複雑・ファジー小説

エターナルウィルダネス
日時: 2020/02/13 17:55
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 乾いた土、枯れた草木、その上に零れ落ちた血の跡・・・・・・復讐の荒野は果てしなく、そして永遠に続いていく・・・・・・

 ディセンバー歴1863年のオリウェール大陸。
西部諸州グリストルと東部諸州ハイペシアとの内戦が勃発。
かつて全盛期だった大陸は平穏の面影を失い、暗黒時代への一途を辿っていた。

 王政派の勢力に従軍し、少尉として小隊を率いていたクリス・ヴァレンタイン。
戦争終結の後、退役軍人となり、両親が残した農場で妹であるリーナと平穏に暮らしていた。
しかし、突如として現れた無法者の集団による略奪に遭い、家は焼かれ、リーナを失ってしまう。
運よく生き残ったクリスは妹を殺した復讐を決意し、再び銃を手にするのだった。

 彼女は頼れる仲間達と共に"ルフェーブル・ファミリー"の最高指導者"カトリーヌ"を追う。


・・・・・・・・・・・・


 初めまして!ある理由でカキコへとやって来ました。"死告少女"と申します(^_^)
本作品は"異世界"を舞台としたギャングの復讐劇及び、その生き様が物語の内容となっております。
私自身、ノベルに関しては素人ですので、温かな目でご覧になって頂けたら幸いです。


・・・・・・・・・・・・

イラストは道化ウサギ様から描いて頂きました!心から感謝いたします!

・・・・・・・・・・・・


・・・・・・お客様・・・・・・

桜木霊歌様

アスカ様

ピノ様

黒猫イズモ様

コッコ様

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Re: エターナルウィルダネス ( No.29 )
日時: 2020/07/02 20:19
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「・・・・・・ぎゅびゅっ!」

 また1人、ファミリーの殺し屋が狙撃の餌食となる。
続いて2人目、3人目と急所を的確に撃ち抜かれていった。

「・・・・・・あ?」

 撃ち返されてもいないのに仲間が次々と死んでいく現象にディヴイットは露骨に顔をしかめた。
彼は向きを変えて偶然、峠の上に光を反射した輝きを目撃する。
その正体を瞬時に理解した彼は撃つのをやめ、とっさに体を逸らした。

「・・・・・・っぶね!」

 ディヴイットが立っていた位置に音速の弾丸が着弾した。
地面が深く抉られ、砂や小石の塊が跳ね上がる。

「なんだぁ?スナイパーを配置させていやがったのか?こいつら、ただの旅行者じゃねえな。民間人にしちゃ、やけに戦い慣れてやがるしよ」

 ディヴイットは思い込んでいた勘違いに気づき、自身の失態に苦笑する。 
狙われているにも関らず、その表情は妙な余裕を語っていた。

「まっ、こっちにもいくつも切り札があるんだがな」

 舌舐めずりし、ディヴイットは何かしらの合図を部下に送って一部の部隊を下がらせた。
後退した部隊は数人がかりで何かを運び込んで元の配置につく。
持ち出された物は得体が知れず、覆われた布が剥がされ、太い形状をした機械が晒される。
ファミリーの1人がスライドを引き、筒先の方向を合わせるまで、それが何なのか分からなかった。

「まずいっ・・・・・・!」

 敵陣の企みを知ってしまったデズモンドの青ざめた顔がより深刻に歪む。
顔半分を引っ込めた途端、鎮まる事を知らなかった弾丸の嵐が何倍もの勢いがある掃射へと変わる。

「ひゃああああ!」

 爆発の連鎖にも似た騒音はメルトの悲鳴など無にしてまう。

「リチャード、伏せるんだ!」

「なっ・・・・・・がっ!」

 デズモンドの警告にも空しく、1発目がリチャードの頭上に当たり、ハットが飛ぶ。
2発目は不注意にもはみ出ていた脇腹を削った。
喘ぎ声と同時にビクッと痙攣を起こし、全身が横たわる。

