複雑・ファジー小説

傘をさせない僕たちは
日時: 2018/05/30 21:51
名前: えびてん

はじめまして!
えびてんと申します!
ちょっとわかりづらいお話だと思うのですが、是非読んで頂ければと思います!



【 登場人物 】

@浅倉航平(あさくら こうへい) 25
→化学教師。
@水原茉里(みずはら まり) 24
→国語教師。
@武田夏樹(たけだ なつき) 17
→高校2年生。
@佐伯まな(さえき まな) 16
→高校2年生。
@瀬乃健人(せの けんと) 16
→高校2年生。
@西原恵(にしはら めぐみ) 17
→高校2年生。

@武田紗綾(たけだ さや) 24
→建築会社社員。
@井岡 瞬(いおか しゅん) 23
→建築会社社員。
@小宮山 剛
→建築会社社員。
@小宮山綾子
→小宮山の妻。

@柳木 蓮(やなぎ れん) 22
→大学生。
@宇野美琴(うの みこと)25
→ピアノ科教師。

@浅倉結以(あさくら ゆい) 18
→航平の妹。
@藤井心春(ふじい こはる) 24
→カフェ店員。
@坂口椋(さかぐち りょう) 26
→画家。

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Re: 傘をさせない僕たちは ( No.3 )
日時: 2018/05/30 21:29
名前: えびてん


#03 【 あたりまえすぎる 】




「ばいばい!クラちゃーん!」

「浅倉先生、だろ〜。気をつけて帰れよー」


航平はそう言って仲良さそうに帰っていく女子高生に手を振った。

最近の高校生はほんと元気だな。
放課後部活の指導って考えるだけでもう疲れるよ。


「浅倉先生」


声をかけられた。
この声は。

振り返ると、思った通りの人物がいた。

可愛らしくてふわーっとしたこの女性。
国語教師の水原茉里。
可愛いなあってか若いなあって1個しか変わんねえけど。


「どうしました?」


航平はそう言って水原茉里の方をみた。
水原茉里は「明日からの部活のことなんですけど」と1枚紙を見せてきた。



「あ...今週って日曜も部活でしたっけ...」


まずい、すっかり忘れていた。
毎週土曜が部活の日で、日曜は基本的に休みだが今週は試合が近いため日曜もあるんだった。


「あ、何か予定入れちゃってました?」


水原茉里は申し訳なさそうに言った。


「あ、いや、いえ、大丈夫です。なんとかします…」


航平はそう言って携帯を出し、ラインを開いた。



『ごめん、今週会えなくなった』


そう送ると、すぐに既読がついた。


うわっ、心春のやつ怒ってるな…。


『わかった!仕事がんばって!』


返ってきたのはこれだった。
やっぱり心春はいい彼女だ。
怒ったりしないでこうしてむしろ応援してくれるなんて。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「え?今なんて...?」


翌週、心春に会った。
そして心春から耳を疑う言葉が。


「別れて欲しいの」


心春は淡々と言った。
航平は動揺しながら答える。


「え、ちょ、まってまって!なんで急に?!あ、あれか、先週の日曜?こないだこそは会えるって言ったのに会えなくなったから怒ってそんなのと言ってるとか?あ、もしかして...」


航平がそういって焦っているとき、心春は冷静に話し出した。



「ちがうのこーちゃん。聞いて。最近ね、わたし思うの。こーちゃんわたしといて楽しい?」

「楽しいよ!当たり前だろそんなの!」

「ほんとに?」

「本当だよ!って、心春は楽しくないの?」

「ううん、こうして会ってるときはこの上ないくらい楽しいよ」

「じゃあなんでそんなーーー」

「これってなんか、違う気がしちゃって」

「違うってなにが?」

「当たり前になりすぎてる気がするの。わたし最近こーちゃんの大切さが全然わからないの」

「ちょっとまってよ、そんなの一時的なものでーーー」

「ううん、前からずっと思ってたの。こーちゃんのこと、好きかどうか分からないの。こんな気持ちでこーちゃんと付き合っていたくないの」

「俺はそんなの気にしないって!」

「こーちゃん」


心春はそう言ってただ、見つめてきた。








急にこんなのって、ありかよ…...


