複雑・ファジー小説

傘をさせない僕たちは
日時: 2019/01/05 21:29
名前: えびてん

はじめまして!
えびてんと申します!
ちょっとわかりづらいお話だと思うのですが、是非読んで頂ければと思います!



【 登場人物 】

@浅倉航平(あさくら こうへい) 25
→化学教師。
@水原茉里(みずはら まり) 24
→国語教師。
@武田夏樹(たけだ なつき) 17
→高校2年生。
@佐伯まな(さえき まな) 16
→高校2年生。
@瀬乃健人(せの けんと) 16
→高校2年生。
@西原恵(にしはら めぐみ) 17
→高校2年生。

@武田紗綾(たけだ さや) 24
→建築会社社員。
@井岡 瞬(いおか しゅん) 23
→建築会社社員。
@小宮山 剛 42
→建築会社社員。
@小宮山綾子 39
→小宮山の妻。

@柳木 蓮(やなぎ れん) 22
→大学生。
@宇野美琴(うの みこと)25
→ピアノ科教師。

@浅倉結以(あさくら ゆい) 18
→航平の妹。
@藤井心春(ふじい こはる) 22
→カフェ店員。
@坂口椋(さかぐち りょう) 26
→画家。

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Re: 傘をさせない僕たちは ( No.18 )
日時: 2018/09/09 03:08
名前: えびてん



#17【 病気? 】


『さや先輩!風邪って聞きましたけど大丈夫ですか?!』

井岡くんは本当にかわいい後輩だ。
あたしがたった1日休んだだけでこうしてラインをくれる。

『大丈夫だよ。ありがと』

あたしの返信は本当につまらない。

『なら良かったです(^Д^)』

こんなダサい顔文字を使ってくる所も可愛い。
井岡くんの笑顔は例えるなら尻尾を振って近づいてくる小型犬。

って言ってももちろん井岡くんの方が背は大きいし、声も低い。
でもまるで小型犬みたいな可愛らしい顔立ち。


こんなとき、あの人は連絡なんかくれない。

わかってる。
あたしのことなんか心配になるわけがないし、休んだことすら知らないかも知れない。

隣の部署なのにな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「小宮山部長、この書類なんですか?デスクに置いてありましたけど。小宮山部長の名前も記載されてます」


