複雑・ファジー小説

変革戦記【フォルテ】
日時: 2019/02/05 22:35
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
参照: https://m.youtube.com/watch?v=oXxfk4iPPjY

※全年齢版


参照:イメージソング『Beat Your Heart』(ブブキ・ブランキ第1期OP)


国を守るための防衛兵器───巨大な機体、『フォルテッシモ』が普通になりつつあった時代。
突如としてフォルテと呼ばれる能力に目覚める者たち。フォルテを持つ彼らを、人々はフォルトゥナと呼ぶ。
しかし、彼らを狙い、彼らを連れ去って自己利益のためだけに利用しようと目論む悪の組織があった。その名も『グローリア』。あらゆるものを掌握し、いずれは国家転覆をも狙うフォルトゥナだけで構成された組織である。当然フォルテッシモも、グローリア専用機を大量に生産しており、かなりの数を所有している。
だがそれに大人しく屈服しているわけが無い。そのグローリアに対抗すべく、『マグノリア』という組織が作られた。未成年のフォルトゥナの少年少女たちで構成されている。
グローリアに支配されているこの状況に風穴を開けるため、グローリアを倒すため、何よりも家族や仲間を守るため、彼らは戦う!


※注意※
こちらの作品は、18禁板にて連載開始予定の小説、『f-フォルテ-』の全年齢熱血ロボアクション版になります。
こちらを見てから18禁板版を見ようとチャレンジするのは、大変おすすめ致しません。
こちらから先に見た方は、18禁フォルテの存在はそっと胸にしまっておきましょう。
そして18禁版からこちらを見た方は全力でお楽しみください。
もちろん、こちらから先に見た方も。
キングゲイナーやGガンダムのノリとほぼ同じです。雰囲気で楽しんでください。
この作品はフィクションです。実在する個人、団体、その他とは一切関係ありません。
(9/7 コメライ→複ファへ移動)


18禁と同じ点
・基本の組織や用語
・キャラクター(例外あり)
・世界観(例外あり)

異なる点
・話の内容
・話の明るさ
・結末
・連載する板


用語集>>1
登場人物一覧>>2
第1話【Magnolia】
>>3 >>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9
(まとめ読み用)>>3-9
第2話【Oshama Scramble!】
>>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16
>>17
(まとめ読み用)>>10->>17
第3話【fake town baby】
>>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24
(まとめ読み用)>>18-24
第4話【Distorted†Happiness】
>>25 >>26
第5話【Marionette】
第6話【Welcome to the Black Parade】
第7話【絵空事】
第8話【Red doors.】
第9話【Red Like Roses.】
第10話【サンクチュアリを謳って】

(応募スレはリク板をご覧ください)
※応募されたキャラクターについて
できる限り応募された内容に沿って使わせていただきます。どうしても全年齢に出るならばこうして欲しいというご要望がありましたら、随時受付を致します。可能な限りでお応えさせていただきます。
もちろん全年齢版のみ、または18禁版のみに出してほしいというご要望も受付します。
ご遠慮なくお申し出ください。

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Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.12 )
日時: 2018/05/05 22:39
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

「久しぶりねえ。時雨も泥くんも」

そう言って倖は、すっかり疲れで机に突っ伏している2人の目の前に、ほうじ茶を差し出す。泥は震え声ながらもありがとうございます、と礼を言い、時雨もやはり礼を言ってほうじ茶を一気に飲み干した。かなり喉がカラカラだったのだろう。

「今日はどうしたの?」
「姉上から帰省を命じられたのです」
「まあ、超子ちゃんが」
「僕も桐乃さんから一緒にいけって言われまして」
「泥くんも?超子ちゃんすごいわねえ」
「ほぼ強引でしたけど」

倖が超子に感心している傍ら、時雨はぼそっと本音を漏らす。幸いにもその声は倖には届いていなかったようで、そのまま次の話題へと移る。

「状況はどんな感じ?」
「はい。先日、グローリアとマグノリアのあいだで、フォルテ使用の戦闘がありました。向こうは一時的にあるポイントと繋がれる、ゲートのようなものを作り出して、そこから直接構成員を引きずり出していました。まあその場はナナシさんや善佳さんたちの助力もあってどうにかなりましたが……」
「まあナナシちゃん達が?すごいのねえ」
「他にも転送エラーでヰ吊戯がグローリア茨城支部に行った事くらいですか」
「大丈夫だったの?」
「持ち前の勢いでどうにかしたそうですよ」
「あらあ……凄いわぁ」

逞しいのね、と倖は笑う。その感想はどうなんですか、と時雨が言ってみるも、褒め言葉よ?と返される。ため息をついて、時雨はほうじ茶を飲み干した。

「とっても頑張ったのねえ。今日は豪勢にしましょ。そういえば何日間いるの?」
「3泊4日ですね」
「なら4日間ね!何が食べたいかしら?」
「えっじゃ、じゃあ回鍋肉を……」
「抜けがけはなしだぞ泥!母上、僕はだし巻き玉子がいいです」
「ふふ、はぁい。腕によりをかけて作ってあげますね」

途端に騒ぎ出した2人に、倖は優しげに笑みを浮かべて調理場へと向かっていった。





「何も考えてない……って?」
「その言葉の通りです!だからこれから助言をもらいに行こうと思って」

ところ変わって同時刻、マグノリア会議室。超子が防御壁に対する作戦に対し、何も考えていないと爆弾発言を放った直後。転げ落ちた3人の中の1人である歌子がそう聞くと、超子は自信満々に胸をそらしながら答える。どこからその根拠の無い自信が出てくるのか、小一時間ほど問い詰めてみたいものだが、今はそんなことをしている暇はない。歌子は超子にまた問いかける。

「助言って?」
「リーダーに聞いてもどーせ無反応だしさー。それならリーダーと繋がりがあって、それなりに話してくれそうな人に聞いてみようと思うの」
「それ、あの人?」
「そうそうあの人!」

ニッコリと屈託のない笑顔を浮かべ、超子はふふんと鼻を鳴らす。歌子とエレクシアは察しがついたようだが、肝心の松永はそれが誰なのか全くわかっていないようで、早く行こうZEとノリノリで言ってくる。だが相手が誰なのか分かっている2人は、心做しか『やめておいた方が』と言うような、嫌そうな顔を浮かべて超子を見る。しかし超子は行くって言ったら行くの、と聞かず、さっさと会議室を意気揚々として去っていった。

