複雑・ファジー小説

傘をさせない僕たちは
日時: 2019/10/30 13:29
名前: えびてん

はじめまして!
えびてんと申します!
私の身近な人と身近な人は実は知り合いで、世間は狭いなあと感じることが多くてこのお話を書こうと思いました(*゚-゚)
主にそれぞれの恋のお話です( ´ ` )
ちょっとわかりづらいお話だと思うのですが、是非読んで頂けたら嬉しいです!

【 登場人物 】

@浅倉航平(あさくら こうへい) 25
→化学教師。
@水原茉里(みずはら まり) 24
→国語教師。
@武田夏樹(たけだ なつき) 17
→高校2年生。
@佐伯まな(さえき まな) 16
→高校2年生。
@瀬乃健人(せの けんと) 16
→高校2年生。
@西原恵(にしはら めぐみ) 17
→高校2年生。

@武田紗綾(たけだ さや) 24
→建築会社社員。
@井岡 瞬(いおか しゅん) 23
→建築会社社員。
@小宮山 剛(こみやま つよし) 42
→建築会社社員。
@小宮山綾子(こみやま あやこ) 39
→小宮山の妻。

@柳木 蓮(やなぎ れん) 22
→大学生。
@宇野美琴(うの みこと)25
→ピアノ科教師。

@浅倉結以(あさくら ゆい) 18
→航平の妹。
@相原直登(あいはら なおと) 19
→結以の友達(?)
@日向希穂(ひなた きほ) 19
→直登の大学のクラスメイト。

@藤井心春(ふじい こはる) 22
→カフェ店員。
@坂口椋(さかぐち りょう) 26
→画家。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14



Re: 傘をさせない僕たちは ( No.62 )
日時: 2020/02/21 18:01
名前: えびてん





#60 【 約束 】


「わーお、直球だね」

蓮はそう言って唐揚げにレモンをかける。

「あ、レモンかけていい?」

蓮に言われ、結以は「いいよ」と答える。
蓮は唐揚げにレモンをかけながら話し出した。

「好きだよー、美琴さんのこと」

「美琴さん・・・?」

結以は不思議そうに蓮を見た。

「俺昔塾通っててさ、その時の講師が美琴さんだったんだよね。中3の時。その時からなんやかんやずっと好き」

結以は驚いた表情を浮かべた。

「中3って、5年以上ずっと好きってこと?」

「まあそうなるよね」

「見かけによらず一途なんだ」

「って言っても、叶わないって分かってたし、だからその間に何回か彼女作ったりしてるけどね。でも心のどこかに美琴さんがいた。それで大学に来たら美琴さんがいて、再発しちゃった」