瞬はそう言って小宮山に書類を見せた。
小宮山は無表情のまま「ああ」と言うと、パソコンに目を戻して言った。


「多分それ武田宛のファックス。武田に渡して」


言われ、瞬は「ああ、武田先輩は今日休みですよ。風邪引いちゃったみたいで」と答えた。

小宮山はキーボードを叩く指を止めることなく「じゃデスクに置いとけ。あとそれを武田に伝えといて」と淡々と告げた。


「分かりました。でもこの小宮山部長の名前は?」


「俺が発注して武田に依頼したから」


「ああ、そうなんすね。了解です」


瞬はそういうと自分の部署へと足を進めた。


「井岡」


言われ、瞬は「はい」と振り返った。
小宮山はどこか言いづらそうにしながら言った。


「...それ、やっぱり武田に言わなくていい。井岡が進めてくれ」


「え、でも俺この件なにもーーーーーー」


瞬の言葉を遮るように「休んだやつに任せられない」とだけ言うと小宮山は立ち上がり、オフィスを後にした。

瞬は首を傾げると、携帯を開いた。


『先輩宛の書類、届いてたんでデスクに置いておきますね〜』


メッセージを送った。
小宮山部長には言わなくていいと言われたけど。
こういうことはちゃんと伝えておかなきゃ。

なんて、ただの口実なんだけどね。
ただメッセージのやりとりをしたいだけ。

紗綾先輩大丈夫かなー。
お見舞いにでも行きたいところだけどさすがにうざいよなあ。
1人暮らしの女性の家に行くとか許されるのは大学生までだよなあ。


でもーーーーーー。









会いたいな。








『了解です!井岡くんありがと〜(・ω・)』


すぐにメッセージが返ってきた。
こういうわけのわからない顔文字を送ってくるところも何か惹かれる。
俺って変わってるのかも。


『携帯いじりすぎですよ笑』


瞬が返すと、またすぐに返信がきた。


『具合は悪くてもひまなの。』


『ちゃんと寝てください。笑』


『午前中に寝すぎて、てか今起きたし』


時間は17時過ぎ。


『逆に寝すぎですね。笑』


『寝ろって言ったくせに』


『じゃあ起きてください』


『起きてる!1人でひまなの!』


『俺が行ってあげましょうか?笑』


『またそうやってからかって。』


『からかってません(笑)さや先輩が心配なんで』


『絶対うそ笑』


こんな何気ない日常会話もやりとりができるだけで嬉しくなる。




こりゃ重症だな、俺。

Re: 傘をさせない僕たちは ( No.19 )
日時: 2018/09/12 22:12
名前: えびてん


#18 【 何かのきっかけで 】


浮気をするのは、今いる恋人のことを必ずしも好きじゃなくなったわけではない。

冷めたわけじゃない。

大切に思っていないからじゃない。


むしろその逆だ。
大切に思っていたらそんなことできないだろって、普通はそう思うだろ。

でも違う。

俺自身、自分が他の人に目がいくだなんて思ってはなかった。

浮気をする人間などろくな人間じゃない、とか別れてからやるべきだ、とか、真っ当な意見を持っていた。

もちろんその気持ちがなくなったわけではないし、否定するつもりもない。

でもいざそうなってみたら人間わからないものだ。

その場の感情にはどうしても勝てない。

新鮮な気持ちにはどうしても勝てないんだ。

だからといって浮気を肯定する気はさらさらない。
開き直っていると言えばそうだが、そうとしか言いようがない。




『今日は何時に帰ってくるの?』



妻からだった。



『はやめに帰るようにするよ』


『わかった!まってるね〜』


心が痛い?
それは最初だけだったかな。

綾子に気づかれることなんてきっとない。
この先ずっと。

綾子は俺のことを信じている。
信じきっている。

ばれることなんてない。
きっと。




『小宮山部長、やっぱり紗綾先輩に伝えておきました。』


メールがきた。
隣の部署の井岡からだ。

言わなくていいと言ったのにこいつは本当に余計なことをして余計な報告をしてくる。

ま、どうでもいいか。






剛は1人、深く溜息をつくと携帯をポケットにしまい、タバコを手にした。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「...すごい、あたしこんなとこ初めて来た。お兄にばれたら怒られそうだよ」


クラブだった。
暗めの雰囲気で音楽が鳴り響き、若者がたくさんいる。


「出た結以のお兄ちゃん〜。クラブって言ってもいかがわしいことなんてないから超楽しいよ」


花苗はそう言って微笑んだ。
結以は「でもめっちゃ楽しい」と笑顔で花苗を見た。


「でしょ?...ちょっとあれ!T大の人たちだよ」


花苗はバーのブースに座る男たち3人を見た。


「T大?ふうん...ちょっとかっこいいかも」


「かっこいいよね〜。なんかキラキラして...あ、やばい目合っちゃった変なやつだと思われたかな」


花苗はそう言って結以の方を見る。
すると、男たち3人組はこっちに歩いてきた。


「ちょ、やばい、向かってくるよ、かっこいいどうしよ結以!」


花苗はそう言いながら結以の肩を叩く。
結以は首を傾げながら彼らを見る。



「今俺らのこと見てたでしょ」


真ん中にいた男が冗談を言うように言った。


「ああ...T大の人かなって思って〜...」と花苗。


「知ってるの?俺たちのこと」


「まあ、イケメンって有名なんで」


「ふうん、悪い気はしないけどさっ」


彼らはそう言って微笑んだ。







「俺たちと遊ぼうよ」





あれ、もしかしてこれやばい?

