複雑・ファジー小説

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.11 )

日時: 2018/04/14 23:19
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
参照: 酒飲んで書いたからすんごい短い

 超子たちが狂示から指令を受けていた同時刻。時雨は転送ルームで泥と合流して、時雨の実家である場所へと降り立っていた。時雨は久々に帰って来た実家を真正面から見て、ふう、とため息を一つ漏らす。泥はそんな時雨を見て、時雨、と彼の名を呼ぶ。

「大丈夫?もしかして、本当は帰りたくなかった?」
「まさか。ただ、姉上の強引さに呆れただけだ」
「ふうん」

ならいいんだけどさ。と泥はひとり、心の中でそっとつぶやく。泥は気づいていた。時雨がこの場所にきて家を見て、なぜため息をついたのか。なぜああ答えたにもかかわらず、物憂げな様子が解けないのか。本当は気づいていた。だけど、あえて『知らないふり』をして時雨に聞いた。どんな答えが返ってくるのか、どんな声で来るのか。泥は時雨のその様子が見たくて、あえて質問したのだ。時雨の返答と声は、予想通りだったが、まあ良しとする。何が、と聞かれると、きっと泥自身もわからないのだろう。

「いこっか」
「ああ」

泥が『いつもの笑顔』で促すと、時雨もまた、重々しく足を動かす。
───時雨がため息をついて、まるで帰ってきたくなかったというような態度をとった理由はただ一つ。

2人の目の前には、『ゆうに100は超える石造りの階段』が上へ上へとのびていたからであった。





 階段をのぼりはじめておよそ数十分。
ようやく上り終えた2人は、疲れのあまりに荷物によっかかるように崩れ落ちる。普段から体力仕事───と言えないかもしれないが───をしていたとしても、あまりの段数に気が遠くなるほどの階段を、休みなしで上り詰めたら、さすがに疲れるものは疲れる。足がこれ以上、動くのを拒否している。なぜ階段を飛ばして転送してくれなかったのか、正直半日かけて文句を言いたい気分だ。

「さすがに、これは」
「僕もこれには慣れないな」
「もう家の中入らなくていいんじゃないかな」
「そう思えてきたぞ」

肩で息を整えながら、時雨と泥は話をする。もう一歩も動けないようで、その場にとどまって目を閉じて眠りの落ちそうになる。だが

「誰かお客様かしら…?」

ひょっこりと現れた女性が時雨の家から出てきてなにかつぶやくなり、彼らの意識は清明なものとなる。動かない体の代わりに顔だけをそちらにあげると、時雨はあっ、と声を上げる。

「母上…」

つい口から出てきたその言葉に、出てきた女性ははっとして時雨たちを見る。そしてふっと微笑む。

「…あら、時雨ちゃん?それに今日は泥くんも一緒なのねえ」
「あ…倖(ゆき)さん、お久しぶりです…」

へらりと笑い、そういうと、倖と呼ばれたその女性───春夏冬 倖は、倒れこんでいた2人をひょいと抱え上げて、微笑みを崩さないまま家へと入っていった。今日のお昼はとびきり豪華にしなくちゃね、と嬉しそうに呟きながら。





 ところ変わってマグノリア本部。先ほどリーダーから破壊命令を下された4人は、作戦を練り上げるべく、大きなプロジェクタのある会議室へと集まっていた。プロジェクタの横には超子が立ち、ほかの3人は部屋の真ん中に設置された椅子に座って超子を見る。

「では。作戦会議を始めるよ」
「まず内容をまとめよっか」
「そうねん。それから始めましょ」

歌子がそういうと、超子はプロジェクタに、上から撮影された襲撃予定の場所、『ポイントA』地点を映しだす。一見何もないように見えるが、特殊な解析で発見したデータに変えると、途端に何もなかったはずの場所に、三角形で形つくられた何かが現れた。それにテキストが重ねられ、『グローリア栃木支部』と映し出される。

「今回襲撃するのは、ここ、栃木県日光市に在る、『グローリア栃木支部・フォルテ研究機関』。リーダーからもらったUSBに入ってた情報によると、ここでやっばいことしてるみたい」
「それはさっき、言ってたわ。もちろんエレーヌも聞いていたわ」
「そうねん。そいでリーダーはここに、フォルトゥナの子供たちがとらえられて、慰み者にしたり『そういうこと』に使ったり、人身売買オークションにかけてたりしてるって言ってたよね。あー反吐が出るわ」
「本当にね…」
「そこを、あたしらがフォルテッシモで奇襲をかけて、ぶっ潰す。やりたくはないけど、中にいる被害者の子たちもまとめてね」

 そう超子がいくらかトーンを落として言うと、ほかのメンバーもずうぅん、と空気が落ちる。だが松永だけは違った。

「オレッチも気分はBADだZE…だがな、無理してHELPしても、救われねえことだってあるかもしれねえんだ…だからこそオレッチたちがここでDESTROYしてやんねえとNA。HOPEがこの先にあるかどうかなんてわからねえかもしれねえから、オレッチはだからこそこのMISSIONを達成したいんだ…」

 どうしても言葉の節々や、最後の未来形な一言で台無しになってしまうのだが、言いたいことは確かに伝わったようで、超子は松永に賞賛の言葉を贈る。

「たまにはいいこと言うじゃん久チャン!」
「FUUUU!オレッチはやるときゃやるんだZE!」
「言葉遣いの意味はよくわからなかったけど…でも、言いたいことはわかるよ。被害にあった子たちの為にも、頑張らなきゃだよね」
「言いたいことはあるけれど、それが救いになるなら。私も、『わたし』もやるわ。…やれるかどうかは別だけど」

意外な人物の一言により、メンバーは本来の明るさを取り戻す。この明るさを取り戻したところで、会議を再開させる。

「では。まず襲撃方法なんだけど。周囲変換をするのはもちろんなんだけど。その後だね。データによると、この建物もんのすごい頑丈にしてあるみたいなんよ。あたしらの襲撃を予測してかしらね」
「わざわざ建物を見えなくしておいてさらに建物にも施しをするなんて…ずいぶんと大人は嫌なことをするのね」
「ほんとね。なのでここはまず、歌子ちゃんのフォルテで建物自体を弱体化させる。その間絶対、連中も仕掛けてくるはずだから、歌子ちゃんを囲うようにして、あたしらが守る」
「でもYO!それってYO!もし歌子が『別のどこからか襲撃』されたらどうすんだYO」

 その問いに、歌子はふっふっふっと不敵に笑う。何か策はあるのか、度肝を抜くような、何かすごい策が───


「なにもかんがえてませーん!!」


 その一言に全員が椅子から滑り落ちた。


続く

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