SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

第14回 SS小説大会 開催!〜 お題:争い、憎しみ 〜
日時: 2017/09/09 19:00
名前: 管理人 ◆cU6R.QLFmM

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【日程】

■ 第14回
(2017年9月2日(土)〜11月30日(木)23:59)

※ルールは随時修正追加予定です
※風死様によるスレッド「SS大会」を継続した企画となりますので、回数は第11回からとしました。風死様、ありがとうございます!
http://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?mode=view&no=10058&word=%e9%a2%a8


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【第14回 SS小説大会 参加ルール】

■目的
基本的には平日限定の企画です
(投稿は休日に行ってもOKです)
夏・冬の小説本大会の合間の息抜きイベントとしてご利用ください

■投稿場所
毎大会ごとに新スレッドを管理者が作成し、ご参加者方皆で共有使用していきます(※未定)
新スレッドは管理者がご用意しますので、ご利用者様方で作成する必要はありません

■投票方法
スレッド内の各レス(子記事)に投票用ボタンがありますのでそちらをクリックして押していただければOKです
⇒投票回数に特に制限は設けませんが、明らかに不当な投票行為があった場合にはカウント無効とし除外します

■投稿文字数
200文字以上〜1万字前後まで((スペース含む)1記事約4000文字上限×3記事以内)
⇒この規定外になりそうな場合はご相談ください(この掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」にて)

■投稿ジャンル
SS小説、詩、散文、いずれでもOKです。ノンジャンル。お題は当面ありません
⇒禁止ジャンル
R18系、(一般サイトとして通常許容できないレベルの)具体的な暴力グロ描写、実在人物・法人等を題材にしたもの、二次小説

■投稿ニックネーム、作品数
1大会中に10を超える、ほぼ差異のない投稿は禁止です。無効投稿とみなし作者様に予告なく管理者削除することがあります
ニックネームの複数使用は悪気のない限り自由です

■発表日時
2017年12月3日(日)12:00(予定)

■賞品等
1位入賞者には500円分のクオカードを郵便にてお送りします
(ただし、管理者宛てメールにて希望依頼される場合にのみ発送します。こちらから住所氏名などをお伺いすることはございませんので、不要な場合は入賞賞品発送依頼をしなければOKです。メールのあて先は mori.kanri@gmail.com あてに、■住所■氏名 をご記入の上小説カキコ管理人あてに送信してください)

■その他
ご不明な点はこの掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」までお問い合わせください
http://www.kakiko.cc/novel/novel_ss/index.cgi?mode=view&no=10001

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平日電車やバスなどの移動時間や、ちょっとした待ち時間など。
お暇なひとときに短いショートストーリーを描いてみては。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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Update memorys(下) ( No.11 )
日時: 2017/10/19 21:36
名前: 北風

「ここが、わたしの通ってた教室……?」

そこは、何の編鉄も無い教室でした。
少し古い所を除けば、学園ドラマの撮影現場にでもなりそうな、余りにも普通の教室。

「そ。何か思い出さないかな」
「……」

目を凝らして部屋の隅々を見渡すものの、引っ掛かるものはありません。

「ごめん、佳乃ちゃん……」
「いやいや大丈夫だよー。仕方無いよね、この教室、面白み無いし。あははっ」

折角の学校訪問が無駄足になったのにも関わらず、朗らかに笑う佳乃ちゃん。
本当にこの子は良い子だ、と思うと同時に、申し訳なさで胸がいっぱいになります。
目を合わせられずに俯いていると、

「あ、そうだ!」

佳乃ちゃんが何か思い出したように声をあげました。

「これ、私の当時の教科書とかノート! 持ってきてたんだった!」

彼女が鞄の中から取り出したのは、一冊の教科書と二冊のノートでした。

「これ見たら何か思い出すんじゃない?」
「え? そうかな……」

教科書やノートなら自分のものを既に見ていますし、教室を見ても何も思い出さないのに、正直思い出すとは思えません。

「そうだよ! ほら、見てみて!」

佳乃ちゃんに渡された教科書とノート。
わたしは何の気なしにノートを一冊、開いてみました。



『死ね   ぶりっ子   何で生きてるの?   自己チュー   学校来んな     死ね    死ね死ね   帰れ   馬鹿  ブタ   ブス   死ね  殺す 死ね  ジイシキカジョー   死ね   死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死』



