SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

第14回 SS小説大会 開催!〜 お題:争い、憎しみ 〜
日時: 2017/09/09 19:00
名前: 管理人 ◆cU6R.QLFmM

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【日程】

■ 第14回
(2017年9月2日(土)〜11月30日(木)23:59)

※ルールは随時修正追加予定です
※風死様によるスレッド「SS大会」を継続した企画となりますので、回数は第11回からとしました。風死様、ありがとうございます!
http://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?mode=view&no=10058&word=%e9%a2%a8


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【第14回 SS小説大会 参加ルール】

■目的
基本的には平日限定の企画です
(投稿は休日に行ってもOKです)
夏・冬の小説本大会の合間の息抜きイベントとしてご利用ください

■投稿場所
毎大会ごとに新スレッドを管理者が作成し、ご参加者方皆で共有使用していきます(※未定)
新スレッドは管理者がご用意しますので、ご利用者様方で作成する必要はありません

■投票方法
スレッド内の各レス(子記事)に投票用ボタンがありますのでそちらをクリックして押していただければOKです
⇒投票回数に特に制限は設けませんが、明らかに不当な投票行為があった場合にはカウント無効とし除外します

■投稿文字数
200文字以上〜1万字前後まで((スペース含む)1記事約4000文字上限×3記事以内)
⇒この規定外になりそうな場合はご相談ください(この掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」にて)

■投稿ジャンル
SS小説、詩、散文、いずれでもOKです。ノンジャンル。お題は当面ありません
⇒禁止ジャンル
R18系、(一般サイトとして通常許容できないレベルの)具体的な暴力グロ描写、実在人物・法人等を題材にしたもの、二次小説

■投稿ニックネーム、作品数
1大会中に10を超える、ほぼ差異のない投稿は禁止です。無効投稿とみなし作者様に予告なく管理者削除することがあります
ニックネームの複数使用は悪気のない限り自由です

■発表日時
2017年12月3日(日)12:00(予定)

■賞品等
1位入賞者には500円分のクオカードを郵便にてお送りします
(ただし、管理者宛てメールにて希望依頼される場合にのみ発送します。こちらから住所氏名などをお伺いすることはございませんので、不要な場合は入賞賞品発送依頼をしなければOKです。メールのあて先は mori.kanri@gmail.com あてに、■住所■氏名 をご記入の上小説カキコ管理人あてに送信してください)

■その他
ご不明な点はこの掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」までお問い合わせください
http://www.kakiko.cc/novel/novel_ss/index.cgi?mode=view&no=10001

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平日電車やバスなどの移動時間や、ちょっとした待ち時間など。
お暇なひとときに短いショートストーリーを描いてみては。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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勇気 ( No.31 )
日時: 2018/05/26 21:15
名前: 大宮裕也


俺は勇気が欲しい

なぜかって、
俺は意気地なしだからだ。

木に登る事も出来ない

屋上から見下ろす事も出来ない

1人で遠くに出かける事すら怖い!

俺はこんな意気地なしだ。

そんな俺が憎い部分もある

だがしかしそれとは別に
勇気がない事は明らかだ。




さて勇気を
どうやって手に入れようか

インターネットで
調べた方法も役に立たない

本で調べたところで効果はない

このままじゃ俺は
意気地なしとして生きてく事になる

俺への罰としては良いが

それだけは流石に避けたい。

ただでさえ
会社では叱られているのに、

さらに憐れみの目を
向けられるなんて無理だ。

どうすれば良いんだ…

そうだ、
ドッキリを仕掛けよう

俺は驚かせれるって事が分かれば
意気地なしにはならない

それなら勇気があるも同然だろう、

思い立ったら行動だ。

だがどんなドッキリにしようか

やはりここはピエロだろうか。

よし

決めた






ちゃんとピエロの仮装もした、

道具も持った、

うん、完璧だ!

あとは会社へ向えば良いだけ、

車で移動するのは久しぶりだな…

いつも電車通勤だからな

あぁ、やっとこれで

勇気が

手に入る

もうそろそろ会社に着くぞ

さぁ、最期の準備だ!