「そうなんだ・・・どうするの?」

「どうするって、どうもしないでしょ」

蓮はそう言って笑い飛ばすように鼻で笑った。
結以は首を傾げる。

「どうして?アプローチしたらいいじゃん」

「無理だよ」

「どうして?」

「あの人は俺なんか見ちゃいない、昔からね」

「どういうこと?」

「見てて分かると思うけどあの人、あざといでしょ」

「確かに・・・」

「みーんなに好かれたいくせに誰のことも好きにならない、あの人はそういう人なんだよ」

「だったら好きになってもらえるように頑張ればいいじゃん」

「簡単に言うね。無理無理」

「無理って諦めてるから無理なんだよ」

「んー、それは君にも言えるよね。つまり、頑張ったって無理なものは無理なんだよ。俺はあの人とどうこうなりたいとか、そういうんじゃないんだ」

「え?」

結以は顔をしかめた。

「お互い好きになって、付き合って、キスしたりセックスしたり、そんな普通の恋愛ができる人じゃないから」

「分からないじゃない」

「分かるよ。ずっと見てきたんだから」

蓮はそう言いながらメニュー表を開き、「すいません」と店員を呼んだ。

「レモンサワー1つ・・・と、浅倉さんは?」

「ビールを・・・2つ」

「え、2つも飲むの?」

「そう」

2人の会話の後、店員は「かしこまりました!」と言うと去っていった。
しばらくすると、「お待たせ致しました!」と言ってレモンサワーとビールが来た。

結以はビールを両手に持ち、1つを蓮の前に置いた。

「え、俺ビールは飲めないんだけど」

「いいから、1口飲んでみてよ」

「ええ、いらないよ」

「いいから!飲んで」

結以に言われ、蓮は嫌々ビールを1口。
飲み込むと、「あれ、美味しい」と一言。

「柳木くんさ、最初から諦めてるから何も始まらないんだよ。ビールだって飲めるじゃん。ずっと甘ったるいレモンサワーばかり飲んで他の選択肢を諦めてる」

結以が言うと、蓮は「わーお」と言って少し微笑んだ。

「まどろっこしいこと言うね〜」

「別に宇野先生とどうなろうが勝手だけど、あたしに根掘り葉掘り聞きに来ておいて自分は諦めてるだなんて何か許せない」

「根掘り葉掘りは聞いてないよ」

「うるさい!とにかく諦めちゃダメ!むかつく!あんたは自由なのに!」

結以はそう言ってビールをグビグビと飲んだ。

「君も自由になればいいのに」と蓮。

「なれないから言ってるのー・・・」

「なれるよ」

「なれないよ」

「ちゃんと言ったの?その彼に"助けて欲しい"って。グダグダ言ってないで、素直に助けてって言えばいいのに」

「・・・だって迷惑だし」

「それを迷惑だって思うような男ならセフレくらいが丁度いいのかもね」

蓮もそう言ってビールを飲んだ。
結以はムッとした表情を浮かべる。

「柳木くん約束しよ」

「え、なにを」

蓮はポカンとした表情で結以を見た。
結以はジョッキを置き、厳しい表情で蓮を見る。

「あたしはちゃんと彼に伝える。柳木くんは宇野先生に気持ちを伝える」

「嫌だよ」

「なんで!こういう時じゃないと決意できないじゃん!せっかく傷の舐め合いしたんだし、あたしたち前に進もうよ」

「・・・うまくいかなかったら?」

「上手くいかないかも知れない。けど、何もしないよりはマシだよ」

「何もしなければ傷つかないのに?」

「傷ついても伝えたことは後悔しない。このまま何もしないでいずれ直登が他の女の子と付き合うなんて嫌だもん」

「直登って言うんだ。でも美琴さんはーーー」

「宇野先生も同じ。いつかはきっと誰かのものになる。今は違くても。だったらダメ元でも頑張ってみようよ。失敗したら・・・またここで飲も」

結以に言われ、蓮はクスッと微笑んだ。

「分かったよ。俺も色々頑張ってみる。振られたらレモンサワー奢れよな」

蓮の言葉に結以も微笑んだ。

「いいよ。柳木くんもビール奢ってよね」

「ええ、君が言い出したのに」

「うるさい!・・・がんばろ」

結以はそう言って蓮に右手の小指を差し出した。
蓮も小指を出し、2人は指切りを交わした。




これでようやく、私たちの歯車が動き出す。


Re: 傘をさせない僕たちは ( No.63 )
日時: 2020/02/28 11:52
名前: えびてん






#61 【 不毛な関係 】


『会って話したいことがある』

蓮からそんなメッセージが来たのは突然のことだった。
茉里は携帯の画面を見つめ深呼吸をする。

「水原先生?どうかしました?」

後ろから話しかけられた。

浅倉先生か・・・びっくりした。

航平は不思議そうに茉里を見ている。
茉里は「ああいえ!」と言って焦った様子で携帯をしまう。

「そうだ浅倉先生、そういえばさっき夏樹くんが探してましたよ」

「夏樹が?分かりました、ありがとうございます」

航平はそう言って微笑むと会釈し、茉里の元を去っていった。
茉里は肩を撫で下ろし、再び携帯を開いた。

『分かった。いつにする?』

蓮にメッセージを返した。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ごめん遅くなって」

茉里はそう言って微笑んだ。

「大丈夫・・・座ろうか」

蓮はそう言って近くのベンチに腰を下ろした。

2人が会ったのは20時を過ぎた頃だった。
辺りは暗く、街灯の光が2人を照らす。

「えっと・・・話したいことって?」

茉里はそう言って蓮を見た。
蓮はどこか気まずそうな表情を浮かべている。

「・・・茉里、今までごめん」

蓮はそう言って茉里に頭を下げる。
茉里は「えっ」と驚いた表情を浮かべた。

「ななっ、なにが?!蓮くんどうしたの?!」

蓮は頭を下げたまま答える。

「・・・俺、茉里の気持ち弄んでた」

言われ、茉里は少し俯き加減になる。

「俺、茉里に甘えてた。何をしても怒らなくて、いつでも俺を優先してくれて、俺に尽くしてくれて・・・。茉里は俺の事好きって言ってくれてたのに俺は気持ちに応えてあげないで・・・都合の良いことばっかしてた。本当にごめん」

