複雑・ファジー小説

トモエ
日時: 2019/08/13 16:49
名前: 暁烏 ◆w3Y5wPrVZY
参照: 暁月烏 に名前変えました

初めまして。以後宜しくお願いします。
初めての投稿、初めての小説カキコで動悸が激しい。
ゆっくりと進めていきたいと思います(目標)。
挫折しないで完結したいです(切実)。




【留意事項】

・複数の『トモエ』さんが登場しますが作者は現実でトモエさんに対して恨みは一切御座いません。

・この作品はフィクションです。登場する人物や場面などは現実のものとは全く関係ありません。

・この作品では『自殺』を多少題材にしています。ですが自殺を推奨するつもりはありませんし、自殺を進める作品でもありません。自己責任。

・自殺、よくない。やめよう自殺。



2018/4/28 初記
2019/3/31 名前変更:暁烏→暁月烏


>>1 第0話 トモエ、掲示板にて
>>2 第1話 トモエ、集合する
>>3 第2話 トモエ、移動する
>>4 第3話 トモエ、思い出を作る
>>5 第4話 トモエ、一泊する
>>6 第5話 トモエ、夜を明かす
>>7 第6話 トモエ、死地を探す
>>8 第7話 トモエ、デートする

Page:1 2



Re: トモエ ( No.6 )
日時: 2018/07/19 08:08
名前: 暁烏 ◆w3Y5wPrVZY

トモエ、夜を明かす


何故夢を見るようになったのか。

苛められて、眼に傷を負い、そして”死のうと思った時”から、今川友衣は夢を見るようになった。
夢。否――悪夢。
毎回毎回同じ内容、そして同じ場面で必ず目が覚める。
夢は――思い出したくもない、目を失う日から始まる。

今川友衣は床に押し付けられていた。苛めの中ではいつものことだった。
必死に抵抗をするが、起き上がれないでいた。逆に手を思い切り踏まれる。

――イヤだ。

今日は何をされるのか、考えただけで背筋が凍る、腹部が痛くなる。
視線を上げると、ニヤニヤした顔が数個、自分を見下ろしていた。
『何見てんだよ』
脇腹を蹴られた。痛みと苦しみが襲うが、抑えつけられているのでどうする事も出来ない。
『今日はどうするよ』
誰かがそんなことを言って、髪の毛を掴み上げた。

――イヤだ。

『んー、ボールみたく蹴る? 歯飛ぶとこもみてみたいな』
『面白そうじゃん。やってみようよ』
『決めたれエースキッカー』
面白半分に、そんなやり取りが今川友衣の頭上でされていた。

――やめて。

少し離れたところに誰かが立つ。抗おうとするが更に抑えが強くなった。
『抑えてる私を蹴るなよー?』
『するわけないじゃん』
『じゃあ、やっちゃえ――』
足が、近づいてくる。手も、足も、動かすことはできない。

――やめて!

必死に抵抗して、そして――左目に激痛がはしった。
力の限り暴れ、抑えを解いた。
息が出来なくなるほど、喉が潰れるほどに悲鳴を上げる。
分からない。分かりたくない。
自分が今どんな状態になっているのかを。
熱い。見えない。左目が開かない。
そして時間がすぎるにつれ呼吸が段々と落ち着いてくるにつれ――右眼で周囲を見渡す。
何もない。
苛めっ子も。教室も。外の景色も無い空間。
漸く、夢の中だと思い知らされる。
同じ夢を見て、同じ場面で目が覚める。分かっていても夢はその場面まで終わらない。

何故夢を見るようになったのか。
苛められて、眼に傷を負い、そして”死のうと思った時”から、今川友衣は夢を見るようになった。
何もない空間、今川友衣の前に――今川友衣の姿が現れる。
一糸纏わず――体中に傷痕がある、今川友衣。
その眼前の今川友衣は、何かを悟ったような表情をして、今川友衣の肩に手を置く。
そして耳元で囁く。目が覚める直前の、最後の言葉。


