬きもしないで見ている。
ともみが無言でパンと手を叩く。パチンと映像が切り替わる。

──お母さん達旅行に行くんだって。私はお兄ちゃんと一緒に残るけど──

 ともみがパンと手を叩く。映像が切り替わる。

──すまないけどウチはあの子を引き取れないね──

 ともみがパンと手を叩く。映像が切り替わる。

──博人。お前さえ我慢すれば丸く収まるんだ。他のクラスの子達に迷惑かかるだろ──

 ともみがパンと手を叩く。
 黒い煙がもくもくと上がる。腹に響く爆音。アクリル製の窓がキシキシと軋む。

「──もういいよ」

 隣からボソッとそんな声が聞こえた。慌ててともみの方を見るとすっくと椅子から立ち上がっていた。

「もういいよ、博人くん」
 ともみは両手でパン、と音を立てた。それと同時にスクリーンのキャラメル色の灯が途端に消えた。
 その光だけではない。回りの赤茶色の劇場椅子が、黒い手置きが、視界の端で頼りない光を放っていた誘導灯が、全て最初から無かったかのようにふっと消えた。
 明かりを全て失ったのに、友美の姿だけははっきりと見える。それだけだ。あとはどろりと僕を吸い込まんとするような黒と黒と黒。くるりと、ともみは僕の方に振り向いて言う。

「向こうの世界なんかさ──頑張ったって裏切られる事の方が多くて、求めたって落としていく物の方が多くて、初めましてよりもさようならの方がずっと──ずっと多いんだよ。もうさ、向こうに帰らずにこのままわたしと一緒にこの世界で過ごしちゃおうよ」
「……」

 僕は目を閉じて首を横に振る。僕なりの拒否のシグナルだ。

「……そう……」

 ともみは残念そうな顔をした。その表情に僕はズキリと心が痛んだ。アイスピックを胸に穿てられたような鋭い痛みだ。

「そうだよね……。博人くんはあっちの世界の人だもんね。うん。あっちにいる方がずっといいよ」
「……」

 僕は。
 僕は何を言えるだろうか。

「もうすぐ朝だよ。夜が明けるよ。またさよならだね」

 ともみの体が、その小柄でか弱そうな体が、少しずつ薄らんでいく。川の水のように半透明に、透き通っていく。
 彼女は僕に言う。

「博人くんは向こう側に大切にすべき人がいる。大切にしてくれる人がいる。それだけ、それだけ忘れないで」

 僕は何も言えない。ともみの姿は段々と、すうっと、見えなくなっていく。

「でも私のことも忘れないで。約束だよ」

 何も。

「さよならは言わないよ。またいつか、だね」

 ともみの姿はその声を最後にふわりと消えた。
 何もない空間を黒だけが揺蕩う暗闇の中、僕一人だけが残された。


二章 「Does yellow innocence dream of no face?」開始

Re: 面影は儚く かがちの夢路へ ( No.29 )
日時: 2018/09/27 23:18
名前: 写楽 ◆8nH/qRkwbA

 五月五日は端午の節句、即ちこどもの日として知られているが、二十四節気の一つ、立夏の日としての側面もある。この日から立秋の日までが暦の上での夏とされてあるが、誘並の地に吹く風はまだ爽やかな温度を保っている。

 ゴールデンウィークの最終日。連休中この学生寮飛想館の一室で亀のように閉じこもり、本棚の中で眠っていた未読の本を読んでいたのだが、そろそろ尽きた。両隣部屋の二人はというと、ポチは地元の馬片に帰省しており、レンは部活で多忙を極めている。手持ち無沙汰だ。
 机の棚にある道尾秀介の「向日葵の咲かない夏」を手に取って読んでみても、何十回と繰り返し読んだ本だ。冒頭の『油蝉の声を耳にして、すぐに蝉の姿を思い浮かべる事が出来る人はあまりいないだろう』というセリフぐらいは諳んじることができる。

 時計を見てみると、二つの針は丁度てっぺんを指していた。空腹を感じないでもない。近くのコンビニでパンでも買ってくるかな、と思った時、机の上に置いていた携帯がブーンと唸った。

「ん?」
 ディスプレイには見たことのない電話番号が表示されている。誰だろう。レンやポチならラインで連絡してくるだろう。訝しく思いながら携帯を手に取り、『応答』と書かれた受話器のマークを押す。