よしよし、みんな驚いているな

私は道化師です、って言って…
『私は道化師です』

貴方達を殺しに来ましたって言って
『貴方達を殺しに来ました』

ナイフを構えて、

最後は

さよなら、だな!
『サヨナラ』

あとは簡単だ、
ナイフを刺してくだけ!

ほらもう五本も刺したぞ?

これで勇気が手に入った。

あぁ、

そう言えば今なら
なんでも出来る気がする

そうだ、

まだやり残した事があるじゃないか

本当の目的

それは "俺を殺す事" だろ?




あぁ

やっとここまで来た

前は木に登る事も

屋上から見下ろす事も
無理だったのに!

今じゃ屋上から見下ろせる

さぁ

終わろう



『あぁ、やはり勇気のお陰だ
俺への復讐はこれにて終了だな』



満腹の餓鬼 ( No.32 )
日時: 2018/05/31 13:44
名前: 通俺



 それはむかし、むかーしの話。あるところに、一匹の餓鬼がおりましたとさ。そいつは腰布一枚だけ巻いて、いつも山の中で暮らしておりました。
 この餓鬼というものは魍魎の類で、生まれた時から何かを食べており、常に何かを腹に入れていないと気が済まない。また、いくら食うても満腹になれずただはち切れそうになる腹の痛みとそれでも襲ってくる飢餓の感覚に悩みながら生活をしておりました。

 ある日、シカを食べました。切り分ける息の根を止めることも我慢できず、丸のみです。けれど満足できません。
 ある日、木を食いました。存外食べごたえこそありましたが、不味いし満腹にもなりませんでした。
 ある日、池を飲み干しました。水なら湧きつづけるので限界まで行ける。そう思いましたがただ張り裂けんほどに腹が膨らんだのみで、そこに充実は一切ありませんでした。

 不味いことはわかるのに、美味しいということがわからない。せいぜい食いやすいとか、その程度。満腹感を覚えたことはないが、空腹というものはよくわかる。
 いっそのことと、腹を空っぽにしてみました。どうせ食うても駄目なら食わなければいい。当然、空いた腹は普段よりも激しく苦しい飢えを訴えていした。餓鬼はこれを無視し、耐えてみることにしました。
 ……数刻の後、辺り一面のものは彼の腹の中に納まっており、その痛みと気持ち悪さで吐いて、また口に入れるものを探しに行きました。
 
 我慢ができない、しょうがない。再び、終わらぬ食事の日々が続いた。少しの後のこと、餓鬼の寝床の近くに奇妙な来客が居りました。
 どうやらその者は、山の近くにある村の代表者らしいのです。彼は餓鬼を見ると仰け反りましたが、少し時間がたつと冷や汗を垂らしながら話を始めました。
 
「おお餓鬼よ、何故山を食い荒らすのか」
「腹が減るからだ。お前らも腹が空けばものを食うだろう」
「程度があろう。このままでは我らが飢えてしまう」
「知れたことか、さっさと出ていかんと貴様も食うてしまうぞ」

 餓鬼が山を荒らすことで山の恵みが減る。もうすぐ冬が来るというのにそんなことをされては。と言われても餓鬼にはどうしようもありません。
 こちらとて飢えるのだ、苦しいのだ。ふざけたことを抜かすのなら……それ以上言う前に、いつの間にか男は逃げるように帰っていきました。

 まったく変な男だった。そう思いながら熊を捕まえた次の日。
 そのまま熊を寝床に持ち帰ると、もっと奇妙なものが居りました。年端もいかぬような子供です。
 ボロ着一枚だけの少女が一人、彼の寝床の近くにポツンと立っているのでした。

「これ、そこの。人のねぐらの近くで何をしている」
「……」

 少女は何も答えません。ただひたすらに無感情の視線を返すのみです。随分と胆力がある子なのか。そう思いもしましたが、本当のところはただ諦めたゆえの境地だと気が付くのにそう時間はかかりませんでした。
 どうやら、彼女は村の生贄にされたようなのです。その手に持っていた一通の手紙から、餓鬼は幼い子供が好みであることを聞いたとか、それをやるので少しでも食べる量を減らしてほしいといったことが書き連ねてありました。