「きゃあああっ!!」

わたしは悲鳴をあげてノートを放り出しました。
見れば、教科書の表紙ももう一冊のノートも、表紙が何かで切りつけられたように破れていた。
それらも続けて投げ出します。
バサリと音をたてて転がったのは、佳乃ちゃんの足下。

「あ……」
「どうしたの? ハコ」

佳乃ちゃんは何でもないような笑顔でそう言うと、床に転がるノートを拾い上げた。

「あっれえ? 思い出せないかなぁ?」
「あ……あぁ……」

ゆっくりと近付いてくる佳乃ちゃん。
何故かわたしは逃げることが出来ません。

「そんなはず無いよね? だってこれ……」

出来ない。
逃げることが。
足が縫い付けられたように。
貼り付けられたように。
逃げられない。
わたしは。
私は。
山里佳乃から。
山里から。
逃げられない。


「箱根小毬、あんたが書いたものだもんねえ?」


「う、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああ! ああああああ、ああああああああぐっ!」
「煩いなあ、先生達が来ちゃうでしょ?」
「ぐ……むゔ……え゙っ……」

私の口に突っ込まれたのは、ボロボロのノート。
それをぐりぐりと押しながら、山里は言った。

「ねえ、思い出した? あんたが何で記憶喪失になったのか」
「ゔっ……ご……」
「親友が自殺したことによるショック。はっ、笑えるわ」

山里が顔を歪める。
ノートが口に詰め込まれ、息が出来ない。

「あんた、中学の時に自分がクラスメイトを虐めて自殺させたこと、忘れたの? ほんっと鳥頭だね」
「ん゙ッ……ぐえ゙っ……おえ゙ぇ……」

胃から食べ物が逆流してくる。
だが、口が塞がれているため全て吐き出すことが出来ず、吐瀉物は鼻に流れ込んだ。

「ああ、そうだよ。このノートは私の親友、棚橋未来のものだよ!」

見上げる山里の顔が涙で歪んで見える。
気付けば全身がガタガタ震えていた。
息が出来ない。
意識が遠退く。

そこでやっと山里の手の力が弱まり、私はノートを床に吐き出した。

「げほっ……げほっ……! うっ……ええ……」
「きったないなあ! 信じらんない!」
「うっ!」

四つん這いになって吐いていると、横合いから頬を蹴られた。
起き上がる間も無く胸元を掴んで立たされる。

「私はねえ……ずっとあんたに復讐してやろうと思ってたんだよ……。それが、記憶喪失? 親友の死のショックで? 自分の大罪を、全部忘れた? ……ははっ……あはは………………ふざけるな!!!!」
「ひっ!」

胸元を掴まれたままぐいぐいと押されて、気付けば私は窓を背にして立っていた。

「絶対に記憶を戻してやろうと思った……記憶を戻してから復讐しようと……」
「あ……あっあっ……あっ……」

どんどん押される。
いつの間にか開けられていた窓から、頭が出る。
怖い、怖い。
力が出ない。

「死ねよ、箱根。死んで償え」
「あ……あっ……あっあっあっ」

窓から首が出る。
背中が出る。
腰が出る。

「最後に言い残したことは無いか」

塵を見るような目で、山里が吐き捨てた。

「あ…………ぐっ……」

その目が無性に癪に触り、私は歯を食い縛って山里を睨み付けた。

そうだ。
こいつは、棚橋未来の友達だった。
でも、私や他のクラスメイトが棚橋に何かしても、山里は遠くから見ているだけだった。
その癖、棚橋が自殺してから復讐?
あまつさえ、私の親友の死を笑った?

恐怖を怒りが塗り替えていく。
もう、山里が私の胸元を掴む力を弱めれば、私は窓から真っ逆さまだろう。
ここは三階。
足から着地すればまだ助かるかもしれないが、この体勢だと頭から落ちる。
私は、きっとどう足掻いても助からない。

それなら──

「何、その目」

思いっきり憎まれ口を叩いてやろう。
呪ってやろう。
祟ってやろう。

そう思って開いた私の口から飛び出した言葉は──



「佳乃ちゃん、三ヶ月間、ありがとう」



──あれ?