『死んじゃおうよ』


   +  +  +

「!!!!」

今川友衣は目が覚めた。
恐る恐る、目に手を当てる。左目は熱を持っていたし、右目からは涙が出ていた。
「また……あの夢ですか」
体からは嫌な汗が流れていた。
「本当に嫌なのに……もう死ぬんですから、最後くらい嫌な夢を見せないでくださいよ……!」
自分自身に対する怒りと悲しみ。けれどもどうすることもできず、今川友衣は小さく溜息を吐いた。
時刻は夜中の3時に差し掛かろうとしていた。同じベッドには八木原智絵と竜谷兎萌が眠っていた。そして離れたところにあるソファーには双見巴が寝ている。起きる気配は無いように見えた。
「……シャワーを浴びますか」
静かにベッドから移動する。バスルームのドアを開け、正面の鏡に目をやる。
小さく、疲れたような笑みを浮かべて見せた。
「…………」
表情を元に戻す。
死のうと思ってからこの夢を幾度となく見続けてきた。けれども、何故そんな夢を見るのかは今川友衣自身にも分からなかった。
死にたいと思っているからなのか。
それともどこかで思いとどまっているからなのか。
それとも――あれが死そのものなのか。

「どうせ、死ぬんです」

死ねば解放されるだろう。そう思い、今川友衣は考えるのをやめた。
再びシャワーを浴びるために、今川友衣は服に手をかけた。

そこから露わになったのは――傷だらけの体だった。

   +  +  +

「ん……」
八木原智絵は夜中に目が覚めた。
「トイレ……」
半ば寝ぼけた状態で、バスルームへと向かう。そしてそのままドアを開けた。
脱衣所には上半身裸の、体中傷痕がついている今川友衣がいた。
「…………!!」
「え――」

「で、出でってくださいいいいいいいいいいい!!」

力いっぱい押し出された八木原智絵は、漸く目が覚めた。
「い、今川さん……」
「ほっといてください!!」
大きな声で叫ぶ。夜だという事などお構いなしに。
傷だらけの体を見られてしまったのだ。無理もなかった。
「ううぅ……」
今川友衣は自然と涙が流れだした。
「いやだ……嫌ですよ……もうこんなの」
「今川さん……」
迂闊だったと八木原智絵は思った。
「私の不注意でこんなことになって、ごめんなさい」
だがそれ以上に、今の今川友衣を宥め、落ち着かせないといけないと八木原智絵は思った。ドアを挟んだ向こうで、今川友衣の泣く声が聞こえる。
「今私たちといる今川さんが、今川さんよ。どんな過去があっても……それでも、私たちは最後まで一緒だから」
一緒に死のうと集まったから、最後まで一緒にいたいから。
「今川さん……」
「…………」

暫くして鳴き声が止み、今川友衣がバスルームから出てきた。服を着た状態で。
「……ご迷惑をおかけしました」
「……私は大丈夫よ」
そう言って八木原智絵は寝ている二人に目をやる。双見巴も竜谷兎萌も、起きる様子はなかった。
「大声まで出して、ごめんなさい」
今川友衣がそう言って頭を下げた。
「いいわよ、そんな……それよりも、落ち着いた?」
「……少しだけ、お話ししてもいいですか?」
「ええ」

二人はベッドの脇にある椅子へと移動した。
「……八木原さんには――」
椅子に腰かけた八木原智絵に対し、今川友衣が立ったまま、
「――言ってなかったですよね。私が自殺する理由」
そう言って、今度は自分から服を脱ぎだした。
突然の事に八木原智絵は驚いたが、更に息を呑んだ。
今川友衣は眼帯も外した。

「……これが私の、死ぬ理由です」

傷だらけの体。失われた左眼。今川友衣は必死に笑顔を作っていたのが八木原智絵には余計に堪えた。
「……お願い。全部つけて頂戴。見るのが辛いわ」
すいません、と今川友衣は慌てたように服を着て、眼帯と眼鏡をかけた。
「ずっと我慢して生きてきたんですけど……もうダメになっちゃいました。段々心が削られていって、今はもう、無い状態、とでも言うんでしょうか」
そう言って今川友衣は自分の胸に手を当てた。

今川友衣は語りだした。
苛められていたこと。苛めが原因で左眼を失ったこと。
それがきっかけで自殺を決めた事。
そしてそれから夢を見るようになったこと。
一通り話した後で、今川友衣は深呼吸をした。
「なんか……ごめんなさい。一方的に話を聞かせるような形で――」
申し訳なさそうに、悲しそうに呟く今川友衣に――八木原智絵はそのまま今川友衣の体を抱きしめた。泣いていた。

「……どうしたんですか?」
「分からない……」

如何して泣いているのか、どうして抱き着いたのか、八木原智絵自身分からなかった。
「分からないけど……こうするのが今一番じゃないかなって、思って、さ……」
「あ……」
そう言って今川友衣も静かに泣きながら、抱き返した。
「ありがとう、ございます……」
この人と、この人たちと最期を迎えることができて良かったと、今川友衣は心の中で思った。