「個人的にものすごく行きたくないんだけど……」
「私もよ。正直行く気がないわ。部屋に戻っていいかしら」
「んーん、でも超子ちゃんの事だから会議室に戻ってくるんじゃないかな」
「待つしかないわね」
「どうしたんだYO早く行こうZE!超子追いかけねえとNA☆」
「……うん、止めはしないよ。止めは」
「後悔しないようにする事ね」
「?」

2人のため息が完全に理解できていない松永は、超子を追いかけて急いで会議室をあとにした。

「……あーあ、行っちゃった」
「何も知らないわ。何も」
「うん……」

その後ろ姿を、2人は哀れなものを見るかのような目で、見送ったのだった。





ついた先は『マグノリア医務室』。超子は後に松永がいることだけを確認すると、ニッコリと笑って医務室の扉をノックする。その瞬間である。扉の先から声が聞こえてきたのだ。超子はすかさず扉に耳を当てる。

『ほな弥里チャン、今度はこのヤク打ち込んでみたろか』
『さいこ〜〜〜☆早く宜しく☆』
『今日もええ感じにぶっ飛んどるなぁ。ほな、遠慮なく……』

その時超子の行動は早かった。一瞬で扉を開き、中にいたと思われる2人組の男の方を、フォルテを使って中に浮かせ、だだっ広い医務室の遠くの方へとぶん投げる。
───フォルテ、『PSI(サイ)』。いわゆる超能力の総称で、彼女が扱えるのはサイコキネシス、パイロキネシス、テレポーテーション、レビテーション、クレヤボヤンスなど、種類は様々だ。体に浮かぶ紋様が、外へ露出していれば露出しているほど、フォルテの威力も高まり、また直前まで食べた食事のカロリーが高ければ高いほど、また威力が高まる。ただ、フォルテを使用したあとの消耗は激しく、かなりの空腹状態に陥る。そのため、常に高添加物、高カロリーの特別製の飴を食していなければならないという制限がついてくる。それでも強いものは強く、現在マグノリアの戦闘部隊では、トップに食い込むほどである。
そんなフォルテをそう易々と使っていいのかと言われると、間違っているのだろうが今は非常事態。速やかに処理せねばならなかった。

「弥里っち大丈夫!?」
「え?ヤクは?」
「いやそうじゃなくてなんか仕込まれなかった?」
「なぁんにも?」
「素かぁ」

弥里と呼んだその少女の受け答えに、超子はがっくりと肩を落とす。その様子を後から見ていた松永は、またテンションが上がって踊りながら中へと入る。

「FUUUU!流石だZE超子ォ!オレッチにできないことをォ平然とやってのけるゥ!」
「えっ、何このテンション高いアフロ?」
「最近入ってきた松永」

久舵、と言いかけたところで、弥里は既に松永に飛びついていた。目はやたらとキラキラしており、超子などもう眼中にすらなかった。

「ねー君所属どこぉ?何歳?フォルテ何ぃ?」
「FUUUUU!オレッチは松永でぃす!よろしくなのでぃす!今は戦闘部門だNA!オレッチの華々しい活躍みてくれYO!」
「きゃーっ!何この子チョーたのしー!」
「ええ……」

彼女の名は『三森(みもり) 弥里(みさと)』。マグノリアに存在する医療部に所属している研究者のひとりだ。普段はぶかぶかの白衣を着て、影で気味の悪い笑顔を浮かべたり、気味の悪い笑い声をあげたりしているが、それは仮初の姿。正体はマグノリア限定で、アイドル活動をしている『シェリー』だ。彼女の歌や踊りはマグノリアにくまなく伝わり、実際彼女のファンは相当な数がいる。だがそれを周りが知ることはないし、彼女から明かすことももうないであろう。
彼女は日々ここで新薬の作成に力を入れており、最近では『体が子どもの姿になる薬』も開発したとのこと。ただ使う用途がなくてお蔵入りになったらしいが。

「ちょっとまじやばいんだけど。写真一緒に撮ってよ松永くん」
「お安いごYOだZE!オレッチのHeartはseaのように広大だからな……」

その流れで弥里と松永の自撮り祭りが始まってしまった。まさかこうなるとは思いもしなかったようで、超子は2人を見てため息をつく。そして先程から、全く動かない男の元へと近づく。あの程度で気絶するはずがない。なぜならこいつは

「ヤク中やからな!」
「うお人の心読まないでよ!」
「あ、すんまへーん。当てずっぽうやったんやけども、正解しとったんやなあ」

がばっと飛び起きたその男に、超子は軽く後ずさりする。男はなんや酷いわあと言いつつも、形が崩れたメガネを直しながらかけなおす。
この男の名は『月見里(やまなし) 那生(なお)』。マグノリア医療部の長にして、マグノリアリーダーの葛狭 狂示の幼馴染である。過去経歴一切不明、偽名である確率は99%、フォルテも詳細不明と、何から何までが『よく分からない』人物である。ただ、手に負えないレベルのヤク中であることが明らかになっており、ついでに本人はよく遊んでる体を振りまいているが、実は全くの童貞であることも付け足しておく。そんな人間でも、医療部の長であるように腕は確かで、傷口も数分で塞いでしまう程である。ただ薬を首の方へ打ちたがるので、ほとんどのマグノリアのメンバーはこの医務室へ来ようとしない。何をされるか溜まったものではないからだ。

「そんで聞きたいことがあんだけど」
「そんなん知っとるわ。ポイントAにある施設の防御壁やろ」
「やっぱ知ってたんだ」
「そりゃ、ワイは狂示と幼馴染やで?」

知らんことはあらへんがなー、と那生は笑顔で言う。んまあ結論から言わしてもらうわ。那生はまず前置きをして語り始める。

「あの防御壁は壊せるで」
「どうやったら?」
「メカニック部門が開発したっちゅう『特殊防御壁破壊爆弾』や。それさえあれば余裕で壊せるで」
「確かなの?」
「試したことあるんやで。アレやないけどな。威力は絶大や」

