二次創作小説(新・総合)

死闘と切り札と悪童と姫騎士 ( No.254 )
日時: 2017/08/14 19:41
名前: トクマ

 やっと……やっと……やっと完成したァァァァァァァァ!!

 なんとか、なんとか完成できて良かった……足りない頭で試行錯誤しましたが、大長編がなんとか完成しました……オレ……これが終わったから、ベッドに帰るんだ……それでは、どうぞ!!





 嵐。


 目の前にいる侍の剣戟けんげきを例えるならそれだ。

 斬って、斬って、斬って、煌めく刃が相手を斬らんと激しく舞う。身の丈もある大剣を手足のように扱う二人の侍にピーチ姫達は見惚れていた。

闇吉備津「アアァァァァァァァァァァァァ!」
吉備津彦「ウオォォォォォォォォォォォォ!」
 
 交差する刃。
 互いに繰り出した武器は相手の体を捉えんとするが届かない。
 戦闘は拮抗していた。

 吉備津彦と闇吉備津。

 この二人は見た目こそ似ているが実に対称的な戦いをしていた。
 片や山と形容すべき堅実な剣技。
 片や嵐と形容すべき荒々しい剣技。

 吉備津彦が大剣を振るえば闇吉備津は捌き、闇吉備津が刀を振るえば吉備津彦は弾く。
 捌き、受け、躱し、弾き、いなす。
 両者の剣技は互角だ。

 だからこそ、戦いに詳しいメンバーにはわかった。

 ――先に攻撃を当てたヤツが勝つ。

 戦いの刃鳴が散る。打ち合う二人の剣戟はさらに激しさを増していく。
 放つプレッシャーが辺りを『近付けば死ぬ』と、警告を出すように圧する。

吉備津彦「ぜぇあぁ!!」
闇吉備津「かぁぁ!!」

 荒々しい雄叫びから放たれた剣は火花を散らせながら激しさを増す。未だに拮抗する二人を周りは行く末を見守る。

 そして、拮抗が崩れる。

吉備津彦「……ぐ……!!」

 吉備津彦が表情を歪めた。見れば彼の脇腹が赤く滲んでいた。恐らく、闇吉備津に斬られた傷が開いたのだろう。

闇吉備津「ざぁぁぁ!!」

 それを好機と見た闇吉備津がその傷口に目掛けて鋭い手刀を突き刺すように繰り出す。

吉備津彦「グッ!」

 直に傷口を抉られ、鋭い痛みが吉備津彦の全身に走るが振り切って闇吉備津を蹴り飛ばす。

 弾かれるように蹴り飛ばされた闇吉備津だが体勢を素早く整えて吉備津彦に大剣を構えて駆け寄る。吉備津彦も構えようとするが、痛みにより反応が鈍る。その隙を狙って闇吉備津は吉備津彦の剣を弾き飛ばし、首に目掛けて大剣を横薙ぎに振り抜いた。

闇吉備津「獲ったぁ!!」

 自身の首に目掛けて迫る凶刃。スローモーションに見えた吉備津彦はその光景に動じず右手を硬く握りしめ――

吉備津彦「ふんっ!!」
闇吉備津「なっ!?」

 大剣の腹の部分を上に向かって殴りつけた。強く殴った衝撃で軌道は大きく逸れ、吉備津彦の髪を一房持っていった結果になった。
 決まるはずの一撃を外したことに一瞬固まる闇吉備津。しかし、その一瞬を吉備津彦は見逃さずに闇吉備津の頭をつかんで勢いよく自身の頭をぶつける。

闇吉備津「……っ……!」
吉備津彦「でぇあぁぁ!!」

 怯む闇吉備津を畳み掛けるかのように服を掴み、そのまま投げ飛ばした。今度は受け身を取れずに地面に叩き込まれる闇吉備津だが、痛みをものともせずに近くに転がっていた自身の大剣を拾い、吉備津彦も闇吉備津が武器を拾う間に自身の大剣を回収し、振り出しに戻った。

吉備津彦「……」
闇吉備津「……」

 先程の剣戟が嘘のように静かになり、まるで猛獣が息を潜めて狙うような緊張感が流れ始める。
 己の中にある刀を研ぎ澄ませるかのように鋭い殺気を放つ二人。いまだに睨みあったまま剣を構えて岩のように微動だにしない。