「まったく、誰がこんなやせ細った稚児など好むものか」

 餓鬼にとってそれは心外でした。それは大方どこぞの山姥か何か、いや他の餓鬼でも指しているのではないか。少なくとも餓鬼にそんな嗜好はありません。
 これが丸々太っていればあるいは……とも思いましたが、ほつれた衣服から覗く腕や足の細さから言って殆どが骨と皮です。食いでないそんな子供など腹に入れたところで一日も持たないでしょう。
 大方、生贄という発想に至った後村で厄介者扱いになっていた子供を渡してしまおうということだったのでしょう。

「お前など食うてやるものか。山で野垂れ死に、獣の血肉にでもなるがいい」
「……」

 かと言ってそのまま食うのも気に食わない。彼は子供をほったらかし、熊を食い始めました。流石に熊を生きたまま食うのは不味いか、そう思った彼は四肢をそぎ、大まかに切り分けてからそれを腹に入れ始めました。
 しかし、普段よりもまったく手が進みません。少女がじっとこちらを見つめていたからです。餓鬼は生まれてこの方、ずっと一人で食事をしてきたののですから誰かに見られながら食べるというのを体験したことがなかったのです。
 ようやく熊の腕一本腹に入れ終えると、彼は苛立った調子で子供に話しかけました。

「人の食う様がそんなに面白いのか貴様は」
「……」
「それともそんなに食うて欲しいのか」
「……」

 少女は何も答えません。ただ無表情で揺れない視線を返すのみです。そこまで困るのならば殺してしまうのが一番手っ取り早かったのでしょうが、彼はそれをすると負けた気分になるだろうと思いました。
 ふと、まだ残っていた熊の肉が目につきました。同時に彼女が酷く痩せていたことを思い出しました。

「……」
「……?」

 単なる思い付きですが、餓鬼は木を食うた際に零れ落ちたのであろう枯れ木を集め、火をおこしました。小さく切り分けた肉を炙り、子供に渡してみました。
 しかし、少女は僅かばかり首を傾けただけで、まったくその意図を介していません。しびれを切らした彼は強引に熊肉を少女の口の中に突っ込みました。

「ッ! …………」
「どうだ、うまいか」

 肉の味など味わったこともなかったようで、少女は目を見開きました。そうしてゆっくりと顎を動かし始め、咀嚼を始めました。
 餓鬼はそれを見て、美味なんて分りもしないのにそう零し、自分の食事に戻りました。気のせいか先ほどよりも手が進み、自分でも熊の手を炙ってみたりして口に入れています。ですがやはり、味がわかりません。木などに比べればマシということはわかるのですが、美味しい……とは思えませんでした。

 数分後、気が付くと少女が先ほどよりも近寄ってきているのが餓鬼にはわかりました。どうしてか、その眼には先ほどよりも活力というものが宿っている気がします。それを見て少し楽しくなった餓鬼。また適当肉を焼いては渡しました。女の子は今度は素直に受け取り、ゆっくりと口に入れます。

「──っ、ん!」
「……そうか、うまいか」

 ようやく、年齢に見合った振る舞いを彼女は見せました。両手でほっぺを押さえ、その感覚を少しも逃がしたりはしないとしながらも感動で打ち震えています。
 ここまでは餓鬼の思いどおりでした。精神的に死んでいて自分を恐れもしなかった少女、彼女に食料を与え生への渇望を取り戻させる。
 その後に……実に魍魎らしい思考をしていたのです。ただ一つ、誤算がありました。

「木の実も食うか、何か食うてみたいものはあるか」
「ぁ、あ!」
「そうか、今は肉がいいか」

 餓鬼はすっかり、とても美味しそうに物を頬張る彼女にほだされていたのでした。溢れんばかりの喜色を放つ彼女を羨ましく思い、別に食うのはまた後でいいかと彼は企みを先送りにしました。
 熊を一頭、二人で食べきった頃には少女は疲れと満腹感からか眠りにつきます。とても幸せそうに眠る彼女を見て、餓鬼は微笑みました。
 さて、じゃあ自分は次の獲物でも……そうやって出かけようとした時です。彼はあることに気が付きました。