「リチャードッ!!」

 リリアは彼を助けようと冷静な判断力を捨て、無防備の状態で影から飛び出していた。
当然、弾幕の一部は彼女にも被弾し、健全な片手と片足を破壊した。

「ああ・・・・・・ぐぅ・・・・・・!」

 血を流し、激痛に蹲るリリア。
集中砲火を浴びせられる前にローズが姿勢を低く、彼女を元の隠れ蓑へ引きずり戻す。
木箱に背をもたれさせ、怪我の安否を確認した。

「大丈夫・・・・・・弾はどれも抜けてるし、致命的な箇所は撃たれてない。らしくないわね。頭脳明晰のあんたが作戦もなしに闇雲に突っ込んでいくなんて」

「私とした事が・・・・・・ごめんなさ・・・・・・ぐっ!・・・・・・あなたに説教されるなんてね・・・・・・」

 リリアはぐったりとして皮肉を零し、笑みを浮かべるも、息を切れが激しくなっていく。

「喋っちゃだめ、体力を消耗するわ。医療は不得意分野だけど、傷口を消毒してみる。ポーチに密造酒があってラッキーだったわね」


「機関銃・・・・・・!」

 ユーリが実に厄介な展開にユーリの声音が尖る。
撃つはずだった誰でもいい標的への狙撃を中断し、緊急に狙いを機銃手に切り替えた。
スコープはいつも通り安定し、不自由もなく標的を捉えられた・・・・・・しかし

「ぎゃっ・・・・・・!?」

 突如として、口元をぎゅっと強く締めるユーリ。
痛感を自覚しすぐさま、ほふくのまま後進する。
頬に触れた左の手を確かめると血が薄く、付着していた。

「ユーリお姉ちゃん!どうし・・・・・・きゃあっ!?」

 異変に気づき、立ち上がろうとしたミシェルの足を反射的に掴み、強引なやり方で転ばせる。
彼女の顔があった位置に光線が通過し、後方の木のどこかにめり込んだ。
狙撃手は少女を抱き抱え、光線の当たらない範囲外まで遠ざかる。
ユーリには分析せずとも、自身に危害を加えた犯人の詳細を察した。

 集落のに片隅にある櫓にファミリーの殺し屋がいた。
ストックを固定し、抱えていたのはスコープが取り付けられたライフル銃だ。
奴はさっきまでのユーリの行動の大半を真似、銃口を峠に合わせている。

「まずいな・・・・・・あそこの櫓の狙撃手、ユーリを狙ってる。こっちにも狙撃手がいる事が気づかれたんだ」

「どうしましょう!?これじゃ、こちらがますます不利に追い込まれるばかりです!」

 困惑するサクラだが、デズモンドは冷静に策を練る。

「距離も遠いし、機関銃のせいでここの位置からじゃ狙えない。サクラ、君はメルトと共に回り込んで狙撃手を叩いてくれないか?」

「そ、そんなっ・・・・・・!私とメルトさんだけでは、荷が重すぎます!」

 冷静な意見にサクラは熱烈にプレッシャーを訴えるが、デズモンドは非情だった。

「協力したいけど、手が離せないんだ。僕はここに留まって、負傷したリリアの手当てに専念しなくちゃいけない。ローズだけでは、まともな処置はできない。戦闘に関してなら、君達の方が遥かに最適だろう」

「・・・・・・分かりました。誰かがやらなきゃ、いけませんものね」

 デズモンドの説得とやむを得ない状況にサクラは覚悟を決める。

「大丈夫!危なくなったら、私がサクラを守ってあげるんだから!」

 メルトも張り切って、笑顔で平気で落ち着き払っているように振る舞う。

「ありがとう。君達の戦力があれば百人力だ。でも、1つだけ約束してくれないか?決して、無理はしない事・・・・・・いいね?」

Re: エターナルウィルダネス ( No.30 )
日時: 2020/06/28 18:43
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 アルバートは巧みな動作でリボルバーを連射する。
ステラは人並外れた俊敏な動きで全弾をかわし、その全てを意味のない場所へ命中させた。