「もしもし?」
「ちゃーんヒロー!ハローハロー!灯ちゃんだよーっ!」
「……」

 電話の主は言わずもがなというか、灯だった。相変わらず鼓膜にキンキンと響く甲高い声。

「ん?ちゃんヒロ?もしもーし?生きてるー?」
「……」
「ちゃんヒロー!月島博人くーん?」
「……」
「つきしまひろとくーん!会計までお越しくださーい!」
「……」
「ぐーてんもーげーん!にいはお!」
「……」
「も、もしかして番号間違えちゃった!?し、失礼しました!」
「朝っぱらからうるさいよ、灯」

 これ以上だんまりを決め込むのも可哀想になってきたので、しょうがなく僕は返事をする。携帯の向こう側から「はっ!」と鳩が豆鉄砲を食ったような声が返ってきた。

「き、聞いてたの!酷いよ!あんまりだよ!アドルフヒトラーだよ!」
「……久しぶりに聞いたねそれ」
「というか全然朝っぱらじゃないよっ!もうお昼時だよ!」
「ついさっき起きたんだよ。僕にとっての朝は起床して二時間経つまでなんだ」
「その理論でいうとあたしにとって今は夕方だよ!」
「……?」

 それはあんまり理解できなかった。
 電話口から灯の声に混じってコトコトと換気扇が回るような軽い音が聴こえている。料理でもしている最中なんだろうか。

「っていうか何で僕の番号知ってるの?交換した覚えないんだけど」
「こないだ連示っちに教えてもらったの。ほら、ちゃんヒロって聞いても教えてくんなそうでしょ?」
「そんな事ないけど……」
「そんな事なくないよ。中学の時も聞いたのに適当なテレビショッピングの電話番号言ってきたじゃん」
「懐かしいね……、それ」

 一応弁明するとすれば、あの頃は自分の携帯なんか持ってなかったのだ。突発的な行動ばかり繰り返すこの娘が実家に電話をかけてきたりしたら、それはそれで面倒なことになるだろうし。

「で、何の用なの?いきなり電話なんかかけてきて」
「あ、そうだったそうだった」
こほん、と灯は咳払いを一つ。
「今さ、不動心の新商品を開発してたんだけどさ。ちゃんヒロに試食してもらいたいなって」
「試食?」

 不動心というのは灯の父親が経営している鉄板屋の事で、誘並最大の繁華街である平阪の路地を分けた所に暖簾を掲げている。ネオン街の中で一際目立つ古めかしい店で、灯曰く、「あたしは不動心の看板娘なんだよー」とのこと。僕がこの街に引っ越して来た初日、レンとポチの二人にこの店に連れて行ってもらったが、まあ味に文句のつけようはなかった。地元でひっそりとした人気を誇る隠れた名店なんだそうだ。

「……なんで僕なの?」
「んー、暇そうだったし」
「……」

 そうですか。
 確かにこのゴールデンウィーク中、常に暇を持ち余し日が落ちるのを横目で見ていたのだけど、今日ばかりは別だった。

「悪いけど今日予定が入ってるんだよね」
「予定?」

 灯は僕に尋ねた。電話の回線を挟んでも彼女のトボけた表情が想像できる。
「うん。誘並駅で音楽祭があるじゃん。それに姫菜が出るから見に行くつも──」
「──メだよ」
「え?」

 食い気味に遮られた。何を言ったかは上手く聞き取れなかったが、彼女に似合わない鋭い声色だった。

「ごめん灯、もう一回言ってくれる?」
「……」
「……灯?」
「行っちゃダメだよ、ちゃんヒロ」

 灯にしては珍しい、有無を言わさぬ言葉。いや、珍しいとかいうレベルじゃない。いつもの軽い調子の彼女からしたら想像できない様子だ。

「……何でかって聞かせてもらってもいい?」
「そ、それは──」

電話の向こう側で灯は口ごもる。数コンマの間、どんよりした沈黙が落ちていたが、すぐに灯は口を開く。

「ほら!姫っちょの出番って六時とかでしょ!?今から行っても絶対暇じゃん!」
「……二時からレン達の吹奏楽部の演奏があるからそれも見たかったんだけど……」
「吹部の演奏なんて文化祭とかでいくらでも聴けるでしょ!?」
「……」

