複雑・ファジー小説

白線お流れ〜迷想奮闘記〜
日時: 2019/08/18 00:04
名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)  

清純な田舎の女子高生の物語。優秀な開業医を父に持ち、何不自由なく一人っ子の箱入り娘として生まれた。長野県松本市内の優等校に通い、将来に迷っている三年生。…じゃなくて……………………同市内の底辺校に通い、ドラッグストア薬剤師兼レジ係りの父を持ち、精肉工場のパート勤めの母を持つ高校三年生、八倉園美のお話し。7人兄弟の三番目、次女として生まれて毎日醜い兄弟ゲンカを繰り返し、外面は一人っ子の清楚な女子高生を演じて回りを辟易させる。そんな彼女がある日、父が借りてきた「白線流し」というTVドラマDVDをたまたま視てしまってからが大変。回りを巻き込んで主人公、七倉園子になりきろうとドタバタ騒ぎを展開する。しかし意外な結末が待ち受けていた。ハートフル?青春コメディが幕を開ける。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14



Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.6 )
日時: 2019/08/25 21:43
名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)  

…泣いて泣いて泣き明かした高校受験の日々。唯一優しかったのは母親だけだった。それがなかったらどうなっていたか。…「ごめんなさい夏。私に似たのね。」慰められて最後の滑り止めに挑戦した。それが西山高校だった。意気消沈しながら入学式に臨む夏。その時だった。園美が初めて声をかけてきたのは。「立嶋さんだよね。たてじまクリニックの。あそこ虫歯の時助かったのよ。隣町でしょ。」「え、ええ。」「どうしたの暗い顔して。青春真っ盛りの花の女子高生になったんだよ。もっと溌剌と行こうよ。牢獄の鉄格子見るんじゃない、その向こうの星空を見ようよ。」この園美の受け売りの言葉にどれだけ救われたことか。彼女が「貸しがある。」と言ったのはこのためだ。当の本人は忘れているが…そうこう思い出に浸っているうちに特急は長野県松本市に到着した。自由席車両から降りた小河は驚愕した。降りた矢先にあの変な女。「うっ、メンヘラ…」逃げるように走っていった。「ウフフ、いいんだ。この後二人は宮沢賢治の銀河鉄道の夜で出会う運命にあるんだから…」「あの、園美さん…」まきが古典的な確認をした。平手を目の前で上げ下げする。「ダメだ…」夏とまきはまたもや溜め息。駅前広場まで出てくると、園美の父武史がSUVで待っていた。「おお、まさにドラマの通り…」園美は二人に別れを告げると武史の車で帰っていく。長かった夏休みも終わり、いよいよ運命の二学期。1ヶ月後にテストが控えているものの、園美は眼中にない。ホームルームで小澤先生が「アレ」を言い出さないか、ワクワクしながら待っていた。「さぁ、泣いても笑っても後半年もないのよ。そこで、早速このクラスのアルバム委員を決めたいと思います。」「そうそれだ。言うんだジョー。」陰ながら小澤を拝む園美。「長田君と飯塚さんが適任だと私は思うわ。二人に決定。」「えーーーーっ。」思わず立ち上がって叫んだものの、すぐ口を手で塞いで座り込む。「何、八倉さん。何か不服でも…」「いえっ、ありません。」小澤の額に「内申書」の文字が浮かんだように錯覚。「おのれ小澤め。アルバム委員は七倉園子たるこの私なのだ。この怨み、晴らさでおくものか。」怨霊の如く化した園美に睨まれる夏。「ゲッ…何この重苦しい空気と視線は。」触らぬ神に祟りなし。終始知らん顔が続いた。やがて放課後、アルバム委員となったメガネの長田と夏が、アルバムと卒業会報の制作に勤しんでいた。「こちらAチーム敵影発見。」…続く

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.7 )
日時: 2019/08/27 02:24
名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)  