Re: 傘をさせない僕たちは ( No.4 )
日時: 2018/06/05 01:42
名前: えびてん


#04 【 この夜だけは 】



目が覚めたとき真っ暗な部屋の中には雨の音だけが響いていた。

紗綾は起き上がり、時計を見た。
針は9時を指している。

良かった。
まだ9時だ。
良かった。

紗綾はそう思うともう一度横になり、隣に寝ている剛の顔を見た。

10個も年上とは思えない程無邪気な寝顔は、この上ないくらい愛おしい。


寒くなってきたな。


紗綾は横に枕の横にある下着を身につけ、毛布を被ると剛の腕の中へもぐりこんだ。

その時、剛が目を覚ました。


「...さ...や」


言われ、紗綾は「ん?」と言って剛を見る。

剛は紗綾の頬に右手を添えると、ゆっくりと唇を重ねた。

紗綾は剛に腕を回す。

互いの体温を身で感じる。




このまま時間が止まればいいのに。




2人が抱き合っている横で、剛の携帯のディスプレイが光った。

剛は起き上がり、携帯を手に取ると途端に起き上がった。


「...もう行くの?」


紗綾が言うと、剛は服を着ながら「うん」と答えた。

まるでさっきまでの剛じゃないみたいに。

ふと剛の置いた携帯画面を見た。




『何時に帰って来るのー?飲み会伸びそう?ごはんテーブルに置いておくね!』



ラインだった。





「...まだ帰らないで」


紗綾はそう言って剛の背中に抱きついた。


「さや」

剛は困ったように呟き、紗綾の腕を優しく解く。





「今夜だけ、今夜だけでいいから...わたしのものでいてよ」



「どうした?いつもそんなこと言わないのに」





わかっていた。
どこかで終わらせなければいけないということ。

いつかは終わることを。

だらだら続けていても平行線だということを。

わかっていた。
剛がもうこの関係を終わらせようとしていることを。

わかっていた。
今夜が最後だってことを。

なんとなく、全部わかっていた。

だからもうどう思われてもいい。

最後くらい素直な気持ちでいさせてよ。



だって今日が終わったら、次のあたしを探すんでしょ?




「...雨、降ってきたね」






だから、雨が止むまではこのままで。

Re: 傘をさせない僕たちは ( No.5 )
日時: 2018/06/07 16:11
名前: えびてん




#05【 遠く 】




「心春ちゃん来月のシフト、希望休出しといてね」

言われ、心春は「わかりました」と言って店内をホウキで掃く。


その時、カランカランと音がした。
入ってきた背の高い男を見て、心春は背筋を伸ばした。


「...いらっしゃいませ」


心春はそう言って水を出した。

彼は「ありがとうございます」と静かに水を飲んだ。


カウンターに戻ったあと、もう一度彼を見た。



いつもどこか遠くを見つめているような目。
目の前に置かれるスケッチブック。


彼を見るといつも何かが気になる。






話してみたいな。





こう思うようになったのは、つい最近。



一目惚れなんて、するタイプじゃないのにな、わたし。





そんなことを思っていると、そんな彼がこちらを向いた。


ハッとした。



「...注文、いいですか?」

「は、はい!」


心春はそう言って彼に近づいた。


「ミルクティー、アイスで」



彼はいつもミルクティーを頼む。




だからミルクティーを淹れるグラスの用意はしておいたんだ。




「かしこまりました、少々お待ちください」


こんな業務会話しかできないなんて。
当たり前だけどね。

こんなに近くにいるのに、いつも目が合うのにそれはわたしを見ている目じゃない。

彼はわたしじゃない何かを見つめている。
彼の世界にわたしはいない。

彼の目に、わたしはどう映ってるんだろう?



