SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

保健だよりができるまで ( No.97 )

日時: 2017/08/28 22:00
名前: ももた

その男子中学生は、養護教諭の前で、A3の用紙を広げた。

「原田くん、これは何?」

「これは、僕がこの世界を放浪し、描きあげた地図です!」

養護教諭は頭をおさえる。この原田という少年は、時折現実世界とゲームの世界を繋げて考えてしまう、空想好きな面があっていただけない。俗に、厨二病とでも言うのだろうか。

さて、彼が広げている冒険の地図だが……彼女の目には、それが学校の構内図に見えている。そこには、ご丁寧にリボンのような見出しで囲って、よく分からない地名がいくつも書き込まれている。

「原田くん、この『復活の泉』って何?」

手始めに、真っ先に気になった場所を指摘した。原田は待ってましたと言わんばかりに語り始める。

「そう、あれは雨季に入った頃のことです。僕は、悪の魔導師デイズパス・ド・ティー2世のかけた毒の魔法により、死の危機に瀕していました……」

「梅雨が始まった頃、2-days-passed……2日間放置したお茶(tea)を飲んで、お腹を下したのね。それで?」

彼女は原田の言っていることがわかるらしく、自分の言語に置き換えながら相槌を打っていた。

「僕は、一度は死すらも覚悟した。でも、旅を止めるわけにはいかなかった。そんな時、この泉が僕の目の前に現れたのです!」

原田はそうまくし立てて、机を叩く。

「泉に入ると、驚いたことに、僕の体から毒がどんどん抜けていくではありませんか!九死に一生を得た僕は、無事に仲間の元へ帰ることができました……」

「下痢になったけど、出し切ったらすっかり治って、無事に教室に戻れた……と。『復活の泉』って、3階の男子トイレのことなのね」

原田はまだ話し足りないようだったが、そこで昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る。彼は大人しく自分の教室に帰っていった。

保健室に残された彼女は、止まっていた作業を再開する。パソコンに向き合い、マウスを動かしながら、何かを打ち込んでいた。

「今月の保健だよりは、食中毒特集ね……」

あなたの学校の保健だよりも、こうして作られている……かもしれない。

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