わたしは、驚いて目を見開きました。

佳乃ちゃんの顔が、わたしと同じ驚きに染まった後、笑っているのか泣いているのか分からない表情に歪みました。

胸の圧迫感が無くなりました。

シーソーのようにゆっくり傾いた体は、みるみるうちに加速していきます。

全部思い出したはずの私の脳裏に浮かんでいくのは、この三ヶ月の出来事ばかりでした。


佳乃ちゃんは、記憶喪失になって不安なわたしを安心させてくれました。

佳乃ちゃんは、家族と気まずくて家に居場所の無いわたしを遊びに連れ出してくれました。

佳乃ちゃんは、いつもわたしに穢れの無い笑顔を向けてくれました。


遠ざかる入道雲。


耳に吹き付ける風音に掻き消される蝉の声。


溢れ出して止まらない涙。



佳乃ちゃんがわたしをどう思っていようと、わたしは佳乃ちゃんが大好きでした。


さようなら、佳乃ちゃん。



わたしの、初恋のひと。

                              End.

昼下がり、出会いは唐突に。 ( No.12 )
日時: 2017/10/25 17:29
名前: おそら

 それは、夏手前の暑い日のこと。私は、屋上で彼女に出会った。

とある昼下がり、彼女はそこに立っていた。

父は大手企業の社長、母は由緒ある家の長女。そんな家に生まれた、所謂お嬢様の私は、授業を受けずともテストで1位を取れる成績にいた。
だから今日も、こうして_

「秀才お嬢様は、授業サボってもいいのかい?」

後ろから声がする。振り向くと、黒髪の彼女がいた。

「あら、初めまして。…成績が良いのですから、教師も何も言いませんわ。もっとも、私の父母が怖いのでしょうけど。そして、お嬢様と呼ばれるのは、あまり好ましくありませんわ。」

「そう、すまないね。それに、サボっても成績がいいなんて、皮肉なものだ。」

「そうかもしれないわね。」

「ああ」

立場上、あまり人に話しかけられることのない私は、案外普通に話しかけられて少し驚いた。
それに、彼女の出す独特の雰囲気には、どこか覚えがある気がした。

彼女はこれ以上話しかけず、空を見上げた。名前は聞かなかった。
入道雲が、大きく広がっていた。



風になびく彼女の髪を見つめながら、私は訪ねる。

「ねぇ、貴方は、他人と関わるのがお嫌い?」

「他人?そうだね、嫌いでは無いけど、好きでもないな。僕はグループでおそろい、とか、そういうのが嫌いだ。」

少し遠くを見つめて、彼女は続ける。

「いつかいじめになるかも知れない。」

「いじめは許せない人ですの?」

「許せない、は違うかな。僕は他人を下げることでしか自分をあげられない価値の無い人間は嫌いだ。」

「あら、それは私も同感ですわ。」

彼女は視線を変えないまま、呟く。

「君は、いじめに関わったことがあるかい?」

「僕はね、昔関わっていた。毎日うんざりだったよ。」

彼女は笑う。いじめられていたのだろうか、傍観者だったのだろうか。


それとも。


「私もありましたわ。あの頃は、いじめられていた人間を嫌っていました。」

「そうだったのか。」

「ええ、当時の私は愚かでしたわ。」

「愚かだと思える人間は、愚かじゃないさ。」

「そうでしょうか。」





__少し、昔話をしよう。

ある小学校に、裕福な家庭に生まれた女の子がいました。
お嬢様だった6年生の彼女は、とてもプライドが高く、クラスで一番にいないと気がすみませんでした。
彼女は完全に独裁者で、逆らえる人はいません。それは、担任にしても、です。