 そして、その時は訪れた。

 二人の剣戟の余波で削れた壁から拳大の石が転がり落ち、地面に落ちた。
 それを合図に吉備津彦と闇吉備津が風のように目の前の敵に向かって武器を携えて駆ける。吉備津彦は大剣を竜が上るかのように下から上へ振り上げ、闇吉備津は断頭台の刃のごとく上から下へと降り下ろした。

 自身の剣がぶつかり合う。そして――












































楽々森彦「……ああ……!」
留玉臣「……そんな……!!」

 ――吉備津彦の剣が、地面に落ちた。

 闇吉備津の剣に負け、地面に落ちた事実を森彦と玉臣が思わず目を背ける。

闇吉備津「……」

 しかし、闇吉備津の表情には吉備津彦の剣を破った喜悦が現れなかった。それは、心から満たされなかったという事実ではなく――

 ……何故、こんなにも軽いんだ。

 ――剣を破った際の手応えが軽すぎた事実に困惑していたのだ。

 あれほどの剣戟を行った相手がここで力不足になるとは闇吉備津は思えなかった。思考が一瞬だけ謎に包まれた。
 そして、この時を吉備津彦は待ち望んでいた。

闇吉備津「!?」

 チャキ、という音に反応して闇吉備津が顔をあげると懐から脇差しを取り出す吉備津彦が目に映った。
 そう、あの時吉備津彦は剣を強く握らずに軽く握っていたのだ。闇吉備津は自身を斬る為に全身全霊の力を持った一撃を繰り出すと見た吉備津彦はわざと大剣の力を弱くし、避けることに専念したのだ。本命は自身の懐にある脇差しを闇吉備津の思考から外させる為に振るったのだ。

闇吉備津「……!!」

 自身が策に落ちた事に気付いた闇吉備津が急いで大剣を戻そうにも深く地面に埋まり、さらに出てこないように吉備津彦が大剣の峰を足で踏んでいる。

闇吉備津「まだだ!!」

 大剣を抜くのが不可能と判断した闇吉備津は吉備津彦が脇差しを自身に斬りかかるより早く拳を繰り出す。

 しかし、闇吉備津が感じたのは拳による吉備津彦の顔を殴った感触ではなく、自身の顎に硬い物をぶつけられた痛みであった。

 後ろに倒れる闇吉備津が視界にいれたのは吉備津彦が脇差しを納めた状態で振り抜いた体勢であった。石突きで殴られた事を理解した闇吉備津は脳震盪を起こし、そのまま倒れると同時に意識が遠のいた。

 倒れて気絶する闇吉備津を一瞥し、吉備津彦はピーチ姫達に右手を挙げ、高々と声をあげた。

吉備津彦「見たか! 我が武勇、天下に轟かん!」

 その声に歓声が大きく街に響いた。


 まだ続きます。コメントはまだ。

死闘と切り札と悪童と姫騎士 ( No.255 )
日時: 2017/08/14 19:46
名前: トクマ


 場所が変わって砂浜。トクマとアシェンプテルが自身の武器を振るいながら戦っていた。

アシェンプテル「どこだ! どこにいる!!」

 戦闘中に姿を隠したトクマに苛立ちを隠さずに探すアシェンプテルをトクマは隠れて見ながら、状況を打開する策を考えていた。

 ……そう言われて、素直に出てくるヤツがいるかっつーの……

 自分を探すアシェンプテルを警戒しながら、もしもの為に用意したアイテムを確認する。

 威嚇用ミニボム、煙玉、スマッシュボール、マキシムトマトの四つだけだった。身を軽くする為に少なく持ってきたのが裏目に出てしまった事に苦虫を噛む表情になる。
 マキシムトマトで回復して煙玉やミニボムで撹乱し、不意打ち気味に最後の切り札を発動する手順を組むが後一手足りない事に悩む。ミニボムを攻撃に回そうにも威嚇用だから威力が低い。
 どうすれば良いか考えると不意に頭にアレが過った。それはゲーセンで見つけて唖然とした物だった。好奇心でチャレンジしたら簡単に取れて驚いたが、今に覚えば早く処理したかったという店側の本音なのだろう。そして、残りの一手が埋まり策が完成した。