Re: 傘をさせない僕たちは ( No.20 )
日時: 2018/11/09 23:10
名前: えびてん



#19【 取り返しがつかない 】



その後のことはよく覚えてない。
5人でカラオケに行って、花苗と真ん中にいた彼、森田くん...だったかな。

森田くんと一緒に先に帰って行った。
もう1人の男の子は、バイトだからと帰って行った。

そして今、あたしはもう1人の男の子といる。
お酒を飲みすぎたせいか、意識がぼんやりとしている。


「結以、大丈夫?」


彼、直登くんはそう言いながらあたしを見た。


「...ああ、うん、大丈夫」

「家どっち?」

「ああいや!本当に大丈夫!1人で帰れるから!」


男の子の2人で朝帰りなんか見られたら怒られちゃう。


「やだ、送らせて。近くまででいいから」


直登はそう言って結以の前にしゃがみこんだ。
結以は「へ?」と直登を見る。


「乗って。フラフラしてるし」

「いっいや大丈夫だよ!あたし重いし!」

「いいからほら」


直登はそう言うと無理やり結以の腕を引っ張る。
結以はよろけて直登によりかかる。


「ちょっほんとに大丈夫だってば!」


おぶられながら、結以は恥ずかしそうに言った。
直登は無視して歩き続ける。

その時、結以の携帯が鳴った。


『廣瀬陽介』から着信だった。


結以は画面を見るとそのまま携帯をポケットにしまった。


「出なくていいの?」と直登。

「うん、いいの...ねえ、直登くんってどこに住んでるの?」

「え、俺?俺はここから10分くらいのところかな」

「ふうん...あたし、直登くんち行きたい」

「なに、酔っ払ってんの?」

「うん、酔っ払ってる。だめ?」

「いいけど何するか分かんないよ」

「いいよ。だから行かせて」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



直登の家はわりと広めのアパートだった。
清潔感があって、L字の黒いソファが置いてある。

奥の部屋にはベッドがあって、布団も綺麗に畳まれている。


「...潔癖なの?」


辺りを見渡し、結以はベッドに腰を下ろして言った。


「別に。ただ汚いのが嫌なだけ」


直登はそう言いながら携帯と財布をテーブルに置き、腕時計を外す。

直登は寝室にある姿見の前に立ち、シルバーリングのピアスを外し始める。

結以は「えー、それ外しちゃうの?」と鏡を見る。

「外すよ。今日疲れたし」

「あたしそれ結構すき。直登くんってかっこいいよね」

結以がそう言うと直登は振り返り、結以の頬に手を当てた。




やばい。
いや、わかってた。

わかってたっていうか、仕向けたみたいなもんだし。

それでもいいと思った。
覚悟もないのに1人でノコノコ初対面の男の家になんか来ない。





直登はそのまま結以に唇を重ねた。


分かってたとはいえ、ドキドキする。



「...言ったじゃん、なにするか分かんないよって」




そんなセリフ、きっと言うと思ってた。


だけど心臓が飛び出しそうなくらいドキドキする。




いけないことだってわかってるのに。
自分で撒いた種なのに。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


結以が下着を身につけていると、ベッドから直登が言った。


「結以」


言われ、結以は微笑み、再びベッドに入ると直登に抱きついて答えた。


「なに?」


結以の言葉に、返ってきた直登の言葉は意外なものだった。

















「...彼氏、いるんでしょ」















結以の表情から微笑みが消えた。
代わりに物凄い鳥肌が立った。


「...え、な、なんで?」


言葉を失った。
結以は目を泳がせながら言う。

直登は髪の毛を掻き毟ってから冷静に言った。


「胸元。キスマークあったから。それとも俺みたいな関係の男がいるとか?」


...この人、怒ってるの?