そんなとき、クラスに転校生が現れました。明るく気さくな少女で、瞬く間に人気者になりました。
少女は、紫苑という名前でした。そんな少女を、彼女は深く恨みました。

だから、いじめて、いじめて、ひたすらいじめました。そんな彼女を止められる者はおらず、少女は
卒業までひどい仕打ちを受けました。

中学はだいたいみんな同じところで、少女だけが別の学校に進学しました。

進学を機に、彼女は自分の愚かさを知りました。でも、少女への恨み_妬みは変わりませんでした。




それが、私。人をいじめた、最低な人間。愚かじゃないなんて、言えない。

私は唇をかみしめる。でもこれは、私の中だけの秘密。


そして彼女に尋ねる。

「ねぇ、貴方は、かつていじめていた人間をまだ恨んでいますの?」

これは単に気になっただけだった。もしかしたら、なんて思った。

「あぁ、もちろん。来世まで恨んでいるよ。」

「君は?いじめられていた人を恨むなんて変な話だけれど、まだ嫌っているのかい?」

「__ええ。とってもとっても、嫌い_大っ嫌いよ。」

口調を変え、吐き捨てるように言う。これは本心だ、と知らせるために。

すると彼女は、やっと私の方を見て、笑った。微かだけど、笑った。

私も笑った。彼女も分かっている、と分かっていた。きっとこれは、心からの笑いだ。

「君は面白いな」

「そうですの?」

「ああ。」

彼女__紫苑は、それじゃ、と短くあいさつし、去ろうとした。

「待って。一言言わせて。」

「なんだい?」



「___紫苑、私、あなたのこと大っ嫌い。死ねばいいと思ってる。」



思いっきり睨んで言う。すると彼女も言った。



「そう。僕も、君ほど最低なやつはいないと思う。」



「じゃあね、最低な四葉ちゃん。」



紫苑はそう言って居なくなった。

四葉。そうか、私の名前。自分の名前を、久しぶりに呼ばれた気がした。
紫苑が何を伝えたかったのかは分からない。でも、それでいいと思った。

「やっぱり、紫苑は嫌いだ。」

_自分が、惨めになる。








これは、夏手前の、暑い日の、いじめっ子といじめられっ子との、再会と別れのおはなし。








昼下がり、それは入道雲の大きな日だった。出会いと別れは、唐突に訪れる。

甘い匂い ( No.13 )
日時: 2017/10/31 13:02
名前: 猫まろ

彼女はいつもと変わらない、甘い匂いをまとっていた。
といったところで少し質問をいいかな? なぁにすぐに終わる簡単な質問だよ。
君は『甘い匂い』と聞いてどんな匂いを想像したのかな。

甘いバニラの匂い?

それともチョコレートの匂い?

キャンディーやキャラメルの香ばしい匂い?

ちょっと酸っぱいレモンの匂い?

すずらんの可愛らしい感じの匂い?

石鹸の清潔感ある匂い

それともそれ以外の香りかな。僕の彼女の香りはそれ以外の香りかな。
たぶん君はまだ知らない香りだと思うよ。
え? じゃあどんな香りなのか教えてくれって? 仕方ないなぁいいよ教えてあげよう。

――それはね



                                        死臭だよ

終末機関 ( No.14 )
日時: 2017/11/03 00:55
名前: Kuruha

 午前7時。
 ようやく眠ろうかという時に、スマホが鳴った。

「仕事です。支度ができ次第、本社まで」

 ああ、そっか。今日なんだ。
 そういえば、ネットにそんな記事があったかも。

 そう勝手に納得していると、眠気がいつの間にか、どこかへ行っていた。高揚感と緊張感に刺激されているせいかもしれない。
 私は辛うじて年齢に合うだろう服装を選んで、最低限の身なりを整えた。

 さて。働きますか。



 実は、私はニートだ。
 働いていないし、職業訓練も就職活動もしていない。学業なんて、ここ20年ほど縁がない。
 っていうか、ぶっちゃけた話私は引きこもりで、ここ15年近く家を出ていない。
 けれど、一応私は会社員という身分があり、毎月給料をもらっている。それも、年収にしてしまえば1,200万円を超える大金をだ。
 それにはちゃんとした理由がある。私は、理由があってニートをしている。

 今日は2回目の出勤だった。

「意外と遅かったですね。どうぞお座りください」

 『本社』の応接室の中、ヤナギと名乗った、私より幾つか若そうな男性が言った。

「ちょっと、スーツを買ったり髪を切ったりしてたもんで」
「ああ。成る程。よくお似合いですよ」

 別にスーツでなくてもよかったのに、とヤナギさんは苦笑する。
 生憎、私には仕事イコールスーツの式が成り立っているため、スーツ以外の選択肢は思い付かなかった。
 ちなみに、髪を他人にいじってもらったのは15年振りの出来事だ。ついでに化粧も施してもらった。これに至っては、はじめての体験である。
 化粧の仕方なんて忘れてしまった。そもそも、家にある化粧道具はとうにカビてしまっているだろう。

