複雑・ファジー小説

Re: 君を、撃ちます。 ( No.41 )

日時: 2013/11/30 22:25
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ


 空を覆う、真っ黒な雲。今にも降り出しそうな雨。雨、雨雨。どんよりとした雲は、退院した晴れやかな気持ちをゆっくりと飲み込んでいく。雨、雨、雨、雨。
 後部座席の左側に座り、外を眺める。「母親」の楽しそうな言葉は、一つも聞こえない。ただ只管、あの夢の「伊吹」を思い出す。断片になって、所々消えてしまった「彼」の形を必死に取り戻す。
 
 僕と、同じ顔。
 僕と何一つ変わらない肌の色、目の色、髪の色。
 僕と、同じ「母親」。

 「彼」の全てが、僕自身を否定しているような気がした。僕には無い声を、表情を、感情を持っている「彼」に。僕は、ひどく嫉妬をしていたんだろう。
 僕に出来ない、「椿木」と話すことを、「彼」はそつなくやって見せた。たった一つ違うのは、僕が「彼」とは比べ物にならないほどの劣等感を持っているということだけだ。



 痛い。



 首の包帯に右手を沿え、左手で胸の辺りの服をぎゅっと掴み、頭を窓につける。大嫌いな僕自身を、心から、身体から、追い出してやりたいと切に思った。
 知らない「誰か」のせいで臆病になった僕を、何も話すことが出来なくなった僕を、どうにかして殺したいと思う。「母親」には決していえない事だったけれど、僕の脳にその思いは記憶された。

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