蓮はそう言って再び深く頭を下げる。

「蓮くん・・・顔上げて」

茉里は今にも泣きそうな表情で蓮を見た。
蓮はゆっくりと顔を上げ、茉里を見る。

「・・・私、怒ってないよ。そりゃ、寂しいことの方が多かったけど。蓮くんといる時間、本当に楽しかったよ。だから尽くしてたの」

「茉里・・・」

「だからそんなに謝らないで?ね?」

茉里はそう言って微笑んだ。
蓮も微笑み、茉里を抱きしめた。
茉里は驚いた表情を浮べる。

「・・・俺、ちゃんとするから。だから、もう少し待っててくれないかな」

「ちゃんとするって・・・?」

「これからは茉里のことだけ見る。そうするために、ケジメつけなきゃいけなくて」

何のことだか、さっぱり分からない。
でも今はその理由、知らなくていいや。

「分かった。私待ってるね」

茉里はそう言って微笑んだ。
蓮は茉里を抱きしめる力を強め、「ありがとう」と呟いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「どうしたの?呼び出したりして〜」

生徒指導室で、美琴はそう言って微笑んだ。
蓮は深刻な表情を浮かべている。
美琴は不思議そうに蓮の顔を覗き込んだ。
蓮はビクッとして美琴から少し離れる。

「れーんくんっ?」

そんな美琴を見て、蓮はムッとした表情で言った。

「・・・美琴さんはいつも、そうやって俺のことをからかいますよね」

「からかう?してないよ?どうしたの?」

美琴はそう言って微笑んだ。

「からかってるよ!・・・昔から。俺の気持ち、知ってるくせに」

「ん〜?」

「そうやってとぼけないでください」

「なあに?蓮くんの気持ちって」

美琴は口に指をあて、ポカンとした表情で言った。






「・・・俺、美琴さんのこと好きなんです」







蓮が言うと、美琴は微笑んで言った。

「ん〜〜〜それかあ。知ってたよ」

「・・・ですよね」

「どうして急にぃ?」

「・・・そろそろ、ケジメつけたいなって思って」

「ケジメって、どうしたいの?」

美琴はそう言って微笑んだ。

「美琴さんのこと忘れて、彼女とちゃんと向き合いたい」

瞬間、美琴は不服そうな顔をした。

「彼女・・・?蓮くん彼女いたの〜?」

「正式にはまだ付き合ってない・・・でも、その人のことちゃんと好きになりたい」

蓮が言うと、美琴はクスッと笑った。

「好きになりたいってー、好きじゃないんだ?」

「・・・今はまだ、分からないです。でも、その人は俺の事ずっと好きでいてくれて、彼女の気持ちに応えたいんです」

「ふぅん・・・あたしのことは忘れちゃうんだ?」

美琴はそう言いながら蓮の目の前まで歩いてきた。
蓮のすぐ前で立ち止まり、蓮の肩に両腕を乗せ、下から覗き込むように蓮を見る。

「悲しいなあ、蓮くんイケメンだし、可愛いし、ざーんねん」

美琴はそう言って微笑んだ。
蓮は明らかに目を泳がせる。

こんな手に乗っちゃダメだ。
俺は茉里と向き合うって決めたじゃないか。
茉里も待ってくれるって言ってくれたじゃないか。
ずっと茉里を傷つけてきたんだ、裏切っちゃダメだ。






「・・・先生、キスしていいですか?」






だめだって、俺。

Re: 傘をさせない僕たちは ( No.64 )
日時: 2020/03/05 19:20
名前: えびてん





#62 【 誘惑 】



美琴はクスッと笑った。

「今日、放課後時間ある?」

「・・・え?」

美琴はそう言って蓮から離れ、窓の外を見た。
蓮は不思議そうに美琴を見た。
美琴は振り返って、蓮に微笑みかけた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ああ、俺は何をしているんだ。
どうせこの人は俺の事なんか都合の良い玩具程度にしか思っていないのに。