「ほう、大した身のこなしだな」

 見事な回避の術に感心したステラは最後の1発が込められたシリンダーを雷管を叩く位置に合わせる。 
次は外さんとばかりによく狙いをつけ、急所を撃とうとした。
しかし、銃口が狙った先が相手の刀身と重なる。それに気づいた時に引き金が落ちた。

 太い銃声と音速の銃弾。
鉛の弾頭はシルヴィアの刃に当たり、受けた衝撃で斜めに傾く。
弾は跳弾し、アルバートから見て左斜めに逸れた。

 弾切れを好機にステラはシルヴィアを突きつけ、接近戦に持ち込んだ。
アルバートも武器を軍用のナイフに変え、同様の戦法で攻めかかる。

 突撃してくるステラの意表を突こうと、途端に低い姿勢を取った。
両手で全身を支え、躍るように下半身を回転させて足払いを仕掛ける
ステラは跳ね飛び、宙返りの着地と同時にアルバートの頭部を踏みつけようとした。
しかし、反射神経が長けているのは彼も同じ。顔を微かにずらし、紙一重に直撃を免れる。

「惜しかったなぁ。傭兵」

 アルバートは背後に回って、起き上がるとニタニタと楽しそうに相手を挑発した。
ステラは黙し、純粋な殺戮を望んだ鋭い形相で容赦なく斬りかかる。

 シルヴィアの斬撃の連続をかわし、刀身を振り回す際に生まれる一瞬の隙を逃さず、アルバートは突き出された銀剣を握る手首を掴んで強引に押さえ込む。
封じ手で攻撃手段を奪い、ナイフを真横から無防備な首筋に捻じり込もうとした。
しかし、ステラもその手は喰わないと、アルバートのナイフを間一髪食い止める。
互いに防御に徹する状態では埒が明かないため、2人は刀身が届かない範囲まで引き下がった。

 刃は甲高い音と火花を散らしながら幾度も混じり合い、互いに決着を譲らなかった。
激しい動きを繰り返しても両者とも、息は上がっていない。
戦意は衰えるどころか、その勢いを増していく。


 デズモンドとローズにリリアの応急処置を役割を任せ、メルトとサクラは集落の横側に回り込んだ。
壁に沿って慎重に動き、なるべく物陰から出ないよう注意を払う。
積み上げられた樽の隙間から覗き、櫓の狙撃手を凝視した。
ライフルを持った殺し屋はユーリの妨害に こちらの存在には気づいていない。

「私が先に行く・・・・・・サクラは援護に回ってくれない?」

 メルト鼻先に人差し指を当てながら、曖昧な作戦を立てる。 
櫓の方を向くと、しゃがんで狙撃手に接近した。 

 建物の曲がり角に差しかかった時、望まぬ事態に遭遇する。
ファミリーの殺し屋と蜂合わせてしまったのだ。
互いの脅威が認識された時、本能が蹂躙を望む。

「き、貴様っ・・・・・・がっ!」

 メルトは一足早く先手を取り、中柄の男に掴みかかった。
男は振り払おうと、肘を落とすが少女が着た頑丈な鎧にはびくともしない。
足が浮いた事を意識した頃、重い体重を背負われ、投げを打たれる。

 背中を強打し、悶えるファミリーの殺し屋。
容赦ない斧が落とされ、かち割られた頭蓋骨の半分が血を撒いてが転がる。
命乞いという虫のいい判断が脳裏を過った閃いた直後だった。


「伏せて下さい!!」


 サクラが放った魔弾は屈もうとしたメルトの背中の上を擦れ擦れに通過し、正面にいたもう1人の敵の心臓を貫いた。
殺し屋はまともに受けた衝撃で飛ばされ、同時に引き金を引く。
狙いがずれた1発の銃弾はいい加減な方向へ飛んで、どこかに命中する。

「ありがとっ♪」

 メルトは可愛く礼を言って、窮地を救ったサクラは頷く。
しかし、達成感の笑みは長くは続かなかった。  

 狙撃手は仲間が死に際に放った銃声により2人の存在に気づいてしまったのだ。
焦りを募らせ、標的を峠から下周辺に変え、狙いを定める。
スコープの十字線が捉えたのはメルトだ。

