複雑・ファジー小説

何回目かの初めまして。
日時: 2019/06/13 19:16
名前: 白刃 さとり

 私には、前世の記憶があった。

 それは、全て貴方の記憶。
 その、嘘つく時の癖も、照れ隠しの憎まれ口も。ありがとうって言った時の反応も、怒った時の素っ気なさも。好きなものも、嫌いなものも。どんな所で怒るのかも、喜ぶのかも、つい甘やかしてしまう所も……。

 その全てが。

 貴方に染まっている。





 始まりは些細なこと。

 戦国時代。織田信長さまがお亡くなりになられて、豊臣秀吉さまがお国を納めになるころ。

 蔵にあった"石"を子供であった私たちが開けてしまったことである。私たちは、その"石"の珍しい色にそれで簡易的なネックレスを作った。

 それが、呪いの石とは知らず。




 何度目かの……

  >>1  >>2  >>3  >>4  >>5

  >>6  >>7  >>8  >>9  >>10




Page:1 2 3



Re: 何回目かの初めまして。 ( No.7 )
日時: 2019/05/27 17:52
名前: 白刃 さとり


 おじいちゃんの家は、まあまあのド田舎だった。始めて来たときは、旅館の手伝いなんてできるのか心配だったが
今はもう馴れてきた。といっても私に出来ることなど料理を運ぶか掃除か臨時の接待などで、内心おじいちゃんにもっと何かしてあげたかった。そう思って始めた会計と受付の手伝い。この旅館はテレビに秘境の温泉地として出ることも多くて、思ったよりも忙しかったが、今まで経営に携わることなど無かったのでやりがいも感じていた。

 「すみませーん。」

 会計の仕事をしていると、遠くから声が聞こえた。お客さんだろう。私は受付のカウンターへ出ていった。そこには、二十代と思われる男性がいた。結構な色男で朔よりも少し高めの背で、右耳にピアスをしていた。いかにも旅館に来るなどという人ではなく、東京で飲み明かしているのが似合いそうな男であった。
 男は私を見て目を見開いた。が、それも一瞬のことで、私は気にも止めなかった。

 「予約していた轆轤ですが。すみません。早めに来てしまったのですが開けてもらえますか?。」
 思ったよりも優しい声で問いかけられ、動揺してしまった。まあ人を見た目で判断した自分が悪いのだが。
 「ろくろ様、ですね。ええっと………。」
 私は予約者リストを見た。探してみると轆轤、なんて難しい漢字が出てきて、そこの部屋の名前を見た。伊織の間、まだ準備中の部屋だ。
 「申し訳ございません。今準備中なんです。広間でお待ちして頂いてもよろしいでしょうか。」
 そう言って、轆轤さんを広間へ案内し、ソファーに座らせた。

 「本当に申し訳ございません。」
 私は軽く頭を下げる。轆轤さんは笑って、
 「いえ。私こそ、予約よりも早く来てしまいました。貴女が謝ることではありませんよ。」
と言ったが、何かその笑みが営業スマイルに見えて安心は出来なかった。
 「轆轤さんは、どうしてこちらにお越しになられたのですか?。」
 話題を変えようと、そういうと、はにかんだような笑みが彼から溢れた。さっきの大人びた笑みとは違い、青年のような親近感を感じる笑みだ。
 「俺は、ちょっと彼女に会いに………。」
 はにかんだ理由が可愛く、私からも笑みが溢れた。
 「遠距離なんですか?。」
 相当彼女にぞっこんらしい。頬を赤らめて轆轤さんは、「えぇ。まあ。」と曖昧に言った。
 「週一で会ってはいますが、相手と年が離れてますので、俺の幼なじみくらいしか交際は知りません。今年中は仕事でここに居れるので、毎日会えますよ。」
 年上か。大人っぽい彼の見た目から彼女を想像していた。きっと、清楚系の美女なのだろう。