…どこで手に入れたのか、園美は軍用ヘルメットをかぶり、軍用双眼鏡で隣の校舎から三人を監視しつつ独り言を呟く。三人と書いたのは小澤が夏も加えてしまったことに由来する。「長田君は私を片思いしてキスしてくる設定なのに。これじゃ意味ない。しかも三人いたらキスしてくる可能性0じゃん。」ふてくされながら様子を見続けている。足元には「宇宙の名前」という本を、わざわざ図書室から借りて来て置いてある始末。「なっちゃん。トイレ行ってくるね。」 まきが席を立った。「おい、まっちゃん。やめろ、出て行くな。出るな出るな〜。」まきが席を立つのを一番恐れていた。と言うのも、SNSのやり取りで、気になる「いいね」があったからだ。「長田君て、夏のことさ…」この意味深な文言に女の感が騒いだ。「突入せよ。繰り返す突入せよ。」荷物を持って走り出す園美。「待て、待つんだ長田。お前のファーストキスは私なんだ。」叫びながらダッシュをかます。「立嶋。実は僕は君が…」「ん、何、長田君。」醜い形相の般若となりながら園美はクラスのドア手前に来た。「長田ーっ、ドーーーっ。」二人はキスした後だった。勢い余ってスライディングする園美。「ちょっと、そのちゃん何してんの。帰ったんじゃ…」「こうしてはおれん。キスは諦めて本命に激突じゃ〜っ。」キョトンとする長田と夏を無視して走り出す園美。「宇宙の名前」をしっかり抱きしめ、すっかり日が落ちて街灯だけになった正門目掛けて疾走する。本来ならそんな都合のいい話が…あるんだなこれが。またもや偶然通りかかった小河を見た。「ひっ…き、奇跡。」自分好みのイケメン目掛けて園美は容赦なく激突した。二人の物が散乱する正門前。「ご、ごめんなさい。」「痛たたた。ま、また君か。」飛んだ災難だった。とりあえず本らしきものを拝借して無情にも走り去る園美。「大丈夫ですか。」通りかかった夏とまきと長田は声を掛けた。「大丈夫じゃないよ。何なんだ彼女は。」「とりあえず先生呼んできますから。」一頃ちょっとした騒ぎになってしまった。そうとも知らず我が家に帰る彼女だったが…「なにこれ。銀河鉄道999の大判コミック。…」宮沢賢治のものではなかったのだ。さて明日から彼女の運命は何が待ち受けているのだろうか。…次回「星座と現実」に続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.8 )
日時: 2019/08/30 17:34
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

「星座と現実」………早朝、洗面所の鏡に向かって書くまでもない行動に走る園美。「気にしてないから。…」ガラガラと引き戸を開けて来たのはお母さんの美和子。「あんたこんなに早くから何してんの。」「何でお母さんが早起きなのよ。お父さんが出てくるシーンなのに〜。」ふてくされる彼女に美和子の雷。「バカ言いなさい。当たり前じゃないの、誰が家事こなしてあんたらをたたき起こしてると思ってんの。いつもなら目覚ましでも起きないあんたがどういうつもりよ。とにかく忙しいんだからどいて。」「は〜い。」ふてくされながら部屋に戻る。「納得いかない。」夫婦の寝室に忍び込む園美。グースカ鼾かいて寝てる武史。「いつまでも寝てるなっ。」「ががっぐっ…あれ、園美。どうした。」「知らない。」諦めて二階に戻る彼女。わけがわからずキョトンとする。「銀河鉄道999」の大判コミックをバッグに入れて西山高校に登校する園美。「あ、まっちゃんなっちゃん。オハヨー。」「オハヨーじゃないよ。一体どういうつもり。」まきが園美の腕を掴んで耳打ちする。「どうって…」夏が話す。「昨日、正門前で男の人とぶつかったでしょ。大変だったんだからね。」「え、そんなに。軽くぶつかっただけだけどな。」「どこが軽くよ。相手怪我してたよ。今日朝から小澤っちの角が伸びてるから。知らないよ。」「げーっ。」まきの吹き込みに最早青ざめる園美。嫌な予感が当たり、ホームルーム後個人面談に教室に残れと指示される。「はぁ。今日は男子の個人面談のはずなのに…」「何か言った八倉さん。」「いえ、何でも…」「何故話があるかわかるわね。」「は〜い。」「あなた残る必要もない学校に残ってアルバム委員の仕事を妨害したうえ、慌てて走っていった先に男性と衝突。それで走り去ったそうね。」「妨害はしてませんけど。…後はその通りです。」「本来なら警察呼ばれて損害賠償か鑑別所行きもいいところよ。」「え〜っ。」勝手な妄想が園美の頭を駆け巡る。「ま、それは大袈裟だけど。怪我も保健室治療程度で、向こうさんも罪には問わないと丸く収めてくれたから良かったけど。下手したらあなただけの問題ではなくなるのよ。来年で卒業なんだから、バカなことしないで。相手さんもあなたと同じ高校生だったのも幸いよね。」「高校生…」反省の顔をしながらも園美はそこだけに食いついた。「ええ、と言っても通信高校だけどね。」小澤も余計な一言を言わなければ良かったものを。…続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.9 )
日時: 2019/08/31 20:43
名前: 梶原明生 (ID: NOqVHr1C)  

