複雑・ファジー小説

白線お流れ〜迷想奮闘記〜
日時: 2019/08/18 00:04
名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)  

清純な田舎の女子高生の物語。優秀な開業医を父に持ち、何不自由なく一人っ子の箱入り娘として生まれた。長野県松本市内の優等校に通い、将来に迷っている三年生。…じゃなくて……………………同市内の底辺校に通い、ドラッグストア薬剤師兼レジ係りの父を持ち、精肉工場のパート勤めの母を持つ高校三年生、八倉園美のお話し。7人兄弟の三番目、次女として生まれて毎日醜い兄弟ゲンカを繰り返し、外面は一人っ子の清楚な女子高生を演じて回りを辟易させる。そんな彼女がある日、父が借りてきた「白線流し」というTVドラマDVDをたまたま視てしまってからが大変。回りを巻き込んで主人公、七倉園子になりきろうとドタバタ騒ぎを展開する。しかし意外な結末が待ち受けていた。ハートフル?青春コメディが幕を開ける。

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Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.36 )
日時: 2019/11/12 21:05
名前: 梶原明生 (ID: wh1ndSCQ)  

…何と、ホテルの部屋からドアを開けて出迎えたのは彼氏の駒沢だった。「あ、あんた。あの公園事件ん時の…」「ああ、君達は…」「不味い。」奇遇たる再会に驚く皆。デリヘルなどやっていなかった。東京の彼氏と蜜月を桜花していただけだったのだ。しかしここで引き下がれない園美。「お姉さん私に着いてきてっ。」叫びながら佳乃の手を取る園美。「お〜い、君達何なんだよオイッ。」走り出した二人を追う駒沢と4人。どれだけ走ったろうか。ドラマに出てきたような夜の公園にたどり着いた。「ハァハァ、結構走るんだね。関心した。」佳乃が両手で膝を突いて呟く。「お姉さんこそ。さすが空手二段。」「ふふ、ハハハッ。」高笑いしながら欄干に腰掛ける。「何でついて来ちゃったかな。その気になれば振り解けたのに。」「ど、ドラマのセリフ…」自然とガッツポーズが出る園美。しかし意味合いはだいぶ違った。「実はね、ちょっと前にチェックインした時に、彼と喧嘩しててね。飛び出して頭冷やしてからホテルに戻ったの。そこにあなたが…戻りたくなかったのかな。私は家事手伝いみたいに親戚の小河電子に入社したでしょう。彼は元々同じ高校でね。でも彼、地元の大学じゃなく東京の大学選んだでしょ。それで最近ギクシャクしてて。じゃあいっそのこと私が彼を取って東京に…て出てきたけどダメだな東京は。地元愛が強すぎだもの。」しんみりする園美はいつしか設定そっちのけで聞き入っていた。「大丈夫です。もう少し話し合ったらどうです。喧嘩はなしで。」「うん。園美ちゃんと話したら、なんかスッキリした。」「お〜い、佳乃。」「八倉ーっ。」駒沢達が追いついた。「園美ちゃんもしかして白線流しの七倉園子になりきってるんじゃない。」「え、…………」絶句した。まさか誰一人バレなかったことが佳乃から言われるとは…「ど、ど、どうしてそれを。」「だって、私。北松本高校出身だよ。未だにロケ地だったと伝説になってるしね。」「えーーーっ。」景色が大きく迫る心境だった。「そのちゃん酷いよ。いきなり逃げるんだもん。」なっちゃんが息切らして言う。「どういうことか説明してくれ。」雅春も振り回されて半分ご機嫌斜め。「白線流しってドラマ知ってるかな皆。彼女そのドラマの主人公、七倉園子になりきろうとしてたのよ。許してあげて。」「はぁ…」唖然とする駒沢以外の4人。「ま、まさか今まで…私達が振り回されたのそのため…」「いや、だから、皆、落ち着いて。」…続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.37 )
日時: 2019/11/12 21:38
名前: 梶原明生 (ID: q6woXfHh)  