「お待たせ致しました、ミルクティーです」


彼にミルクティーを差し出した。


「ありがとうございます」


彼はそう言って微笑み、ミルクティーを飲んだ。

心春は一礼してカウンターに戻り、また彼を眺めた。

彼が見ているのはいつも、端の窓際の席。





その時、またカランカランと鐘が鳴り、スーツ姿の若い男女が入ってきた。



「いらっしゃいませ」

Re: 傘をさせない僕たちは ( No.6 )
日時: 2018/06/13 22:02
名前: えびてん



#06 【 選ばれた理由 】




「あーもうお腹空いた〜」


紗綾はそ言って席についた。


「紗綾先輩、今日午前中頑張ってましたもんね」


瞬もそう言って紗綾の向かい側の席につく。


「本当よね!あたし今日いつも以上に頑張った〜。井岡くんサポートしてくれて本当助かったよ」


「先輩アシスタントの俺がいないとだめですもんね〜」


瞬はそう言ってどや顔。


「年下のくせに生意気なんだからー」


紗綾はそう言って顔をしかめる。


「へへ、本当のことでしょう?」

「はいはいー。井岡くんも入ってきた当初は可愛かったのにもー」

「今もでしょ?」

「本当うちの弟とそっくり。嫌んなっちゃう」

「弟さん、高校生でしたっけ?」

「そーよ。高2」

「いいなあ、俺も高校生に戻りて〜」

「あたしも〜!高校生なんか部活と恋愛で精一杯よね〜」

「先輩は彼氏いたんですか?」

「そりゃいたよ〜。もうモテモテ」

紗綾は見栄を張りそう言って微笑む。

「えーほんとですか?じゃあ今は?」

瞬に言われ、紗綾は一瞬微笑みを消した。







「...いないよ」







紗綾はそう言ってすぐに微笑んだ。

瞬は「...そうなんですか。びっくりだなあ」と微笑んだ。


「え?なんでー?」

「いるように見えるからです」

「そうかなー?」

「じゃあ俺にもチャンスありますねっ」


瞬はそう言っていたずらに微笑んだ。


「ちょ、からかわないでよっ!」


紗綾はそう言って口を尖らせた。
瞬は面白がったように笑いながら言う。


「赤くなっちゃって〜先輩かわいい〜」

「井岡くんって年下のくせに本当に生意気ー。可愛いとかみんなに言ってるんでしょ。本当チャラいんだから」

「言わないですよ、本当に可愛いって思ってなきゃ」

「じゃあ逆に、可愛い子なら誰でもいいってこと?」

「まさか。そんなクズじゃないですよ俺。人間顔じゃないんで」

瞬は淡々と答える。

本当チャラいな、と紗綾は1人思う。




『紗綾、可愛いな』



頭の中をよぎる声。
思い浮かぶのは目の前にいる後輩じゃない。




「...シンデレラが何で王子様に選ばれたんだと思う?」


紗綾は静かに口を開いた。
瞬は「そんなの決まってるじゃないですかあ」と言ってから答える。


「王子は綺麗に着飾ったシンデレラの姉たちには見向きはしなかったんです。王子は、シンデレラの綺麗な心に惚れたんですよ」


「ロマンチックなこと言うのね、井岡くんって」


紗綾はポカンとした顔をする。
瞬は自慢気に答える。


「こう見えても俺ピュアなんで」



「でも答えは違う。それは、シンデレラが可愛かったから。シンデレラだけじゃない。おとぎ話の中の王子様は、ヒロインが可愛かったから惚れたの。白雪姫は可愛いから王子にキスされた、オーロラ姫も可愛いから王子はその寝顔にキスをした、人魚姫は可愛いから声がなくても愛された...あたしって本当ひねくれてるよね〜」


紗綾はそう言ってため息をついた。


「うーん、そうかも知れないですね」


瞬は微笑みながら続ける。


「でも、俺はヒロインが例え容姿が醜かったとしても王子はヒロインを選ぶと思んだと思いますよ」


「どうして?」


「だってそれが運命だから」


「運命って本当ロマンチスト〜」と紗綾。


「えーだってそうでしょ?運命は最初から決まってるんです。結ばれるべき相手とは必ず出会って、惹かれ合うんです、きっと」



もし本当にそうだとしたら、あたしは彼の運命に入っていないのだろうか。

Re: 傘をさせない僕たちは ( No.7 )
日時: 2018/06/17 14:19
名前: えびてん



#07 【 こんなの初めて 】



「うん!じゃあまたね!」

恵はそう言って笑顔で手を振った。
目の前で恵に手を振る女が角を曲がったのを確認すると、恵は手を下ろし振り返る。

瞬間。

「ねえ君、超可愛くね?!」

知らない男が3人。

恵は「ああ、ありがとうございます...」と言いながら微笑んだ。

「その制服、桜高でしょ?ねえ、俺たちと遊ぼーよー」

「いやあ〜わたしそのっ、えと、知らない人について行っちゃだめってパパに言われてるし…」

恵がそう言うと、「パパだって!超可愛いんですけど?!」と男3人が盛り上がる。

「ねえいいじゃん、遊ぼうよ〜」

男たちに言われ、恵は微笑みながらどうにかあしらう。








その時。






「遅くなってわりぃな〜」



男の声がした。

ふとそちらを見ると、同じ桜高の制服を着た男が1人。

恵は「えっ」と男を見る。


「えーっと、どちら様?なんか用?」


男はそう言って、男3人を見ると恵の肩を抱いた。
恵は驚いた表情で肩をすくめる。


「...んだよ、男持ちかよ。行こうぜ」と1人の男が言うと、3人組は渋々といった感じでその場を後にした。


3人組がいなくなると、恵の肩を抱いた男はすぐに離れ、恵を見て言った。


「大丈夫?」


言われ、恵は「えっと、その、はい!ありがとうございます!」と微笑んだ。


「俺は全然。たまたま同じ制服の子見かけたからさ。1人で帰れる?」

「大丈夫です!迎えが来るので!」

「そ?なら良いけど。気をつけろよ〜」

男はそう言うと歩き出し、恵に手を振るとそのまま去っていった。

恵は「まって!」と言って小走りで男の所まで行く。

「ん?」と男は振り返った。

「わたし、西原恵って言います!あ、2年生です!あ、あの、えっと、名前!名前教えてもらえませんか?」

恵がそう言うと、男はキョトンとした表情で恵を見ている。

「あ、いやだって!助けてもらったし、その、せっかく同じ学校なのにこれっきりってなんか...」

恵が必死に言い訳していると、男は微笑みながら恵を見て言った。



「武田夏樹。2年ですよ、俺も」



夏樹は腰を落とし、恵の視線に合わせて言った。

恵は「...武田、夏樹...くん」と呟く。

夏樹は「うん」と微笑んだ。



「じゃあな、西原恵さん」



夏樹はそう言うと腰を上げ、手を振って行った。

恵は夏樹の後ろ姿を見て、目を輝かせた。

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