あん時の爆発は死ぬかと思ったわあ、と背伸びをしながら言う。超子はその言葉を聞くと、ありがとね月見里先生、と呟いて小走りで医務室をあとにしようとした。が。

「ちょお待ちいな超子はん」
「えっ」

がっしりと那生に腕を掴まれる。そちらを見れば那生は悪い笑顔を浮かべて、超子をじっと見ていた。それはまるで『餌を見つけた』と言わんばかりの眼光。超子は身の危険をいち早く察した。だが、振りほどこうにも那生の力が強すぎる。

「あんさん……せっかくワイが情報あげたんやから、あんさんのフォルテの情報もくれへんか?ワイばかりあげても……な?」
「普通にお断りだわ何されるかたまったもんじゃないし。それにメカニック部門にもいかないと」
「まーまーすぐに終わるっちゅーねん。はい力抜いてー」
「させるかぁ!」

向けられた注射器がちらりと見えた瞬間、超子はフォルテを使って一瞬で那生の背後に回ったかと思うと、一気に足を振り上げて、彼の項の部分に向けて力を込めて降ろした。

「へぶぉ」

間抜けな声とともに地に落ちる那生。それ以降反応がなくなったのを確認して、超子は改めてため息をついた。そういえばすっかり忘れてた。この人は大抵ヤクを、誰彼構わず打ち込もうとするアホだったと。それでもヤクのひとつくらいはパクろうかな、と悪い思考が働いて、那生がコートに仕掛けておいた試験管1本を懐に忍び込ませた。

「さあてと。メカニック部門ね?」

超子は舌なめずりをして医務室をあとにした。
それでも松永と弥里の自撮り祭りは、まだまだ続きそうであった。

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.13 )
日時: 2018/05/15 21:37
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

「おっじゃまっしまーっす!」

とてもとても大きな扉が、超子の顔を認識して少ししたあと、ゆっくりと、鈍い音を立てながら口を開く。ガチャンと鳴ると、中の様子が顕になり、超子は無遠慮に踏み込んでいく。
ここはマグノリア、メカニック部門。主にフォルテッシモの開発やメンテナンスを生業とする部門である。その為にメカニック部門が必要とする敷地はかなり広く、なれた人間でも案内のアプリやら何やらがなければ、高確率で迷子になる。それだけ広大『すぎる』のだ。
満面の笑みで入ってきた超子に、ある1人のメカニッカーが気づき、声をかける。ハネが強い長く白い髪をポニーテールにし、いかにもな丸メガネをかけた少女だった。超子も彼女に気づいたのか、やっほやっほー、と手をブンブン振る。

「超子ちゃーん!どうしたんすかわざわざこっちまで?話くれたらすぐにいったっすよ?」
「いやあ、実は耳寄りな情報をもらいましてえ」

てへへ、と超子は笑うが、対して少女はニヤリと笑ってメガネを光らせる。
メカニッカーの少女の名は『一条(いちじょう) 常磐(ときわ)』。マグノリアメカニック部門の今の事実的ナンバーワンである。というのもメカニック部門のトップとナンバーツーは現在本部を離れており、そのせいで本来ならば3番目なのだがほとんど権限を持たないはずの彼女が、この部門を取り仕切っている。なかなかに仕事は楽じゃないようで、仮眠室にたまに行くと、布団に入らずベッドに頭を突っ伏す形で寝落ちている彼女の姿を見る。それほどまでにトップの仕事はハードなのだろう。主にメカニック部門にいる問題児の扱いと、よくフォルテッシモがぶっ壊れるのでそれのメンテナンスで。その姿を見るたびに、申し訳ねえ申し訳ねえと超子は心の中で謝るのだが、一向に良くなる傾向はない。正直すまんかった……!とまた、超子は心の中で常磐に謝る。

「お話はかねがね。『特殊防御壁破壊爆弾』すね?」
「早くて助かりまっせぇ」
「ふっふっふ。でもあげるには条件があるっす」
「条件?」
「はいっす。後であの『バカ』に、『ちったあ外でろ』って言っといて下さいっす」

そういった彼女のメガネの奥の瞳は笑ってなどいなかった。口元は僅かに上を向いていたが、瞳は決して笑ってなどいなかった。むしろ『あのクソ野郎』という文字が見えたほどだ。彼女の言う『バカ』が誰のことか分かっていたのか、超子は満面の笑みでりょーかい、とだけ。案外簡単な条件で良かった、と胸を内心なで下ろす。

「そんじゃま、爆弾については超子ちゃんのフォルテッシモちゃんに付けるっすね」
「あいよー、そうしてもらえると助かるわっ」
「今回出撃するのはどの機体っす?」
「んーと、あたしの『マザー』と久チャンの『愛宕丸』、歌子ちゃんの『ディーヴァ』とエレちゃんたちの『アルテミス』ね。もしかしたら増えるかもしれないけど」
「じゃあメインはその4機すね。出撃はいつす?」
「お昼すぎかなあ。多分」
「ふむふむ。ならそれまでにチェック終わらせるっすねー」
「あ、そういやさ、あすこにあるの『愛宕丸』?」

常磐がメモ帳を取り出し、出撃機体と出撃時刻を確認しているところで、超子が真後ろでメンテナンスをしていたあるひとつのフォルテッシモを指さす。なかなかに細いフォルムをしているが、どうやら作りはしっかりとされているフォルテッシモだ。超子はそのフォルテッシモ、『愛宕丸』を見て感嘆を漏らす。

「いつ見ても個性的だよねえ」
「見た目はヒョロいっすけど、機動性は充分す。しかもあれキューちゃんが1から設計したんすよ。あっ、ヒョロいじゃなかった、『フョロイ』だったっすね。キューちゃん的には」
「へぇー……つか久ちゃんそここだわるよねえ。あたしもヒョロいって言ったら『フョロイだZE!』って直されたっけ」

ケタケタと2人は笑い合う。何故だろうか、銀色のアフロが輝かしい彼の話をすれば、自然と笑いが混み上がってくる。マグノリアとグローリアの戦闘は日々激しくなっていく一方、メンバーはその戦闘に疲弊し、みるみるうちに表情が消えていっている。だが最近入ってきた例の彼のせいで、何をするにしても脳内に彼が現れてひとしきり笑わせてくる、という現象がちらほら出てきている。これを狙っているのか、はたまたただの偶然なのか。

