SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

今日、僕は生きている。 ( No.71 )

日時: 2017/03/06 19:34
名前: エノク・ヴォイニッチ

「私、どうやら貴方のことが好きらしいの。」
茜色に染まった公園で、彼女は少し寂しそうに笑いながら言った。
「ああ、そうかい。こんな時に僕に恋をするだなんて、お前は馬鹿げているね。」
僕は、彼女に対し、冷たくあたった。きっと、他の人は僕が最低の碌でなしに見えているのかもしれない。それも、充分承知している。僕だって、運命が違っていたら、彼女の告白を素直に受け止められていたのかもしれない。でも、僕にはその些細な喜びを噛み締める事が不可能なんだ。

僕は、不治の病に冒されている。いつ治るのか全く検討のつかない病気だ。しかも、僕の寿命は長くても一週間ちょいだ。それなら、結果は目に見えている。
一週間後ぐらいには、僕は既にこの世界には居ないだろう。
何故、其処で諦めるんだ。と言った人も居た。叶わない事が目に見えている夢なんて、努力のしようがない。だから、僕は諦めたんだ。幸せに生活し、結婚をする事を。
……ああ、きっと両親は悲しむだろう。何せ、一人息子の晴れ着を見ることもできず、先に逝ってしまうのだからね。でも、こうなってしまったのは如何しようもない。僕は偶々、運が悪過ぎた。それだけの事なんだ。

それからと言うもの、公園内には少し不思議な空気が漂っていた。
いつ居なくなるのか分からない僕に恋をしてしまったことに嘆いている彼女と、それを無言で見続ける僕が居た。
随分と長い間、公園に居たのだろう。空は既に暗くなっており、空には綺麗な星が瞬いていた。
「そろそろ、帰ろうか。」と僕が言うと、彼女は目を真っ赤に腫らしながら頷いた。間接的にとは言え、女性を泣かしてしまったことに対しては、僕も少しながら反省をしている。
……さて、僕もそろそろ、帰ろうか。

「明日も、此処に居ると良いんだけどね。」
彼女に気付かれないよう、僕は弱音を吐きながら、夜道を歩いた。
この風景も、そろそろお別れなのかもしれない。しっかりと目に焼き付けなくては。

……ああ、それにしても寂しいなぁ!!

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