 「あ。」
 暫く、轆轤さんと話をしていると、朔が見えた。そういえば二時に用があるって言っていたことを思い出し、私は手を振る。もうそろそろ二時だ。
 「轆轤。何でいんだ。」
 朔は近づくなり、そう言った。轆轤さんと知り合いなのだろうか。
 「朔、轆轤さんと知り合い?。」
 私がそう問うと、朔の代わりに轆轤さんが頷いた。
 「はい。彼とは幼なじみです。」
 「は?。幼なじみなんて可愛いもんか。」
 相当長い付き合いのようだ。憎まれ口を叩く朔を、轆轤さんは上手にあしらえていた。
 「それじゃあ、轆轤さんは叶ちゃんとも知り合いなの?。」
 そう聞くと、轆轤さんの顔が少し赤らんだ。ん?。この反応は?。
 「楓。知らないのか?。……轆轤と叶、付き合ってるんだぞ……。」
 朔がそういうと、轆轤さんの顔がもっと赤くなった。
 「んで、今度来るうちのクラスの副担任。」
 「えぇ!?。」
 「そいでもって、女嫌い。」
 「えぇ?。私とは普通に話してたのに?。」
 「な。楓と叶だけは普通に話せ………。」
 「私、初対面よ?。」
 「いや、そうゆうことじゃなくてな。」
 「終いには、キモいくらいに叶にぞっこんだ。」

 「そ、それ以上はメンタルにくるんで止めてください。」
 轆轤さんがそう言うまで朔は轆轤さんについて話していた。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.8 )
日時: 2019/05/28 00:02
名前: 白刃 さとり


 「今日から副担任をやらせて頂きます。萩原轆轤です。担当教科は国語です。宜しくお願いします。」
 営業スマイルを盾に、轆轤さんはそう言った。その容姿や、甘いボイスから女子は虜になっていた。

 「轆轤先生って彼女いますか!?。」
 早速男子からの質問が入った。轆轤さんは笑顔を崩さず、
 「はい。少なくとも一生を誓い合った女性ならいます。まだ結婚はしていませんが。」
 と言った。わぁ、と教室が騒がしくなる。そのなか一人だけ真っ赤な顔を必死で隠している叶ちゃんがいたことは、私と朔と轆轤さんの秘密だ。
 「それじゃあ、その彼女っていくつですか!?。」
 「写真ありますか!?。」
 「彼女とどこまでいってますか!?。」
 「彼女の身長は!?。スリーサイズは!?。」
 「彼女との出会いは!?。」
 「交際期間はどれくらいですか!?。」
 追及するように男子が質問をいれた。こうゆう所に抜かりのない男子達は私から見ても勇者だ。轆轤さんが静かに、と合図をした。教室が静まり帰る。
 「彼女とは数百………ごほん………十数年の付き合いで、交際を始めたのはつい三年前です。あとですね、彼女の魅力を話したいとこなのですが、彼女の魅力は俺のみが知っていればいいことなので、話したくありませんよ。」
 にこり、と微笑んだ轆轤さんであったが、女子はもちろん男子の心もぶち抜いたのであった。

___________________________________

 轆轤said

 楓さんと朔が"繰り返しの呪い"に呪われたように、俺と叶も"永遠の呪い"に呪われていた。その呪いはあまりにも残酷だった。朔達の呪いが"愛し合うと死ぬ呪い"に対し、俺達の呪いは"愛し合っても対立する呪い"だった。今はもう前世の朔と楓さん達のお陰で何とか解くことが出来たのだ。
 でも、呪いの解けた直後、楓さんが朔を庇い、死んでしまった。
 そこで俺達は理解した。



 彼らの終わりの見えない呪いのことを。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.9 )
日時: 2019/05/28 04:58
名前: 白刃 さとり


 [前世:朔目線(youという歌の歌詞を使わせてもらいます)]


 ああ、もう朝だ。

 悠長な鳥のさえずりが聴こえてくる。昨日は一睡も出来なかった。そのせいか、やけに頭が冴えている。

 眠れない日は、いつも君の腕の中で寝た。今はもう、その温もりすら見当たらないのだ。昨日、最愛の君がいなくなったのだから。分かっていても、頭では分かっていても、まだ何処かに生きていると信じてしまう自分がいる。



 貴女は今、何処で何をしていますか?。

 この空の続く場所にいますか?。

 いつものように笑って過ごせていますか?。



 それとも、今も俺の傍にいますか?。

 もしそうなら、俺は君の為ならば心臓だって捧げよう。君の為ならばなんだってするから。もう、失わせないでくれ。俺から最愛の人を奪わないでくれ。

 なのに何故、君は死んでもいいなんて言うんだ。何で逃げられないなんて言うんだ。たった十八年の命なんて、悲しいだろう?。

 何で俺ばかり辛い想いをするんだ。










 「朔。」

 ふわりと頬を撫でられる感覚。それと共に漂う甘い香り。楓だ。俺は目を開けた。今は、楓はここにいる。
 「どうしたの?。ニヤニヤしちゃって。」
 憎まれ口がかえってくると思ったのか、スタンバイをする楓。
 「俺、スッゲー幸せだなって。」
 楓の頭を撫でると、楓は頬を赤らめてポカンとした。