 手順を構築し、気合いを入れ直してトクマは反撃を開始した。

アシェンプテル「そこか!!」
トクマ「ちぃっ!!」

 こちらから先手をかける前に居場所を特定したアシェンプテルが攻撃するもかわして七、八歩程離れる。

アシェンプテル「かくれんぼは終わりだ……」
トクマ「……そうだな……決めさせて貰おうか」

 アシェンプテルの言葉とともにトクマはスマッシュボールを取り出して砕いた。

トクマ「最後の切札……発動!!」

 虹色のオーラが溢れだし、トクマは斧をブーメランの要領でアシェンプテルに向かって投げた。

アシェンプテル「ふん」

 それを余裕を持ったアシェンプテルがガラスの双剣で弾くが、それを見たトクマは笑みを見せた。

アシェンプテル「……な……身体が……!」

 突如、身体が痺れて動けなくなって驚くアシェンプテル。その様子を見たトクマは中腰になって深く息を吐く。

トクマ「……フゥゥゥ……偽りが……真に至る」

 その言葉と同時にトクマの周囲に風がうねりをあげ、身体から紫電を走らせる。
 徐々にうねりをあげた風が、身体を走る紫電が吸い込まれるかのようにトクマの右足に集まっていく。
 キュイィイィィィィ、まるで何かの鳴き声のように鳴るとトクマはアシェンプテルに向かって駆け抜けた。

 一歩、暴風を纏い。
 二歩、紫電を走らせ。
 三歩、最大威力で相手を穿つ。

トクマ「……真・ライダーキック!!」

 嵐のような威力を含んだ蹴りが痺れで動けなくなったアシェンプテルに突き刺さった。

 その蹴りは深く突き刺さり、アシェンプテルは車輪のように後ろへ回転しながら飛ばされ、壁に激突した。

 衝撃で砂が宙をまい、状態を確認できないが手応えからして深手をおっているに違いないと判断したトクマは脱力して砂の上に座った。後はマリオ達に連絡を入れるだけと思って懐から携帯を取り出そうとし――













































アシェンプテル「清き衣よ、穢れを祓いたまえ!」

 ――固まった。

 声のした方向にゆっくりと顔を向けると、アシェンプテルが緑色の光に照らされると同時に受けた傷が回復していってる。

 そして、トクマは思い出した。何故、ドレディアの一撃を受けたにも関わらず動けていたのか……それは……サンドリヨンが持つ回復スキルが使えた事実に唖然とした。

トクマ「……マジかよ……サンドリヨンのスキルが使えるなんて聞いてねぇぞ!!」

 このままではヤバいと判断したトクマはすぐさま身体を起こして撤退するが、それよりも早く大きな赤黒い水晶の壁がトクマの進路を遮った。
 水晶の壁はそのままトクマとアシェンプテルを囲むかのように地面から生え、ドームのような形となった。

 ……やばい、絶体絶命だ。

 逃げ場なし、道具なし、ゆっくりと近付くアシェンプテルを見て、冷や汗を流した。


 まだ続きます。コメントは待ってて。

死闘と切り札と悪童と姫騎士 ( No.256 )
日時: 2017/08/14 20:04
名前: トクマ

 いま、明かされるトクマが持つ『ハストゥールの鍵』の弱点!



 戦況は先程より悪化した。

アシェンプテル「どうした? さっきから逃げてばかりだぞ」
トクマ「……言ってくれるな……」

 挑発するように言うアシェンプテルに苦々しい表情で呟くトクマ。アシェンプテルの繰り出される斬撃を紙一重で避けるが、疲労が溜まって攻撃が掠り始める。

アシェンプテル「ハストゥールの鍵を使わないのか……いや、使えないのだな」
トクマ「……」

 アシェンプテルの言葉を沈黙で返すもトクマは内心焦り始める。アシェンプテルの言う通り、ハストゥールの鍵は使えないのだ。

 理由は三つ程あり、一つ目は殺傷能力が無い。ハスター武装時は光線を放つことができるが最大で生物以外ではガラスが溶ける程の威力を発揮できる……しかし生物だと火傷しか起こせず、精神的負荷を与えるのが主体となる。

 二つ目は相性。ハスターの光線を放ってもアシェンプテルは水晶を作り出して防いでしまう。光は水晶といった透明なモノに屈折して威力が下がってしまう。

 そして三つ目は簡単な理由……ガス欠である。例えハスターの能力である『魔力制圧』で空気中の魔力を吸収しても微々たるもの。さらに、ただでさえ少ない魔力をフルパワーで発揮すれば燃料の切れるスピードが早くなる。