<トモエ、夜を明かす>

一月ぶりの投稿でした。
ストーリー的にも折り返しです。
最後まで頑張りたいです。継続って難しいんですね。

Re: トモエ ( No.7 )
日時: 2019/03/31 15:04
名前: 暁月烏 ◆w3Y5wPrVZY
参照: 名前変えました

トモエ、死地を探す


「…………」
むくり、と竜谷兎萌が起きた。
「んー……と……」
一つのベッドで共に寝ていた八木原智絵と今川友衣に目をやる。二人ともまだ眠っていた。
「私が一番早起きだったのかしら」
ふと、部屋全体を見回して、そこで気付いた。
「あら……」

ソファで寝ると言い、そしてそこで寝ていたハズの双見巴が、いなかった。
「…………」
シャワーでも浴びているのかと思ったが音はしない。
何処かに隠れている様子でもなかった。
「八木原さん、起きて」
隣で寝ている八木原智絵の体を揺すり、無理やり起こす。
「……お早う。竜谷さん……早いのね」
最も、八木原智絵と今川友衣は夜遅くまでお話していたからというのもあったが。
「そんなことはどうでもいいわ……彼がいないの」
「え……!?」
事態を急速に理解したのか、八木原智絵はベッドから飛び上がった。
「なんで……」
「死ぬのが怖くなって逃げたか、生きたいと思ってこの場から離れたか……それ以外に理由は?」
「でも…………そんな」
「何れにしても……ここから逃げた、というのなら。貴女はどうする? 追いかける? 放っておく?」
八木原智絵は返事ができなかった。彼女の心の内には様々な感情が込み上げてきた。
何故、本当に逃げたのか。どうして。理由は。男女の違いか。個人の違いか。
そもそも、他人を誘う事から間違っていたのか。最初から全て事が予定通りに進むとは思わなかったが、いざ目の当たりにすると耐えられない感情が湧いてきていた。
自棄になり泣きそうな感じになりたくなる――そう思ったとき、ドアが開かれた。
「起きたのか」
ドアを開けて双見巴が室内へと入ってくる。
「え…………?」
「なんだ。どうかしたのか」
「怖気づいて逃げたのかと思った」
竜谷兎萌が揶揄いながら小さく笑う。
「今まで朝は早く起きて散歩かランニングが日課でな……浜辺の方まで」
「なんだ。つまんない」
「つまんないって言われてもな」
「男なのに逃げたとかの方が面白いじゃない?」
「……面白くなくて悪かったな」
「意地悪でごめんね」
「……一応――」
言い終える前に、双見巴の眼前、限りなく近い距離にまで八木原智絵は近づいてきていた。
怒っているようにも見える八木原智絵の表情を目の前に、双見巴は一息ついて、再度口を開く。
「……一応、メールで一方は入れたんだが……まずかったか」
「……本当に逃げたのかと思って」
「それは……悪かったな」
「でもよかったわ。戻ってきてくれて」
そう言って八木原智絵はソファへと深く座り込んだ。大きく深呼吸をする。
「もうしばらくしたら、移動しましょ。死ぬ場所を探しに」


   +  +  +


心中方法は飛び降り、という事は最初の時点で決めていたことだった。
そこで次に決めないといけないのが”舞台”である。
第三者に見つかりにくい事、侵入のし易さ、飛び降りる高さなど、さまざまな条件が求められる。
そして条件を満たす、最期に相応しい舞台を探すのは容易ではなかった。
何処でもいいなら兎も角、こうして集まったからには――八木原智絵はそう思った。実際に内側まで見ないと気が済まない。
故に――いまだに”舞台”は整っていなかった。