「ま。その話は置いといて。爆弾の件はこっちで仕込みしとくっすから。他になんかあるっすか?」
「そうねー……強いていえば」

超子はうぬぬ、と唸ったあとで、これだと言わんばかりに口を開いた。

「うちのマザーちゃんに愛宕丸の性能くっつけられない?」
「無茶言うなっす」





「遅いねえ、2人とも」
「そうね。退屈だわ」
「だねえ。やることないねえ」
「ただいまーっ!」
「えっ今?」

マグノリア会議室。医療部に心底行きたくないとして、この場所にとどまることを選んだ歌子とエレクシアは、暇を持て余していた。特にやることがないため、ただ単にぼうっとしてる事くらいしかない。あまりにも暇すぎて、数十分前に『微妙に使いどころがないフォルテをあげる』という、妙な遊びをしていたほどだ。しかしそれはもう飽きて、やはりぼうっと過ごすことになったのだが。
さてどうしたものかとなにか考えようとした矢先、医療部に出かけていた超子が戻ってきた。

「ふっふーん。特殊防御壁壊す道あったよー」
「ほんと?情報の出処は?」
「月見里センセだよ」
「え、信じていいのそれ」
「メカニック部門行って事実確認したからおーるおっけー」
「……メカニック部門?」

超子の口から出たその言葉を、エレクシアは疑問符をつけて復唱する。流石エレちゃんお目が高いっ!と超子はキラキラと顔を輝かせながら、先ほど手に入れた『特殊防御壁破壊爆弾』の話を2人に伝える。その話は2人の興味を引くのに容易いものだった。

「なるほど。つまりその爆弾を、あの場所にぶつけるわけね」
「破壊力凄まじいらしいからさー、爆発する時離れてた方がいいかもねっ」
「なら、その爆弾を最初にぶつければいいのだわ。それならやりやすくなる」
「そのへんは現場行かないとなー。爆弾が無駄になっちゃうかもしれないし」
「そうだねえ。で、そういえば松永くんは?」
「あっ」

ごめん忘れてた!と親指をぐっと立てながら言うと、歌子は乾いた笑いをし、エレクシアは心底どうでもいい、というような態度で超子を見るのだった。





マグノリア医療部。松永との自撮り写真に満足したのか、弥里はスッキリした顔で松永に礼を言う。当の松永は「いいってことYO」と、サムズアップして言う。

「そういや超子ちゃんもういないっぽい?」
「Oh!どうやらオレッチは置いてかれたみてーだNA……」
「超子はんならメカニック部門に行かれたで」
「あ、童貞!」
「童貞言わんといてや弥里チャン!」

いつの間にか目を覚ましていたらしい那生が、松永と弥里に近寄って話に加わる。だが弥里から発せられたそれは、那生を凹ませるには充分なものだったようで、那生は壁に頭を打ち付けて「ワイかて……ワイかて……」と、ブツブツ繰り返す。

「あ、そうだ松永くん」
「どうしたんだbaby?」
「これさ。もしもの時があったら使ってね」

弥里から差し出されたのは、日常生活などでよく見る、小さな薬のようなカプセルだった。松永はそれを潰さないように気をつけて受け取る。だがこれだけでは一体何なのかわからない。首をかしげて、松永は弥里に聞く。

「MOSIMO?」
「『大変なこと』になるよ……♪」

そういった弥里の口元は、何よりも鋭く、何よりも悪役らしく、三日月よりもつり上がっていた。まるで『大変なこと』になることを、待ち望んでいるかのように。
ただ松永はそれを気にしちゃいないのか、ありがとYO!と言う。そして彼は独特な歩き方で医療部を後にした。恐らくメカニック部門に行くのだろう。最もそのメカニック部門には、既に超子はいないのだが。


「気をつけてねー……」


弥里はニヤリと笑って見送ると、さーてお薬の時間だ〜と、妙な色をした液体が入った注射器を、自らの首元に射した。

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.14 )
日時: 2018/05/19 21:23
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

「弥里チャン?何渡したん?」
「らにってぇ〜おくしゅりだぴゃ〜」
「あっ、ラリっとるわこの子」

ようやく立ち直った那生は、弥里に松永に対し何を渡したのかと問う。弥里はぶっ飛びながらも答えるが、まともな答えは帰ってこないだろうな、と那生は肩を落とす。それでも薬を渡したというので、その内容を聞く。

「ふぉるてでちゅくったおくしゅり〜☆たぁしかまひん?はひか?てひゃ☆」
「……麻疹?はしか?えげつないモン渡しおるなァ」

そこから飛び出した正体に、那生は後ずさりする。麻疹、またははしかは、ひとり感染すれば爆発的に流行する感染症だ。日本では既に無くなっているため、それに対する薬物は無いに等しい。あるとすれば予防策として、ワクチンが残っているくらいだろうか。つまり、一度それをばらまきひとりが感染し、街に出て行動したとなれば確実に『パンデミック』となる。しかしそれを一から作ることは出来るのだろうか、否、『三森 弥里』ならばできる。
───フォルテ、『感染(パンデミック)』。自らが源となり、様々な感染症を辺り一面にばらまくことが出来る。作り出したウイルスや細菌は弥里には効かず、あくまで『他人』に襲いかかる。その気になれば原因となるウイルスあるいは細菌を作り出し、カプセルなどの入れ物に封じ込め、それを爆発させることでばら撒くことも出来る。
その気になれば人類滅亡も、非現実的なことではない。彼女にかかればそれが現実のものとなる。それほどまでに恐ろしいフォルテなのだ。ただそれ故に、彼女は戦闘部ではなく、医療部へと回されてしまったわけなのだが、そこで那生の手によってヤクまみれに染まってしまった訳で。

「あひゃ☆ぴんくのぞうさん〜☆」
「しもた、仕込みすぎたわ……」

こんなふうに自らヤクをブレンドして、自ら打ち込んで、自らぶっ飛んでいる。こうなると那生ですら手をつけられない。ヤクが一通り抜けるまでは放置という形になる。

「……松永はん、えっらいやばいモンもろてしもたんやなあ」

エイメンってな、と、わざとらしく十字を切ると、さてお仕事に戻りまひょか、とだけ呟いてカルテの山へと突っ込んでいった。





「ホォームッカミンッ!」
「あ、やっと帰ってきた」

とりあえず松永の帰りを待とう。その結論に至ってから十数分した頃、ようやく松永が会議室へと戻ってきた。超子たちはやれやれ、というような態度で松永を出迎える。遅くなっちまったNAと松永が言うそばで、エレクシアはあるものに気づく。松永の手の中にあったカプセルを取り、これ何?と問うた。