「危ないっ!」

 とっさに叫んで、駆けつけるサクラ。
メルトを抱き抱え庇おうとしたタイミングで銃声が轟く。
2人は偶然にも弾が当たらない場所に転げ回り、その拍子にぶつかった木板が倒れ、下敷きになる。

「い・・・・・・いてて・・・・・・」

「う・・・・・・うう・・・・・・」

 メルトは自身の体を包む腕の中で、サクラの唸りに不自然な印象を受けた。 
重圧に起き上がれず、手と足を乱暴に使って木板を強引に退かす。

「サクラ・・・・・・だいじょう・・・・・・え・・・・・・?」

 メルトは木の板の一部にべっとりと付着した大量の血痕を目撃した。嫌な予感は直後に的中する。
サクラの右脚にクルミくらいの大きな穴が開いており、そこから吹き出すように黒い体液が溢れ出ていたのだ。
原因は嫌でも、理解を強制させた。

「サクラッ!!」

 メルトは顔面蒼白になり叫んだ。
邪魔な木板を完全に取り除き、怪我の容態を確かめる。

「平気です・・・・・・これくらいの傷・・・・・・あぐっ!」

「平気なわけないよ!どうしよう・・・・・・わたしのせいだ・・・・・・!」

 メルトは油断で引き起こした過ちに責任を感じ、自我を失いかけるが

「メルトさん・・・・・・あっ、くっ・・・・・・今は絶望を控えて下・・・・・・さい・・・・・・早く狙撃手を何とかしないと・・・・・・皆が・・・・・・」

「何言ってるの!?狙撃手のいる位置は遠いし、奴は私達を殺す気満々で待ち伏せてるんだよ!?どうやって、この状況を突破する気!?」

「私にいい策があります・・・・・・落ち着いて、今度は私の・・・・・・指示に従って・・・・・・」

Re: エターナルウィルダネス ( No.31 )
日時: 2020/07/13 21:05
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「早く姿を出せってんだ。あの世行きのチケットをくれてやるからよ」

 2人が隠れている物陰に狙いを固定し、狙撃手は事を急かす。
撃てる瞬間を今か今かと待ちわびていた。

 すると、物陰から何かがひょっこりとはみ出した。
先端が細く尖った汚れのない純白の生地。
サクラが常に被っている魔導士の帽子だ。

 待ちに待った獲物のお出ましに狙撃手の口はニヤリと引きつり、舌なめずりをする。
狩猟衝動の興奮を押さえ、スコープの安定に集中するために肺に空気を溜め、息を止める。
瞬時に発砲できるよう予め、引き金を半分、指で圧迫しておく。

 サクラの無防備の頭部は枠の中から外に出る。 
時間も経たないうちに完全に撃ってくれと言わんばかりの的になった。

「死ね」

 命の終わりを促す一言。
永眠の賜りを目的とした銃声が響く。
ライフル弾は的を外す事なく、頭部を見事に撃ち抜いた。
銃創で抉られた帽子は生地の繊維の欠片を飛び散らせ、胴体が横たわる。  

 狙撃手は慢心しサクラの死を確信した・・・・・・が、直後にそれは誤認へと変わる。
何故なら、ライフルが仕留めた標的は生物ではないと悟ったからだ。
弾を受けた者の正体は帽子を被せられただけの木板だった。

「なっ・・・・・・!?」

 狙撃手が驚いたのも束の間、メルトがダッと土を蹴り、勢いよく飛び出した。
敏速な獣にも引けを取らない俊敏な動きでこちらへと間合いを詰めて来る。
まんまと嵌められた狙撃手は呆然という隙を突かれ、コッキングが大幅に遅れてしまう。
急いで次弾を装填し、スコープに片目を覗かせて発砲するも、沈着に欠ける弾丸は掠りもしなかった。  

「ドーーーン!!」

 メルトは叫びと同時に振りかぶった斧を叩きつけた。  
幅広い刀身は太い柱を裂き、粉々に粉砕する。
台を支える脚を破壊された死神の塔は斜め傾き、形を失いながら崩れ落ちた。
狙撃手は投げ出され、地面に全身を強く打ちつける。

