複雑・ファジー小説

催畸形性シャングリラ
日時: 2018/07/12 23:39
名前: 夜耽 ◆N.Jt44gz7I


T,>>1
U,>>2
V,>>3
W,>>4
X,>>5
Y,>>6
Z,>>7
[,>>8
\,>>9
],>>10


それでも、星は巡る。

※500字縛り掌編

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Re: 催奇形性シャングリラ ( No.1 )
日時: 2018/07/11 16:05
名前: 夜耽 ◆N.Jt44gz7I

 自食症。
 その三文字はいやに青い光を放っていた。

 私には幼い頃から人には言えない悪癖があった。
 余る自分の肉を食む。そんな癖。
 いつからそんなことするようになったかなんてもう覚えていないけれど。
 白くなった指先の肉片を犬歯でねじ切る。途中で痛くなってもお構いなしに。
 淡い鉄錆と水分を含んだ肉片を唾液と一緒に飲み込んだとき、私は頭が冴えるのを感じた。
 治りかけの傷に張り付くカサブタなんかもつい口にしてしまう。
 引き千切ったところからまた血が滲んで、傷が化け物みたいに開くのを私は毎回見るんだ。

「自食症……っていうんだ。なんかかっこいーじゃん」

 昨日も友達からその指どうしたの痛そうなんて言われちゃったけど、うまく誤魔化せたのかな。
 料理してたら切れちゃって、だとか、洗剤が合わなかったのかも、なんて有り得もしないことなのに困り笑いを添加物にして色付ける。
 あんまりやり過ぎると絆創膏のお世話にならなきゃいけないし。無くなるたびに買ってたらそれこそミがもたない。
 
「別に好きでやってるわけじゃないしなあ。どうしよ」

 私は皮がめくれて中が露出した指先を見る。
 また溢れてきた体液は液晶に輝いていた。 

Re: 催奇形性シャングリラ ( No.2 )
日時: 2018/07/12 23:37
名前: 夜耽 ◆N.Jt44gz7I

「別に死にたいわけじゃないんだ。今が辛いわけであって、決して未来に希望を抱かないわけじゃないし、まだまだやり残したことがある。そうだね、出来るなら僕が見たくないものは一切見たくない。僕が否定される世界になった瞬間から、眠たくなっちゃうね」

 対面に座るそいつは枯れ葉色をしたレモンティを猫の頭が付いたマドラーでかき混ぜた。
 ぐちゅぐちゅじゃぶじゃぶと無遠慮に泡を立てる。

「随分と傲慢だね。私はおかしいと思うけど」

 私は消えない気泡を見ながら正直な感想をレモンティに零した。

「君までに否定されたらもうしょうがないじゃないか。ああ、消えたい」
「勝手にしたらいいじゃないの。君が消えたとしてね、最初の方こそ悲しいけど多分あとからどうとでも出来るから」

 私は何を言っているのだろうか。
 流石にまずいかと思っていいわけがましくそいつに視線を向けると、そいつは目尻を下げてグラスの結露を人差し指でなぞっていた。

「でもやめらんないんだよなあ。本当に何言ってるんだろ、多分今年も僕は死なない」
「私はこの季節が来たなあなんて思うけど」

 フチから垂れるレモンの酸は、ぐらぐら煮立たせるような模様を描いてお茶に溶けていった。

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