2人は夜の街を歩いていた。

「明日は休みだし、蓮くん課題は明日でいいわね」

歩きながら、美琴は楽しそうに話し出した。

「・・・そうですね」

蓮は小さく呟いた。

下を見ると、蓮の手と美琴の手は握られている。

先生はどうするつもりなんだ。
どうしたって言うんだ、突然。
不気味ささえ感じながら、俺はドキドキしている。
彼女と2人きりで手を握られて、胸が高鳴っている。
ごめん、茉里。

美琴は立ち止まり、蓮の頬を掴んだ。

「もうっ蓮くん!つまらなそうな顔しないでよ〜」

美琴はムッとした表情を浮かべ、手を離した。

「あ・・・すいません」

「じゃ行こっか」

美琴はそう言って微笑んだ。
蓮は「行くって・・・」と言って目の前のビルを見上げた。

そこはラブホテルだった。

「なあに?嫌?」

美琴はそう言って蓮を見上げた。

「・・・先生どうしてーーーー」

蓮が言いかけたとき、美琴は遮って言う。

「こんな所他の生徒とか先生に見られたらお互い大変だし、お話は中に行ってからでいい?」

ごもっともだけど、さ。








部屋はTheラブホテル!という感じだった。
ピンクの照明に照らされた大きなベッド。

「わあ〜きれいなお部屋だね〜」

美琴はそう言ってフラフラとベッドへ行き、そのままベッドに仰向けになった。

この人はなんでもう、俺の前でこういう無防備なことをするーーーーー!

「・・・乗りませんよ」

蓮が言った。
美琴は「んー?」と言って蓮を見てくる。

「美琴さんの誘いには乗りません。お話しましょ」

蓮はそう言ってソファに腰を下ろした。
美琴はクスッと笑う。

「蓮くんはさ、あたしと何をお話したいの?」

美琴に言われ、蓮は美琴に背を向けたまま答えた。

「・・・俺、言いましたよね。美琴さんのこと諦めるって、忘れたいって。彼女と真剣に向き合うんだって」

蓮が言うと、美琴は「だったら」と言うと体を起こした。
蓮は振り返る。







「だったら、どうして尻尾振ってこんな所に来ちゃったのかな〜」





美琴はそう言って微笑んだ。
蓮はハッとしたような表情を浮かべ、立ち上がる。

「いやっそれは美琴さんがーーーーーー!」

蓮の言葉を遮り、美琴はベッドの前に立ち上がった。

「あたしが?なあに?」

美琴の言葉に、蓮は言葉を詰まらせた。

そりゃあそうだ。
俺が俺の意思で美琴さんについてきた。
美琴さんのせいにしている。
茉里に言い訳をしたいだけだ。

蓮が黙っていると、美琴はクスッと笑ってから言う。

「蓮くんが、蓮くんの意思で、あたしについてきたんでしょ?本当は、喜んでたりして?」

美琴はそう言って笑う。
蓮はイラッとした表情を浮べると美琴に歩み寄り、美琴の前で足を止めた。




「・・・喜んでるに決まってるじゃないですか」





蓮はそう言って美琴をキスをすると、そのまま美琴をベッドに押し倒した。







本当にどうしようもないやつだ、俺は。


Re: 傘をさせない僕たちは ( No.65 )
日時: 2020/03/16 18:22
名前: えびてん





#63 【 愛して 】



みんな、あたしに夢中だった。

周りから注がれる羨望、嫉妬、男からの好奇の目。
すべてが気持ちよかった。

そう思い始めたのは中学生の頃、仲の良かった女友達の相談がきっかけだった。

「中山くんのこと好きなんだよね。美琴、協力してくれる?」

そんなことを言われた。
あたしは"もちろんだよ"と笑顔で答えた。
その時は本心だった。

彼女が中山くんと上手くいけばいい、本当にそう思ってた。
あたしは彼女に協力しようと、特に仲が良かったわけではない中山くんに話しかけた。

彼女はいるのか、好きな人がいるのか、どんな人が好きなのか、どんなものが好きなのか。
とにかくたくさん聞いた。
それを彼女に教えた。
喜ぶ彼女の姿を見て、心から上手くいって欲しいと思った。

だけど、そんな日々もすぐに終わりを告げた。
ある日突然、彼女があたしを無視した。
どうしてかとしつこく聞いた。
そして返ってきた言葉は意外なものだった。

【中山くんに告白したら美琴のことが好きだからごめんって言われたんだけど】

分からなかった。
どうして中山くんがあたしを?