「……?」

 腹をさすり、調子を確かめます。
 不思議と、空腹感がありません。それどころか、どこか満ち足りた……今まで感じたことのない幸福感がありました。眠気がありました。
 餓鬼は、彼は、少女と食事をともにしたからでしょうか。
 いつの間にやら、満腹になっていたのです。




--終
 

星と涙 ( No.33 )
日時: 2018/06/01 00:15
名前: 一青色

あいつは頭が良い。
顔が良い。
性格も良い。
運動だってできる。
財産だってある。
俺が初めて敗北した相手で、憎くて憎くて仕方なかった。幼い頃からずっと。あいつさえいなければ俺は選んでもらえる立場なのに、あいつがいるから選んでもらえない。
「涙(るい)、一緒に帰ろう」
同じ学校で、同じクラスで、同じ部活で。
嫌で仕方ないはずなのにそれでも一緒にいる理由って一体何だ?
「涙、父さんとどう?」
「...関係ないだろ」
部活の帰り道。もうすぐ8時になる外は星が瞬いていた。
「母さんは、元気だよ」
「どーでも良い」
そっか、小さく言うこいつに罪悪感なんて覚える必要なんてない。それでも、胸が痛むのは何故なのか。
「俺ね、死のうと思うんだ」
「...理由は?財産があって、平和で過ごせる今の環境のどこに不満があるんだ?」
なぁ、教えてくれよ。
死のうと思う、そう言われて怒りがわくのに、殺意がわいたのに。それでも生きてくれと願うのは何でだ?
「死にたい?なら、俺が殺してやるよ?」
なのに矛盾した俺の行動。
そっと、細い首に手を掛ける。

本当はわかっていた。
嫌で仕方ないはずなのにそれでも一緒にいる理由。
「星、俺はな...」
こいつがただ羨ましかった。同じ日に産まれて、同じような顔なのに俺はどこか足りなくて。
父さんと母さんが離婚するときだって金持ちの母さんには当たり前のようにこいつがついていった。暴力の酷い父さんを俺に押し付けて。
「お前が大っ嫌いなんだよ」
だから、殺してやる。お前もそれを望んでいるから。
力を思いっきり込めて、首を締める。
苦しそうな呻き声。でも最後は幸せそうな笑顔で。
パクパクと口を動かして、力尽きた。
「でもな、お前はたった一人の俺の弟なんだよ」
双子の弟の星。嫌いになりきれなかったのは家族だから。そんな、綺麗事。

願わくばー...。
『涙兄、ありがとう』
最後の言葉がそうであったことを願う。
「俺も、すぐ行くよ」
パパーっと大型トラックのクラクションが鳴る。
まばゆい光が俺を照らす。
俺は、お前が憎いのと同時に愛しかった。
だからこそ、辛かった。
でも、それももう終わりー...。


〜遺書〜
僕は涙兄と二人が良い。
財産も、人望も、何もいらない。
生きていたくない。
息を吸うのさえ億劫だ。
なら、涙兄と死ぬしかない。
空っぽだ。


後日

「星くん、本当に死んだのかな」
「何、怖い。葬式だってしたじゃない」
「でもさ、涙君は生きてるじゃない?」
「植物状態だけどね」
「凄い、涙くんにコンプレックスあったんだっけ?」
「凄い執念ありそうだよね。まだここにいたりして...」
やだー、こわーい。
兄弟の美談だって周囲には格好のネタでしかないのだ。

(終)

罪 ( No.34 )
日時: 2018/06/23 15:24
名前: KI墓場ブラ太郎

誰もが恐れる事。それは死。
でも、考えてごらん?
生きる事は、人生に一度しかない。
死ぬ事も、人生に一度しかない。
つまり、生きる事も死ぬ事も一緒なのさ。

罪。罪は消えない。
生きてようが、死んでいようが。
でも、だからと言って、地獄にも行かないし、ディーテの城門に行くわけでもない。
だって、神様はいい人だから。

罪を犯した人の中で、一番悪い人は誰だと思う?