 なんて、とまで言うか。この学校の吹奏楽は県内でもトップクラス、とかレンが言ってた気がするけど。

「ほら!つくしんぼも来るから!あの人味覚がバカだからちゃんヒロいないと正当な判断できないよ」
「筑紫も来るのかよ……」

 まあ確かに筑紫がいたらハンバーガー入りお好み焼きとかが店頭に並びかねない。

「お願いちゃんヒロ!来ないと飛想館に打ち上げ花火突撃させるよ!」
「……」

 懇願に見せつけた脅迫である。

「……そこまで言うならしょうがないな。今から行けばいいの?」
「うん!三十分ぐらいで着くよね!待ってるよ!」

 強引に言い通されて、そこで一方的にプツリと電話が切られた。ディスプレイに『通話時間2:30』という文字が映る。
 付和雷同というのか、意志薄弱というのか。他人の意見に無理やり押し切られる事が昔から多かった。何度も僕にとって不都合な事を押し付けられ、何度も甘んじて享受することの繰り返しだった。 正直に言うと平阪まで行くのが面倒くさい。
 ふう、と息をつく。
 目の前の文庫本を本棚の中に戻す。アイウエオ順で整理しているので松本清張と村上春樹の間。そこで机の上に置いていたあの怪文書がふと目に止まった。

『ホオカゴ オモカゲジングウ二コイ』

 これが僕の元に届いてちょうど十日経った事に今気付いた。





「あなたに決定権を与えましょう」

 少し回想しよう。これはあの怪文書をもらった日の放課後の事だ。

「今から私があなたにこの手紙を差し出しましょう。あなたが私との糸を拒むのならばどうぞ、これを受け取って下さい。あなたが望むのなら私もこれまでにしましょう。そして私たちの五本目の轍になってもよろしいなら、この手紙を受け取らないで下さい」
 眼鏡をかけたポニーテールの女の子、あやめが僕に手紙を差し出しながらそう言った。ここは本しかない殺風景な僕の部屋。
 彼女の白くて細い手に僅かだが水滴が浮かんでいるのが見えた。未だに外では雨が降っているのだろう。

「……」

 僕はあやめに向かってゆっくりと手を伸ばした。その瞬間、今まで一貫して無表情を保っていた彼女の唇が、ピクリと動いたような気がした。親指と人差し指で挟んで僕はその手紙を受け取った。少し湿り気を纏っているのを感じた。

「……そうですか」

 ポツリと彼女はそう言った。ほんの、ほんの僅かに落胆の色が感じられた。

「私たちの中には入らない、と。それがあなたの気持ちでよろしいのですね?」
「うん、そうだね」
「……残念です」

 あやめはくるりと踵を回した。僕に理由さえ尋ねないまま、彼女は出口に向かって早足で歩いて行った。彼女の華奢な後ろ姿がドアの向こう側に消えていったのを見送ってから、僕は深く息を吐いた。一体何を考えているのか、なぜこんな強硬手段を取ってまで僕を勧誘しようとするのか、まるで分からなかった。

「……一体何だったんだよ……」

 僕は彼女が来襲するまでそうしていたように、ベッド脇のソファーに腰を下ろした。今日は厄日なのだろうか。どっしりとした疲労感が肩にのしかかっている。
 彼女の勧誘を断った理由は二つ。
 一つ目は彼女があまりにも不気味過ぎたからだ。まるで心臓のないアンドロイドのような、あるいは体温のないマネキンのような。その点においては同じく剣道同好会に所属する筑紫だって同様だ。何を考えてるかまるで分からない。あまり関わり合いになりたくないタイプだった。
 それともう一つ。
 安穏が欲しかった。何も波風の立たない、広い湖のような安穏が。

『人探しをしています』

 これは誘並に来た初日、天照高校の近くであやめと会った時に言われた言葉だ。

『あなたはともみ、という女の子をご存知ですか』

 酷く昔の事に思えるが、つい二日前の事だ。
 果たして『ともみ』は本当にこの世界にいるのだろうか。

「──ん……?」

 何かが頭の端っこに引っかかった。何かを忘れているような気がする。それもあやめに関する何かを。
 何だったんだろう。あの時あやめが読んでいた本?……いや、違う。ともみの名前を彼女から聞いた後。その後だ。

「あっ……」
 思い出した。彼女が落としていったもの。紫色の花が描かれラミネート加工された栞。恐らくあの日来ていた上着のポケットの中にまだ入っている。
 僕はソファーから立ち上がり、クローゼットの引き手に手をかける。ネイビーブルーの上着の胸ポケットを探るとやはり栞は中に入っていた。今からあやめを追いかければ間に合うだろう。これは値が張りそうなものだ。
 外に出るため短い廊下に出た時に、あちら側からドアが引かれた。見るとポチがドアの隙間から顔を出している。あやめが帰る音を聞いて自分の部屋からこっちに来たのだろう。

