複雑・ファジー小説

【短編集】愛礼、目下前進中
日時: 2018/11/20 22:03
名前: 呂色 猫

はじめまして、呂色 猫(ろいろ ねこ)と申します。
早速やらかしたのですが、トリップは◆CFFEpYy4U2です。

よく分からないのを書きます。自分でもよく分からないので、多分よくわからないのだと思います。
好きなものは豚バラ肉、嫌いなものは合唱祭の明らかに温度差のある教室での自主練習。

小学生から中学生にかけてここに投稿していた二次創作や書きかけのラブストーリーを見て死にたくなりましたが、再度小説にトライしてみたいと思います。どうぞよろしく。


>>1 日曜日のアリス
>>2 降星確率


START.2018.11.17

Page:1



Re: 【短編集】愛礼、目下前進中 ( No.1 )
日時: 2018/11/20 22:02
名前: 呂色 猫 ◆CFFEpYy4U2

「今日はお茶会を辞めましょう」

 彼女は薄汚れたテーブルクロスに頬杖をつき、大した事でもなさそうに言葉を漏らした。あまりにも突飛な提案に私は無意識に眉を顰めてしまう。

「どうしたんだいアリス。面白い冗談だね、お茶会以外に君に何が出来るっていうんだ」

 帽子屋はかなり控えめな反論をしたが、彼女はそれを馬鹿にされたと受け取ったのか、目を細めた。

「なんだって出来るわ。冒険も、クロッケーも。だからこのお茶会にだって辿り着いたし、赤の女王とも仲良くやっていけたのよ」

 冒険とクロッケーでは、「なんでも」とは程遠い。彼女自身もそれを理解しているのだろう、苛立ったように宙を睨んだ。

「じゃあ、久しぶりに女王を茶会に呼ぶのはどうだろう。思い出話に花を咲かせるというのは」

 帽子から花を取り出す手品で機嫌をとろうとするが、差し出した花は萎びていた。前に使った時から変えていなかったのだろう。そもそも生花を使っていたのが間違いだ。

「貴方知らないの? 彼女は退位して病床についているわ。今お茶会に誘えば、それこそもう一度首をかけたクロッケーをしなくちゃならないでしょうね」

 私は震え上がる。そんなことになってしまったら、この夢が泡沫のように弾けてしまう。震える私に気づかない彼女は、さらに続ける。

「不思議なこの世界に閉じ込められて、もう何年経ったかしら。最初は腰が抜けるほど驚いた何もかもが、今では退屈な日常なの」

 確かに今の彼女は、無邪気な好奇心に溢れる幼い子供ではない。同じなのは、見事なブロンドと青いエプロンドレスだけだ。

「チェシャ猫はどこかへ消えて、ウサギは慌ただしく去ってしまった。残ったのは貴方たちだけよ」

 彼女はテーブルに置かれたティーポットを手に取り、3つのカップに茶を注いだ。帽子屋は首を傾げる。

「はて、貴方「達」とはどういうことだろう」
「ずっと前から、ずっと居たのよ」

 ねぇ?と彼女は私の方を見るが、どこか焦点が定まっていない。私は目を見開き、じっと見つめ返した。

「毎日決まった時間に始まるお茶会には、もう飽き飽きしているの。スコーンにクッキー、ケーキにマカロン。どれも素敵だったけれど、でも、もう要らない」

 帽子屋が問いかける。

「じゃあ、もう茶会は終わりかい?」

 彼女は首を横に振る。そしてまた私の方を見つめると、童話の中のアリスのように無邪気な笑顔を作った。

「次のお茶会は、鏡の外で開きましょう。私がかつて生きていた、あの世界で」

――分かっていたのか。

 私がアリス達を見つけたのは、かなり前の事だった。毎夜午前3時に必ず行われるそれに、私は外から参加していた。いや、眺めていた。

 今この瞬間は幻なのだろうか。いや、茶会を覗き始めた時からの記憶は、全て一夜の夢なのだろうか。

 帽子屋はまだ理解していないようだった。アリスは私に向かってぱちりと片目を瞑ってみせる。その長い睫毛が、一瞬風を起こした。

Re: 【短編集】愛礼、目下前進中 ( No.2 )
日時: 2019/03/16 13:43
名前: 呂色 猫 ◆CFFEpYy4U2

 地球の引力と宇宙のバランスが崩れたのは、ここ最近の話ではない。何世紀も前に突如として大量の星が降ってきた時の話は、人類最大の絶滅危機であったと語り継がれている。

 人類は星が降る度に数を減らし、今では種族や地域ごとに小さな集落を作っている。ビニールハウスのような透明なドームの中に、青色の耐久素材で組まれた同じ形の家が規則正しく立ち並ぶ景色は、ゲームの升目を思い浮かべてしまう。