 私は促された席につく。その正面にヤナギさんが座ると、見計らったようにOL然とした女性が入室してきた。
 彼女はティーポッドとカップを持っていて、私とヤナギさんに紅茶を給仕してくれた。座ったまま会釈をすると、にこやかに微笑んで会釈を返してくれた。若いのにちゃんとしてるなあと、おばさんらしい感想を抱いた。
 いや、普通おばさんなら「最近の若い子は……」なんて思うのかもしれないけれど。

「早速ですが、本題のほうを。どうぞ、飲みながら聞いてください」

 自ら紅茶のカップに手をかけながら、ヤナギさんが言う。それに倣って、私も紅茶を口に運ぶ。
 味は、ティーバッグに慣れ親しんだ舌に革命を起こすような味がした。美味しいという言葉すら、まだ足りない。

「気に入っていただけましたか? これ、うちのオリジナルブレンドなんですよ」
「すごいですね。美味しいです」

 自分の語彙力のなさを呪った。

「それはなによりです。さて、今回アサヒさんに押していただく“ボタン”なのですが、……こちらです」

 差し出されたのは、小さな箱だった。開くと、赤いボタンがある。

「これを押すと、世界中で3秒間、人間を動く死体に作り変えるウイルスが散布されます」

 言ってしまえば、ゾンビ化ウイルスですね。と、いかにも真面目な声音で続けられる。

「本当に、出来上がったっていたんですね」
「ええ。そして、明日が人類滅亡の日です」

 神の予言の遂行こそ、我ら“終末機関”の悲願。
 一番初めに聞いたことだ。
 そのときは、神様を信じているんだか信じていないんだか、わからないと思ったっけ。今は、ただの終末論者が神様を体の良いスケープゴートにしているだけなんだろうな、って思うけど。

 まあ、利用されてるのは私も一緒だ。

「このウイルスに感染した人は、約12時間後に発症して、他人を襲い始めます。噛み付かれたことによって唾液が体内に入れば、その人も感染・発症します」

 そうなれば、そう遠くない未来に人類がみんなゾンビになってしまう。それは想像に難くなかった。

「これ、結構な優れモノなんですよ。約1か月間は腐敗を防止することが可能なんです。日本だとそろそろ冬ですから、更に腐敗の進行は遅くなるでしょうね」
「あの、ひとついいですか」
「はい。なんなりと」
「あなた方はどうするんです? ゾンビに……なるんですか?」

 予め聞いてはいたけど、正直、ゾンビにはなりたくなかった。死んでまで他人に噛み付きたくはないし、しばらくは大丈夫だとしても、溶け朽ちるまで徘徊したくはない。
 噛み付くのも徘徊するのも、ネットの中だけで十分だ。

 ヤナギさんは笑顔で、紅茶を一口啜ってから質問に答えてくれる。

「ああ。我々のことよりも、ご自分のことを心配なさっていますね。ご安心ください。この紅茶には遅行性の毒が入っているので、安らかな死をお約束致します」
「っ!?」

 毒という単語を聞いて、思わず固まってしまう。……いや、これから人類を滅ぼそうとする人間がこれくらいで何を慌てている? ……しかしなるほど。死ぬことは確定しているから、今更毒を呷ることはなんてことないと。
 私は取り繕うためにも、カップの紅茶を飲み込んだ。

「……この毒に解毒剤は?」
「もちろんございません。必要ありませんし。ゾンビウイルスと共に、終末機関が作製したオリジナルです」

 これで、私がボタンを押そうが押すまいが、近日中に私自身が死ぬことが確定してしまった。あとヤナギさんも。
 ……美味しかったから、何度かおかわりしちゃったなあ。

「それでは、いかが致しますか? 今押していただいても、少し時間を置いてからでも構いませんが」

 ただ――与えられた職務は真っ当していただきます。
 と。

 そんなことはわかっている。
 けれど、この仕事には人の命が懸かっている。
 地球の人口、73億人の命が。私の指先ひとつで。

 思い出すのは、昔の記憶。
 コンプレックスをいじられ自信をなくし、思考が陰鬱になってからはいじめを受けるようになった。
 なんとか中学・高校を乗り切って就職したけれど、上司はパワハラとセクハラの常習犯だった。もちろん、いじめられっ子の私に告発する勇気なんてなく、惨めにも逃げるように3か月で辞めてしまった。