「ヒロくーん……大丈夫ッスかー?」

 心配そうに眉を落としてポチは僕に尋ねる。その顔は昔実家近くに住んでいた野良犬を彷彿とさせたが、今は彼に構っている場合じゃない。

「ポチごめん!どいて!」

 いそいそと部屋に入って来たポチを撥ね飛ばして出口に駆け寄る。「にゃう!?」とポチの驚く声が後ろから聞こえたが、意に介さずにスニーカーに履き替えてから部屋を出た。
 フローリング張りの廊下にずらっと扉が並んでいる。雨が降っているからか床が湿気を纏い少し滑りやすい。ランドリーで乾燥機がガタゴト音を立てている。人ひとりいない自習室の横を通り抜け、階段を下り一階へ。
 ちょうど部活を終えた生徒たちが帰ってくるぐらいの時間帯だ。昇降口の近くで肩を濡らした生徒の姿が目に留まった。傘立てに置いてあった誰のものかも分からないビニール傘を引ったくって、飛想館から飛び出した。
 雨は僕が下校した時よりも更に強まっていた。辺り一面白っぽく煙っている。傘を差してトボトボと歩く天照高校の生徒が何人か見受けられたが、その中にあやめらしき姿は見当たらない。
 もう行ってしまったのだろうか。というか今から追いかけても間に合わないんじゃないか?シャワーを浴びて少ししか経っていないのに、と憂鬱に思いながらビニール傘を開いた。長く使われていなかったのか、開く時にぺりぺりという音がした。

「……めんどくさいなぁ」

 ため息をつく。また濡れ鼠にならなくちゃいけないのか。
 水たまりの中を突っ切っていく。びちゃびちゃ水が跳ねてスニーカーが濡れるのを感じる。すれ違った天照の生徒が、急ぐ僕の姿を見て振り返った。
 やがて交差点にたどり着いた。信号機の赤色が濡れたアスファルトにどろりと反射して鈍く光っている。見回して見てもやはりあやめの姿は見つけられなかった。

「つっきー?」

 横から聞き馴染みのある声がした。振り向くとレンが傘を差してこっちに歩いて来ている。黒いショートカットの女子生徒が横に並んでいる。

「うわっ!お前どうしたんだよそんな馬鹿みたいに濡れて」
「……まあちょっといろいろあってね」

 目を剥くレンに、僕は適当に誤魔化した。彼の隣にいる女子が「連示、こいつは?」と聞いた。

「ん?ああ乃祈、こいつ月島だよ、月島」
「あー……月島くんか」

 ショートカットの女の子は妙に納得したような顔をしたが、僕はこの人に見覚えはない。何者なんだろうか。どうせレンの彼女とかガールフレンドとかだろう。

「それよりレン、聞きたいんだけど」
「ん?」
「あやめ見なかったか?」
「あやめ?あやめってあのあやめか?あの眼鏡オンナか?」
「そうだよ」
「あー……、確かさっきバス乗り場に──」

 後ろを振り返ったレンの言葉を遮るように大きなバスが横を結構なスピードで通り過ぎた。派手に水たまりの中に突っ込み、茶色に濁った水が僕とレンに向かって勢いよく降りかかる。