それから彼女とは疎遠になった。
彼女は友達にあたしに中山くんをとられた、と言いふらし、あたしは女子に無視された。

後から聞いた話、中山くんは好きな人のことなんかを突然聞いてきたあたしが、自分のことを好きなのではないかと勘違いしたようだった。

それを知った時、あたしはそのせいでいじめを受けた悔しさと共に、"気持ちよさ"を感じた。

あたしは中山くんを好きだったあの女よりも上なんだ、そう思った。

なんだ、人の気持ちを動かすのなんて簡単じゃん。
みんなに愛されたい。
あたし以外の誰かを好きだなんて許せない。
あたしが1番なのに。
みんなあたしが好きだって言ってくれるのに。



1人だけは、あたしを好きにはなってくれなかった。
あたしを愛してよーーーーーー。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「・・・美琴さん、好きだよ」

ベッドの中で、蓮は言った。

「ありがとっ蓮くん」

あたしはそう言って微笑んだ。

やっぱ大学生って盛りなのかな。
ここ1ヶ月、ずっと蓮くんと体を重ねてすっごい疲れた。
まあ、年下も案外気持ち良いんだけどね。

何より気持ち良いのは体より、蓮くんの言う"彼女"から搾取できたこと、かな。
そんな得体の知れない女に負けるなんて有り得ない。

だから奪ってやった。
蓮くんがあたしを忘れて"彼女"と向き合う、なんて言うから。
あたしのこと、忘れないでよ。

その時、蓮の携帯が鳴った。
《水原茉里》からの着信。
蓮は焦ったように携帯を裏返す。

美琴は目を細め、舌打ち。
蓮は「えっ」と言って美琴を見た。
美琴は急いで笑みを作る。

茉里って言うんだ、あの女。
大して可愛くなかったけどなー。

蓮くんがあたしに忘れるなんて言った日の前日、夜コンビニに行った帰り、蓮くんと知らない女が抱きしめあっているのを見かけた。

結局この男も他の女の所行くんだーーーーー。
そう思ったら苛立ちがこみ上げてきた。
絶対に渡してたまるか。

ってな訳で蓮くんをラブホに連れ込んで成功。
で、今に至るわけ。



そんな時に同窓会のハガキが届いた。
彼は来るだろうか。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ええっ?!別れたの?!」