 そして、今日見た街の景色。
 私がいなくてもまわる、まるで「君はいらないよ」と言っているかのような世界。
 息子と呼ぶにはあまりにも大人びたイケメンと連れ立って歩く、未だに化粧が濃い、かつて私をいじめていた同級生。
 街中の一等地に一軒家を建てたらしい元上司。家を出る前には、奥さんに行ってらっしゃいのキスをしてもらうらしい。きっともうすぐ定年退職して、退職金をたくさんもらうのだろう。

 ……なんで私は、こんなことになってしまったんだろう。
 同級生のせいか。上司のせいか。
 それとも、自分のせいか。

 自分の命は、もってあと数日。どんな死に方をするのかなんて考えたくはないけど、ここの社員はみんなこれで死ぬのだから、そう悪い死に際ではないだろう。

 対して、私がボタンを押したら、あいつらは醜く、死してもなお、動きをやめることを許されない。
 きっと苦しみながら死んで、腐敗しながら本当の死を待つのだ!

 ふふふ。と、自然に口元が笑んでしまう。
 なんだ、躊躇うことなんてなかった。あっさりと、ボタンは押し込まれていく。
 世界は私をいらないと言った。なら、私だってこんな世界はいらない。
 死への恐怖? 他人への憐憫? なにそれ、美味しいの? この紅茶より?



  *



「ヤナギさん、なんであの方を選んだんですか? 別に、我々の誰かが押せばよかったのでは」
「じゃあマヒルちゃん。君はあのボタンを押せたかい? 人類を、殺せたかい?」

 朝日宮子を帰した後、僕はさっきまでお茶汲みをしていてくれたマヒルちゃんとお茶会を始めた。言ってしまえば、最後の晩餐である。
 美味しそうなケーキやクッキー(もれなく毒入り)が目の前を埋め尽くしている。

「……無理です。そんな重大な責、わたしには負えません」
「だろう?」

 僕はマヒルちゃんに、死刑制度の話をしてあげる。
 日本の死刑執行には、5人の執行ボタンを押す刑務官がいる。けれど、実際に執行するのはその内の一人だけだ。あとの4人は、押しているのが誰だかわからなくするためだけにボタンを押す。
 全員が、自分が殺すんじゃないと思いながら、ボタンを押す。

 本来、人を殺すことにはそれだけの重荷が掛かる。

「あの人の格好を覚えているかい? 十数年と引きこもっていたにしては、いい身体をしていたと思わない?」

 きっと、家にはトレーニング器具類があって、自炊もして、太らないように気をつけていたのだろう。

「しかも、ただボタンを押すためにスーツを買い、髪を切り揃えた。かなり容姿にコンプレックスがあったんだと思うよ」

 僕らの前で、自分の醜い姿を晒したくないと思った。
 もうすぐ死ぬ人たちの前ですら、自分のコンプレックスを隠そうとした。
 その強いコンプレックスと、他人を憎む境遇。更に、引きこもりが故の昼夜逆転生活。
 ここまでずっと起きていたといたら、判断力も相当に鈍っていたことだろう。

「きっと、やってくれると思ったよ」
「そのために、ここまでお膳立てしたんですか?」
「そりゃあもちろん」

 高い金を払って、外に出なくてもいいようにもした。
 それに、朝日宮子の様な存在は他にもいる。別室で、それぞれ似たようなことが行われていることだろう。
 死刑と違うのは、ボタンがどれ一つとってもあたりであることだ。

 誰か一人がボタンを押すだけでいいのだ。

「この部屋にいる僕らにとっては、朝日宮子は神様にも等しい。なんたって、予言の日に、世界を滅ぼしてくれるんだからね」

 他の部屋の連中にとっては、それぞれに神様がいることになるが、別に神様が何人いたっていいだろう。
 日本には八百万の神がいるのだから。

 けれど、我々は神じゃなくて、あくまで神様のお膳立てをする存在だ。それが終末機関。

「さあ。我らが神の安らかなる死を祈ろうじゃないか。そして、僕らの悲願を叶えてくれた、神に殉じよう」

ひとりぼっち ( No.15 )
日時: 2017/11/12 21:12
名前: 臨猫(臨)

小さい頃から見てきた二つの影

手を繋ぎながら歩いて帰った帰り道

二人で見上げた綺麗な朱色の空

その全てを鮮明に覚えている


「一人だとひとりぼっちだけど、二人ならどうなんだろ?」

小さい頃疑問に思ったことを親友に聞いてみた。
彼は笑顔でこう答えた

「ふたりぼっちだよ」

その答えにつられて笑いながらこう返した

「なら、僕と君でふたりぼっちだね!」

その答えに親友は.......