「うわっ!」
「ぬおっ!」

 洗濯したばかりのジャージの肩口に茶色のシミが一瞬で出来上がった。車道側にレンがいたおかげで女の子は一滴も濡れていないみたいだ。

「──あ、つっきー!あのバスだ!」
「……は?」

 レンが指を指した先を見る。さっき僕たちに水を跳ねていったバス。その一番後ろの窓際。眼鏡をかけた、ポニーテール。

「うっわ……」

 今日はやはり厄日だったようだ。濡れたジャージはとても冷たく、僕の体温を奪っていった。

Re: 面影は儚く かがちの夢路へ ( No.30 )
日時: 2018/10/29 14:37
名前: 写楽 ◆8nH/qRkwbA

 誰かが停車ボタンを押したみたいだ。やけに耳に障るチャイムが静かなバスの中に響いて、窓側のランプが淡い赤色に灯った。「──次はぁ、ソウシ公園前……ソウシ公園前に停車致します……」と張りのない運転手のアナウンスが流れると同時に、バスはじんわりとスピードを落とした。
 何円払えば良かっただろうか。正面の運賃表を目を細めて見ると、ちょうど五百円だった。そういえばこの前ポチやレンと共にここに来た時もワンコインだったことを思い出した。
 車窓には無数に連なるビル群と、携帯を手にし伏し目でトボトボ歩く人の群れが映る。都会の景色はどこに行こうがさほど変わらない。一見色鮮やかに見えても代わり映えしないその風景を、僕は揺れるバスの中からぼんやりと見ていた。
 やがてバスはゆったりと停留所に到着して、空気が抜けるような音と共にドアが開いた。席を立つと僕の他にもここで降りる人は何人か見受けられた。
バスを降りる。相変わらずうんざりするほど人通りが多い。川を流れる魚みたいに早足で人々が歩いていく。ドミノのように所狭しと並んだビル群と、暖簾がまだ下がってない居酒屋が目立つ。だけど、数日前にここに訪れた時と比べると、どこか雰囲気が違う。あの時は日が落ち切った後だったので、ネオンが怪しい光を放つ夜の街、といった感じだったが、今はどうだろう。すれ違う人も、顔を酒気で蒸気させたサラリーマンの姿は当然無く、家族連れや若い学生の姿が目立つ。
 少し歩いたほどのところに広めの公園が見えた。ここから見ても葉がついた桜の木や逞しい椚の木が植えられているのが伺える。この無彩色な灰色のビル街の中にポツンと現れた緑は、何故だかどこか作り物の様に思えた。勿論植えられているのは造木なんかではなく、紛いもない本物の木なんだろうけど、何でだろうか。砂漠で氷山を見るようなものだからだろうか。

 と、そこでポケットに入れた携帯がバイブしていることに気付いた。取り出して見てみると、登録したばかりの『菱鬼 灯』という文字が表示されている。僕は通話ボタンを押して、携帯を耳に当てがう。

「もしもーし!ちゃんヒロー!やっほー!」
「……」

 いつも元気だなぁ、こいつ。

「おーいちゃんヒロー!聴こえてるー!?」
「うん、聴こえてるよ。どうしたの?」
「まだバスの中だったりする?何時頃に着きそうかな?」
「いや、もう降りたよ。今──なんだったっけ……、何とか公園前って停留所で降りたんだけど」
「何とか公園……?ああソウシ公園か!あそこにあるカキ氷のお店凄い美味しいんだよね!練乳かけ放題なんだけどさ!」
「練乳……?」
「そうそう、その公園の端っこらへんにね!三百円でラーメンが食べられる屋台がたまに来るんだけどさ、ちゃんヒロお金あんま持って無かったでしょ?今度行ってみるといいよ!」
「ちょっと待ってよ。何で僕が金の手持ちがないって知ってるの?そんなこと話した覚えないんだけど」
「……」
「もしもーし?灯ー?」
「……」

 灯が黙ることなんて珍しい。珍しいということは何かを隠そうとしているということしか考えられない。

「……もしかして僕が倒れた時とかに財布見た?」
「つ、つくしんぼが悪いの!タクシーで帰ろうとか言ってちゃんヒロのカバンの中漁ってたんだよ!あたしは悪くないの!」
「……止めない方も悪くない?」

 ともかく。

「そういえば僕、不動心までの道忘れたんだけど、どう行けばいい?」

 別に僕の記憶力が悪いわけでない。灯のいる鉄板屋不動心は、この平阪地区の迷路みたいに複雑に入り組んだ路地をかき分けた所にある。一回行っただけでこの道を覚えられる人なんて何人いるだろうか。

「うーん……、今どこにいるっけ?あの公園の近く?」
「そうだね、今その目の前にいるよ」
「じゃあソウシ公園で待ってて!あたしが迎えに行くからさ!」
「うん、了解。……でも僕あそこの公園行ったことないよ?どこで待ってればいいの?あそこ結構広いっぽいけど」
「んー。じゃあさ、公園の中に石造りのスズメのモニュメントがあるんだけど、そこで待ち合わせしよ。あたしの背と同じぐらいだから結構目立つと思うよ」
「分かった。そこにいればいいんだね」
「うん!よろしくー!」