「...あ、あの、ご、ごめんなさい」



そんなことしか言えなかった。


「いや、別に怒ってないよ。それ気づいても続けた俺が悪いからさ。ただどういうつもりかだけ聞かせて。その首のキスマークは?」


どういうつもり?
そんなの...。


「こ、これは...」



結以は首を触りながら言った。












「...彼氏のです」













言った瞬間、直登は「そっか」とだけ言うと携帯を出した。


「...なにするの?」と結以。

「お互い連絡先消そ」

「えっ」

「...ごめん、こんなことしといて都合良すぎか」

「あっいや、そうじゃないけど...これで終わりなの?」

「終わりって?」

「もう、会えないの?」


結以が言うと、直登は少しは困ったような顔をした。


「...ごめん、困らせて」

結以が俯く。

「いや違う、その...どういう関係?俺たち」

直登に言われ、結以は一瞬で言葉が出てきた。

「...セフレ...に、なっちゃうか。あはは...」

「...なんで?結以は何でこんなことするの?彼氏に不満でもあるの?」




もちろん、不満なんて軽いもんじゃないよ。
たすけて、たすけて。




なんて、初対面のこの人に言えるはずがなかった。

Re: 傘をさせない僕たちは ( No.21 )
日時: 2019/01/05 21:25
名前: えびてん


#20 【 半分こ 】



「ったく、まなのやつ補習とかバカだよなー」


河川敷を歩きながら、夏樹が呟いた。
健人は「赤点5つはやばいな」と微笑む。


「たいやき、食べようぜ〜」


夏樹はそう言っていつもの鯛焼き屋へ。


「おじさん!鯛焼き2つ!」


夏樹が元気よくいうと、おじさんは「はいよ」と言って鯛焼きを3つ、袋に入れて夏樹に渡した。


「200円ね!1つサービス!」


おじさんに言われ、夏樹は「おっいつものサービスじゃんありがと!」と微笑み、おじさんに200円を渡した。

おじさんは200円を受け取りながら不思議そうに言う。


「あれ、あんちゃんたち今日は彼女いないんだね」


ああ、まなのことか。


「あいつ頭悪いから補習だってさ」と夏樹。


「だめだよ〜ちゃんと彼女に勉強教えてやんなきゃ〜。で、どっちの彼女なんだい?」


言われ、2人は顔を見合わせた。


「...さあ、どっちだろ!」


夏樹はそう言うとおじさんに手を振り、歩き出す。







「ほら、半分」


夏樹はそう言って鯛焼きを半分、健人に渡した。
健人は「ありがと」と言って受け取る。


「ん〜うめえ〜」


夏樹はそう言いながら鯛焼きを頬張る。
健人は食べながら静かに口を開いた。


「夏樹の方がでかい」


「え?」


言われ、半分にした鯛焼きを見た。
夏樹の方が明らかに大きい。


「細かいこと言うなよ〜」


夏樹はそう言って健人の肩を叩く。
健人は微笑みながら「せこいやつ」と呟いた。


「...西原さんとは、付き合ってるの?」


健人が言った。
夏樹は突然の言葉にむせる。


「な、なんだよ急に...」

「いやなんとなく。どうなったのかなって」

「...別にどうもなってねーよ」

「でも西原さん、夏樹のこと好きなんじゃないの?」

「自分で言うのもあれだが、そうみたいだな」

「付き合わないの?西原さんと」


言われ、夏樹は健人をみて答えた。


「...付き合って欲しいみたいな口調だな」


健人は口をつぐむ。


「そんなんじゃないけど。ただ気になっただけ」

「...まなは1人しかいねえもんな」

「え?」


夏樹は鯛焼きを見て言った。


「こんな風に、半分こできたらいいのに」


「...夏樹?」健人は不思議そうに夏樹を見た。


「見た目は俺の方が大きくても、実際クリームが多く入ってるのは健人の方だ。俺は見せかけでしかない」


「ちょ、なんの話だよ?」


「まなだよ。お前気づいてんだろ?まなが健人のこと...」


夏樹はそこまで言ったところで溜息をついた。
健人は俯いてから言う。


「気づいてたわけじゃない。薄々思ってたくらいで...」


「じゃあなんで付き合わないんだよ?」


「それは...」


「俺に気遣ってんだろ?俺がまなのこと好きだから」


夏樹がそう言うと、健人は黙り込んだ。
夏樹は「...気にすんな、そんなこと」と微笑んだ。


「相手が健人なら、諦めつくし」

「夏樹...」

「湿気た面すんな〜!逆に傷つくわ!...てか、健人はどうなんだよ」

「どうって?」

「...いや、ほら、まなのこと...」


夏樹がそう言うと、健人は「...うん」と呟き頭を掻きむしった。

夏樹は「...お前もしかしてまだーーー」と健人の顔を覗き込んだ。

健人は「やめろよ」と夏樹を見る。
夏樹がハッとした表情で健人を見ると、健人はすぐに「あ、いや...ごめん」と微笑んだ。

夏樹は「いや、いいんだ。俺が強制することじゃないし...」と気まずそうに目をそらす。