ここで親友は僕になんて言ったんだっけかな?

そこだけ思い出せない。

その時の親友の顔も、声も全部黒く塗りつぶされたようになっていて思い出せない。

まあ、いいか。




《よくないよ》

何処かから声が聞こえた気がした

でも、気が付かないふりをした。



「帰ろうぜ!」
「ん、おうよ!」

何時もの細やかな会話。
その会話だけで自然と疲れが消えた。
二人手を繋いで何時もの帰り道を歩きながら夕焼けを見た。
そしてたわいもない会話をして笑った。
これが何時もの日常だった。

でも、今回は違った。
今日だけは....

「だから、ごめんっていってんだろうか!」
「ごめんで済まされることじゃないんだよ!」
「なんなら新しいの買うからさ?許してよ...」
「もう...もう無いんだよ!これは一番大切なものなの!」

僕が彼の大切なえんぴつを折ってしまったことが切っ掛けだったのだ。
中学生にもなってえんぴつを使うなんて俺でもおかしいと思う。
でも、一番おかしいのはそれを何故か大切に使っていることとある特定の時にしか使っていないことだ。
それは、彼の日記。
何時も図書室に彼を迎えに行くと必ず書いているノート。
中身はなかなか見せてくれない。
でも、嬉しそうに書いているから深く詮索しようとはしなかったが、えんぴつだけは気掛かりだった。
何時も僕が彼にあげると直ぐに無くしたり壊したりするのに、そのえんぴつだけは何年も大切にしているのだ。
何で僕のはそんなに大切に使ってくれないのにって思いが一層強まっていき、結果的に折ってしまったのだ。
殴られるかと思ったのだが、彼は泣いたのだ。
思っていた反応とは違い非常に焦ったし罪悪感が一気にきた。
そして今の会話に至る。
「もう、嫌いだ。お前なんて嫌いだ!」
彼はそう叫ぶと教室を出て傘もささずに外に飛び出していってしまった。
僕は、教室の窓から雨が降っている空をずっとただひたすら見つめていた。
数十分見つめているといつの間にか雨は強くなり視界が雨で灰色に染まっていた。
傘が無かったので家に電話を掛けて迎えに来て貰ったが母に彼のことを聞かれて黙ってしまった。
母は優しく微笑み「早く仲直りしなさいよ」とだけ言い、後は何も言ってこなかった。
車で何時もの帰り道を通った時、一つの大きなトラックが猛スピードで横を通り過ぎて行った。
危ないなと思いながらそれ以上深く考えなかった。

この帰り道は彼も通ることを忘れて...


今日のニュースをお伝えします。
今日未明○○市の××町辺りで交通事故がありました。
これによって死亡したのは下校中だった........

何時もの帰り道

綺麗な朱色の空

彼の手の温もり

ようやく思い出した

彼は.....

                 「僕はずっとひとりぼっちだよ」

声が聞こえた気がした。
懐かしい彼の声
思い出した
あのえんぴつは僕があげたものだった
頑張ってお小遣い10円を貯めて買った格好いいえんぴつ
今さら後悔してももう遅い
何もない



満月が綺麗な空

ポツンと一本外灯がある屋上

外灯の光に照されて影が出来ている

ひとりぼっちの影

横に手を伸ばしたら誰かが僕の手を握った

親友が隣にいる

空を見上げれば綺麗な朱色

何時もの帰り道

彼が僕から手を離して何処かに走って行く

それを必死に追いかける

追いかけて追いかけて追いかけたところで彼が止まった

此方に手を伸ばしている

その手を握るために、またあの温もりに触れるために走った

ようやく彼の手を掴んだ。はずだったのに...

僕の体は下に下がっていた

見上げれば親友は居なかった

ただ綺麗な満月と見慣れたビルの窓が次から次へと動いていた

そこでようやく理解する

僕は今落ちているのだと

あのビルから飛び降りたのだと

月がどんどん小さくなっていく

次の瞬間、鈍い音と共に体が動かなくなった

体は動かないのに意識だけある

だが、その意識も段々薄れていく

視界が濁っていく中で唯一見えたのは.....嬉しそうに笑っている親友だった



                





                   





                   《これでようやくふたりぼっちだね》




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