 そこで勢いよく電話が切られた。ツーツーと電子音が携帯から流れた。側面の電源ボタンを押してから携帯をポケットの中に入れる。
そうと決まれば、と僕は公園に向かう。さほど遠くはない。せいぜい五十メートルぐらいだろう。
歩車分離式の信号が青色になって、和やかな音楽が流れる。確かこれは『故郷の空』だ。間抜けとも言えるその曲調は、忙しないこの都会の景色とはあまりにもミスマッチで違和感が胸を占めた。しかしどうしてこう明らかに合ってないこの曲を選曲したのだろうか。スローテンポの曲だと信号無視が減って事故が減ったりするのだろうか。
 そんな取るに足りないような事を考えながら歩いていると、ソウシ公園にたどり着いた。少し濁った川を挟んだ先に、目に優しい緑色の芝生の広場が広がっている。園内を囲むように木々が植えられており、やはりこの街の中で独特な雰囲気を放っていた。まるでここだけ隔絶されているみたいだ。まるでカットアンドペーストで無理やり公園だけねじ込んだような、不自然な
 ソウシ公園はどう書くのだろうかと疑問に思っていたが、頭上の標識には『この先 相思公園』とある。
 木製の古ぼけた橋を渡って園内に足を進める。植え込みが両端を沿う御影石の通路。アーケード状に空を覆う木が日差しを隠しているためさっきよりも少し涼しい。
園内は余暇を過ごす人で賑わっていた。リードを繋いで犬を散歩させている女性に、ベンチに腰掛けて談笑しているカップル。ボロボロの自転車に乗ったおじいさんがゆっくりと僕の脇を通り過ぎていった。
 溌剌と輝く新緑は都会の薄汚れた空気を浄化する。乾いた風が運ぶ自然の匂いに僕は少し郷愁に駆られた。
 さて、灯が言っていたモニュメントはどこだろうか。僕は周りを見回す。真円状の芝生広場。そのちょうど中央の噴水の側に件のモニュメントは見つかった。

「……あれかな……?」

 大理石だろうか、白っぽい石灰性の台座に小さな鳥が二匹。灯の言っていた通り、確かに目立つものだ。しかし、すぐ近くにかなり大きな噴水があるためこっちの方が待ち合わせ場所には適しているだろう。近づいて見ると、灯はスズメと言っていたが、よく見たら違う。尾が長くて細いためこれはセキレイだ。

「ここで待っとけばいいか……」

 周りを見回して見るが灯の姿は見当たらない。もう少しで来るだろうしここから動かない方が良さそうだ。携帯の電源を付けてレンから来ていたメッセージに返事をしてから、モニュメントの台座に何やら文字が書いてあることに気付いた。この石造の説明をしているようだ。
 この誘並は、日本神話のイザナギとイザナミが最初に作った地だとされているようだ。この地で両神は婚約の契りを結び、幾多もの神を産んだのだが、その際イザナミとイザナギに性交の仕方を教えたのが、このセキレイという鳥だったそうだ。この伝承から日本各地でセキレイは神の使いだと言われている。相思公園というネーミングもセキレイの中国名である相思鳥から来ているそうだ。
 字が風化していてかなり読みづらかったが、内容を掻い摘むとこんな感じだろうか。他愛もないおとぎ話のようなものだ。確かセキレイは夫婦円満の象徴という話を聞いたことがある。

 と、そこで。
 石碑のちょうど横。視界の端で何かがふらっと揺れるのが見えた。
 思わずハッと顔を上げる。視界の端で揺れたそれが、どこか見覚えのあるものだったからだ。急いでモニュメントの向こう側を見る。

 黒い髪を後ろで三つ編みにした後ろ姿がスタスタと広場の出口に向かっている。その姿は僕がこの誘並に初めて来た日にお守りを渡した女の子によく似ていた。
 あの紙に書いてあったこと。『ともみ』という夢の中の少女。その全てをあの三つ編みの女の子が握っているんじゃないかと不確かな自信があった。

「ちょっと待っ……!」
「──ちゃんヒロー!」

 ちょうど走り出そうとした時、聞き馴染みのある声が後ろから聴こえて、バシっと背中を強く叩かれた。振り返ると、後ろにいたのはやはり灯だった。

「やーお待たせお待たせ!もうつくしんぼ店で待ってるよ!」
「……」

 横目であの三つ編みの後ろ姿を見てみると、少しずつ遠ざかっていく。

「ん?どうしたの、ちゃんヒロ?早く行こうよ!」
「……おっけ、行こうか」

 灯にあの女の子を話してもおそらく無駄だろう。僕は諦めて灯の横に並ぶ。

「ここ来たの初めてだっけ?いいところでしょ?」
「うん、そうだね」

 灯はご機嫌なようで僕の隣を跳ねるように歩く。後ろにいる三つ編みの女の子が口惜しくなったが、まあいいだろう。またいつか会った時にでも聞けばいい。

Page:1 2 3 4 5 6



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


URL


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大7000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。