複雑・ファジー小説

Re: 君を、撃ちます。 /保留解消 ( No.15 )

日時: 2013/04/01 12:30
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ
参照: 苦しんでる表現が、難しい。

 甘酸っぱそうな青春ごっこも、楽しいんだなと心の中で毒づいた。「椿木」が居なくなった後も余韻に浸り動かない自分への嫌味だったけれど、嫌味ではなく現実を認めたくないだけの言い訳だなと思う。思っている以上に、きっと僕は「椿木」に惚れている。今も目を閉じれば、隣にいる「椿木」を思い出せる。
 シャンプーかトリートメントの柔らかな匂いを纏って、遊びに来た姿が。悶々としてきた脳内の俗物を頭を左右に揺らし振り払い、ペンとメモ帳を手に持って立つ。ベッドの下の引き出しを開け、手に持った二つをしまう。引き出しを閉める前に、中から時計を取り出し時間を確認した。
 
 もう既に十時を回っており、外は深い闇に染まっている。ベッドに上がり大きな窓を隠すようにして、カーテンを閉めた。白熱灯の眩しい明かりを消すためにベッドから降りる。相変わらず無音の部屋に、僕の足音だけが響いていた。電気を消し、真っ暗な室内に目を鳴らす。
 やっと目が慣れ、テーブルの位置を確認しゆっくりとしたペースでベッドへ行く。夏の蒸し暑い空気に耐えながら、薄手のシーツを胸元まで持ってきた。もともと体温が低いこともあり、夏場でもシーツを掛けないと霜焼けになり掛けることがある。昼間は暑くても、明け方は少しだけ肌寒い日が続くからだ。

 目を閉じるとほぼ一日中寝ていたのに関わらず、直ぐに眠りにおちた。




 
「――ひゃははっ! お前みたいな餓鬼を殺しちまうのは気が引けるんだけどな、お前が誰かにチクっちまう可能性は否定できねーだろ?」

 やめてやめてやめてやめて!

「女みてぇに細いやろーだな、お前は。ひゃはっ! 女だったらヤっちまっても……別に問題は無かったんだけどな」
「おい、ふざけてんなよ。さっさとやっちまえよ」

 苦しい痛い怖いやだ、やだ、やだやだやだ。

「ふざけるんなっつって、あんたも楽しそうじゃねーかよ、ひゃははっ! おい餓鬼、死ぬところ俺たちが見届けてやるからな、ひひゃははははは!!」

 苦しいよ、お母さんお母さん、助けて助けて――ッ。





 息が詰まりそうな状態で、僕は思い切り飛び起きた。息は乱れ、背中からは冷や汗がべったりと流れ落ちている。からからに乾いた口の中から、たった少しの唾液を飲み込む。口を開けば、陸上で短距離を走ったあとのように、息が乱れた。カーテンの隙間からは漏れた日光に気づくのに、何分も掛かった。
 息が整い始めると、外で囀っていた鳥の声が聞こえる。恐る恐る首に手を添えてみると、思ったとおり包帯が取れていた。周りをきょろきょろと見ると、床に落ちていた。ベッドから下り、引き出しを開け新しい包帯と留め具を取り出す。

 何時もより少しきつめに包帯を首に巻き、シーツや枕カバーを手に取った。長いシーツは引き摺り、枕カバーは手に持ち部屋から出る。階下からは朝御飯の良いにおいがしてきたが、今はご飯よりも風呂に入ることしか考えられなかった。
 一刻も早く、気持ち悪い汗をどうにかしたい。ただそれだけが、脳内を支配していた。階段を下りるところで「誰か」に声を掛けられた気がしたが、声は一つも入ってこない。真っ直ぐ脱衣所に行き、服を全て脱いだ。


 相変わらず真白い肌が、今だけは酷く可哀想に見えた。

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