そっか。
てっきり健人もまなのこと好きなのかと思ってた。

ーーーーーーーー俺は、













俺は喜んでもいいのかな。

Re: 傘をさせない僕たちは ( No.22 )
日時: 2019/01/13 16:01
名前: えびてん



#21 【 関係ない 】




『おはよー。今日はフルコマでつらい。』


直登からのメッセージ。
あれから1ヶ月、結以は毎日直登と連絡を取り合っていた。



でも会ったのはまだあの1度きり。
直登があたしのこと、どう思っているかは分からない。

どういうつもりであたしと連絡を取り合っているのか、あれが最初で最後になるのか、何も分からない。



「あっごめんね〜また落としちゃった」


廊下から声が聞こえた。
結以が声の方へ目を向けると、そこには3人の男子生徒と1人の女教師。


ああでた、あの女またやってる。
ああいうあざとい女、本当きらい。


結以はそう思いながら彼女を見る。


「みこっちゃん本当ドジだな〜かーわいっ!」


男子生徒はそういって微笑む。


「もう〜先生をからかわないの〜」



はあ、なにあいつら。
ばかばかし。

結以はそう思いながらため息をつき、再び歩き出す。

あの女、わざと転ぶしわざと肌露出するし。
ああいうのがバカな男は好きなんだろうな。


ほら、この男も。


廊下ですれ違った金髪の男は、少し恥ずかしそうにしながら彼女、美術教師の宇野美琴に話しかけに行った。

こんなチャラついた男もああいう女が好きなんだ。
いや、こういうやつこそああいうのが好きなんだろうな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「...ごめん、遅れた」

その夜、陽介が待っていた。
結以は少し微笑みながら、ベンチに座る彼に言った。

「おせーよ!てめえ何分待たせてんだよ!」

陽介は怒鳴り散らすように言った。

「ご、ごめん!で、でもまだ3分しか...」

結以がそこまで言ったところで、陽介は結以の胸ぐらを掴んだ。

「まだ3分だ?なめてんのかおまえ」

ああ、あたしはどうしてこんな男を1度でも好きになってしまったんだろう。







直登、これが理由だよ。










陽介が拳を振り上げた。
結以は歯を食いしばり、目を瞑った。


その時。




「んだよ!離せよ!」

陽介の腕は掴まれていた。

今日、宇野美琴に鼻の下を伸ばしていたあの男に。


「お前みたいな男、胸くそ悪いんだよね」


男は無表情でそう言いながら陽介の腕を掴む手を強くする。


「離せよっ!てめ、結以!こいつ知り合いか?!」


陽介は言いながら結以に怒鳴る。
結以は首を横に振りながら「知らない」と答える。


「離せよっ!」

陽介が言ったとき、男が陽介の腕を離した。
陽介は「...覚えてろよ!」と明らかに弱い男が吐きそうな台詞をは吐き、走り去って行った。

すると男は無表情のまま立ち去ろうと歩き出した。

「あ、あの!まって」


結以はそう言って男に近づく。


「あ、ありがとう...ございます」

結以が言うと、男は「あんたさ」と口を開いた。


「あ、はい!」


結以はなぜだか背筋を伸ばす。


「ばかじゃね?」



ーーーーーーーーーは?



「何であんなのと付き合ってんの?ああ、付き合ってんのか知らないけどさ。いい年こいて何してんの?ああ、いくつかも知らないけどさ」


何、この男...?
いや、正しいよ、正しいよこの男は。
あたし、いい年こいてなにしてんの?


「あ、いや、そそ、そうですよね〜。わかってるんですけどね、ははは...」


「じゃあ別れればじゃん?」

男は、無表情で面倒臭そうに言った。


なにそれ。なに、それ?
何でこんな、あたしのこと何も知らない男にこんなこと言われなきゃなんないの。


「そんな...そんな簡単に言わないでよ!あんたにあたしの何がわかるの?」


ああ、完全に逆ギレだ、あたし。
こいつは助けてくれたのに。

「別に、分かりたくもないけど」

淡々と続けるこの男を見たら、余計に腹が立った。

「あんただって、叶わない恋してるくせに」

うわ、あたし最低。
ブーメランすぎるよ。


すると男は1度、少し目を大きくしたがすぐに元に戻し、無表情で「...何の話?」と首を傾げた。


「宇野先生のこと好きなんでしょ」

「...あんたに関係ある?」


ああ、否定はしないんだ。意外だな。


「ない。ごめんなさい、余計なことでした。助けてくれたのに...」

結以はそう言って気まずそうに俯いた。
金髪は「まあいいけど」と言うと振り返り、1人歩いて行った。








『ごめんね結以ちゃん。私こーちゃんと別れたからもう家には行かないんだ。』







携帯を見ると、心春さんからメッセージが来てた。

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