複雑・ファジー小説

クエストの中の魔女
日時: 2018/06/30 19:00
名前: 球磨川13

   

   クエストの中の魔女:1



   ♠リズ・フール、または緑熊亭の「賭博・魔女(ギャンブル・ウィッチ)」


   「フルハウス」

   乾いた風のふく錆びれた店内に、凛とした声が響く。
   ここは、緑熊亭。
   所謂、ならず者たちのたまり場である。
   窓際の酒樽を机にする席には、昼から飲んでいる「いかにも」な、
   小悪党たちがはびこっている。
   飲んだくれになっていたが、やわらかい日差しを浴びて目が覚めたのだろうか、
   店の中心にいる一人の客を見た。
   ・・・かと思えば、見る限りため息をつく。

   「おい、またあいつかよ・・・。」

   起きた仲間に呼びかける。
   「ああぁ? ああ。また出たのかよ。」
   話題の主となっているのは、店の中心のひときわ大きいテーブルに座る一人の女。
   いや、女性と呼ぶには高い身長、ショートボブの深緑の髪を一つに短く結んでいるだけ。
   よく見なければ女とは分からないだろう。
   ちょん、と効果音が出そうな風に短く結んでいるが、まったく可愛げのない女だ。
   170cmはあるであろう、身長。
   すっきりとした目鼻立ち、夜の闇をそのまま塗ったような、
   ほとんど黒に近いような髪を顔の横に前髪を小さく垂らしている。
   それが彼女の小顔によく映えていた。
   黒い瞳はすべてを見下すように淀んでいる・・・とも言えるし、
   どこかそれを通り過ぎて透き通ったようにも見える。
   黒いローブに身を包み、腰にはナイフの鞘がちらりとうかがえた。
   「漆黒」という言葉が似合いそうだった。
   そして。

   「ヒィィ・・・!」

   店の中心にある大きな席はポーカーテーブルだった。
   中年の男がうめく。

   「どう、もう一戦やる?」

   形のいい唇から先ほどと同じ凛とした声が発した。
   彼女の手元にはクイーンが3枚、8が2枚あった。
   見せつけるように彼女は言うが、男はまだ納得しないようだった。
   「い、イカサマだ!!!」
   男は席から立ち上がり、顔を赤くして激昂している。
   「へぇ、イカサマねえ?
    じゃあ、あんたのひざ下にあるそれ”はイカサマじゃないんだな?」
   男のひざ下にあるもの”――それは彼女と同じ絵柄のトランプ一式だった。

   「またやってやがるよ――、ギャンブルウィッチ」

   窓際の飲んだくれ客はあきらめるようにつぶやく。
   泣き叫び、机に突っ伏す男を置き、颯爽と店内から出ていこうとする。

   「マスター、ツケでー」
 
   「貴女様には多大な感謝があります。提供するのは当たり前のことで
    ございます」
   カウンターでグラスを拭くマスターは優しげに微笑んだ。
   「いいよ、そんな堅くならなくてー」 
 
   リズ・フール。緑熊亭の賭博・魔女である。

   次回へ続く・・・

Page:1



クエストの中の魔女:2 ( No.1 )
日時: 2018/07/09 13:59
名前: 球磨川13



クエストの中の魔女:2


  
 
  第一話 紺野彼方、または中二病をこじらせた中学1年生


   世界中にミサイルが落ちればいいのに。
   瞬く間に放射能を世界にばらまき、生物たちは死滅する。
   誰もいなくなった腐敗した、世界。
   たぶん、そっちの方が美しい。
   都会にビルがひしめき、交差点に二酸化炭素を吐き出す車ばかりの世界よりも。
   小さなスマホの画面に吸い寄せられた人々、汚い言葉を使う子どもたち。
   不満ばかり言う若者たち、綺麗ごとばかり言う大人たち。
   みんな死んでしまえばいいのに。
   腐敗した世界の前に灰となって消えゆけばいいのに。
  

   そして、その上を私が歩く。


   そうすれば。
   幾分かは、そう、きっと今よりかは楽しい。


   「はあ・・・」
   ため息が出てしまう。思わず。そしていつも。
   鏡を見て。
   鏡の中には鬱屈そうな、陰気な、卑屈そうな、仏頂面の女の子。

   この世なんて全部嫌い、みんなどうして私の邪魔ばかりするの?
   私の気持ちなんて分からないくせに、どうして綺麗ごとばかり言うの?
   もううんざり、出ていって。私には、関わらないで。

   なんていうことが顔に出ているような思春期娘の陰の部分をすべて統合したような
   155cmぐらいの女の子が映っている。
   世のお母さまたち! これが自分のお子さんだったら絶望するでしょうね!
   ・・・と、メガホンで言いたくなるような子だった。