「で……この街で舞台を探すの?」

竜谷兎萌が訊ねた。
移動して昨日とは違った街に着いた一行は、辺りを見渡す。
「いきなりで知らない町で、そんな簡単に見つかるのかしら……」
自分で言うのも何だが、八木原智絵は不安だった。
「自分で言うのそれ?」と案の定竜谷兎萌に突っ込まれる。
「実際に内部まで見て、判断するのがいいと思ったんだけど」
「本来だったら事前に現地に行って、決めておくべきなんじゃないの? 態々来たことも無い所で、っていう方がどうかしてるわ」
「う……」
八木原智絵は何も言い返せないでいた。
「その辺にしておけ。確かに見つかるのもイヤだろうし。いつどんなタイミングで誰かに会うなんて分からんだろ」
「それは……そうね。とりあえず片っ端から入って探しましょう。まずは……あそこなんてどうかしら?」
双見巴に窘められた竜谷兎萌が先頭に立ち、観覧車が見える方へ進んでいく。
「……なんだか申し訳ないわ」
八木原智絵はため息交じりに呟いた。
「観覧車……?」
しかし一方で双見巴は違う事に疑問を抱いていた。
「アイツ、観覧車の方へ行ってるぞ。あっちに建物なんてあるのか?」
八木原智絵も、竜谷兎萌が向かう方向に何があるのかは分からず、「さ、さあ」と首を傾げるしかなかった。
「あっちにショッピングモ−ルがあって、その中に設置されているみたいですね……」
今川友衣がスマートフォンで辺り一帯を調べた。
「ただ遊びたいだけとかじゃないよな……?」
「ま、まあ、まずは近場から、だと思いますよ……?」
今川友衣は竜谷兎萌のフォローを入れながら、竜谷兎萌の後を着いていく。
「この辺でも幾つか、入れそうな建物もあるみたいですし……ゆっくりでいいから探しましょう」
「……ホント、無計画でごめんなさい」
「とりあえず、行くぞ。アイツに置いてかれる」
四人は舞台を探すために、歩き出す。


   +  +  +


「ええと……これから何をするのでしょう?」
今川友衣が問いかけた。四人は一つ目の建物に着いたが、これから直ぐに死ぬわけでもなかった。
元より、まだ午後を過ぎたばかりで人が多い。そんな中自殺する度胸は八木原智絵を始めよ人には無かった。
竜谷兎萌が渡りを見渡す。
「どっちにしろ人気がもう少し引いた時間帯に死ぬんでしょ? ここで死ぬかどうかも決めなきゃいけないし……どう時間を潰すの?」
「そうね……建物を散策して、人目につかない場所をさがしましょう」
「最期の舞台を探す、っていうと……ちょっと大げさかしら?」
竜谷兎萌がそう言って小さく笑った。
「折角だし二手に分かれましょう? 少なくとも個人だけの意見で決められることではないわ」
竜谷兎萌は今川友衣の袖を引っ張った。
「八木原さんは彼が逃げないように見張るのも兼ねて……私は今川さんと」
「俺を逃げる前提で話を進めるな」
「私はいいけど、あまり今川さんをからかわないのよ。それじゃあ行こう?」
そう言って八木原智絵は去って行った。
「見つかるといいわね。相応しい舞台」
「……もしここがダメで、次の建物に移るときは連絡するからな。お互いそれでいいか?」
「それでいいわ」
竜谷兎萌の返事に今川友衣も頷く。
「そうか」と、双見巴は八木原智絵の後を追いかけた。

「さて……なんだかんだ言っても時間は限られているし、どこかでお茶でもしましょ?」
「いいんですか?」
「まだ、今はね」
竜谷兎萌はまた今川友衣の袖を引っ張りながら、近くのレストランに入っていった。
そのまま店員に案内され、二人は席に着いた。
「とりあえずドリンクバー二人分で」
店員が去り、今川友衣は溜息を吐いた。
「……随分と、余裕そうですね」
「余裕って?」
「えと……死、までの残り時間に対する心の準備というか……未練ってありますか?」
「あるわよ」
答えながら竜谷兎萌は席を立った。
「飲み物持ってきてあげる。何が欲しい?」
「……オレンジジュースで」
「了解」
「…………」
今川友衣にも未練はあった。けれども、何度も見る悪夢から、逃げたいという気持ちの方が強かった。
それでも、本当はどうしたいのか、今川友衣自身分からなかった。
「他の皆さんは、未練とかあるのでしょうか……?」
「さあね」
戻ってきた竜谷兎萌が今川友衣の前にオレンジジュースを置いた。
「生への未練と死への思い。それらを天秤にかけて――死への思いの方に揺らいでいるのなら、それで決心するしかない。それだけだと思うわ」
竜谷兎萌はそう言って自身がいれたアイスミルクを一口飲んだ。