…園美の小芝居劇場が始まってしまった。「先生っ。」「な、何よいきなり。…」手を組んで祈るような構えで、しおらしく語る。「私、このままじゃいけないと思うんです。私はとんでもないことをしでかしました。被害に遭われたその人に、私が直接お詫びに行くべきではないでしょうか。それが誠意と言うものでしょ先生。」「ま、まぁそうだけど…八倉さん、なんか最近おかしくない。髪型だけかと思ったらかなり挙動不審だし。昨日のこともそうだけど、なにか悩みでもあるんじゃない。」「いえ、それはありません。先生、是非彼の住所を、先生、先生、先生。」迫り来る園美に驚愕する小澤。「ま、まぁそこまで言うなら…」「やったぁ。」「何ですって…」つい本音が出た彼女は、すぐ真顔に戻る。「いえ、や、やっと肩の荷が降ります。」「そ、そう 。」かくして放課後に小河の家を訪ねることとなった。「この後マラソンでしょ体育。」「あっ、そうでした。じゃあ着替えます。」そそくさと教室を後にする園美。体育着に着替えた彼女が下駄箱に行ってすぐ皆と合流しようと靴を履き替えていたら…夏の下足入れにわかりやすく手紙が「こ、こ、これは〜。」一目散に女子トイレに駆け込んで個室の鍵をかけ、早速手紙を開けて見た。「これは私に来る手紙でしょ。京都大学に一緒に来いとか…」読み上げるとそれは夏に向けたラブレターだ。しかも「東京八王子の大学に行かないか。」とある。「え〜っ京都大学だろ長田。何で東京なんだよ。」ふてくされながら仕方なく教室に戻って手紙を自分のバッグに入れた。夏やまきに平然と合流してマラソンの授業を受ける。やがて放課後。…小澤と園美は菓子折り一つ下げて小河の家を訪ねた。「こ、これって小さな町工場。ドラマそのもの感激っ。」手を組んでぶりっこ顔負けの喜びぶり。「何か言った。」「いえ、何でもありません。」すぐ真顔に戻る園美。小河の家は工場と自宅が併設された住宅。ピンポーンとインターホンを押す小澤。「私、西山高校の教諭をしております小澤と申します。この度は私が担任する生徒が小河叶さんに…」社交辞令的な挨拶を終わらせて本題に入った。「叶さんは御在宅でしょうか。うちの生徒がどうしても直接お詫び申し上げたいと言いまして連れて参りました。」「わかりました。叶、叶。」「え…」思わず絶句した。ドラマではお母さんは別居のはず。何でと頭が真っ白になる。小河はその時自室にて、知恵利との思い出の写真を破いていた。…続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.10 )
日時: 2019/09/05 17:18
名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)  

…勉強机に肘を乗せて手の甲に顎を乗せながら、深く溜め息をつく。机脇のゴミ箱に無造作に恋の残骸が堕ちている姿を見つめる小河。時は一年前に遡る。彼は始めから夜間科高校に通っていたわけではない。県内でも有数の優等校、「深心高校」に通っていた。成績も優秀で将来を内外に有望視されていたのだが…特進ではない知恵利という清純そうな同級生に一目惚れ。彼女も彼のことを好きだと告白され、小河は天にも登る幸せを噛みしめていた。しかし…それも束の間だった。知恵利はとんでもない浮気者だった上に同じ手口で既にクラスメートの男子全員を手玉に取っていたのだ。自分もその中の一人とわかった時の絶望感ときたら凄まじいものだった。失恋した彼は成績はだだ下がりになり、学校にもいられなくなって逃げるように退学。以来女性不信に陥ってしまった。園美と出会った時も、喜べなかったのは知恵利同様に「清純派」な雰囲気を出していたことも原因の一つだろう。たまたま部屋の整理をしていたら知恵利との写真が。一年してようやく破り捨てる気になったというのに。「はーい。母さん今行くよ。」階段を降りて幸子に問いかける。「何の用。」「あんたにお客さん。」「お客さん。…」訝しげにしながら玄関のドアを開けた。「ゲッ、メンヘラ女…」ドアを開けた途端、小澤と共に現れた園美に驚愕して顔を引きつらせる小河。ドアを閉めようとした矢先、園美の足が挟まる。「あ、あ、あの、ちょ、直接お詫びしたいと…思いまして…あの菓子折り…か、叶さん…」まさにゾンビ対人間のドア前の攻防戦の如く、熾烈な戦いとなった。「何と誠意ある行動。そこまで謝罪したいとは…」小澤の全く勘違いな感動に、一言「褒めるのそこかいっ。」と言いたくなる瞬間だった。「か、帰ってくださいもういいですから…」「いいえ、そうは…か、叶さん叶さん。」この攻防戦に決着を付けたのは母、幸子だった。「いい加減にしなさい。まぁ、こんな可愛いお嬢さんに何てことを。」「え、…」やむなくドアを開ける小河。「か、可愛い…しめた、先ずは外堀外堀っ。」呟く園美「お母様でいらっしゃいますね。私、八倉園美と申します。私が至らないばかりに叶さんに。…」泣き芸も始まる始末。「叶、あんたこんないたいけなお嬢さんが謝ってんだよ。悪いと思わないのかい。」「か、母さん…」小河はしばし閉口した。翌日、園美は昼食をまきや夏以外に長田、磯山も加えてグラウンド近くのベンチで取ろうと言い出した。…続く

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大7000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。