複雑・ファジー小説

白線お流れ〜迷想奮闘記〜
日時: 2019/08/18 00:04
名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)  

清純な田舎の女子高生の物語。優秀な開業医を父に持ち、何不自由なく一人っ子の箱入り娘として生まれた。長野県松本市内の優等校に通い、将来に迷っている三年生。…じゃなくて……………………同市内の底辺校に通い、ドラッグストア薬剤師兼レジ係りの父を持ち、精肉工場のパート勤めの母を持つ高校三年生、八倉園美のお話し。7人兄弟の三番目、次女として生まれて毎日醜い兄弟ゲンカを繰り返し、外面は一人っ子の清楚な女子高生を演じて回りを辟易させる。そんな彼女がある日、父が借りてきた「白線流し」というTVドラマDVDをたまたま視てしまってからが大変。回りを巻き込んで主人公、七倉園子になりきろうとドタバタ騒ぎを展開する。しかし意外な結末が待ち受けていた。ハートフル?青春コメディが幕を開ける。

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Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.61 )
日時: 2020/01/05 21:14
名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)  

…五島の叫びに呼応した園美は拳銃側の手首を噛んで抗った。「テメェ、何しやが…」言ってる間にしゃがんだ園美のおかげで頭一つ分の露出となった。「今だっ…」そう心で叫ぶや否や、両手を挙げた状態からシューティングマッチ顔負けの早技で太股のホルスターからシグ拳銃を抜き、スパッと真っ直ぐ両手で構えた。ダブルタップで口と頭を狙って引き金を絞る。「パン、パン、」甲高い銃声が舞台袖中に響く。ちなみに口のすぐ奥は人間の小脳部分だ。故にここを狙えば神経が寸断されることを特殊部隊は知っている。直立不動になった園美は悲鳴をあげた。「キャーッ。」五島は即座に抱きしめる。「見るな。…君は見ちゃいけない。大丈夫だ園美ちゃん。終わった。…終わったんだ。」涙が溢れかえる園美。「確保−っ。」突入してきた長野県警特殊急襲部隊と松本駐屯地の陸自レンジャー隊員は呆気に取られた。すでに事は終わっていたのだから。…パトカーや救急車に消防に自衛隊にマスコミやらでごった返す西山高校内。事情聴取が終わって毛布にくるまっている園美達。「こんな終わり方するなんてね。」「うん、サプライズにしては悲惨すぎるよね。」まきの一言に全員安堵の笑顔が戻ってきた。「園美ちゃん。」「叶さん…」小河が駆けつけていた。「良かった。無事で。良かった、良かった…」思わず抱き締めている小河であった。「オホンッ…一応、親の目の前なんだがね。」武史がワザと割り込む。「こ、これはお父さん。」「君にまだお父さんと言われる筋合いはないよ。」と言いつつ急に笑顔になる武史。「もう、お父さん人が悪い。」笑いあってるその先では事情説明している迷彩服姿の五島達がいた。「よう、五島とやら。あん時はよくも殴ってくれたな。」何と、あの時の警察官が運悪く来ていた。「そうだったかな。その事はもう上と話はついたはずだ。」「俺の腹の虫はそうじゃねぇ。」いきなり殴りかかる警察官。「これで痛み分けだ。」「うん、いいパンチだが、もう少し腰を入れた方がいい。」「ふん、減らず口だな。」笑い合う二人。こうして一連の事件は暫く全国を賑わすこととなったのだ。五島を見つけて走ってくる園美。「ありがとうございました。おかげで過去のトラウマを乗り越えられそうです。」「いいや。君自身が乗り越えたんだ。別に俺は何もしてない。助けたのは公務員として当たり前のことをしたまで。それに…秘密をしっかり守ってくれた。感謝するよ。まぁ、その功績を讃えてだね…続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.62 )
日時: 2020/01/08 02:18
名前: 梶原明生 (ID: wh1ndSCQ)  