   まあ、それ=私なんだけどね・・・

   紺野彼方。普通に名前はこんの・かなたと読む。
   「彼方」という名前はキラキラネームに値するのか、考え初めて8年弱。
   女の子につけるのはめずらしいけど、読めない程ではないと自分でも思う。
   顔は少し面長、(そこがコンプレックス)だけど1つ結びで顔の横に
   少し垂らした前髪が小顔効果になっている(と思う)。
   それが良く似合っていると周りからも言われるし、自分でも少し気にいっている。
   顔のパーツは少し日本人離れしている・・・とよく言われるけど、
   そうかな? 普通じゃないかな・・・? と、これはまあいいか。
   背は155、――いや153.8だったな小6の1月は・・・
   まあ、ともかくそれくらいの背で体重は42.1kg。
   普通、というかよくいる中1女子の体型だと思って頂ければ結構。
   
   しかし。そんな私にも他の中1女子と違う点が二つある。

   一つ目は。
   アナザークエストというRPGゲームの、、、、
   口にするのも恥ずかしいいいいいい、
   「リズ・フール」
   というキャラでプレイしている。
   自分のなりたい姿を全部詰め込んだ感じのキャラクターなので、
   ゲームからログアウトするたびに鏡を見て自己嫌悪に陥る、という訳だ。
   「アナザークエスト」はよくあるRPGゲームだが、
   その凡庸さからか、少しマイナーなゲームである。
   基本無課金で遊ぶゲームであり、モンスターを倒すと経験値がもらえ、
   パーティを組むことでき、最終的に魔王を倒すとゲームクリアとなる。
   ただ一点だけ普通のRPGゲームと違う点がある。

   それは、自らも「モンスター」となれることだ。

   つまり、どういうことかというと。
   モンスターのように醜い形態とはならずに普通のキャラクター
   (自分が設定した外見)で勇者たちの敵となり、暴れまくることがきる。
   奥深いジャングルや鬱蒼とした森の中の城で勇者たちを待つ住処を
   構えることもできるが、(これも個人の自由)フラフラと世界を彷徨うことも可能。
   「アナザー」とは、「もう一つの」という意味で、モンスターになれる
   設定から名づけられたという。
   恥ずかしながら、私も緑熊亭を住処とするモンスターであり、
   迫りくる勇者たちをポーカーやトランプ、ギャンブルで倒しまくっている。
   普通に魔女としての役割を果たし、モンスターを倒すため戦っていた時期も
   あったが、シフトチェンジした訳だ。
    
   ・・・っと、そろそろ学校に行かないと。
   二つ目は、また今度。


   次回に続く・・・
   
   

Re: クエストの中の魔女 ( No.2 )
日時: 2018/07/10 13:24
名前: 球磨川13



クエストの中の魔女:3


  
  第一話 紺野彼方、または中二病をこじらせた中学1年生




  電車の中ほど、世界の現状を表しているものはないだろう。
  大きな声でしゃべる中国人や韓国人の若者はまるでここが自分の国だとでも
  思っているように、乗り込んできたサラリーマンたちを怠そうに睨む。
  中東系の女性は混んだ車内を苦しそうにうめく。
  学生に靴をふまれた黒人男性は、
  「Oh・・・」
  と声を静かに漏らす。
  乗り込んできた日本に旅行に来た白人家族たち。ペチャクチャとしゃべっている。
  3人組の女子高生はスマホ片手に他愛もない話題、
  男子中学生たちはイヤホンをしながら、スマホゲームに夢中。
  疲れたサラリーマンは「やれやれ・・・」と言いたげな表情でまた眠りにつく。
  OLはツイッターのフォロワーが増えたことに対し、ご満悦の表情だ。
  ・・・くだらない。

  分かっている。

  一番くだらないのは自分なのだと、こんな精神なのだと。
  こんなことを考えながら今日の英語の小テスト対策をしている方が愚か者なのだと。
  紺野彼方、12才。
  都内の私立中学の一年生。
  ごく・・・普通の。


  はじめましての方ははじめまして。
  また私に会いに来た人はまたお会いしましたね。
  物好きなんですね・・・ああはいそうですか自分語りしてる私のほうが変ですか
  はいそうですか、はいそうです。
  