「三森がGIVEしてくれたやつだNA。『大変なことになる』って言ってたZE」
「大変なこと?」

エレクシアは首を傾げる。こんなカプセルが、薬剤とも思えるカプセルが、何がどう大変なことになるのだろうか。はてなが耐えないエレクシアに、歌子は声をかける。

「エレクシアちゃん、それ見せて?」
「はい」

歌子はエレクシアからカプセルを受け取り、それをじっと見つめる。しばらくそうした後に、あっと超子が声を上げた。

「それ、弥里ちゃんのフォルテで作ったやつだったりして?」
「えっ……てことはこの中身はまさか」
「感染症の原因になるやつ!確かに大変なことになるわ!」

とんでもないもん貰ってきたわね。超子はそう言って松永を見る。しかし松永は何もわかっていないようだ、FUUUU!マジやべーじゃんYO!とひとりで盛り上がっている。

「これ今すぐ出た方が……」
「もとよりそのつもりだったよ。でもこれほんとに今すぐ出撃して、『処理』した方がいいわ。そんで辺り一面焼け野原にした方がいい。いくら空間切り離すとはいえ……」
「なら、早く行きましょう。フォルテッシモ出撃ポートに」
「キターッ!やっとオレッチの出番だNA!」

そう言って松永は会議室を飛び出して、出撃ポートへと行ってしまった。しょうがないなあ、足だけは早いんだから。超子はため息をついて残りの2人を自分の近くに寄せて、

「てれぽ!」

一瞬にして姿を消した。





「うぉっ!?早かったっすね!?フォルテッシモちゃんたちは既に移動済みっすから、今出ても大丈夫っす」
「うわーん常磐ちゃん仕事はっやい!ありがとー!」

移動した先はフォルテッシモでの出撃ポート。ここには出撃する為に移動してきたフォルテッシモが、出撃する数だけある。出撃する際には光学迷彩をかけ、一般人には見えなくても悟られぬよう、高高度で飛行をする。もちろん空間を切り離しはするが、出撃時点でそれをすると、マグノリア本部ごと切り離された空間に持っていかれてしまい、オペレートや戦闘どころではなくなるため、そうするしかない。もっとも、それはリーダーが言っている事なので、本当かどうかは定かではないが。
超子たちは早速自らのフォルテッシモに乗り、起動させる。ポッドの中にあったパイロットチェアに座ってコントロールポッドを閉じきり、モニタに手のひらをかざす。

『Welcome MASTER.Ready』

目の前に文字が浮かび上がり、コントロールポッドの周りは、外の様子を映し出す。特に異常は見られないようだ。

「ん。特に問題は無いみたいね。皆は?」

超子はところどころを確認して、ほかの出撃するメンバーに声をかける。目の前にモニタが次々と現れ、歌子、エレクシア、松永が映し出された。

『こっちも特にないよ。いつでも行ける』
『私も大丈夫。もちろんエレーヌも』
『FUUUUU!早く行こうぜ超子ォッ!』
「こらこら急かさないの。行動力があるのはいいけど、無闇矢鱈に突っ込んでいかないでね?」

そう言うと通信は切れる。目の前に見えるのは外の風景だけ。ふう、と一つ息をついて、口元を引き締める。

「フォルテッシモ、『マザー』!」
「フォルテッシモ、『ディーヴァ』!」
「フォルテッシモ、『アルテミス』」
「フォルテッシモォッ!『愛宕丸』ゥッ!!」

「出撃する!!」

その瞬間、開かれた天板から4機のフォルテッシモが飛び立って行った。


「……行っちゃったっすね」
「え、今来たのに……」
「惜しかったっすねー、『御代』ちゃん」
「……常磐ちゃん、うちの『プテラノドン』、準備してある?」
「え?そりゃもちろん。要望があったっすから」
「なら」



「───私も、行くうぇい!」

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.15 )
日時: 2018/08/22 07:15
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

「高度異常なし、障害物なし……って当たり前かあ。んー、風向きなしの天候は快晴、気温は19度?」

 超子はコクピット内で、今現在の周囲の状況を確認していた。周囲変換で空間を切り離してないため、こういった確認は非常に重要なものだ。最も、当たり前のことなのだが。

「今しがた飛んでる旅客機とかも、ないね。うん、このまま行っちゃっておっけーっしょ」
『でも途中埼玉通るから、暖かくしたほうがいいよね?』
「そね。ぐっと気温下がるし。みんなー、埼玉近づいたらあったかくする準備してー」

 それだけ言うと、超子は通信を切り、背後にあったブランケットを膝にかけ、備え付けてあったポットから、持ってきておいたスープのもとが入っいてるカップにお湯を注ぐ。気が早いかなあ、とおもいつつ、スープをスプーンでかき混ぜる。あっという間にわかめスープの完成だ。これで埼玉を通る準備は完璧。超子は上着に袖を通しながらわかめスープを一口。だが思ったより熱かったのか、「あっつぃ!」と声を荒げた。
 埼玉を通るだけなのに、こうまでする理由。それは埼玉の今の現状にあった。今現在の埼玉は、『氷の国』として存在している。もちろん都市機能は完全に動いていない。というのも十数年前、埼玉は『たった一夜』にして、全てが氷の中へと閉ざされた。その氷はただの氷でなく、『近づく者を容赦なく氷に閉じ込める』氷なのだ。たとえそれが遥か高い上空でも、氷漬けにはされないが、空気が一気に冷え込むほどである。それはまるで強力な冷凍庫の中に勢い良く入るくらいに。だからこそ、埼玉を通るとなると、それがたとえ夏でもこのレベルの対策をしなければならないのだ。そう、今いるこの空間が、『切り離されている』としても。
 なぜ埼玉がそんな氷の国になってしまったのかは、未だにわかっていない。調査をしようにも氷漬けにされるだけだし、またもしそれがフォルテだとして、そのフォルテが『生きている』とすれば、手も足も出ない。というのが現状で。なんせ近づくにも近づけない。これでは調べようにも調べられない。一体何が起きたのか、何が原因なのか、中はどうなっているのか。真相はすべて、氷の中である。

