複雑・ファジー小説

何回目かの初めまして。
日時: 2019/09/07 12:17
名前: 白刃 さとり

 私には、前世の記憶があった。

 それは、全て貴方の記憶。
 その、嘘つく時の癖も、照れ隠しの憎まれ口も。ありがとうって言った時の反応も、怒った時の素っ気なさも。好きなものも、嫌いなものも。どんな所で怒るのかも、喜ぶのかも、つい甘やかしてしまう所も……。

 その全てが。

 貴方に染まっている。





 始まりは些細なこと。

 戦国時代。織田信長さまがお亡くなりになられて、豊臣秀吉さまがお国を納めになるころ。

 蔵にあった"石"を子供であった私たちが開けてしまったことである。私たちは、その"石"の珍しい色にそれで簡易的なネックレスを作った。

 それが、呪いの石とは知らず。




 何度目かの……

  >>1  >>2  >>3  >>4  >>5

  >>6  >>7  >>8  >>9  >>10

  >>11 >>12 >>13 >>14 >>15

  >>16 >>17 >>18


 [何度目かのサヨウナラ。]も良ければ見てください。




Page:1 2 3 4



Re: 何回目かの初めまして。 ( No.14 )
日時: 2019/06/30 22:24
名前: 白刃 さとり


 私は、ぼんやりと目を開けた。祖母の声が響く。
 「楓!。いい加減起きんと学校に遅れるよ!。」
 いつもの風景だ。しかし、決定的にいつもと違うのは、祖母の発した『今日が初めての登校でしょう』だった。

 「おばあちゃん。今、なんて?。」

 私は、首を傾げてそう言った。
 「あんた、まだ寝ぼけてんのかい?。」
 そう言って祖母は眉を潜めた。


___________________________________


 「今日は、このクラスに転入生が来ています。……どうぞ、入ってください。」

 おかしい。

 「小日向さん?。」

 絶対におかしい。


 私は、先生に呼ばれて渋々歩き出す。教室の皆の視線が私に一直線に集まった。そこの中に朔がいる。まだ、朔の死も受け止めきれていない私にとって、これは苦痛以外の何でもなかった。

 「初めまして。こ、小日向楓です。宜しくお願………。」

 クラスメイトがざわめき始めた。
 そこで私は気づく。私の頬から一筋の涙が零れていたことに。

 私は先生に勧められるままに席に着いた。まだ涙が止まらない。

 「か、楓。」

 そんな私を心配してか、朔が私に声をかけた。しかし、彼からは、そこから一言も発しなかった。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.15 )
日時: 2019/07/07 01:42
名前: 白刃 さとり



 たくさんある前世の短編集


 1.太平洋戦争時期[朔]

  明日。俺は"兵隊"になる。

  明日。俺達は18になる。


  東京が初の襲撃を受ける一日前。



 2.今のひとつ前の前世[楓]

  車のボンネットにあっとゆうまに乗った私。

  その時、一瞬だけ後悔した。

  君との未来を諦めたことに


 3.始まり[楓]

  「朔〜何かあるよ〜。」

  私は札の貼られた箱をあけた。

  「うっわぁー。綺麗だなぁー」


  きっかけはきっと、私だ。


 4.江戸時代初期[朔]

  「楓っ!!!。」

  大声で叫んだ。楓は虚ろな目で微笑んだ。

  役人の刃が楓を襲う。

  そして、楓の体は地面に落ちた。


 5.バブル時代

  真っ先に犯人は楓に銃口を向けた。

  ぱぁあん

  その音が、今この世で一番聞きたくなかった。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.16 )
日時: 2019/07/10 22:40
名前: 白刃 さとり


 つづき


 6.2回目の始めまして[朔]

  俺は、思わず彼女の名前を呼んでいた。

  朔…

  そう呟いた彼女の声は、歓喜と不安に包まれていた。


 7.何回目かの最期[朔]

  やっぱり、君のいない未来なんて考えられない。

  そう言って、俺は楓と共に深い眠りについた。


 8.昭和時代真ん中[楓]

  あ。

  空に舞った君のハンケチが、追いかけろといっている。

  そして車道に飛び出した。


 9.江戸時代真ん中[朔]

  俺は、楓と川へ飛び込んだ筈だった。

  心中なんて馬鹿馬鹿しいと神が言ったのだろう。

  しかし隣には、冷たくなった君がいた。


 10.蒼[楓]

  君の瞳は何処を見ているの?

  何処へ向かっているの?

  私のいない君の人生なんて考えたくない。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.17 )
日時: 2019/07/16 20:31
名前: 白刃 さとり


 朔目線

 「楓。」

 恐る恐る、彼女に話しかけた。それは、まるで試すようなやり方で言ってからちょっと後悔した。楓は顔を上げる。

 自己紹介の時、誰よりも驚いていたのは彼女だった。まるで、夢の中にいるような。

 それが”恐る恐る問う”という行動にさせた理由の1つだ。

 「うん。なあに?。」
 思ったより、彼女はあっさりと返した。でも、その瞳はさっきよりも苦しそうだった。

 まず、俺に逢いたくなかったのか、そう考えてしまった。無理もない。こんなに苦しいのであれば逃れていたい。そう思うことだってあるだろう。

 「楓。ちょっと良いか?。」
 その気持ちを払拭するかのように俺はそう言った。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.18 )
日時: 2019/09/06 19:41
名前: 白刃 さとり


 俺達は屋上に来ていた。屋上に置いてある椅子や机を扉の前に置き、鍵を閉める。誰にも邪魔なんてさせたくないからだ。
 目の前でうろたえる楓がどうしようも無く愛しい。それと同時に失うのが怖かった。

「私の・・・前世のこと・・・?。”死ぬ前”の記憶があるの?。」

楓はそう言った。今、一番楓が怯えているのは俺に対してだろう。抱きしめたい。しかし、そうしたときの彼女の反応を考えると出来なかった。

「楓は・・・前世を覚えているのか?。」

楓は小さく、でもはっきりと頷いた。

「でもね、断片的に・・・。なの。朔は?。死ぬ前のこと覚えてないの?。」

俺は何を言っているのか分からなかった。

「俺は死んでない。」

俺はそう言った。楓を安心させるように両手を広げた。楓はまた、一筋の涙を流した。俺の傍まで来ると俺の心臓の部分を触った。

「うそ・・・だ。」

ボロボロと大粒の涙を流した楓。胸が痛かった。

「楓はきっと夢を見ていたんだよ。」

優しく、できるだけ優しく。楓を抱きしめた。楓の長い髪が手にかかった。

楓だ。

確かに俺の知っている楓だった。でも、楓は前世とは違いどこか怯えていて、俺を見る目が明らかに違う。

「楓・・・。」

俺はそっと呟いた。その声は、春の暖かい空気がそっと飲み下してしまった。

Page:1 2 3 4



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


URL


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大7000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。