茉里は驚きのあまり、手に持っていた枝豆をテーブルの上に落とした。
紗綾はハハ、と笑いビールを飲んだ。

「ちょっと色々あってさ・・・不倫やめなきゃなーって思ってたしね。夏樹にまで言われたら、バカだったよ」

紗綾はそう言って微笑んだ。
茉里は「そっか」と頷いた。

「まあ、紗綾が納得したなら良かったよ」

茉里は微笑む。

「納得かな?うん!」

紗綾はビールを飲んだ。

「良かった。というか、夏樹くんとはどうして喧嘩したの?」

「ああ、夏樹が失恋したらしくて」

「ああ・・・まなちゃんのこと?」

「茉里知ってたの?」

「夏樹くん分かりやすいから。ああでも、最近は彼女できたのかと思ってた」

「彼女?!あいつまなちゃん以外にいい子いるの?」

紗綾は面白がったように食いついた。

「んー、違うクラスの子なんだけど、その子が夏樹くんのこと好きみたいだったから。あ、それも可愛い可愛いって言われてる女の子」

「へえ!あいつやるじゃん〜!」

「あ、あ、でも夏樹くんはまなちゃんが好きなんだよね?」

「んーそうみたい。ま、あたしが口出したことで喧嘩しちゃったし・・・このことは言わないでおく〜」

紗綾はそう言って微笑んだ。
茉里は「そうだね」と紗綾に笑いかける。

「で?茉里はどうなの?あの金髪と」

紗綾は焼き鳥を食べながら言う。
茉里は「ああ・・・」と言って箸を置いた。

「実は・・・ちゃんとするから待っててって言われたの」

紗綾は「お!」と言って目を見開く。

「それって付き合うってこと?!で?どうなったの?!」

茉里は途端に俯く。

「それが・・・それから1ヶ月、なんの連絡もなくて・・・電話しても出ないし、メッセージは返ってこない」

「はあ?!」

紗綾は一気にイライラしたような表情を浮かべた。
茉里は苦笑する。

「いやいや、意味わかんないし!なんなのあいつ!とことんクズ!」

「・・・もう、諦めた方がいいのかな、蓮くんのことは」

「茉里・・・」

紗綾は顔をしかめる。
茉里は「なんかもう、わかんないや・・・」と言いながら涙を流した。


Re: 傘をさせない僕たちは ( No.66 )
日時: 2020/04/07 17:56
名前: えびてん






#64 【 可哀想 】


プリントをまとめると、溜息をついた。
携帯を見ても、蓮からの連絡はない。

「どうしたんですか?溜息なんかついて」

声が聞こえた。
向かい側のデスクから、航平が微笑んでいた。
茉里は笑みを作り、「ああいえ」と航平を見た。

「ちょっと最近寝れなくて」

茉里がそう言うと、航平は首を傾げた。

「何か悩み事ですか?」

「いえ、大したことじゃ。最近残業ばかりでちょっと疲れちゃっただけです」

「これからまた残業ですしね。無理しないで下さいね」

「はい、ありがとうございます」

航平は教科書を持ち職員室を後にした。

はあ、いいなあ浅倉先生。
彼女さん幸せなんだろうなあ。

茉里はそう思いながらまた携帯を見る。
すると、紗綾からメッセージが来ていた。

『今日もごはん行かない?私も話したいことある!』

という内容だった。

『いいよ!7時くらいになるけど大丈夫?』

茉里が返すと『了解!』とすぐに返信がきた。

紗綾、気遣ってくれてるんだろうな。
紗綾も失恋したばっかりで辛いはずなのに。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「乾杯〜!」

紗綾はそう言ってビールを飲んだ。

「はあ〜結局ビール飲みたくなる〜」

紗綾が微笑んだ。
茉里も微笑み、「で、話したいことって?何かあったの?」と問いかけた。
紗綾はジョッキを置き、改まって話し出す。

「後輩の様子がさ、最近おかしくて」

「後輩?」

「うん、井岡くんって言うんだけど、まああたしが教育係だから元々仲は良いんだけどね。何か、やたらと飲みに誘ってくるしやたらと連絡くるし」

「へえ、紗綾に気があるんじゃない?」

「いやそれがさ、井岡くん総務の女の子といい感じだって聞くし、かと言ってチャラチャラしてる感じでもない好青年だからさ、何考えてるんだろって感じ」

「聞いてみたら?」

「ええっ無理だよ!なんかあたしが意識してるみたいで恥ずかしい!しかも年下に!」

紗綾は恥ずかしそうに言った。
茉里は笑いながら言う。

「ええーでもこのままじゃーーーーーー」

茉里の話の途中、突然話しかけられた。




「あれ、どこで会ったことあるような」




声の方を見ると、可愛らしい女が微笑んでいた。
紗綾はしばしの沈黙の後、「ああ!」と彼女を指さした。

「金髪といた人!」

言われ、茉里は「え?」と言って紗綾を見た。
紗綾は「あ・・・その、あたしが酔っ払って文句言った時の・・・」と呟く。
茉里は「じゃあこの人は蓮くんの・・・」と不思議そうに彼女を見上げた。

「宇野美琴って言います。蓮くんは〜あたしの生徒です」

美琴はそう言って微笑んだ。

「生徒?先生なんですか?」と紗綾。

「ええ、大学で教師をしています。その節はどうも」

言われ、紗綾は「え、ああ・・・ご迷惑おかけしました・・・」と軽く美琴に頭を下げた。

「せっかくだしご一緒してもいいですか?今日1人で寂しくて」

美琴に言われ、紗綾は「え、いやそれはちょっとーーーー」と茉里を見た。
茉里は少し俯いたあと笑顔で顔を上げた。

「いいですよ、何かの縁ですしね」

「恐縮です」

美琴はそう言って微笑み、2人の席についた。
紗綾が茉里を見ると、茉里は不安げな表情を浮かべていた。
美琴を見ると、逆に自信を満ちた表情を浮かべている。

たしかに美人だけどこの女、絶対にただの教師じゃないよね・・・。

「お2人はどういうご関係なんですか?」

美琴に言われ、紗綾が答える。

「ああ、あたしと茉里は中学の友達で」

言うと、美琴は「そうですかあ」と微笑んで続けた。

「蓮くんとは?どういうご関係で?」

美琴は明らかに茉里を見ている。

茉里のこと知ってるの?