「うひー……寒いねー」
『気づかれないようにゆっくり移動してるのもあるからね、すっごく寒いね』
『この高度で飛んでいても、こうなのは嫌ね』

 一行はいよいよ埼玉へ入った。それが一発でわかるくらいに、周りの空気は一気に冷え込んだ。先程作ったばかりのわかめスープも、すぐに冷めてしまう。超子は冷めてしまったわかめスープを一気に飲み干すと、すぐに別のわかめスープの粉末をカップに入れ、お湯を注いでそれを一口。だが彼女はどうせすぐに冷めんだろうな、と、多少急いで飲み干した。もっと味わって飲みたかったのに。

「にしてもいつ通ってもすごいねえ、この冷気」
『ほんと。ここだけ日本じゃないみたい』
「それ埼玉の人聞いたら怒るよ〜。でも今の埼玉じゃそれ色々と当たってるかもね」
『というより、貴方達。何か気づかなくって』
「へ?」
『今いるフォルテッシモ、数えてご覧なさい』

 エレクシア───否、エレーヌだろうか。彼女たちがそう言えば、超子と歌子は訝しげに周りの状況をよく見やる。ひぃ、ふぅ、みぃ……自らを含めれば、今この場にはフォルテッシモは3機いる。そこで気づいた。

『……愛宕丸は?』
「はぐれちゃった…とか?」

 周囲には松永が乗っている愛宕丸の『あ』の文字すらない。一体どうしたのだろうか。何かしでかしたのだろうか、それとも先に行ったのか。いや、先に行ったとすればそれは見えているはずだし、もし敵に見つかって撃墜されたとすれば、必ず音が聞こえるはず。それに周囲転換からの空間は切り離されていない。どうしたのだろうか。
 これまずいんじゃ?と焦る超子たちに対し、エレクシア、またはエレーヌはふうと息を一つ吐露し、答えを出してやる。

『帰ったのよ。風邪引いたらしいわ』
「えっ」
『埼玉に入った直後にね。私たちにだけ通信が入ったわ』

 その時松永は聞くに耐えない声で

『Oh……どうやらオレッチは体調がBad……になっちまったみてえだ……ズビーッオレッチはズビーッ、先にゴーゥホーゥムクゥーウィックルィーさせれもらうJE……ブェェッキショエエエエ』
『……そう』

 と言ってすぐさま帰ったらしい。あまりにも鼻を啜る音と、くしゃみがひどすぎた為、呆れて何も言えなかったそうだ。なんで一緒に出撃したのか、わけがわからない、と彼女たちは言う。その経緯を聞いて、やはり超子と歌子もこれには苦笑すら出なかった。どちらかというと、ははは、と棒読みで出てきたくらい。たしかに寒いがそこまでなるほどなのか、2人は頭を抱えた。

『けどね。後方からフォルテッシモが1機来てるの』
「え?もしかしてグローリア?」
『超子ちゃんちがうよこれ。反応マグノリアのフォルテッシモだよ!』
「えぇ?誰ぇ?」
『私だうぇい!』

 その直後。やってきたフォルテッシモを確認したまさにその直後。超子のフォルテッシモであるマザーの背後に、やってきたフォルテッシモが立つ。思わず超子は距離を取って戦闘態勢を取るが、やってきたそのフォルテッシモを見てその態勢を解く。

「───御代(みよ)ちゃん!」
『ご名答ー!』

 御代と呼ばれたその機体、『プテラノドン』は、その名の竜を思い起こさせるような翼を広げて、ピースしてみせた。





「……那生」
「お?珍し。なんやワイに用なんか?流星(りゅうせい)はん」
「おいおい俺も忘れんなナオ」
「狂示ィ?なんやほんまにどないしたんや?」

 ところ変わりマグノリア医療部……ではなく、喫煙室。ちょうどヤクを炙ってさて吸うぞ、というタイミングで、那生の前に来客が2人ほど現れる。
 1人はマグノリアリーダーであるその人、葛狭狂示。そしてもう1人、全身を黒でまとめあげ、紺と黒が入り混じったやたら長い髪を適当に広げ、左目に眼帯をした男。その人の名を、『紅蓮流星(ぐれんりゅうせい)』。彼はこのマグノリアで、おそらく最年長の人物であり、現在指揮官をしている。昔はそれこそ前線で、狂示や那生と共に鬼のような強さを誇っていたが、あまりにも強すぎるために、狂示から「お前出ると新人育たねえから指揮官やっとけ」とのお達しをもらい、今に至る。強すぎるというのも、なかなか嫌な問題らしい。
 普段は自らの書斎か図書室で本を読みふけっていたり、趣味である創作活動をひきこもってやっているはずの彼が、なぜわざわざこんな場所に来たのだろうか。しかも隣にはタバコを現在進行形で吸っている三森弥里がいる。もしかしてそのことでお呼び出しを食らったのか?那生はそう考えるも、すぐにやめた。んなの今更やんけー、と。全く反省していないようだ。

「お前、今からフォルテッシモ乗れ」
「ハァ?」
「いやー。追加で調べてたんだけどよ、とんでもねーことが分かっちまった」
「なんやなんや、緊急事態(エマージェンシー)かいな?」
「それに近しいものではあるが、な」

 流星はまっすぐに那生を見据える。

「栃木のポイントAで、非常に危険な薬物が使われているのを確認した」
「ん?それまさか、超子はんたちが潰しに行くっちゅう、例の奴さんの研究施設やろか?」
「そーなんだよ。やっべーんだわ」
「なんやなんのヤクなんや?」
「ワクワクするな。それでだ。その薬物というのが、『ゾンビ』だ」
「……ひっじょーにくだらん質問するわ。そのゾンビっちゅうヤク、まさかネクロマンス的なもんとちゃうやろな」
「正解だ。この薬物は摂取した者が死んだあと、自我なき人形へ作り変えるものだ。その薬物が、例の栃木の研究施設のフォルトゥナの子どもたちに使われていることが判明した」
「しかもゾンビ摂取してゾンビになっちまった奴は、生者を食う。食われた生者もまたゾンビになる。まるでどっかの詐欺みてーなことになんな」
「うひーなんつーもん使いおるんや」
「でだ。貴様にはその薬物の回収と、研究施設の破壊、それと摂取したフォルトゥナの子どもたちの完全なる抹殺。それを任務として下す」

 流星は那生に多少声のトーンを強めて言い放つ。那生はあんさんいきゃええやろ、と反論してみるも、私が出てしまえば新人が育たない。ときっぱり言い切られる。なんやカッタイやっちゃなあ。那生は頭を掻きながらひとりつぶやく。

「童貞どーしたのー」
「えっ…あーお仕事入ったんやよ」
「まじかよー」

 がんばってぇ〜、と応援する気などもとから内容に、弥里は那生に手を振った。童貞言わんといてや弥里チャン!