 振り落とされた痛みに悶えながら細めを開いた途端、その表情は真っ青に凍りつく。
止めを刺そうと、既に斧を掲げたメルトが逆さに映っていたからだ。

「ま、待ってくっ・・・・・・!」

 狙撃手の遺言は実に情けないものだった。斧は問答無用で額をかち割った。
視界一面が血液の深紅で染まり、やがて、意識を損失する。
メルトは勝ち誇った顔で死体から、斧を抜く。 
すぐに表情を深刻な形に一変させ、急いでサクラの元へ戻った。


「塔が崩れた・・・・・・?」

 櫓の崩壊した轟音は街から距離が離れた峠にまで響き渡っていた。
好機を確信したユーリは頬の痛みを堪え、狙撃銃に弾を込めボルトで薬室を閉鎖する。
アドニスを見渡せる位置へと移動し、援護続行のため再び配置に着く。

 ユーリは狙撃準備を整えるもすぐには撃たず、まずは味方の陣の状態を窺う。
クリス達は弾幕の雨に身動きが取れず、満足に抗えないまま身を隠している。
ローズとデズモンドも負傷したリリアの医療処置に当たっていた。
あと1つの被害が加われば、壊滅してもおかしくはない重苦しい有様だ。

「私がもっと、しっかりしていれば・・・・・・」

 ユーリは自身の失態に責任を感じるも、沈着までは欠かさなかった。
戦況を有利に導こうと機関銃を撃とうとするが

「ユーリお姉ちゃん!」

 トリガーに指をかけようとした矢先、不意に横にいたミシェルが叫ぶ。
幼子の妨げに苛立ったユーリは舌打ちの衝動を抑え、スコープを覗いていた鋭い視線だけをチラリと隣にやった。
その意外な姿を黙視した時、ぽかんとして怪訝そうな顔をする。

 ミシェルはユーリに並んで、ほふく姿勢を取り、双眼鏡を覗いていた。
観測手のつもりなのだろうか?その余計な行為が穏やかな人格を乱し、焦りを生んだ。

「ミシェル!危険だから、後ろに控えていて下さい!」

 生真面目な注意を無視し、ミシェルは言った。

「機関銃の左奥に山積みになった樽があるよ!あれを撃てば、爆発で敵をまとめてやっつけられるんじゃない!?」

「・・・・・・えっ?」

 スコープの照準を機関銃から左にずらす。
確かに、指摘された場所に何層にも山積みになった酒樽が盛り上がっている。
恐らく、ファミリーが略奪したアドニス産のテキーラだろう。

 ユーリは一筋の希望を見い出した。しかし、その裏腹、内心は不安も湧き上がる。
あれが爆薬というのはあくまでも頼りない推測・・・・・・期待通りになる保証はない。
だが、ユーリは確証がなくとも、賭ける事にした。
銃口を機関銃を操る殺し屋ではなく、どれでもいい積まれた樽の1つへ狙いを変える。

「神よ・・・・・・どうか、救済の温もりを・・・・・・」

 祈りを込め、狙いに当てる事だけに集中する。
意識を傾け心が無に帰した機に乗じ、1発の弾丸を放った。

 火薬を破裂させた反動で細身の体は全身が一瞬の痙攣のように震える。
銃口から飛び出した光線は1秒もしなうちに街へと到達した。
そのまま樽に捻じり込み、空けられた穴の内側から詰められていた中身が漏れ出す。
零れた茶色の液体はドクドクと地面を濡らし、水溜りの表面が燃え上がった。

「・・・・・・ああ?」

 その近くに偶然いたディヴイットが唯一、アルコールの臭いを察した。
足元に広がる炎を認識した刹那、眩い光に飲み込まれる。

Re: エターナルウィルダネス ( No.32 )
日時: 2020/07/28 06:50
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 火を灯されたテキーラは瞬く間に誘発し、大爆発を引き起こした。
鼓膜が破れるほどの轟音と共にキノコ雲が空高くへと突き上がる。
その威力は凄まじく、衝撃波がリリア達の方までも押し寄せ、強引に体をなびかせる。

