複雑・ファジー小説

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.14 )

日時: 2018/05/19 21:23
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

「弥里チャン?何渡したん?」
「らにってぇ〜おくしゅりだぴゃ〜」
「あっ、ラリっとるわこの子」

ようやく立ち直った那生は、弥里に松永に対し何を渡したのかと問う。弥里はぶっ飛びながらも答えるが、まともな答えは帰ってこないだろうな、と那生は肩を落とす。それでも薬を渡したというので、その内容を聞く。

「ふぉるてでちゅくったおくしゅり〜☆たぁしかまひん?はひか?てひゃ☆」
「……麻疹?はしか?えげつないモン渡しおるなァ」

そこから飛び出した正体に、那生は後ずさりする。麻疹、またははしかは、ひとり感染すれば爆発的に流行する感染症だ。日本では既に無くなっているため、それに対する薬物は無いに等しい。あるとすれば予防策として、ワクチンが残っているくらいだろうか。つまり、一度それをばらまきひとりが感染し、街に出て行動したとなれば確実に『パンデミック』となる。しかしそれを一から作ることは出来るのだろうか、否、『三森 弥里』ならばできる。
───フォルテ、『感染(パンデミック)』。自らが源となり、様々な感染症を辺り一面にばらまくことが出来る。作り出したウイルスや細菌は弥里には効かず、あくまで『他人』に襲いかかる。その気になれば原因となるウイルスあるいは細菌を作り出し、カプセルなどの入れ物に封じ込め、それを爆発させることでばら撒くことも出来る。
その気になれば人類滅亡も、非現実的なことではない。彼女にかかればそれが現実のものとなる。それほどまでに恐ろしいフォルテなのだ。ただそれ故に、彼女は戦闘部ではなく、医療部へと回されてしまったわけなのだが、そこで那生の手によってヤクまみれに染まってしまった訳で。

「あひゃ☆ぴんくのぞうさん〜☆」
「しもた、仕込みすぎたわ……」

こんなふうに自らヤクをブレンドして、自ら打ち込んで、自らぶっ飛んでいる。こうなると那生ですら手をつけられない。ヤクが一通り抜けるまでは放置という形になる。

「……松永はん、えっらいやばいモンもろてしもたんやなあ」

エイメンってな、と、わざとらしく十字を切ると、さてお仕事に戻りまひょか、とだけ呟いてカルテの山へと突っ込んでいった。





「ホォームッカミンッ!」
「あ、やっと帰ってきた」

とりあえず松永の帰りを待とう。その結論に至ってから十数分した頃、ようやく松永が会議室へと戻ってきた。超子たちはやれやれ、というような態度で松永を出迎える。遅くなっちまったNAと松永が言うそばで、エレクシアはあるものに気づく。松永の手の中にあったカプセルを取り、これ何?と問うた。

「三森がGIVEしてくれたやつだNA。『大変なことになる』って言ってたZE」
「大変なこと?」

エレクシアは首を傾げる。こんなカプセルが、薬剤とも思えるカプセルが、何がどう大変なことになるのだろうか。はてなが耐えないエレクシアに、歌子は声をかける。

「エレクシアちゃん、それ見せて?」
「はい」

歌子はエレクシアからカプセルを受け取り、それをじっと見つめる。しばらくそうした後に、あっと超子が声を上げた。

「それ、弥里ちゃんのフォルテで作ったやつだったりして?」
「えっ……てことはこの中身はまさか」
「感染症の原因になるやつ!確かに大変なことになるわ!」

とんでもないもん貰ってきたわね。超子はそう言って松永を見る。しかし松永は何もわかっていないようだ、FUUUU!マジやべーじゃんYO!とひとりで盛り上がっている。

「これ今すぐ出た方が……」
「もとよりそのつもりだったよ。でもこれほんとに今すぐ出撃して、『処理』した方がいいわ。そんで辺り一面焼け野原にした方がいい。いくら空間切り離すとはいえ……」
「なら、早く行きましょう。フォルテッシモ出撃ポートに」
「キターッ!やっとオレッチの出番だNA!」

そう言って松永は会議室を飛び出して、出撃ポートへと行ってしまった。しょうがないなあ、足だけは早いんだから。超子はため息をついて残りの2人を自分の近くに寄せて、

「てれぽ!」

一瞬にして姿を消した。





「うぉっ!?早かったっすね!?フォルテッシモちゃんたちは既に移動済みっすから、今出ても大丈夫っす」
「うわーん常磐ちゃん仕事はっやい!ありがとー!」

移動した先はフォルテッシモでの出撃ポート。ここには出撃する為に移動してきたフォルテッシモが、出撃する数だけある。出撃する際には光学迷彩をかけ、一般人には見えなくても悟られぬよう、高高度で飛行をする。もちろん空間を切り離しはするが、出撃時点でそれをすると、マグノリア本部ごと切り離された空間に持っていかれてしまい、オペレートや戦闘どころではなくなるため、そうするしかない。もっとも、それはリーダーが言っている事なので、本当かどうかは定かではないが。
超子たちは早速自らのフォルテッシモに乗り、起動させる。ポッドの中にあったパイロットチェアに座ってコントロールポッドを閉じきり、モニタに手のひらをかざす。

『Welcome MASTER.Ready』

目の前に文字が浮かび上がり、コントロールポッドの周りは、外の様子を映し出す。特に異常は見られないようだ。

「ん。特に問題は無いみたいね。皆は?」

超子はところどころを確認して、ほかの出撃するメンバーに声をかける。目の前にモニタが次々と現れ、歌子、エレクシア、松永が映し出された。

『こっちも特にないよ。いつでも行ける』
『私も大丈夫。もちろんエレーヌも』
『FUUUUU!早く行こうぜ超子ォッ!』
「こらこら急かさないの。行動力があるのはいいけど、無闇矢鱈に突っ込んでいかないでね?」

そう言うと通信は切れる。目の前に見えるのは外の風景だけ。ふう、と一つ息をついて、口元を引き締める。

「フォルテッシモ、『マザー』!」
「フォルテッシモ、『ディーヴァ』!」
「フォルテッシモ、『アルテミス』」
「フォルテッシモォッ!『愛宕丸』ゥッ!!」

「出撃する!!」

その瞬間、開かれた天板から4機のフォルテッシモが飛び立って行った。


「……行っちゃったっすね」
「え、今来たのに……」
「惜しかったっすねー、『御代』ちゃん」
「……常磐ちゃん、うちの『プテラノドン』、準備してある?」
「え?そりゃもちろん。要望があったっすから」
「なら」



「───私も、行くうぇい!」

メンテ