「……私たちさ、ちゃんと死ねると思う?」
「分かりません……初めて死のうってやっているので……ちゃんと死ねるって、どういうことかは」
「そうだよねえ」
こういった事への竜谷兎萌の返事はどこか達観しているな、と今川友衣は思った。
「今日、何人の人が死んでいってると思う? その中で何人が自殺したのか。その中で何人が走馬燈を利用したのか。何人が、死ななかったのか」
「死ななかった、ですか……?」
「ええ。単純に飛び降りや首つりでも死ななかったとか、最期の最後で怖気づいて逃げたとか」
「…………」
「それに、こうして集まって談笑して、お互いの不満をぶつけていく内に解消されるっていうのも、あると思うわ。それを求めて自殺オフ会なんて開く人も中にはいるみたいだし」
「私は、そんなつもりはありません……!」
「私もそうよ。けど……結局のところ意味も何も無くとも生きていきたいと思うのが人間だと思うし、誰だって死ぬのが怖いと思う。死ぬ直前は尚更死の恐怖が出るから……もしかしたら最期の最後で生きることへの執着心が、勝っちゃうかもしれない。そこでまた生への未練の方に大きく揺らいだら――死ぬことはなくなるわ」
「生への執着心……」
「生きている以上必ずある根底的なもの……そう私は思っている。どれだけ意味を感じていなくても、どれだけ辛くても、苛められて、悪夢に苛まされていても……」
「…………」
だから当然、自身は当然、八木原智絵にも双見巴にも、竜谷兎萌にだって生への執着心はあるんだろう。
各々が、死への思いと天秤にかけて――今は死の方に揺らいでいる。
しかしそれは――最期の最後まで分からない。
「ま、最期まで気を抜かないようにしないといけないってことよ」
「……そうですね」

そこまできて、今川友衣はふと気が付いた。
「悪夢って……私の事ですか?」
「いきなりどうしたのよ。この中じゃ当り前じゃない」
「ど……どうして夢の事を!?」
確か竜谷兎萌にも苛めの事は話したが、悪夢を見ることは夜中に八木原智絵としか話していなかった。にもかかわらず、だ。
「八木原さんから聞いたわけじゃないわ。その時私も起きていただけのことよ」
「……!?」
「というより、あんな叫び声上げたら流石に起きると思う……最初は吃驚したわ」
「あ……ああ……」
「まあ……時すでに遅しよ。私も、起きてるのがバレないようにしてたから体をちゃんとは見ていなかったし。話も詳しくは覚えていないから」
竜谷兎萌は下手なフォローを言うが、それ以上に今川友衣には問題があった。
「あ、あの……ということはですね」
「私に知られたのがそんなに恥ずかしかったのかしら」
「昨日の夜……双見君も、もしかしたら見ていたかもしれない、ということですよね……?」
「……それは、そうかもしれないね」
双見巴がどこを向いて、どんな体勢で寝ていたかまでは竜谷兎萌の知るところではないが、普通だったら起きていただろう。
「夜中に叫び声をあげていたら、ねえ」
「…………」
今川友衣は余計に恥ずかしさが込みあがってきた。
「……どんまい」
とりあえず、竜谷兎萌は慰めの言葉をかけてあげた。


<トモエ、死地を探す・終>


推敲だとか修正だとかしていたらこんなに間がいてしまいましたが存続しています。
心機一転させて頑張りたいと思います。

Re: トモエ ( No.8 )
日時: 2019/08/13 16:45
名前: 暁月烏 ◆w3Y5wPrVZY

トモエ、デートする



「…………」
八木原智絵は早くもこの施設に見切りをつけ次の建物を探し出そうとしていた。
双見巴もそれに同意し、竜谷兎萌と今川友衣に違う建物に先に移動すると連絡して移動することにした。

「今日中に見つかるのか」
双見巴がそんなことを呟く。
「見つけなきゃいけないのよ。遠くっても、暗くなっても」
「暗いなら目立ちにくいか……」
「…………」
先ほどから双見巴はずっと、何度も観覧車の方を眺めていた。
「双見君」
八木原智絵は何となく聞いてみた。
「観覧車気になる?」
「ん?」
双見巴は返事をして立ち止まった。
「余所見だと確かに危ないな……悪かった」
「確かにそうだけど……そんな珍しいものでもないでしょ」
「…………」
双見巴は神妙な顔をして、
「観覧車に乗ったことがない」といった。
「……高所恐怖症っていう訳でなく?」
「高い所は別に平気だ。だが確かに観覧車は乗った記憶はない……というかそういったところに行った記憶がない」
「そうなんだ……じゃあ乗ろっか?」