アシェンプテル「つまり、今の貴様はそこら辺の雑魚と代わらない」
トクマ「やばっ――」

 その言葉とともにアシェンプテルは魔力を溜め始め、トクマは避けようにも逃げ場が無いことに気付き――

アシェンプテル「煌き貫け! 衝撃の刃よ!」

 ――赤黒い水晶の刃がトクマを襲った。


 コメントはまだ。まだ続くよ。

死闘と切り札と悪童と姫騎士 ( No.257 )
日時: 2017/08/14 20:09
名前: トクマ

 ここから先、ある意味、注意があります。気を付けてお読みください。




アシェンプテル「……ふむ……」

 赤黒い水晶の刃を見て、アシェンプテルは感心するように頷いた。水晶がピキピキと音をたてて崩れるその先にいたのは――

トクマ「……はぁ……はぁ……」

 ――血だらけになっても生きていたトクマだった。

 ……少し甘く見ていたようだ……回避が無理だと判断して、当たりが浅い所に飛び込むとは……激痛を耐える気力はあったようだが……どうやら、終わりのようだな。

 アシェンプテルの見つめる視線の先にいたトクマはカタカタと震えていた。そして、その目には“恐怖”がありありと映し出され、一歩踏み込んだアシェンプテルを見て萎縮いしゅくした。

アシェンプテル「……恐怖に飲まれたか……安心しろ……楽にしてやろう」
トクマ「……ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!?」

 アシェンプテルの冷たい殺気にトクマはさらに震え、自身の命を狙われる恐怖からもたつく足にムチをいれながら逃げる。

 しかし、周囲は水晶の壁に囲まれており、逃げようにも逃げられなかった。焦るトクマの様子にアシェンプテルは嗜虐心を刺激されたのか、どこか艶々しい挑発的な笑みを浮かべて近付く。

トクマ「く、来るな! 来るんじゃねぇ!!」

 その様子にトクマは足下にあったゴミや漂流物を投げるも的外れな場所や明らかに届いてない距離を投げるなど錯乱していた。

アシェンプテル「……ふふ……実に愉快だ……さて、終わりにするとしよう」
トクマ「ひっ!?」

 アシェンプテルの様子を見てビビったトクマが最後のあがきか投げた。今度はアシェンプテルに向かっているが速度が遅い。目を閉じても避けられると判断したアシェンプテルはタイミングを測る。

 ゆっくりと進んでいるモノはスローモーションのように見え、まるで運命の別れ道のように思えた。そして、投げたモノがアシェンプテルの目の前に――

アシェンプテル「!?」

 ――届く寸前で爆発した。

 突然の事に驚くアシェンプテルだが、トクマは先程の怯えた様子が嘘のように消え失せ、懐から缶を取り出して投げた。
 飛来する缶に気付いたアシェンプテルは躊躇なくその缶を切断した。
 いや、切断してしまった。

アシェンプテル「ぬあぁっ!? ……か、あ……はっ……くっ……ぁあ」

 切断した缶からは白く濁った液体が飛散し、困惑していたアシェンプテルは頭から被ってしまった。

 瞬間、アシェンプテルは硬直したかと思えば、ぶるぶると震え出す。

 その様子を見て、トクマは街中で十人中十人が二度見して悪魔と言い、無駄のない動きで警察に連絡されそうな悪い笑顔を浮かべた。

アシェンプテル「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! は、鼻が! 鼻が! な、なんだこれはぁ!! い、息がぁ!! ああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

トクマ「ヒャハハハハハ! 引っ掛かったなぁ!! シュールストレミングだファ●キュー!!」

 アシェンプテルの絶叫が響き渡り、トクマは中指だけ真上に突き立て、ゲスな笑いが続いた。

 いや、なに恐ろしい物を投げてんだ!? 相手は敵とはいえ女性だぞ!!

 “シュールストレミング”

 世界で一番臭い食べ物。最早、その臭いは兵器の領域に踏み込まれており、開缶で噴出したガスによって失神する人間もいるレベルの最終ならぬ最臭兵器である。
 幸いにも、トクマが投げた缶は原材料であるニシンが原型を留めているレベルだったが、もし原型が留めていない二次発酵にまで進んでいたら……悪臭の原因であるプロピオン酸、硫化水素、酪酸、酢酸も大量に生成されて人為的な災害が起こっていただろう。
 因みにだが、2014年に25年放置されたシュールストレミングが発見された際には爆発物処理班と缶詰の専門家が出動して処理に当たった事例もある。

アシェンプテル「くぁあ……おの……れぇ……!?」
トクマ「まんまと騙されたな……お前」

 臭いに苦しみながらも睨むアシェンプテルだが見たのは血だらけではなく、どこもケガをしていない様子に呆然とする。そんなアシェンプテルを見て、トクマはネタばらしを始めた。