…宥めようとしたが時遅し。佳乃の親切心から出た言葉が、園美にとっては間抜けな暴露犯になってしまった。「とにかく、今日は私となっちゃん別の部屋取るから。」それまで親友だったまきとは思えない言葉が口から出る。「まっちゃん…なっちゃん…」「いい加減にして。あれだけ言ったでしょ、設定って何って。あんたのワガママと妄想にはもうウンザリよ。行こ、なっちゃん。」夏の手を取り歩きさるまき。「俺達も幻滅したぜ。行こうぜ長田。」一気に親友を失った瞬間だった。涙が溢れる園美。「ご、ごめんなさい。私、不味いこと言って。こんなことになるなんて。私昔から一言余計なんだよね。ごめんね。」佳乃を怒りたいが怒れない無言の園美。「仕方ないですよ。どうすることもできないし…」「ああ、私から皆に…園美ちゃん。」聞こえてない風でホテルに向かう園美。翌日はまき、夏、雅春、慎二は朝早い特急で園美だけ残し帰っていった。責任を感じた佳乃は駒沢に断って彼女と長野に帰ることに。数日後、園美は、父武史がかつて山登りを趣味にしていた道具をかき集めて、僅か一人。冬山たる「乗鞍岳」を目指していた。吹雪が激しくなる中、トボトボ歩く後ろ姿。…ニュースキャスターが何かを伝える。「西山高校三年生、八倉園子さんが今日未明。家族に乗鞍岳へ行く。探さないで下さいと家族にメールを送ったまま行方不明となっています。現在、警察と消防で行方を捜しています。」愕然とするお婆ちゃんの香。「園美ーっ。」…次回「君が手遅れになる前に」に続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.38 )
日時: 2019/11/15 19:24
名前: 梶原明生 (ID: Xc48IOdp)  

「君が手遅れになる前に」…………………………………………1月5日 12:34時。春夏なら素敵なトレッキングコースになる乗鞍岳。しかし冬ともなればそこは厳しい自然を叩きつけられる険しい登山道。真っ白なホワイトアウトの中、園美は方向を失い、寒い吹雪に攻め立てられて身動きできなくなった。「ごめんね皆。ごめんね皆。私なんていなくなった方がいいよね。」さっきからそればかり繰り返している。低体温症になりかけて意識朦朧とする園美。「何、…」UFOか、それとも天使か。いや、あれはオスプレイだ。「何で…ヘリコプターが…救助…」しかしそれは墜落した。「え、嘘。これは幻覚…」目の前で起こったことが現実とは思えなかった。「園美っ、園美。」「お兄ちゃん…私死んだの…」無論生きている。そう思えたのは五島がいたからだ。「妹さん大丈夫か。」「はい。低体温症にかかってますが、処置すれば命に別状はありません。」「そうか。なら直ぐに周辺を確保して警戒に当たれ。お客さんがオスプレイの荷物を欲しがってる。お客さんに渡わけにはいかない。」「了解です。」益々ワケがわからなかった。よく見ると白迷彩服にHK416小銃を携え、兄の武豊は89式小銃を携えている。抱きかかえられてオスプレイ近くに移動すると、五島以外の数名の隊員が消化に当たっていた。「お嬢さん、運が付いてるな。俺達と偶然遭遇するとは。…」言った矢先に銃弾がキューンと空気をつんざいた。AK−47の銃声が吹雪すら破る。「円陣防御、ナイトビジョンとレーザー照準器使え。」五島が的確に無線で指示。まるで精密機械のように何一つ外すこともなく動き、銃弾を当てる。「こ、これが特殊作戦群か…」武豊は終始圧倒されていた。「八倉一曹。あんた空挺の化学専門だろ。俺達ができるだけ防御する。米軍機内の薬品を無効化してくれ。この分なら回収は無理だ危険すぎる。やってくれ。」「り、了解しました。」89式小銃を連発しながら破壊された墜落機の中に入る八倉。キーワードを入力すると冷蔵保存されていた紫色の液体の入った試験管らしき硝子管が出てきた。「すまないな。可愛い兵器達。土に眠れ。」凄まじい銃撃戦の中、武豊は処理を完結した。「五島隊長、処理完了。」「ご苦労様。だが応援が来るまで持ちこたえるぞ。夜明けまで後5時間。散発的にしか攻撃してこないが、夜明けには一気にお客さんが攻め込んでくる。」「了解。」武豊もまた円陣防御に入って警戒した。…続く。

Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.39 )
日時: 2019/11/17 00:15
名前: 梶原明生 (ID: NOqVHr1C)  