A、人を殺し、埋めたが、罪の重さを知り、自分が殺してしまったんだ、と謝って掘り返し、警察にちゃんと伝え、ご家族に謝り、逮捕される男。

B、友達がお金を頑張って貯めて、全財産を使ってプレゼントを買ってくれた。しかし、そのプレゼントはそんなに好きでもないし、お金が欲しいので、友達から貰ったプレゼントを内緒で売る女

誰が一番、悪いと思う?

「えっと…どちらも酷いですが、やっぱり、人を殺したAさん?」

馬鹿だね。正解はBさ。
友達は全財産をプレゼントに使ってくれたんだよ?優しいだろ?
なのに、売ったんだよ?内緒で。
そんなの、友達からしたら無駄遣いだったし、親友だと思ってたBに、プレゼントしたのに売られたんだよ?
悲しいはずだよ。

「確かに…そうですね…」

親友に嘘つく女はだいたい、まだ何か隠してるよ

「そうでしょうか…?」

そうさ。この世界は、人を殺したからって理由で逮捕するけど、そんなつもりない人だっているさ。
例えば、自殺するために、車の前に飛び出して死ぬ。
信号無視して、車に轢かれる。
見通しが悪く、確認できるものもなく、少し待って安全を確認し、仕方なく通ると、高校生が自転車を飛ばしながら来て、ぶつかる。

何か悪い事をした人はこの中にいる?

「いません…世界は、少し理不尽ですね…」

それだけじゃない。顔が気持ち悪いからっていじめられる子もいるし
貧乏で臭いからっていじめられる子もいる!!
貧乏なのは仕方ない、いじめるんだったら金をくれよって思うよね?
顔が気持ち悪い?そんな風に産まれてきたくて産まれたんじゃないんだよ

みんな必ず、どこかしら悪いところはある。
だから、みんなで補い合って生きて行かなくてはならない!

罪は必ずある。だけど、その罪を擦り付ける奴もいる。

「それが、世界の本当の姿…?」

そう。世界は罪で溢れ、人間はその罪を擦り付け合っているのさ。
君も、僕も。

「そうですね。今、こうやって、私達、罪を擦り付け合っていますから」

確かにね……ねぇ、こうしよう?


あいつがやったってことに、さ

「それが良いですね。私にとっても、貴方にとっても。」

共に、警察に捕まらない事を祈ろう。

「貴方が警察に捕まりません様に…」

君が、警察に捕まりません様に…

「「捕まった時、二人共に死刑だから、ね」」

歪な世界で ( No.35 )
日時: 2018/06/24 22:46
名前: 片岡彗


「私…もうここにはいられないの。」

彼女はいつも唐突だった。
出逢いだって、「好き」だと告げるのだって、いつだって唐突で。
「な…に言ってるんだ…?」
ぽつり、と溢れた自分の声は、それはそれは弱々しい。
君の小さな手を握る手が震える。

別れを告げるのさえ唐突なんて、そんなの絶対許さない。

「私はね、ここにいちゃダメな人間なんだよ。禁忌を犯したの。」
『禁忌』。
その言葉にそぐわないほどの美しい笑顔で彼女はそう言った。
「今から言うこと、真剣に聞いてほしい。」
そう前置きをして、彼女はほんの一瞬瞳を伏せた。
「私は……今から10年後の未来から来たの。」
「………………え?」
思わず肩の力が抜ける。
なんて馬鹿げた、ファンタジーな話を彼女は真面目な顔でするんだろう。
「信じてもらえなくていいよ。だから、一つの不幸な少女の物語として聞いてほしい。」
彼女の瞳が不安と、切なさ、それから苦しみ、たくさんの感情で揺れる。
信じられる訳ない、という思いと、何処かで納得しかけている矛盾だらけの自分。
そんな顔で見られたら、頷くしかないじゃないか。
俺の無言を肯定と捉えたのか、彼女はぽつりぽつりと語りだした。