「決まりだな。さっさと出撃ポートへいけ。連絡は通してある」
「へいへい。オペレーター室から、まともなオペレーターくっとええねんけどなあ」

 その言葉に、流星は『当たっているから何も言えないな』と、そこだけは心底那生に対して賛同した。他の行為は賛同しかねるが。

「さて……そろそろか」

時計を見た流星は、急ぐように喫煙室から出ていった。

「……いや、私も出るとするか」

 思い出したようにつぶやくと、流星は通信端末を取り出し、メカニック部門へと繋いだ。


「───私だ。やはり私も出る」


つづく

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.16 )
日時: 2018/08/22 07:17
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

 翼を広げ、ピースをしてみせたその機体───プテラノドンは、くるくると3機の周りを回り始める。ひとしきり回って満足したのか、プテラノドン───搭乗者である朝山(あさやま) 御代(みよ)は、全員に向けて話し始める(といっても通信なのだが)。

『ほんとは一緒に行こうと思ってたんだけど、ちょっと遅れちゃったうぇい』
「他に誰か来るとかは?」
『聞いてないぽよ』

 御代はおちゃらけた様子で言う。その言葉に嘘偽りはなさそうで、超子たちはならいっか、とひとまず安心した。何に対してなのかは、本人たちにしかわからないのだろう。
 するとところで、と突然御代は話を変える。何か気になることでもあったのか、少し声のトーンを変えてほかの3人に話しかける。

『ねえねえ、松永くん急に戻ってきたけど、どうしたの?』
「それについては……まあ、後ほど?」
『ふーん?』
「というかそろそろ行こうか、近いし」

 超子がそう呼びかけると、皆は体勢をポイントAに向き直し、再び発進した。





 ところ変わってマグノリアの、フォルテッシモ出撃ブース。そこで一条常磐は普段通りに、フォルテッシモたちの整備を行っていた。トップふたり組が不在のこの状況、否が応でも自分が取り仕切ることとなる。そこにある程度のプレッシャーと不安を感じながらも、常磐は日々を生き抜いている。
 そんな時、整備が一段落ついてさて休もうかというところで、突如通信が入る。

「もぉーなんすかー、こっちは休もうとしてたんすけど」
『FUUUU悪ィNA!開けてくれYO』
「あれ?キューちゃん?戻ってきたんすか」

 何だ何だとゲートを開けば、なんだか寒そうな様子でフォルテッシモ、愛宕丸が入ってくる。道中で何かあったのだろうか。所定の位置にフォルテッシモが来ると、動きは止まり、ポッドからキューちゃんこと、松永久舵が降りてくる。どことなく顔色が悪そうだ。

「どうしたっすか?キューちゃん」
「Oh…それがYO、SAITAMA通る時に風邪を引いちまったのSA!ブエッキショエ」
「うわ汚っ!だったら医療部行ってくださいっす、愛宕丸ちゃんのメンテはしとくっすから!」

 休みのあとっすけど。言外にそう付け加えると、常磐は震える彼の足元ににワープパネルを敷いてやり、医療部へとそのまま飛ばしてやった。流石に朝から働き詰めなので、今から愛宕丸を一からメンテというのは無理がある。あの調子だとしばらく出撃もできそうにないから、しばらくの休憩の後ででいいだろう。そう思ってあくびをし、仮眠室へと向かおうとしていたときだった。突如としてある2人組がここへとやってくる。ため息をついて誰だ誰だとそちらへ目を向ければ、常磐はメガネの向こうの寝ぼけナマコをカッと開く。なんでいきなりここに来たんだ。

「入るぞ、一条常磐」
「いやあすまんなぁ〜、突然の出撃で……ワイらのフォルテッシモ、準備してはる?」
「え?あー……多分そこに」
「(にしても突然やな、流星はん。いきなり来たかと思っとったら、私も出る言い出すしのォ)」
「というより、連絡は入れておいたはずなんだが」
「んー……そうだっけ……あ、そうだったっすね。紅蓮指揮官とヤク中先生」
「月見里那生!いい加減覚えといてや〜」

 そう、マグノリアの指揮官、紅蓮流星その人と、マグノリア随一のヤク中でありマグノリア医療部の長、月見里那生である。連絡が入っていたことを忘れていたのか、常磐はそんなものあったっけ?と首を傾げたが、そういえば少し前に一方的な連絡が入って、急ピッチで整備してたんだっけ。と思い出した。その前にぼんやりと指し示した場所には、彼らのフォルテッシモが佇んでいた。いつでも行ける、というように。
 流星は視線だけそちらへよこすと、すぐに目を閉じたかと思えば、ゆっくりとその目を開く。意を決したのか、はたまた別の意志か、流星は身を翻し、自らのフォルテッシモ【アビス】に向かっていく。那生もそれに続くように、フォルテッシモ【テオドール】へと向かう。その姿を見て、すんげー嫌な予感がするっす、と常磐はつぶやくのだった。

 各々のフォルテッシモのコントロールポッドへ入り、それを閉めて起動させる。目の前に映し出される、『Hello World!』の文字。慣れた手つきで各システムを確認していく。正常に戦闘が行えるか、飛行が行えるか、その他諸々。かなりメンテナンスが行き届いているようだ。前に搭乗したときの不満点が、ほとんど解決されている。ただすべてを確認するには、実際に動かしたほうがいい。流星は那生に通信をつなぐ。