そう言って、八木原智絵は観覧車の方へと歩き出した。


*  *  *


どうしてこうなったんだ、と双見巴は思考を巡らしていた。
現在、八木原智絵と双見巴の二人で観覧車に乗っている。
予想外の状態に双見巴はどうすればいいのか分からないでいた。

「昨日の夜とは打って変わった景色だね」
「…………」
「初めての観覧車はどう?」
「何か……童心ってこんな感じなんだろうなって。普通の家庭だったら、こういったことはごく普通の中の一部なんだろうなって」
「……家族でも、観覧車に乗った記憶がないの?」
「…………」
八木原智絵の質問には双見巴は何度かはぐらかしたり、適当に答えたりしていた。
しかし、双見巴は深呼吸をし、

「ない……というより家族で過ごした記憶自体、ない」

と、言い放った。
「そう、なの……?」
「……気を悪くするな。そっちの方が余計に気まずくなるだろう」
「じゃあ、もしかしてずっと……?」
「まあ……施設で育ってきた事になるな。俺は第一の記憶が施設での生活だ」
施設での生活。馴染めない部分もあったがそこが双見巴にとっての家だった。
「だから、親からもらった名前、だなんて思えなかった」
八木原智絵が親から名付けてもらったトモエ名を誇りに思っているのに対して、
親が名付けたなんて実感なんてなく、誇りにさえ思えなかった。
「『女みたいな名前』とからかわれたこともあった」
自虐気味に双見巴は語る。
「勿論『トモエ』と言う名前は悪くない。そんなことをいう奴が悪いだけだ」
「自分の名前、嫌い?」
「好きだとか、誇りに思えるという感覚がない、と言うのが一番近いのかもな。偶に……そんな考えも頭によぎるが」
「そう……」

八木原智絵は、どんな返しをすればいいのか、分からない。
双見巴の自分の名前を好きでいられないことに憤りを感じるし、
名前を馬鹿にされたことへの苛立ちも湧いてきたし、
双見巴の生い立ちへの同情、そして自身も親を失ったという喪失感。
「何か……悪いな。こんな話で」
「私も……親、亡くしてさ。今独りぼっちなんだ。それから嫌で自殺しようとしてるんだけど……」
施設にいて独りぼっちって感じてた?
なんとなく訊ねてみた。
「親がいないという事の孤独感は小さい頃からあった。それが嫌で仕方なかったし、そう言ったのから逃れるために、俺は早く寝ることを小さい時に覚えた」
「じゃあ、昨日も夜は?」
「お陰様で、ちゃんと眠ることができました」
「へえ…………」
八木原智絵は思い出す。今川友衣が叫んでそれから二人でいろいろと喋ったことを。
よく考えたら声のトーンなどお構いなしだったし、今川友衣に至っては衣服をさらけ出すという行為もしていた。異性である双見巴が見ていたりしたらたまったもんじゃないだろう。

「昨日なんかあったのか?」
「今川さんと二人で沢山お話していてね。男子には言えないようなことまで」
「そうか……寝ていたから知らなくて当然か」
「大声で叫んだりしたら起きると思うけど……本当みたいだね」
「自分で言うのも何だが寝つきはいい方だと思う」
八木原智絵は苦笑して返した。
「おかしいね」
「何がだ?」
「こうして同じ名前ってだけで、生い立ちも環境も、名前に対する認識も全く違うのに……だけど『死にたい』なんて二人とも思うなんて」
「全く違うというか、名前の認識に関しちゃ正反対だと思うがな」
それでも、自分で自分の人生を終わらせよう、という結論にお互い至ってしまった。
竜谷兎萌も、今川友衣もそうだ。
同じ名前なだけで、違う人生を歩んできたはずなのに。
八木原智絵は。
「……双見君」
八木原智絵は双見巴に訊ねてみた。
「…………今も、自分の名前、嫌い?」
「…………」
双見巴は少し考えて、
「これに参加していなかったら、俺はこの名前を、人生を恨みながら死んでいったと思う。いい体験もしたし、自分の名前に対する見方は変わったな」
「好きになれた?」
「……今までより何倍もマシだとは思うな」
ゴンドラのドアが開かれた。
「いろいろとありがとうな」
双見巴が先に降りて八木原智絵を出迎える。
八木原智絵も記憶にこそあったが観覧車になるのは久しぶりだったかもしれない。
ふと、待っている列はカップルが占めていることに気づいた。
「…………」
「……どうかしたか?」
今こうして双見巴といるのは、傍から見ればデートしているように見えるのか、ふとそんなことを考えてしまった。
「何でもないよ。次は何処行こっか?」
平静を保ちつつ、八木原智絵は双見巴に並んで歩き出した。


