複雑・ファジー小説

白線お流れ〜迷想奮闘記〜
日時: 2019/08/18 00:04
名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)  

清純な田舎の女子高生の物語。優秀な開業医を父に持ち、何不自由なく一人っ子の箱入り娘として生まれた。長野県松本市内の優等校に通い、将来に迷っている三年生。…じゃなくて……………………同市内の底辺校に通い、ドラッグストア薬剤師兼レジ係りの父を持ち、精肉工場のパート勤めの母を持つ高校三年生、八倉園美のお話し。7人兄弟の三番目、次女として生まれて毎日醜い兄弟ゲンカを繰り返し、外面は一人っ子の清楚な女子高生を演じて回りを辟易させる。そんな彼女がある日、父が借りてきた「白線流し」というTVドラマDVDをたまたま視てしまってからが大変。回りを巻き込んで主人公、七倉園子になりきろうとドタバタ騒ぎを展開する。しかし意外な結末が待ち受けていた。ハートフル?青春コメディが幕を開ける。

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Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.46 )
日時: 2019/12/02 01:47
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

…「小河達…何考えてんだ。」雅春は急いで駆け降りていった。「どうしたんですか。困りますこんなことされても。今はお昼休みですが、試験会場に無断で入り込まれても。」「無断じゃないさ。ほら。」五島が身分証を見せる。「な、長野新聞。」さすがに閉口する雅春。「長田。…君の応援に駆けつけたんだ…」「違うだろ。八倉のためだろ。」追いかけてきた園美と夏を指した。「違う。僕は…」「もうどっちでもいいから帰ってくれ。心配しなくていいから。」試験会場に戻る雅春。「お兄ちゃんごめんね。折角来てくれて。」「いいんだ園美。それより試験、頑張れよ。」「うん。」明るくこたえながらも叶に目が行く園美。午後の試験は始まり、集中しようとするのだが…「おい、人の答案用紙見るなよ。」雅春の隣のやつがカンニングしようと覗いていた。試験官がたしなめる。「そこ、どうした。」するとカンニングしていたやつが「カンニングされました。」と言い出した。…続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.47 )
日時: 2019/12/04 08:58
名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)

…「な、君、嘘はいけないよ。彼がカンニングしてたんです。」「こ、これはもしかして…」この展開に久々七倉園子設定のスイッチが入った園美。「確かカンニング犯にさせられて試験会場を出て行くんだよね…」ぶりっこ構えしながら心の中で叫ぶのだが…「そうか。君、カンニングをなすりつけるのは、いけないじゃないか。」「えーっ、私がカンニングしてないって庇うシーンが…」「ん、君何かね。」思わず叫んだ口を手で塞ぐ園美。「いえ〜、何でもありませ〜ん。」笑顔でごまかしつつも、次の設定に賭けた。「長田、会場から逃げるんだ。」しかし静かに時は流れる。「逃げんのか〜いっ。」「ちょっとそのちゃん。」試験官に睨まれる前にまきが服を摘んで引っ張る。こうして何事もなく試験は無事終わったのだ。「さて、そのちゃん雅君とこ行こうか。あ、私達言ったらドラマ通りに…」「ううん、行こう。長田君はなっちゃんの大事な人でしょ。設定なんか気にしなくていいよ。」「そ、そのちゃん…」驚いた。あれほど「設定が〜。」と叫んでいた園美とは思えない成長ぶり。「大人になってきたね。ま、それはそれで寂しいものもあるけどね。」まきがしんみりする。やがて3人は雅春の自宅に着いた。「ダメみたい。雅君私にも会ってくれない。やっぱりお父さんのことショックなのかな。」夏が門扉の前で佇む。「なら、あれしかないよね、そ、の、ちゃんっ。」まきが園美の肩を揉む。「うんっ。」早速西山高校を目指した。小澤先生が待ち受けている。「何だか知らないけど感動した。あなた達がそこまで友達思いだなんて。」慎二が既に先回りして根回ししていたのだ。「やるじゃん磯山。」「イエ〜イ。」まきとハイタッチする慎二。「ボーナスね。」何と…彼の頬にキスするまき。「え…」「ほ、ほらほらさっさとやらないと。先生巻き込んでるんだよ。」「お、おう。」赤面する二人。チャラいと思って嫌ってたはずなのに。慎二の熱意にいつの間にか恋する相手になっていた。各部室から拝借してきた器材を使って「長田雅春ファイト」の派手な文字を入れた看板を作った。叶、佳乃も合流してライトアップまで揃うのだが…「あーっ。」「なんだよ八倉、びっくりするだろ。」「肝心なこと忘れてた。天体望遠鏡持ってないんだった〜。」飛んだ誤算。無論皆も持ち合わせていない。「後は私の出番だね。長田君とこ行ってくる。」佳乃が家に向かう。叶と夏も一緒だ。「頼むよ長田君。望遠鏡持っててね。…続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.48 )
日時: 2019/12/04 10:07
名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)