 今でも年に何回かは三等星が降る。大きめの石のようなそれも何十年か前は脅威であったらしいが、今では透明なドームに守られて安全である。皆万が一のために避難しつつも、窓から望遠鏡で鑑賞会をするほどだ。

『おはようございますJ-21の皆さん。今日の最高気温は38度、最低気温は16度。降水確率は30パーセントでしょう。』

 天気予報機の機械音声が生存区域J-21内に響き渡った。数十年前に誰かが作った、理論上100%正確な予測が出来る人工知能だ。

『今日の1位はヤギ座の貴方。隕石が降ってきても逃れられるかもしれません。そして残念、今日の12位は――』

 ちなみに天気予報だけでなく、娯楽の少ない区域内の楽しみとなるように星座占いや今日のおまじないなど、余計な機能も満載である。

「今日もスターフラワーの成長は期待できませんね、先生」

 この研究室で私以外のたった一人の研究員であるレオは、机に開いた数字パズルの冊子と向き合いながらいつもの様に話しかけてきた。

「興味が無いのも分かるけれど、もう少し残念そうにしてくれたって」

「そもそも、この花ってもう枯れてるんじゃないですかね?こんなに茶色いし」

 スターフラワーは亡き妻の遺したものだった。妻の家系が代々娘へと受け継いできた、コバルトブルーの花瓶と、その中に入った萎れて色褪せたスターフラワー。昔、花瓶と花が不釣り合いだと揶揄したら、「そんな事ないのよ」と苦笑していた。

 私達は子供を授かれなかった。妻と私、どちらが親になれない体だったのかは分からない。分かるのは、妻が毎朝欠かさずに水をやっていたあの萎れた花は、受け継ぐものが居なくなったということだけだ。

 そんな花を、せめて人工的に育成し、数を増やしておこうと思ったのが研究の始まりだった。しかし、区域内に植物を学べる場所などあるはずもなく、素人が出来ることなど無いに等しい。スターフラワーは無駄に大きい机にぽつんと置かれたままだ。毎日水をやろうが、窓を大きくして光を沢山当ててみようが、醜い茶色は変わらなかった。

『――ラッキーアイテムはリンゴ! バットアイテ……』

 永遠と流れていた区域放送が途切れた。そして、耳を突き刺す爆音の警告音が流れる。

『地球上空30万kmに一等星を確認。繰り返します。地上上空30万kmに一等星を確認。J-21への降星確率78パーセント。各自中央塔地下シェルターへの避難を早急に始めてください』

 予報機は何度もそれを連呼して、煽るように警告音の音も鳴り響く。それに負けず外の騒音が大きくなる。警告音が鳴った時点でで飛び出した者も多いのだろう。

「嘘だろう?!そんな…」

「先生、早く出ますよ!」

「待ってくれ、花を! 花を持っていかなければ……」

 レオはのろのろと花に近づく私の手首を掴み、必死の形相で研究室の階段を駆け下りた。引きずられるように区域内を駆け、人混みに揉まれながら塔へと向かう。空を見あげれば、素手に幾つか星の欠片が区域外に落ちていた。

「も、もうダメだ……俺ら間に合わねぇ」

 誰かが絶望したように呟く。塔までの大通りには人が押し寄せていて、その末端にいるような私たちが星が落ちるまでに塔に入れるとは思えなかった。皆が次第に足を止める。

「先生」

 レオが爪を立てて掴んでいた私の手を離した。彼女の頬に大粒の泪が何本も伝う。

「一等星って、あんなに大きくて、綺麗なんですね」

 今から私達を殺すものだと言うのに、星は天からの贈り物のように地上へと降ってきた。地表は常に炎に覆われているのだろう、赤黒く光る球体の輝きは瞬きをする事に増していた。迫り来るそれに辺りは静まり返る。ある者は死を受けいれ目を瞑り、ある者はただその輝きを目に焼き付けんと見続けていた。そのとき、

「おい、なんだあれは!」

 遠くの方で、何か青い棒のような物が透明ドームを内側から突き破った。青い棒は星へと伸び続け、空中で枝分かれし葉を付ける。

「あれって……」

 私が呟く間に、青い棒は先端に鮮やかな同じ色の蕾を付け、また星の方へと長く成長した。
そして、星と蕾が重なる。緩やかに解けた青の花弁が、赤黒い光を完全に包み込み、また花が閉じた。












「その花、花瓶に飾っているというより引き立て役みたいだな」

「そんな事ないのよ」

 まだ肌は若々しいが、白髪の混じり始めた妻がそう言って苦笑した。

「いつも水をやりながら、お願いしているのよ。私が居なくなっても、代わりに貴方を見守っていて欲しいって」









英名 starflower
和名 向星葵

――普段は枯れたように萎んでいるが、一等星の光により急激に成長し空の先まで伸び続ける。故に花が開く様子を見たものはおらず、その色は星のような黄金なのではと言われている。

花言葉は「貴方だけを見守る」

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