…信秋大学の入学許可を申請するよ。勘違いするな、あくまで一次試験の成績が良かったから学力的に問題ないとして特別にだ。」「あ、ありがとうございます。」「七倉園子では叶えられなかった地元大学入学、今度は君が果たすんだ。八倉園美として。」「はい。」こうして一連の出来事は終わった。数日後………再び学生服姿の5人と叶、佳乃、そして駒沢の計8人が西山高校近くの大きい河川敷に集まった。そう、言うまでもなくそれぞれの白い布を用意して。「ねぇ皆。ドラマじゃ卒業したい自分をスカーフとかに書いたけど、同時になりたい未来とか自分とか、飛躍したいこととか書かない。」園美が書く前に皆に提案した。「いいね、書こうぜ。」慎二が促す。「そのちゃん、あんたが先に書いて。設定でしょ。」「まっちゃん…うん。」手渡された青いマジックで書き始める。「わかった、勇気のない自分でしょ。」「ううん。」勇まで書いてニッコリする園美。「勇ましすぎた自分。」「そう来たか。」「そして、大学入学したら五子お婆ちゃんの店でアルバイトする。人の憧れを手助けする仕事をしたい。」夏が不思議がる。「食堂って、お婆ちゃんじゃ…」「大丈夫。食品会社勤務の良次おじさん夫婦が受け継ぐことになったの。」「本当に、良かった。」皆に安堵感が漂った。「次私ね、立嶋夏。泣き虫な自分。そして…歯科助手になる学校に行って、雅君と結婚する。」「えーっ、二人そこまで進展してたの。」園美が驚愕する。「うん。」「次私、飯塚まき。ボーイッシュで頑固な自分。未来は女磨きする、慎二と結ばれる。」「えーっ、二人も…」「何だよ飯塚。恥ずかしいだろ。」皆に笑いが起こる。「次は僕かな、長田雅春。冷めた目をやめる。親父の跡継ぎになる…かな。後は立、いや夏と同じ。」「熱いね、呼び捨てで。」「うるさい磯山。人のこと言えるかよ。」またもや笑いが。「さて、俺かよ。…えーとだな、磯山慎二。チャラい見た目かな。そんで、もっと強くなる。右に同じく跡継ぎで旅館の亭主。てね。はい次。」…続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.63 )
日時: 2020/01/10 02:59
名前: 梶原明生 (ID: 87ywO7pe)  

…佳乃が白いハンカチに書き始める。「遠距離恋愛に負ける自分。そして近距離恋愛にする。」駒沢がライダースカーフに書く。「佳乃を泣かせた自分。そして佳乃と会う時間を増やす。」「快斗…」しばし見つめ合う二人。「じゃあラストは僕かな。失恋した自分。そして相島さんとお母さんの再婚を許す自分。」皆驚く。「えーっ、叶さんのお母さんと…」「うん。前々から相島さんの気持ちは気付いてたんだ。でも、お父さんのことで何となく反対の雰囲気にしてた。でも、そういう自分からも卒業したいなと思ってさ。それから大学行きながら、園美ちゃんを応援したい。」「叶さん…」またもやしばし見つめ合うカップルが。「結局皆、春を先取りしたってことか。」雅春の一言で笑い合う皆。やがて結び終わった白線を川まで皆で持って行く。「私も参加して宜しいかしら。」そのあまりに神々しいオーラに誰もが固唾を飲んだ。傍らに見慣れた人物が。「よ、久しぶり。五島様だぜ。今日はサプライズだ。拝み倒してようやく来てもらった。」「さ、さ、さ、さ、さ、さ、さ、さ、さかいさん…。」これ以上は書けないが、園美が腰を抜かしそうになる人物に遭遇したことは確かだろう。「こんなに愛されるなんて嬉しいわ。でもね。あなたはあなたなのよ。八倉園美でなければ紡げない人生があるの。何故なら、あなたという人はこの世でたった一人、あなたしかいないから。」感激のあまりハグして、彼女の分の白い布を用意して書いてもらった。「白線よ、永遠に。」そしていよいよ川へ流す。…園美は涙しながら白線を追いかけた。思えば長いようであっと言う間だった白線流し設定の青春時代。まき、夏、雅春、慎二、佳乃、快斗、それに叶はつられて後を追った。ミスチルコンサートから始まり、叶にぶつかって皆を巻き込んだ秋。踏切まで走った二人。公園の大乱闘。冬が始まったクリスマス。東京で設定がバレて絶交した日。乗鞍岳と記憶喪失の日々。五子お婆ちゃんとの出会い。そしてショッキングな卒業式事件。そのどれもが切なく、そして輝いて見えた。全ては流されてお流れになったけど、決してお流れにならない思い出。走馬灯のように駆け巡っている中、叶、雅春、慎二の三人が川に入ってすくい上げた。「これ、八倉が持ってろよ。お前に覚えていてほしいんだ。俺達が道に迷った時、八倉なら思い出させてくれるから。皆もそう思ってるからさ。」慎二が絞って畳んだ状態でそれを彼女に渡した。…続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.64 )
日時: 2020/01/12 14:25
名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)  