…あんただけが頼りなのよ。て、私もライター持ってなかった〜。」佳乃も手渡された打ち上げ花火を見て愕然とした。「ほら、ライター。」何と叶が持っていた。「何で、あんたタバコ始めたの…」「まさか。全日制通ってた時の失恋を焚書するために買ってたんだ。過去を消す為に炎を使うより、未来と希望に点火するために炎を使う方が何倍もましだよ。」「叶…」感動しながらライターを受け取った。「何だ、小河君か。」ようやくドアを開けた雅春。「あんたのためにさ…」「知ってるよ。」「へ…」確かに既にドラマを視聴していれば流れはだいたい読めるだろう。夏が飛び出す。「でも長谷部って人にじゃない。雅君自体にメッセージだよ。天体望遠鏡持ってる。」「そんなものないよ。」「やっぱり。」佳乃ががっかりする。「あ、いや待てよ。」文化祭の時を思い出した。確か園美が一眼レフカメラを預けたままになっているはず。すっかり忘れていた。「あいつ…粋なことしやがって。」「え…」呟きながら目を潤ませる雅春。「あ、いやこっちのこと。ドラマみたいだよ、一眼レフカメラならある。しかも望遠レンズ付。…とりあえず入れば。親はまだ帰ってこないんだ。」ドアを大きく開けて招き入れた。「ちょっとあれ見て。」「ゲーッ派手すぎ〜。」まきに言われて見たら…何と花火がどんどん打ち上がる。「あのな長田、ドラマじゃ一個しか上がらないんだよ〜。」「いいじゃないそのちゃん。この方が最高の現実だよ。」まきに言われて吹っ切れる。慎二とまきはスマホカメラで花火を収めた。同じく雅春も、園美のカメラで「長田雅春ファイト」の看板を収めた。「いい絵だな…」恍惚としながら花火に映える西山高校の姿をしばし見つめる雅春。「でも本当に使い切っていいのか花火。」「ああ、遊びに来る社員の子供が毎年置いてくんだ。処分しようとしてたから、丁度手間省けたよ。そうだっ。線香花火もあるから西山高校でやらないか。」元気を取り戻した雅春を見て、叶達はホッとした。やがて皆合流し、これまでにないふざけっぷりで屋上での花火大会を満喫した。「これぞ青春よね。」感慨深く見守る小澤。「いいね。ロマンチックだ。」日産Xトレイル内で双眼鏡から見ていた五島が呟く。「明日はいよいよ俺のご登場か。」夜空にも咲いた友情の輪は、明日の青空へと繋がっていた。…次回「堕天使の孤独」に続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.49 )
日時: 2019/12/07 20:57
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