私のいる世界…10年後の未来は、科学が進み、人間がとうとう時間を操れるようになっていた。
時間が操れる…つまり、自由に過去や未来を行き来したり、時を止めることができるようになったのだ。
どう?素敵だと思う?
そう。"最初は"素敵なことだと思われていた。
でも、それが当たり前になったとき、良からぬことを考える人が出てきた。
始まりは小さなこと。
少し未来に行って、テストの内容をカンニングする。
同じ手口で、宝くじを当てるとかね。
それがどんどんエスカレートして、人生を意のままにする人が出てきた。
自分の思い通りにならないこと、気にくわないことがあれば、安易に過去を変えだしたのだ。
『過去を変える』ことは犯罪だった。
でも"本当の"過去なんて、本人以外は誰も知らない。
警察も取り締まることは容易ではなかった。だから、見過ごされてきた。
暗黙の了解となっていた部分は少なからずあると思う。
たくさんの人が、同時に自分本意に過去を変えれば、それはもちろん混乱が起こる。
だって、万人が望む人生なんて、存在しないのだから。
誰かの人生を尊重することは、同時に誰かの人生を犠牲にすることと繋がっている。
そうして、私のいる世界は瞬く間に壊れていった。
全員が自分が一番だと提唱する姿はそれはそれは醜かった。
ここまでの状態になって、やっと世界は『時を自由に操ること』を禁止した。
明らかに遅かった。
みんなもう、それなしでは生きられないほど、馬鹿になってしまっていたのに。
世界各地でデモが起こった。
そんなニュースばかりが毎日のように取りざたされた。
それを見るたびに、私は凄まじい吐き気と、頭痛に襲われた。
私は、当初から、この『時を行き来する』ということがいかに恐ろしく、気持ち悪いことか、16歳ながらに理解していたから。
だから、一度たりとも時空を飛び越えたりはしなかったし、それを当たり前のごとくする人たちに、説得だってしてきた。
でも、誰一人として私の声には耳を傾けてはくれない。
むしろ、理不尽な罵声をたくさん浴びせられた。
あの世界に、私の味方はいなかった。
そんなときだった。彼に出逢ったのは。
彼は、私と同じ考えだった。
彼は私よりも10も年上だったけれど、好意を抱くのにそう時間は掛からなかった。
すぐに大好きになって、私の居場所は彼だけになった。
でも…彼にとっての居場所は、私ではなかった。
彼にはもう、結婚している人も、子供もいたのだ。
彼は私のことを妹のように可愛がり、「君みたいな考え方の子が好きだよ。」なんて、残酷なことを何度も言った。
酷い話だ。
だって、彼が結婚しているあの人は、簡単に過去を変える、あっち側の人間なのだ。
彼の言葉は嘘ばかりで、その場かぎりなものばかりだった。
もしかすると、私の好意にも気付いていたのかもしれない。否、きっとそうだろう。
気付いた上で、その好意を決して受け取らず、私に期待をさせるようなことばかりを言っていたのだ。
何度嫌いになろうとしたか。
最早数えられない。
それでも、好きで好きでどうしようもなくて、奥さんと子供を連れて幸せそうに笑う彼を見つめていることしかできなかった。
だから…
そんなことを、ずっとしてきたから、魔が差してしまったのだ。
結婚をしていない、あの人とまだ出逢っていない、彼に会いたい、彼と同じ年で、同じ目線で会話したい、なんて…そんなことを思ってしまったのだ。
今までずっと忌み嫌っていたものに、すがろうとしてまで自分の思いを叶えたいというはじめての欲求。
ああ、みんなこんなひりつくような想いで、過去を変えていたのだろうか。
なんて自分勝手。
あんなに批判していたのに。あんなにたくさんの人を蔑んできたのに。
もういっそ、死んでしまってもいい。
どす黒いほどの重い『好き』は、私を禁忌へと誘った。