 そんな貴女が大好きです。

 言えない言葉を心の中で囁いた。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.10 )
日時: 2019/06/11 23:25
名前: Nahonn


 「朔。」

 机に顔を突っ伏していた俺は顔を上げた。俺を呼んだ本人である楓は、じっと此方を見つめる。
 「あんだよ。俺の顔に何か付いてんのか?。」
 それでも、楓は答えなかった。また、この前みたいに不安にさせたんじゃないか、やっと前世を思い出したのか、何て色んな考えが頭をよぎった。
 「おい?。楓?。」
 「ねぇ、朔。朔ってカッコいいの?。」
 俺の心配する言葉を遮りながら、予想外な言葉を吐いた楓。安堵と呆れの混じった溜め息が知らず知らず俺の口から零れ出た。何故かそこに楓が反応する。
 「はぁ、じゃ無いわよ!。真面目にかんがえてるんだかんね!!。」
 「へいへい。怒った顔も可愛いですよー。楓チャン。」
 本心混じりの憎まれ口を叩く。楓はいつものように頬を膨らませた。本当に可愛い。

 「楓は、十八年しか生きられないって嫌か?。」

 さりげなく、不自然じゃないようにそう言った。楓は首を傾げる。

 「んー。死にかたにもよるかな?。でも、それが誰かの為になるならそれでいいかも。」

 変わらないな。そうゆうとこ。
 もういっそ、このまま俺だけの檻に閉じ込めて自分だけのモノにしたい。
 十八歳を迎えた日に一緒に死のう。そしてまた生まれ変わったら、次の世界で愛し合おう。


 でも、それでも君との未来を諦められない。

 だから、またこうやってもがいている。

 「私、朔の為なら死んでもいいよ。」



 こうして、天国のような地獄の日々が始まった。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.11 )
日時: 2019/06/16 08:57
名前: 白刃 さとり


 [10話の楓目線]


 その日は、目覚めの悪い朝だった。
 寝ている時にかいた汗が肌を伝う感覚や、張り付けた服のベトベト感が気持ち悪い。


 「悪夢………。」

 気付けばそう呟いていた。
 見ていた夢…いや悪夢は、最近はなかった予知夢だ。いつものように、所々しか覚えてはいなかったが、いつもよりとても長く、気の遠い悪夢のように感じた。

 夢の内容は、朔が殺されるものだった。
 一直線に私に飛びいるナイフ。私を庇ってナイフの餌食となった朔が死んだ。……通り魔だった。 

 笑顔を崩さずに登校をした。





 もう、教室の前。私は、平常心を保とうと、深呼吸をした。三回ほど。それでも涙がこぼれでそうで……。
 「大丈夫。私が守ればいいのよ。」

 呟いた言葉は、自分に言い聞かせたものだった。
 もう一度深呼吸をし、思いきって戸を開けた。おはよう、とクラスメイトに声を掛けながら朔の隣の席に近づく。当の本人は呑気なことに小さな寝息を発てて眠っていた。そんな姿に安心しながらも、いつ起こるか分からない朔の死に対しての不安は消えてなどいなかった。

 「朔。」

 さっきまで吐息の数しか動かなかった朔が顔を上げた。朔が生きている。また、涙が溢れそうになった。それを堪えて朔に向き合う。おはようの言葉さえも出なかった。
 「あんだよ。俺の顔に何か付いてんのか?。」
 応えない私に朔は心配したのか、もう一度私に問いかけた。
 「おい?。楓?。」
 朔が死に付いて何も言いたくなかった。
 もう、適当にいってしまおう。そう思い、何かを言った。内容は覚えていないが。
 朔は、盛大に溜め息を吐いた。
 「はぁ、じゃ無いわよ!。真面目にかんがえてるんだかんね!!。」
 つい、むきになってそう言ってしまった。
 「へいへい。怒った顔も可愛いですよー。楓チャン。」
 いつものように、憎まれ口を叩いてしまったが、心底いつものようすでいてくれて救われた。


 「楓は、十八年しか生きられないって嫌か?。」

 なんの話だろう。朔の友達が病気なのだろうか。
 いずれにせよ返さない理由はないので、自分だったら、と考えた。

 「んー。死にかたにもよるかな?。でも、誰かのためになるならそれでいいかも。」

 そう。誰かのためなら。



 「私、朔の為なら死んでもいいよ。」

 そう。君の為なら。

Page:1 2 3



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


URL


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大7000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。