「そちらはどうだ」
『なんも変なとこはあらへんで。いつでも行ける』
「ならば今すぐに出るとしよう、確かめたいものもあるのでな」
『はいはい、仰せのとおりに。ワイははよ終わらせてゆっくり、寝たいもんですなァ』

 そこで通信は終わる。外にいる常磐に向け、ゲート開放を要求する。と、同時にもうゲートは開かれるようで、仕事が早くて助かるな、と思う。ただそれだけ。
 開かれた先には戦場が待っている。あの頃を思い出す、あの血肉踊る戦場が。口元をわからぬように上げると、

「フォルテッシモ【アビス】、出る」

 すぐに飛び出していった。





 栃木県日光市、ポイントA。そのちょうど真上に当たる場所で、超子たちは止まる。

「よーし、到着!まずは周囲転換しなきゃね」

 それを言うのが先か後か、超子のでは素早く動き、周囲をスキャンしまたたく間にデジタルデータへと変換していく。これで民間人に被害が行くことはなくなったし、自分たちの姿も民間人に見えなくなった。それを確認すると、合図とともに急降下していく。
 その先には日光の町並み。これだけ見れば何も不自然な点はないのだが、本来そこにあるはずのものがない。なるほど、確かに『見えなくしている』ようだ。周囲を転換していても効力が発揮されているとは。超子はぺろりと唇を舐める。すぐさま通信をつなぐ。

「歌子ちゃん、とりま『フォルテ』しくよろ」
『わかった、でも念の為に離れててね』
『うぇい』
『わかったわ』

 通信は終わり、超子とエレクシア、御代は歌子の忠告通り、彼女のそばから離れる。それを確認した歌子は、システムを弄り、コントロールポッドの中をまたたく間に変えていく。座っていた座席はなくなり、マイクが目の前に現れ、まるでカラオケルームかなにかへと変貌していく。フォルテッシモ【ディーヴァ】も同様に、周りに鍵盤のようなものが現れ、羽のようなオーラが広がる。その姿はまるで『歌姫』。あたりの音は何一つなく、邪魔するものもいない。すべての準備が整った。



 ────見えずとも 感じ取る
 ────その姿を 隠された姿を
 ────我らは問う お前の意味を
 ────我らは問う お前の存在を
 ────なんの為に そこに在るのか
 ────今一度問う お前の意義を
 ────お前の姿を 我らに示せ



 戦場に響くその歌声は、聞く者の全てを浄化する。歌声は辺りに、風に乗って全てへと行き渡り、浄化する。歌はやがて茨となり、『そこに在るべきもの』へと絡みつく。羽はゆらぎ音は融け、空には虹がかかり、美しき花びらが舞い降りる。
 茨はそこに在るべきものへ、次第に絡みつく強さを強め、何もないところからメキメキと音がなり、その場所にヒビが入る。ヒビの隙間から、無機質なそれは見える。



 ────開け 我らが道よ
 ────開け 我らが空よ
 ────そこに何かあるというなら
 ────我らはそれを壊してみせよう
 ────響け 我らが祈りよ
 ────穿け 我らが力よ



 それがトドメとなり、茨はついに『空間』を破ることに成功する。すると同時に本来あるはずの『無機質なそれ』が姿を表し、茨は光の粒となって、やがて消える。間違いない、アレこそが、今回の作戦で潰すことになる施設だ。やたらと大きいじゃないか。超子はニヤリと笑う。燃やしがいがありそうね、とも思う。
 だがその前に、例のものを投げなければならない。超子は歌子に下がるよう言い、他の2機に対しても、そのままでいるようにと伝える。フォルテを使い、消耗した歌子はやっとの思いでシステムを直し、巻き添えにならないように遠くへと離れる。それを確認した超子はどこからともなく例のもの───『特殊防御壁破壊爆弾』を取り出し、起動させる。カウントダウンが10から始まる。
 9 まだ、まだ待つ。8 まだまだ待つ。7 まだだめだ。 6 我慢しろ。 5 まだ抑えろ。 4 いよいよ。 3 あと少し。 
 そしてカウントが2になるか否か。その時に超子は思いっきり、それを施設へとめがけてぶん投げる。

「いっけえええええええッ!!」

 1。そのカウントで爆弾は施設へと直撃し、ゼロと同時に爆発する。
 その瞬間、あたりは爆発によって生まれた爆風に巻き込まれ、窓ガラスが吹き飛んだり、建物自体がふっとばされたりと、相応の被害を被った。しっかりと準備をしていた【マザー】も、他のフォルテッシモたちも、その影響をもろにくらい、後ろへとのけぞったり若干吹き飛ばされそうになる。ただメンテのおかげか準備のおかげか、そこまでの被害はなかったようだ。証拠に、皆のフォルテッシモは、パーツが溶けたりなどという事は起きなかった。むしろそれさえなかったのが『奇跡』というべきか。
 爆発を目の前で食らった施設は、その時点で貼られていたのであろう防御壁が、見事なまでに崩れていった。正確に描写するならば、『跡形もなく消え去っていた』とするべきか。兎にも角にも、施設は丸裸の状態となった。
 だが当然のことながら、それを受けて、それとも前々からいたのか、グローリアのフォルテッシモがすぐに現れる。すでに臨戦態勢は万全のようで、今すぐにでもこちらへ攻撃を仕掛けてくるようだ。否、もうしている。
 あるグローリアの量産型フォルテッシモが、フォルテを使用したがために消耗したディーヴァ、もとい歌子にたいして幾つものミサイルを放つ。それらをいち早く、御代は彼女の前に立ち、すべてをはらう。はらわれたミサイルは、あちこちに分散していきやがて何かにぶつかり、爆発する。御代はそれを見て眉をひそめた。予告なしに撃つな、そう思うが流石に予告して攻撃する敵などいないか、と肩を落とした。

「御代ちゃん、歌子ちゃん、大丈夫?」
『な、なんとか…御代ちゃんがやってくれたみたい』
『もーまんたいうぇい!それよりも早くこの雑魚たちなんとかしなきゃぽよ』
『貴方、まともに話せないのかしら』
「はいはいおしゃべりは後!まずは御代ちゃんの言うとおり───この雑魚集団を蹴散らそうか!」


 今このとき、命がけの戦闘が始まった。


続く

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