トクマ「お前のスキル……クリスタルスラッシュはサンドリヨンと同じ離れていれば離れるほど威力が高くなる攻撃だ。あの時、水晶の壁とぶつかって出来た穴に飛び込んで避けたあと、持っていたマキシムトマトを潰して身体に塗って演技してたんだよ……慢心を持ったのがテメェの敗因だ」

 悪童のように笑うトクマをアシェンプテルは苦しみながらも睨み付ける。

アシェンプテル「……くっ……うっ……」
トクマ「まともに息が出来ないだろ……これで少しは時間をかせ――」
アシェンプテル「…………ん?」

 トクマが突然話すのをやめた。さすがにこれには彼女も反応し、トクマを見た。彼は顔を青くし、小刻みに体が震えていた。

トクマ「じ、じか……じか……んを、かせ……がせっ――」































































トクマ「――オボロロロロロロ!!」

アシェンプテル「吐くなァァァ!」

 すいません。かっこよく決まってたのに、一気に台無しになったんですが……

トクマ「……いや……こっちは、風下だから匂いが、くるんだよ。予想以上に臭くて吐いちまった……うぷ……」
アシェンプテル「策に溺れてるではないか!!」

 自身が仕掛けた罠に相手よりダメージを受けるバカがここにいた。まだくる嘔吐感に耐えるトクマをアシェンプテルは指摘するが、目を鋭くさせる。

 ……迂闊だった。コイツの武器は常人離れした脚力でもハストゥールの鍵でもない……どんな手を使ってでも生きる手段。

 先程の慢心を捨て、アッシュヒールを唱えてシュールストレミングの臭いを消し、ガラスの双剣を持ち直してゆっくりと近付いていく。

 ……ここで斬り捨てる。

トクマ「え!? 待て待てこっち来んな! あぶねぇから離れてろ! 出すぞ! 今度は昼に食べた永劫無極の王麺エターナル・カタストロフ・ラ・メーンを出すぞ!!」
アシェンプテル「……同じ手は二度くらわん……それも油断させる為の演技で、あの缶詰を隠し持っているのは知っている」
トクマ「……チッ」

 アシェンプテルの言葉に舌打ちし、隠し持っていた缶詰を取り出してアシェンプテルの前に向かって投げる。

アシェンプテル「万策尽きたな」
トクマ「いや、違う」

 アシェンプテルの言葉にトクマは薄ら笑いを浮かべながら否定する。

トクマ「策が尽きたんじゃない……作る必要がなくなっただけだ」

 即座にアシェンプテルは投げた缶詰を確認すると、缶詰の下に何かが隠れていた事に気付いた。

トクマ「……悪臭に溺死しな」
アシェンプテル「くっ!!」

 トクマの首を切るジェスチャーと言葉とともに条件反射で双剣を交差して防ぐようにした瞬間に周囲が白い煙に包まれた。

アシェンプテル「……? クソ、騙された! ヤツはどこにいる!!」

 ただの煙幕だと気付いて悪態をつくアシェンプテルだが、落ち着いて考え始める。

 ……落ち着け、ここは私が作り上げたフィールド……そう簡単に出れないハズだ……

 目を閉じて精神統一するアシェンプテル。すると、目の前の壁の近くに気配があることに気付き、跳ぶと同時に武器を振り上げた。

アシェンプテル「もらっ――!?」

 気配に向かって降り下ろしたが、誰もいないことに戸惑うアシェンプテル。

 ……いないだと!? バカな! 逃げ場はないのにどうやって……

 瞬間、強大なエネルギーが後ろから感じた。

 ……最初から……動いていなかっだと!?

トクマ「名も無き咆哮ハウル・オブ・ゼロ!!」

 何かの咆哮のような音とともに放たれた極光がアシェンプテルの頭上を通って赤黒い水晶の壁を破壊した。パラパラと砕けて崩れる壁を抜けるように疾走するトクマ。

アシェンプテル「逃げる気か!」

 逃げるトクマを追うアシェンプテル。しかし、その足は突然止まった。

トクマ「逃げる? バカ言うなよ」

 そこでアシェンプテルは理解した。なぜ、自分が気配を誤認したのか……その答えはシンプルだった……壁の向こう側にいたのだ。

 その人物は黄昏に染まった長い金髪が風に揺れ、エメラルドグリーンの瞳には消えたハズの輝きが戻っていた。その姿にトクマは微笑み、アシェンプテルは愕然としていた。

 姫騎士が、帰ってきた。

サンドリヨン「決着を着けましょう……アシェンプテル!!」

 もう一人の自分サンドリヨンが、そこにいた。



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