 爆風に飲まれた一帯は全焼し、火だるまとなったファミリーが踊り狂う地獄絵図と化していた。
焦げた肉の塊が力尽きては次々と朽ち果てていく。
散々、暴威を振るっていた機関銃も跡形もなく、消し飛んでいた。
形ある物全てが焼き払われる光景は焼夷弾を撃ち込まれた戦場のようだ。

「ぐっ・・・・・・クソがぁっ・・・・・・」

 建物の原形を留めていない残骸から肩を押さえ、フラフラとディヴイットが現れる。
得意の俊敏性を活かして避難を遂げていたのか、落命を免れていたのだ。
だが、あの大規模な爆発で無傷で済むはずもなく、品があった衣服は古着のように破け、露出した肌に重度の火傷を負っていた。
その良心の欠片もない冷たい目には怨讐だけが宿っている。

 クリスとリチャードがいた前線は煙が蔓延していた。
熱く濁った気体を肺に吸い込んでしまい、咳を嘔吐に近い症状で吐き散らしながら地べたを這う。
ユーリとミシェル以外のギャングのメンバー達は何が起こったのか分からず、惨劇の内容を把握するのに数十秒の時間を要した。

「何が起こったんだ・・・・・・?」

 甲高い耳鳴りと頭痛が脳内で鳴り響く。
爆発の範囲外にいたステラとアルバートも振動に足が崩れ、腹這いにさせられていた。
予期せぬ事態を逆手に取ろうとステラは膝を起こし、土に刺さったシルヴィアに手を伸ばそうとした。

 しかし、乾いた銃声がして右脚の両面から血が噴き出した。
"がっ!"と短く硬直し、痛感に歪んだ顔だけを振り返らせると、小型の自動拳銃が最初に視界に納まった。
弾切れの隙を想定し、アルバートは愛用のリボルバーだけではなく、切り札として予備の拳銃を隠し持っていたのだ。

「残念だったな?頭の回転が速いのは傭兵だけの特権じゃないんだ」

 アルバートは見下した口調で勝者を気取り、銃口の煙を吹いた。
次は確実に命を奪うよう眉間に狙いを定める。

「これもウォールのためだ。悪く思うな。もし、お前が味方なら良き親友になれたかも知れないな」

 ステラは銃殺刑を覚悟し、思惑通りに2発目の銃声が響いた。
しかし、どういうわけか、身を持って知るはずの痛みを感じない。
落命とはこんなにも呆気ないものなのか?死んだ自覚が曖昧な感覚に陥りながら、ゆっくりと顔を上げた。

「うう・・・・・・ぐう・・・・・・」

 苦しそうに唸るアルバートの手が銃を落とした。
震えた平側を胸元に触れさせ、眼前で眺める。
生温く、べっとりとした黒い体液が付着していた。

 撃たれた事はすぐに知った・・・・・・が、犯人に心当たりなどなかった。
直後に発せられる声が耳に届くまでは。

「ぜいぜい・・・・・・お返しだ・・・・・・ルシェフェル野郎・・・・・・」

 アルバートの背後でヴォルカニックピストルを構えたアシュレイが暴言を吐き捨てる。
息を切らし、歯をギリッと噛みしめ、限りない殺意を繕う。

「ごふぁっ・・・・・・!」

 アルバートは吐血し、膝を落とした。
肉を抉られた痛みと喉を体液で埋め尽くされる息苦しさを同時に味わう。 
最早、敵を殺められる士気は完全に損失する。

「アシュレイさん・・・・・・!」

 ステラはアシュレイの無事に嬉しさに浸りたかったが、先頭を最中にして情の優先は禁忌。
急ぎシルヴィアを拾い、アルバートに止めを刺そうとするが

「・・・・・・ちっ!」

 アルバートは無念の舌打ちを鳴らし、僅かな気力を振り絞って右腕を掲げる。
手には片手で包めるくらいの大きさをした得体の知れないボールを握っていた。
それが地面に叩きつけた途端、球体は破裂し、白煙が充満した。