  こんなライトノベル口調の心の声の私には2つ、普通の中1女子と違う点がある。
  それは、「アナザークエスト」というRPGゲームで
  リズという中二全快のキャラでプレイしていること。
  そして、もう一つ。
  趣味がオタク全快、(&人間観察)中二病(サブカル系)。
  「おしゃれなんて一切興味なし。スカートなんてひらひらしたもの穿けるか!
   逆ハーなんてクソくらえ。あんなもん現実とのギャップ見て死にたくなんだろーが。
   イケメンなんているわけねーだろ。いたとしても、性格終わってんだろ。
   リア充女子の会話よりも、男子とくだらない話をしてる方が楽しいわ!」
  と思って生きている。小学生では全く女として見てもらえなかった。
  別にそういう子はよくいると思う。
  しかしまあ、私というと。ボーイッシュな女、だけではなく。
  オタク属性も開花してしまったわけだが。

  だからって、表ではそういう顔を見せるわけにはいかない。(特に「」内。)
  もちろん、「オタク」という顔は少しながら見せている。
  (そうすれば、女子トークに入る必要がないとミジンコ脳で考えたわけだ)
  ああもう、自分語りしているうちに学校についてしまった。
  そしてなぜか。

  「先輩ーおはようございまあす!」

  同級生に先輩と呼ばれる始末なのだ。
  もともと地味系グループに所属し、陰キャとして過ごしていた、わけだが。
  そのクールな見た目から、男口調に似たものから。
  (自分で言うか、しかし周りからみれば「事実」)
  ・・・そう名づけられてしまったのだ。


  「ああ、おはよう」

  「先輩、今日もクールっすねー」
  そう、今日も「先輩」として過ごすのである。
  私に話しかけてくれる数少ない人、いや人ではない奴――、

  「紺野ぉ! ノート貸してー」
 
  調子抜けしたというか、呑気な声が聞こえる。
  村上 悠介。むらかみ・ゆうすけ。


  私の天敵。
  目下、26戦中5勝19敗している奴である。
  次回はこいつの紹介とするか・・・。


  次回へ続く・・・

Reクエストの中の魔女:4 ( No.3 )
日時: 2018/07/11 14:44
名前: 球磨川13



クエストの中の魔女:4


 
  第一話 紺野彼方、または中二病をこじらせた中学一年生

   
   細身の体躯に柔らか笑顔。白い肌が青の制服のシャツからちらりと伺える。
   顔は少し濃いが、顔のパーツは悪くない。
   はたから見れば、好印象の少年なのだろう。
   しかし、性格を見れば・・・

   「またMayaのソフトで学校の模型作ったよー」
   「マンハッタン距離っていうのは――」
   「阿僧祇は10の56乗で、那由多は60乗だよ」

   こんなモロ理系野郎でパソコンオタクなのだ。
   入学当初はクラスの女子に人気があったようだが、壊滅・・・。
   まあ、明るい性格から男女、クラス問わず人気があり友達がいる。
   
   どうして、こんなリア充とほとんど同じような状態のやつが
   私というクソカス陰キャほぼぼっちに話しかけるのかというと。
   
   忘れもしないが、思い出したくもない、中間試験の2週間前のこと。
   * * *

   その日、私は中間試験の前なので放課後図書室に勉強に来ていた。
   黙々と宿題や自習を進める中、そいつは足音も立てず、私の向かいに座っていた。
   「ねぇ」
   こんな私に誰が話しかけるんだ???
   「げ、む、村上じゃん」
   明らかに嫌な顔をしたので、これでどこか行ってくれると思っていたのだが。
   「何してんの?」
   「勉強」
   間髪入れず、村上を見ないように答える。
   実は、その前から教室で休み時間は本を読んでいる私に「中国検閲です」と
   おかしなことを言って絡んできたのだ。
   こいつはやばい。前からそう思っていた私は脳内警告を入れておいたのだが。
   「ふーん。一人?」
   こうも話しかけてくるのである。
   「そうだけど? 何か悪い?
    っていうか、関係ないし、一人でやりたいからどっ」
   「DNAの正式名称は?」
   か行ってくれる――、そう言おうとしたのに。
   私の馬鹿な反射神経は答えてしまった。その問題に。
   「デオキシリボ核酸」
   はっ、しまった・・・。
   と思った時はもう遅かった。
   「元素記号Mnは?」
   などと、たくさんの問題を出された。
   理系の問題が8割と多かったので答えられないものもあった。
   (私は文系だが、理科の基礎知識ぐらいある)
   ヒートアップし図書館司書に怒られるほどだった。
   
   「合格」

   「は? はっ――え、っちょ」
   どういうことかいまいち状況が呑み込めない。
   えっ、何? 合格って何? どゆこと?
   いや、私何の試験かなんかに合格したの?
   「お前を、僕の『悪いライバル』に認めてやろう!」

   ?
   「え、辞退しますけど」
   こいつに関わるほどろくなことがなさそうだ。今後の人生狂わしたくない。

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