「堕天使の孤独」…………………………初春を占う朝の天気。まだ雪は残っているが、それももうすぐ溶けるだろう。センター試験2日目。園美、雅春、まき、夏、そして慎二に叶も一緒に歩いていた。示し合わせたわけでもなかったが、花火大会の親睦のせいか、自ずと居合わせていた。「昨日はありがとう皆。おかげで気持ちは晴れた。」「何言ってんだよ水臭い。」軽く雅春の背中を叩く慎二。「それはそうと何でお前ついて来るんだ。試験受けないだろ。」「おいおい、随分ご挨拶たな〜。親友を送ってあげるこの俺の深い気持ちがわからないかな〜。ま、俺はどうせ旅館の跡取り息子だ。学歴なんかいらないんだよ。」「悪かった。そんな風に言うなよ。」皆に笑いが舞い降りた。叶が割り込む。「僕は参考までに。試験はまだ先だし。」雅春が何か思うところがあった。その日の夜、雅春は慎二とともに紙袋を持参して叶の家に来た。「よぉ、二人共、どうした。」「いや、試験受けると聞いてさ、これ。夏が…いや立嶋のお姉さんが試験受けた時の模範回答と時間割とか…入ってるから試験に役立つからと思ってもらってきたんだ。多分去年のだからあまり変わらないと思う。」「あ、ありがとう。それで家に…まぁ上がれよ。大したものはないけどさ、せっかく来たんだし。遠慮すんなよ。」「え、まぁ構わないけど…」初めて叶の部屋に入った。何故か3人和んでしまい、馬鹿話やオンラインゲームなどで大いに盛り上がった。翌日、園美の方は以前入院した病院の心療内科に来ていた。概ね回復のお墨付きをいただき、待ち合わせていた皆と合流した。しかし…「あんれまぁ、園美ちゃんじゃない。」「五子おばあちゃん。」70代半ばの患者と再会した。名前は田沼五子。かつて乗鞍岳の件で入院していた時に真向かいのベッドにいた人だった。「記憶なかった時にくれたみかんありがとうございました。」「いいや、私こそ話し相手になってくれて助かったよ。…あんれま、竜也さん。随分若返って…」慎二が訝しくなる。「は、俺。…おばあちゃんボケてんじゃないの。俺は磯山慎二。竜也じゃない。」「ちょっと、失礼でしょ磯山君。」まきが慎二の服を引っ張る。「いんやいんや、いいんだよお嬢ちゃん。ん、あんたは隣村の恵子ちゃんにそっくりだ。」「あ、あたしが…」人差し指で鼻を示して不思議がる。「そうだ、園美ちゃん。明日私ね、退院なのよ。お祝いに久々稲荷と巻き寿司作ったげる。こう見えてもね、食堂おふくろって…続く

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.50 )
日時: 2019/12/07 21:44
名前: 梶原明生 (ID: JnkKI7QF)  

…店をやっててね。死んだ亭主と切り盛りしてたのよ。その亭主も死んで、子供も独立して、私一人でやってたら倒れてね。内臓がやられてたのよ。でも安心して。全開したから大丈夫。」「ダメーっ」園美が突然叫んだ。「あれあれ、どうしちゃったの園美ちゃん。何でダメなの、何か予定あるの…」「そんなんじゃないんです。」そんなんであるはずがない。何故ならこのパターンはドラマの一番悲しい部分に匹敵するからだ。つまり…「し、死亡フラグが立ちますからやめてください。」「脂肪のフグねぇ。でもそんなの免許ないと出せないのよ。」大きく転ける皆。「いえですから死亡フラグと…」通じるはずもなかった。仕方なく翌日夜に晩飯を「食堂おふくろ」で奢ってもらうことに。「ほら、アルバムよ。ここにほら、中学時代の竜也さん。あら、こうして見るとあんたに似てなかったわね〜。こっちは恵子ちゃん。これも…似てなかったわね。」「こ、これは…」初めて設定を呪った瞬間だった。「これじゃ寿司屋のおじいちゃんみたいになる。もうやめて。」気が気でない園美。「この後はね。当時集団就職で皆バラバラになったのよ。あ、知らないかあんた達は。」雅春が理知的に答える「あ、いえ。社会科で何度か勉強しました。当時経済成長で労働力が足りず…」「教科書にはない現実を私は見てきたのよ。」雅春は閉口した。これは衝撃だった。そう言えば自分は何を知っていたのだろうかと。「私も当時若かった。岐阜県の高校の真似事してね。中学近くの川で白線流ししたのよ。その時書いた夢は女優になること。都会の工場に就職してね。よせばいいのに自分を美人と思い込んでて。名古屋の女衒に女優にしてやると騙されて売り飛ばされた。あの時高望みせず、竜也さんの告白受け入れていれば…それから5年した時、ここの亭主に救われて…着の身着のままで都会を出たの。だからこの食堂は思い出が詰まってるのよね。」辺りを見回しながら恍惚と思い出に耽る五子。しんみりする皆。「あの、約束してください。」「なによ急に。どうしたの。」「絶対に長生きすると…私、時々ここに来ますから。また…おいしい稲荷寿司食べさせてください。」園美は立ち上がってお願いした。「嬉しいこと言ってくれるね。私涙出るじゃない。」手拭いで涙を拭きはじめる。「わかった。皆も、お腹すいたらいつでも来てね。」「はい。」皆一様に答えていた。やがて帰路につく面々。「叶さん。」「何。…」「早いけどバレンタイン。」続く

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