複雑・ファジー小説

冷凍睡眠と俺の親父のこと
日時: 2019/02/08 21:33
名前: 遊樂姫

2052年、夏。昨日俺の親父は冷凍睡眠(コールドスリープ)に入った。



思い当たる理由は特に何にも無かった。
俺はごく普通の高校生だ。茶髪で、ブレザー着崩してバカやってギリギリで単位取って高校生活してた。親父は叱らなかった。人のこと言えないもんな。
俺は親父が19の時、「一夜の過ち」でできた息子だ。別に俺は何も思わない。俺を水子にせず母さんと結婚した。母さんは薄幸の美人て感じだ。写真を見るたびに、綺麗な顔してよくやったもんだねと思う。
まあいいや、親父は若い。金髪を刈り上げた頭に黒いニット帽、両耳にはピアス、いつもガラの悪いTシャツを着て、仕事場へ行く。ガテン系男だ。優しくも厳しくもない。
尤も、コールドスリープなんて、興味ない人種なのに。

冷凍睡眠法が採択・可決したのは俺が中学生の時だった。要は、年単位の一定期間冷凍されたまま眠り、契約した月日に目覚めて、体は全く老てない状態で生活を営むことができる。言い方を変えれば新しいカタチのタイムトラベルだ。手続きはクソみたいにめんどくさいらしい。まあそうだろうな。当時俺と同じクラスのオタクや、夢見がちな女子が「未来に行ってみたい」とかアホみたいに言ってた。ばっかじゃね、もしかしたら核戦争でも起きて施設ごと無くなるかもしれないのに。確かに不老不死は実現可能になった。長ーい間寝てられるってのはすげえ俺的にいいなって思うけどね。
最悪今の30代の親父と80代のお爺ちゃんになった俺が鉢合わせするなんていうリスクもある。別にどうってことないけど。今日から、冷凍睡眠機関から親父が俺にと機関に預けた金を送ってもらって生活することになる。やれやれ、意味わからん。マジで全然わからん。親父は今現在を楽しみ刹那的に生きるのが好きな人種だ。てかその結果俺が生まれてるわけで。
昨日の親父は早かった。いつもはダラダラ9時ごろにいつものニット帽で現場に行く。だけど昨日は違った。いつもカッコつけて残してる髭が、全部剃られていた。
「なに、早くね?てかなんで髭全部剃ってんの」
「伸びるだろ」
「いや伸ばしてただろ、どこ行くの」
「コールドスリープ」
「は?」

唐突すぎて、理解が追いつかない。まあせっかくの夏休みなんだから、スマホばっかいじるのもなんだし、こういうのに耽るのもいいだろう。学校の図書館にでも行って、コールドスリープ物のSFでも読むかな。うちの学校の図書館はでかい。制服のデザインも凝ってる。生徒の脳みそはおがくずが詰まってる。まあ俺もそうなんだけど。
「あれ、きよちん?うそうそ、図書館にくるようなヤツだったっけ?」
今日の図書当番こいつかよ。いつもふわふわの前髪(前髪と言っても後ろ髪と同じ長さだけど)ハートのヘアゴムで結って、ごてごての爪、揚げ物でも食ったのかっていうツヤツヤ唇、ばしばしまつげの三白眼、明石こばとだ。
「お前スマホちゃんかと思ってたらそうでもないんだな」
皮肉のつもりで言った。でもこばとはバカだからばしばしまつげの目を見開いてげらげら笑った。おいおいお前図書委員だろ。それでいいのかよ。
「だってギガ減るのやだし、バッテリー減るのも鬱陶しいんだもん、だったらバッテリーもギガも無い本の方が良いよ!」
確かに一理あるじゃない。
「なんて書いてあるか分かんのか?」
「あんまり。だから分かんないとこはスマホで調べるの」
「それ意味あんのかよ」
「んー、どうだろ。ところできよちん何探してんの〜?

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