…「うん、ありがとう。例え皆が青春を過ぎ去っても、私はここにいるから。」「僕も、君と皆の青春を守りたい。」「叶さん…」畳まれた白線を二人で握りしめた。「じゃあマネージャーさん、後は送り迎え任せた。俺は行くところがありましてね。」「は、はぁ。…」五島は静かに背を向け、さよならも言わずに去っていった。走って逃げる義郎。中学二年の同級生に追いかけ回されていた。「逃げられると思ってたのかよ。変人姉ちゃんの弟のクセに。万引きしてこいって。」人気のない駐輪場で胸倉を掴まれる義郎。「君達いけないな。イジメに万引きは。」現れたのは華奢で意外と美人な裕子だった。「なんだよあんた。関係ねーだろ。」「いいのかな。君達のイジメと万引きの証拠映像。マスコミやYouTubeに流したらどうなる。」言いながらスマホ画面を見せる。「うわっ、なんだよ。おい、可愛い姉ちゃんだ。少し遊んでやろうぜ。」女の子だと軽く見たようだが、相手がまずかった。日本拳法の一本背負いで投げ飛ばされる中学生。「おおっと、助っ人がいるんだぜクソ坊主。」五島と斉藤が加勢するのだが。「もう、セクハラですよ。厨房五、六人相手に私がやられるとでも。」「そういう言い方ないんじゃないかな裕子ちゃん。…ま、とりあえず、念書を書け少年達。今後一切イジメはしません、八倉に手は出しませんてな。でないとこの映像が実名住所付きで全国を賑わすことになる。わかったか坊主。」「は、はい。」頭を引っ掻き回されたイジメグループはへたりながら返事をした。「義郎君。これに免じて、お姉さんを許してやってくれないか。」「はい…」手を差し伸べ、義郎を助け起こす五島であった。…翌日。特急列車が連なる場所に園美達はいた。ドラマみたいに誰もが旅立つ時。ただドラマと違うのはそれぞれの両親も見送りに来ていたことだ。夏と雅春。まだ同棲する事は両親に内緒のようだが…「必ずお嬢さんを八王子まで送り届けます。」「ああ頼むよ。同じ屋根の下だろうが、君なら安心だ。」「え…」「ああ、何でもない。気をつけてな、夏。」「お父さん。…」あれほど厳しかった夏の父がこれほど和やかだったとは。それに既に同棲は見抜いていたのだ。園美達が声をかける。「二人をいつまでも応援してるからね。なっちゃん、色々ありがとう。」「そのちゃん…」「なっちゃん、ずっと友達だよ。この飯塚まき、絶対忘れないからね。」「うん。必ず、また戻ってくるから。皆元気で。」慎二が叫ぶ…続く

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.65 )
日時: 2020/01/13 13:22
名前: 梶原明生 (ID: q6woXfHh)  

…「長田、淋しくなったり立嶋とケンカしたらいつでも話に来いよ。お前泊められるぐらいの部屋ならあるからさ。」「おう。その時は世話になるよ。」叶が慌てて言う。「長田、参考書ありがとう。おかげで大学合格したよ。」「うん、頑張って。」警笛ベルが鳴り響いてドアがプシューッと閉まっていく。列車はゆっくりと動き出した。「さようなら。」園美は大きく手を振った。次は佳乃と駒沢の番だ。「じゃあ叶。彼女大事にしな。」拳を肩に軽く当てる。「う、うん。佳乃も元気でな。」「園美ちゃん、楽しい青春物語ありがとう。お陰で快斗との距離が縮まった。」「そんな…でもお姉さん行っちゃうんだ。」「うん。快斗と話し合った結果一緒にいたいってわかったから。」駒沢が別れの挨拶をきめる。「じゃあ皆、見送りありがとう。」「さようなら。」またもや特急列車のドアが閉まり、発進していく。「行っちゃったね。終わったんだね。白線流しの物語…いや、私の皆の高校物語。」まきは泣かなかったのに珍しく涙を流しながら園美の肩を掴んだ。「そんなことないよ。終わりじゃない。これは新たな私達の物語の始まりなんだよ。」「まっちゃん…」まきは園美の肩を抱いた。慎二も珍しく涙したが、隠すように陽気さを保った。「グスン…ほらほらお二人さん、何湿気てんだよ。鞄の中のヘアピン並みに湿気てるぜ。何かうまい飯でも食いに行くか。なぁ、行こうぜ。」「そうだよ園美ちゃん。行こう。」「うん。」叶にも促されて、ようやく歩き出した四人。翌日もまたドラマみたいに叶が北海道に旅立つ設定が…ではなく、たまたま相島がそこの出身で、まだ健在のご両親に幸子、叶共々再婚の挨拶に行くのだ。松本空港まで武史のSUVで向かう園美。美和子も同席していた。「まさか俺が、山本さんの役…いや、白線流しの父親役になるとは夢のようだ。実はな園美、お父さん昔医者になりたかったんだ。でも難しくて代わりに薬剤師の資格にした。お前が白線流しの七倉園子になりたがったのも何かの縁ってやつかもな。」「へーっ、そうだったんだ。お父さんが…」感慨深くなる園美。「さぁ着いたわよ。見送ってきなさい。」厳しかった美和子も快く送り出した。「うん、行ってくる。」成長した我が子を見る視線で夫婦はしばし背中を見つめた。「叶さん…」「園美ちゃん。」再会したその瞬間から偶然にも有線放送でスピッツの名曲が…「さすがは裕子ちゃん。有線放送まで操るとは恐れ入った。」五島が呟いた。…続く

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