「・・・蓮くんは、私の友達です」



茉里はそう言って美琴を見た。
美琴は「あら、そうなんだぁ」と微笑む。

「てっきり彼女か何かかなあって」

「あなたには関係ないですよね」

茉里も負けじと言い返している。

「確かに〜それなですね」

「宇野さんは?ただの先生が生徒と夜の街、歩きませんよね」

茉里に言われ、美琴は待ってましたと言わんばかりの表情。

「んーただの先生、ではないかなあ?昔から知ってるので」

「昔からって?」

「塾の講師だったんですあたし。蓮くんはその時から生徒で」

「塾の生徒だったからって夜一緒にいらっしゃるんですか?」

「いちゃだめな理由でもありますか?」

「・・・だって、ただの先生でしょ」

「向こうはそう思ってないみたいですけど」

美琴はそう言って微笑みながらカクテルを飲んだ。
茉里は「え?」と言って美琴を見る。

「蓮くんってね、ああ見えて甘えん坊なの。でも甘えさせ上手なんですよ〜」

美琴に言葉に、紗綾は「ちょっとあんた」と美琴を睨む。
美琴はフフっと微笑む。

「茉里さんみたいに頭の堅そうな人には甘えられないのかも知らないですけどね〜」

「どうして私の名前」

茉里は美琴を睨むように見た。
美琴は余裕の表情を浮かべる。

「あんなにしつこく電話かけてきて、そりゃ相手されなくても仕方ないんじゃない?大体、蓮くんはあなたのことなんか本気にしてないのに」

「なんでそんなこと・・・」

「なんでかって?教えてあげましょうか。茉里さんが蓮くんにしつこ〜く電話かけてきてるとき蓮くんが何をしているか」

「・・・なにしてるんですか」と茉里。

「あたしのこと抱いてるの。何度も何度も、美琴さん美琴さん〜好き好き〜って」

言われ、茉里と紗綾は目を見開いた。

「は?あんた教師でしょ?生徒とそんなことしていいわけ?犯罪じゃない」

紗綾が言うと、美琴は「あのね」と紗綾を見る。

「罪って、どうして罪になるか知ってる?罪って言うのはね、公になって初めてそれは罪になるの。誰にもバレない、知られない嘘は嘘じゃない、真実なの。それは罪にはならないの」

「あんた頭おかしいんじゃないの・・・!あんたは、あの金髪のこと好きなの?」

紗綾は顔をしかめた。
美琴はハハハッと笑う。

「あたしが蓮くんを好き?そんなわけないじゃない。大学生なんて子供よ」

「だったらどうして」と茉里。

「気持ち良いから。誰かに好かれるのって気持ちが良いの。でももっと気持ち良いのは"搾取"すること」

美琴はそう言って茉里を見た。

「そう、その顔。あなたから蓮くんをとって、あなたのそういう悔しそうな顔を見る、それが気持ち良いの。だからキスでもセックスでもしてあげるの。需要と供給が成り立ってるでしょ」

「あなたは間違ってる・・・!それであなたは幸せ?」

茉里に言われ、美琴は「ええ、あなたより遥かにね」と微笑んだ。

「蓮くんがあなたを好きでも、そんな関係ずっと続くわけない。蓮くんが幸せなわけない」

「そうね、幸せじゃないでしょうね。でもそれは永遠じゃなくていい。飽きたら忘れて欲しいくらい。でも他の女に目がいったらまたセックスすればいい」

「あなた・・・!」

茉里は怒った表情で美琴を見た。
すると紗綾が制するように言った。




「茉里。放っておきなよ、こんな可哀想な人」




言われ、美琴は不思議そうな表情で紗綾を見た。

「可哀想?あたしが?」

紗綾は淡々と答える。




「人を傷つけることでしか愛してもらうことができないなんて、可哀想な人」






紗綾はそう言って立ち上がり、1万円札をテーブルに置いた。

「あとは1人寂しくどうぞ、奢るんで。茉里、帰ろ」

紗綾はそう言って茉里の腕を引き、その場を後にした。








可哀想?あたしが?
バカバカしい。





美琴は1人カクテルを飲んだ。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


URL


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大7000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。