…その頃、自分の部屋の布団で両腕枕に寝て天井を見ている慎二の姿があった。「あーっウゼーッ。寝られっかよ。」ダウンジャケット片手にスマホを持って家を出た。「あーっ長田。ニュース見たろ。なら出て来て立嶋誘えよ。集まろうぜ。」「わかった。」歩きながら電話していた。その先に飯塚の家が…「なぁ、起きてたら俺に電話くれ飯塚。」メールしてから暫く夜の静寂な電信柱で、震えながら電話を待った。ティロティンティンティロ…と着信音が。「お、飯塚起きてたか。わかってるよな、何でメールしたか。」「わかってるよ。園美のことでしょう。」「 なら話が早い。今から集まらないか。俺が責任持って送り迎えするからさ。」「何で。集まったからどうなるの。」「お前八倉の親友だろ。そんな言い方あるか。」「好きなクセに私達と帰った磯山君の言葉とも思えないけど。」「そりゃ…そうだけど。でも、こんな形で俺達卒業していいのかってふと思ったんだ。飯塚だって結局起きてたじゃねーか。やっぱりあいつのこと気になってるからだろ。中学からの親友が生死をさまよってんだぞ。このままでいいのか。」「わかったから。ちょっと待って。」一軒家の勝手口から出て来たまき。二人はある場所に、雅春、夏と共に向かった。園美の家である。「ようこそいらっしゃい。」出迎えたのはお婆ちゃんの香。「上がって。今警察に息子と嫁が…いや父親と母親が泊まり込みで現地の対策本部に行ってるから。ごめんなさいねみんな。不甲斐ない孫のせいで。」「いえ、とんでもないです。」夏が速答する。まきは無視状態。「とにかくさ、吉報をここで待ってやろうぜ。」慎二はまきと雅春に向けて言った。「今更言い訳じみてて、こんなこと話すのは心苦しいけど。あの子もまた私の可愛い孫なの。だから聞いてほしいのよ。あの子の身に起こったことを。…」香は仏壇の遺影を見ながら語りはじめた。「もう12年も昔になるわね。まだあの子のお爺ちゃんが生きてた頃。丁度定年退職で刑務官を辞める直前に、ある受刑者が脱走したの。それはもう血眼になって捜したわ。そして一人でお爺ちゃんはその受刑者を捕まえて車に乗せて護送したんだけど。カッターナイフを受刑者が隠し持ってて、手錠した状態で斬りつけてきたのね。それでも必死に運転して、とうとう刑務所に送り返した。しかし話はこれで終わらないの。その受刑者は警察官僚の息子だったのよ。事件は有耶無耶にされて、いつしか出所。…続く。


Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.40 )
日時: 2019/11/21 01:30
名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)  

…刑期は異様に短く、これにはおじいちゃんも憤慨して反対したわ。でもお上のお達しには逆らえなくて。その受刑者が出るのと同じくして定年退職を迎えたの。そうしたら…まだその頃は東京にいた園美と両親、つまり息子夫婦ね。仲睦まじく暮らしていたら、園美が誘拐されたの。つまり、おじいちゃんを恨んでた腹いせにね。どこでどうその情報を得たのか、犯人は息子夫婦のことを詳しく調べあげてたわ。それから一年。行方不明になってた園美は警察が見つけ出してくれた。でも…」そこで香は言葉を詰まらせた。「もういいですよ。わかりましたから。」夏が悲しい表情で香を気遣った。「いいえ、最後まで言わせて。あの子、心を閉ざして。以前のあの子じゃなかったの。無理もないわね、どんな酷い目にあったことか。…私が何度か見舞いに行った時、唯一心を開いたのはお姫様の絵本を見せた時。以来、園美は物語の主人公になりきることで、ようやく心を取り戻したのよ。やがて東京にいられなくなった息子夫婦は私達と同居し始めた。」その話でようやくまきが口を開いた。「だ…だから小学校時代一度も見かけなかったんだ。友達になったのも中学からだし。」「お、ようやく乗ってきたな飯塚。」「わ、私は別に…」慎二の言葉にソッポを向く。「だけど甘やかしすぎた。孫の責任はこの私の責任。どうか、園美を許してやってください。この通り。」いきなり土下座し始める香。「や、やめて下さい。」夏が手を取るも頭を上げない。「わかった…わかったから。」まきがいきなり叫ぶ。「え…」「おばあちゃん、謝るのは私です。何も知らないで、親友なのに冷たくして…」泣き出すまきを優しく抱きしめる香だった。「こんばんは。夜分すみません。」そこへ叶と佳乃が訪れた。「何で二人…」「俺がメールしてたんだ。」慎二がほくそ笑む。やがて事情を知った6人は、徹夜でネット配信の動画「白線流し」を視聴した。「いいドラマだよな。あいつが夢中になるのも無理ないか。」慎二がしんみりするのを見て、肩に手を掛ける叶。「ねぇ、最初と乗鞍岳のとこサラッと見たけど、私達も御百度参りしない。」佳乃が提案してきた。「賛成。皆で行こう。」まきも俄然やる気を出した。かくしてちかくの神社で静かに御百度参りが始まった。「ああ、もう夜明けだね。」夏が白む東を見て感慨深く呟く。「帰ろうか。吉報あるかもしれないし。」雅春が珍しく口を開く。「おばあちゃん、何かわかった。」まきが叫ぶ。…続く。

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