<トモエ、デートする・終>


久しぶりの投稿でした。
スパン短くしないとダメですね……。
因みに観覧車のあるショッピングモールというのもあるみたいですね。
遊園地以外にもあると。
自分は行ったことないですが。

Re: トモエ ( No.9 )
日時: 2019/08/14 22:59
名前: ヨモツカミ

はじめまして。ヨモツカミです。
トモエ、読ませていただきました。タイトルから内容が想像できなかったので、興味本位で開いてみて、自殺に関するお話だと知って読み進めようと考えました。
けして、自殺を推奨するようなつもりはないですが、創作における自殺というものがなんか好きでして。なんでしょうね。死にたい、と生きたい、は日常生活でふとした瞬間に出る一般的な感情で、でもそれを実行に移すことは、小説の中でしかできないなあって思っているので、何故か好きなんですよ。

誤字、何箇所かあって気になったのですが、得に激しい誤字だけ。
>>3で、「竜谷兎萌が竜谷兎萌にちょっかいを出す」という文になってしまってるので、そこだけは直したほうがいいと思います。後の会話で今川ちゃんにちょっかい出したというのは理解できましたが、流石に混乱するので。

双見くん以外のトモエ達で死にたい理由を語り合うシーン、死にたい理由に劣等感を抱く竜谷さんに対して「自分が納得できるかどうかが重要」て言ったの、深いなって思いました。なんだか好きなシーンです。

八木原さんも思ったように、死にたい自分に賛同してくれるトモエがいたのは良かったけど、自分以外にこんなに死にたい人がいるというのは悲しいことですね。

みんなで星空を見るシーンもすごく好きです。夏には蛍が見れるって聞いて、明日死ぬはずなのに未来に期待をしてしまう。死ぬって決めたのに、生きたいと思ってしまう。切ないことですね。

今川ちゃんの過去が壮絶すぎて、でも自殺の理由としていじめは定番(?)ですよね。死にたい理由はそれぞれ違うけど、一番感情移入できたのは今川ちゃんです。

完結させることってすごく難しいと思いますが、どんな結末になるのか楽しみにしているので、更新頑張って下さい。応援しております。

余談ですが「十二人の死にたい子どもたち」という映画、ご存知でしょうか? あれも自殺オフをするという内容の話なんですけど、先日、それを見たあとだったのでなんだかよりこの小説にのめり込むことができた気がします。もし見たことなかったら暁月鳥さんも見てみては如何でしょうか。

Re: トモエ ( No.10 )
日時: 2019/09/06 23:48
名前: 暁月烏

ヨモツカミさん、はじめまして。


感想ありがとうございます! 返信遅くなってすいません。
如何にタイトルだけでどんな内容か?と思わせるか。とか考えていたららシンプルイズベストに納まりました!
自分の中で生と死は混沌としていて、混濁していて、表裏一体、切り離すことのできないモノだと思っています。
そうした自分の中のものをある一面から創作物としてどう表現・昇華していくかっていうのは……難しいですし、そして他の人のそういった表現・思考というのは確かに興味をそそられるものがあります。
果たして自分の生死観はどうなるのやら……?


自分がもともと勝手に劣等感とか抱く方なので「死にたい理由とか劣等感抱いたらどうなるかな?」とか考えていました。
だからそもそも自分の名前に劣等感を抱いていた双見巴を登場させたり。
それからどう展開させていくことができるか考えるのはやはり創作の楽しみですね。
実際にそういった負の感情に対しどんな形で折り合いをつけるか=自分が納得できるかってのは大事だと思っています。現実では中々に難しく、けれどそうしないと潰されちゃいそうになるので……。


構想はほとんど出来ているのに、完成までの道のりは長く険しいとひしひし感じています……!
ですがそういった難しさを楽しみながら頑張っていきたいと思います。
誤字報告ありがとうございます!
読み返したはずなのにヒドい誤字……(笑)



>「十二人の死にたい子どもたち」
タイトル聞いたことあるなーと思ったら冲方丁さんの作品でしたね。
今度探してみます……時間あるかな?

Page:1 2



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