『見るだけ』、から『声をかけるだけ』、『想いを告げるだけ』そうやってどんどん行動はエスカレートして、もう後戻りできないところまで来てしまった。

結局、私は、自分が可愛くて仕方のない、最低の人間だった。




彼女の語った内容は、余りに暗く、辛いものだった。
「……猶予は、50日間なんだって。いくら科学が進んだって言っても、それ以上は無理みたい。強制的に向こうの世界に戻されるんだって。それがね、今日なの。」
自嘲気味に笑う彼女に、僕は何も言えなくなって俯く。
「私は………未来の貴方が好き。でも、ここに来て、それ以上に貴方が好きになった。本当…最低だよね。自分だけ幸せになって、貴方を放って行くなんて。」
幻滅したでしょ?と消え入りそうなほど小さな声で彼女は囁く。
背景に溶け入ってしまいそうなほど真っ白な肌を、透明な雫がそっと伝う。
ああ、なんて…
「(綺麗なんだろう。)」
このタイミングでそんなことを考えるとか、不謹慎だって分かってる。
さっきまで、信じられるわけないと思っていた自分が嘘みたいに、腑に落ちている自分がいた。
法を犯してまで僕を追いかけてきた彼女のように、僕もきっと_
「僕は、ちゃんと君が好きだ。君の未来にいるその男と、僕は違う。僕は、出逢ってから今までずっと、君だけが特別で、愛してる。だから…」
彼女の華奢な体を引き寄せ、優しく抱き締める。
「自分を責めないで。」
なんて、歪な言葉。
16歳に、恋も愛もわかるはずなんてないのに。
この脆すぎる想いにすがって、彼女の肩に顔を埋める。
「貴方は……私があっちに帰ったら、私のことはすぐに忘れちゃうの。だって、本来、私たちは出逢うはずがなかったんだから。」
彼女の俺を抱き締め返す手がほのかに震える。
「………僕が忘れたら、君が思い出させてよ。」
綺麗事だって分かってる。それでも、それくらいしか彼女を安心させられる方法を僕は知らない。
「貴方は…私に甘過ぎるよ。」
彼女は困ったようにはにかんだ。
愛しくて愛しくて。
僕が彼女の柔らかな黒髪をふわりと撫でたとき。
彼女の体は真っ白な光に包まれた。
「ごめんね……もう…駄目みたい……。」
「……うん。」
「大好き。大好きよ。」
「…知ってるから。」
ボロボロと涙を流しながら、彼女は笑っていた。
本当、勝手だよ。
僕の心には、もう君が住み着いていて、君無しじゃ生きられないのに。
本当は、
この体を離したくない。
君の声を香りを笑顔を、思い出を忘れたくない。
でも、それは無理なんでしょ?
なら、僕にはこう言うしかないよ。
「僕も共犯だ。だから、未来を変えるよ。僕のとなりで、君が笑っている未来を、実現して見せるよ。」
堕ちるなら、僕も一緒に。
君となら何処まででも落ちていい。
短い間でも、君へのこの曲がった思いは、誰にも否定させないから。
僕の言葉に、彼女は目を見開いて、それから、懇願するように、僕の服を強く掴んだ。
「_____……!!」
彼女の姿は完全に溶けて、空に消えていった。
それはそれは、幻想的で、美しいものだった。



10年後。

出逢った。
この狂った、歪な世界で、僕は柄にもなく、一目惚れをした。
それも女子高生。もう、26になる大人なのに。犯罪の他、何でもない。
でも、声をかけないと絶対に後悔する、と僕の中の誰かが叫んだのだ。
艶やかな黒髪をなびかせる彼女の真っ白な手を掴む。
掴まれた彼女は驚いたように振り向いた。
「……迎えに…来た!!」
本能的に出た、意味不明な言葉。

_な、なに言ってるんだ僕は!!

自分で自分の言葉に焦る。
なんとか弁解しないと、そう考えていた矢先。
「……!……はいっ!!」
彼女は瞳に涙を浮かべ、嬉しそうに微笑んだ。
どき_…。
初めて逢ったはずなのに、そう感じない、懐かしい想いが俺の中に沸き上がった。
「ずっと、貴方を待っていました…!!」


…end.

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