「煙幕か!?」

 ステラはアルバートいた位置に斬りかかった・・・・・・が、手応えはない。
逃走手段を悟った時には間に合わず、煙が気体に溶け込んだ頃には奴の姿はなかった。
その場には2人の負傷したギャングだけが取り残される。

「逃げられたか・・・・・・ちくしょう・・・・・・」

 アシュレイは語尾の暴言を弱々しく吐き捨て、ヴォルカニックピストルを落とす。
ステラは武器を投げ捨て、彼の崩れかけた全身を支える。

「アシュレイさん・・・・・・!しっかりして下さい!」

「やめろよ。男が男を心配すんじゃねえよ・・・・・・安心しろ。俺は致命傷すら負っちゃいねえ」

「何言ってるんですか!?あなたは胸部をまともに撃たれたんですよ!?」

 ステラは心配をアシュレイは大袈裟だと言わんばかりに苦笑し、撃たれた箇所の服をずらす。
肌に受けた銃弾は体内にめり込んでいるどころか、表面の皮膚を傷つけただけだ。

「俺は服を伊達なお洒落にしちゃいねえ・・・・・・覚えとけ。頭が使える奴ってのはよ、武器よりも先に鎧を身に着けるもんだ・・・・・・」


「よくも・・・・・・この俺をコケにしやがってっ・・・・・・!」

 ディヴイットは自軍の大損害を認められず、尚も攻撃を続けようとする。
しかし、体の負傷が災いし、体の自由が利かない。
自動小銃を構えようとしても片手では重く、銃口を敵に向ける事さえも至難した。

「ディヴイット連隊長!」

 そこへ生き残っていた部下が彼の腕を掴んで、撤退を促す。

「放せ!ゴミクズッ!!」

 ディヴイットが妨げようとする手を乱暴に払い除け、治まらない逆上をぶつけようとするが、部下も後には引かなかった。

「我々に勝機はありません!あまりにも兵を失い過ぎました!アルバート連隊長も既に退却をっ・・・・・・!」

「何だとっ・・・・・・アルバートの奴、逃げやがったのか・・・・・・!?」

 悲報に接しディヴイットはようやく、不利な状況に置かれている自身の立場を自覚した。
悔しそうに声を張り上げると自動小銃を扱う意欲を捨てる。

「覚えてろよ、蛆虫の集まり共がっ・・・・・・!この屈辱は晴らしてやるぜ。必ずなっ!」

 去り際に報復の宣告を最後に、ルフェーブル・ファミリーの兵達はアドニスから撤退した。

Re: エターナルウィルダネス ( No.33 )
日時: 2020/08/01 20:54
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「銃声が、止んだ・・・・・・?終わったの・・・・・・?」

 リリアが敵の掃射が納まった静けさの訪れに僅かだが、緊張を解した。

「どうやら、あの爆発で追い払えたみたいね・・・・・・でも、何が起こったのかしら?」

「恐らく、奴らの陣にあった火薬が爆発したんだろうね。こっちは散々な被害を被ったけど、運だけは裏切らなかったようだ」

 ローズとデズモンドも悪運に救われ、安堵のため息をつく。
負傷者の手当てもちょうど、巻き付けた包帯の余分な生地を切ったところだ。

「げほっ・・・・・・クリス、生きてるか・・・・・・?」

「ああ、こっちは何とかね・・・・・・リチャードの方こそ、自分の身を心配した方がいいと思うけど・・・・・・?」

 クリスは煙の薄い場所まで這いずると大の字に転がり、熱い黒雲で濁った青空を見上げる。

「こんなに恐い思いをしたのは久しぶりだ。生きてる実感を深く味わってるところだよ・・・・・・」

 凄まじかった激戦の感想にリチャードは共感し、反省を踏まえる。

「ああ、あれほどの大隊の待ち伏せを見抜けなかったとは、俺も焼きが回ったな・・・・・・もう、満足に戦える歳ではないのかも知れん」

「引退すれば?退職金は出してあげられないけど」

 クリスの軽いジョークにリチャードは脇腹の出血を押さえ、2人は苦し紛れに笑った。

「お前らだけじゃ、組織は成り立たん。若い連中をちゃんとしつける頑固な父親が必要だろう・・・・・・まあいい。戦争は多分、終わったんだ。とりあえず、仲間を集めるぞ。連中はどこにいる・・・・・・?」


 ただせさえ、酷い有様になっていたアドニスは今の戦闘で世紀末の廃墟と成り果てていた。
街の半分は爆発で破壊され、最早そこは集落とはお世辞にも言えない。
アドニスの結末がもたらしたのは、更なる殺戮と大量の死体だけだった。

 ギャングのメンバー達はこれ以上は戦えないほどの疲れを抱え、一箇所に合流する。
そのほとんどが負傷が原因で正常に動ける者は半分しかいなかった。

「リリアもステラも大事に至らずに済んだようだな。聞くのも嫌だが、死んだ奴はいるか?」

「いえ、今回も全員が生き残れたようですよ・・・・・・むしろ、敵に多大な損害を与えてやった。幹部をも仕留めていれば、完全勝利と言ってもいいでしょうけどね」

 ステラの無理をした前向きな評価に

「皮肉にしか聞こえないわよ」

 ローズが本格的な皮肉をぶつける。

「私とサクラが狙撃手をやっつけたんだよ!サクラが囮を作ってね!櫓をドーンって壊したら、落ちた奴をズシャッて!」

 メルトは得意になって、先ほどの経験談を曖昧に再現する。
子供染みた行為を黙視していたクリス達は呆れた表情と仕草を取った。
その中で唯一、デズモンドが活躍を称える。

「2人はよくやってくれたよ。狙撃手を無力化した事こそが、こっちの勝因に大いに貢献していると言えるね。あと、影で僕達を支えてくれたユーリの功績も忘れちゃだめだよ?」

「結局、あの爆発は何だったのかしら・・・・・・?」

 リリアが特に誰にでもなく聞いて、ローズが首を傾げる。

「さっぱりですね。僕とアシュレイさんは街の隅にいましたから。こっちとしても、キノコ雲は謎の現象です」

 ステラも結論に行き着けず、判断に迷う。

「んなこた、どうだっていいんだよ。俺達はファミリーのクソ共を何人もぶっ殺して返り討ちにしてやったんだ。めでたしめでたし・・・・・・って、おい!そんな事より診療所は無事かっ!?」

 本来の目的を思い出し、態度を豹変させたアシュレイは傷の痛みをも忘れ、勢いよく駆け出す。

「バカ!無暗に動くな!奴らの生き残りがいるかも知れんぞ!」

 リチャードの警告の足止めなどお構いなしに、彼は未だに濃度が薄まらない煙の中へと消えた。
クリスとステラが呆れ半分で後を追う。

 ヴェロニカが経営しているという診療所は運よく、爆風の被害を免れていた。
しかし、襲撃に遭った事実は変わらず、廃屋としか呼べない酷い有様だ。  
施設の内容を示す看板は元の位置から外れ、斜めに傾いている。

「ヴェロニカ!!」

 アシュレイの叫びがアドニスに木霊する。
玄関の扉を何度も拳を打ちつけ、幼馴染みの名と呼ぶと共に乱暴なノックは繰り返された。
内側に声が届いてはいるだろうが、返事がない。

「・・・・・・ヴェロニカ!!聞こえるか!頼むから返事してくれよ・・・・・・!!」

 最悪な予感が脳裏を過り、アシュレイの発声が弱まっていく。
その表情は、自身の望みを強く訴えかけていた。

「アシュレイ、静かに。扉から離れるんだ」

 クリスが真剣且つ、落ち着いた口調でアシュレイを遠ざけ、扉の横の壁に背を預ける。
その反対側にはステラが配置に着く。

「僕の合図で扉を開けます。クリスさんが先に踏み込んで下さい」

 クリスは頷き、リボルバーをこめかみの手前に当て、突入の姿勢を整える。

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