SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

ひとりぼっち ( No.15 )

日時: 2017/11/12 21:12
名前: 臨猫(臨)

小さい頃から見てきた二つの影

手を繋ぎながら歩いて帰った帰り道

二人で見上げた綺麗な朱色の空

その全てを鮮明に覚えている


「一人だとひとりぼっちだけど、二人ならどうなんだろ?」

小さい頃疑問に思ったことを親友に聞いてみた。
彼は笑顔でこう答えた

「ふたりぼっちだよ」

その答えにつられて笑いながらこう返した

「なら、僕と君でふたりぼっちだね!」

その答えに親友は.......


ここで親友は僕になんて言ったんだっけかな?

そこだけ思い出せない。

その時の親友の顔も、声も全部黒く塗りつぶされたようになっていて思い出せない。

まあ、いいか。




《よくないよ》

何処かから声が聞こえた気がした

でも、気が付かないふりをした。



「帰ろうぜ!」
「ん、おうよ!」

何時もの細やかな会話。
その会話だけで自然と疲れが消えた。
二人手を繋いで何時もの帰り道を歩きながら夕焼けを見た。
そしてたわいもない会話をして笑った。
これが何時もの日常だった。

でも、今回は違った。
今日だけは....

「だから、ごめんっていってんだろうか!」
「ごめんで済まされることじゃないんだよ!」
「なんなら新しいの買うからさ?許してよ...」
「もう...もう無いんだよ!これは一番大切なものなの!」

僕が彼の大切なえんぴつを折ってしまったことが切っ掛けだったのだ。
中学生にもなってえんぴつを使うなんて俺でもおかしいと思う。
でも、一番おかしいのはそれを何故か大切に使っていることとある特定の時にしか使っていないことだ。
それは、彼の日記。
何時も図書室に彼を迎えに行くと必ず書いているノート。
中身はなかなか見せてくれない。
でも、嬉しそうに書いているから深く詮索しようとはしなかったが、えんぴつだけは気掛かりだった。
何時も僕が彼にあげると直ぐに無くしたり壊したりするのに、そのえんぴつだけは何年も大切にしているのだ。
何で僕のはそんなに大切に使ってくれないのにって思いが一層強まっていき、結果的に折ってしまったのだ。
殴られるかと思ったのだが、彼は泣いたのだ。
思っていた反応とは違い非常に焦ったし罪悪感が一気にきた。
そして今の会話に至る。
「もう、嫌いだ。お前なんて嫌いだ!」
彼はそう叫ぶと教室を出て傘もささずに外に飛び出していってしまった。
僕は、教室の窓から雨が降っている空をずっとただひたすら見つめていた。
数十分見つめているといつの間にか雨は強くなり視界が雨で灰色に染まっていた。
傘が無かったので家に電話を掛けて迎えに来て貰ったが母に彼のことを聞かれて黙ってしまった。
母は優しく微笑み「早く仲直りしなさいよ」とだけ言い、後は何も言ってこなかった。
車で何時もの帰り道を通った時、一つの大きなトラックが猛スピードで横を通り過ぎて行った。
危ないなと思いながらそれ以上深く考えなかった。

この帰り道は彼も通ることを忘れて...


今日のニュースをお伝えします。
今日未明○○市の××町辺りで交通事故がありました。
これによって死亡したのは下校中だった........

何時もの帰り道

綺麗な朱色の空

彼の手の温もり

ようやく思い出した

彼は.....

                 「僕はずっとひとりぼっちだよ」

声が聞こえた気がした。
懐かしい彼の声
思い出した
あのえんぴつは僕があげたものだった
頑張ってお小遣い10円を貯めて買った格好いいえんぴつ
今さら後悔してももう遅い
何もない



満月が綺麗な空

ポツンと一本外灯がある屋上

外灯の光に照されて影が出来ている

ひとりぼっちの影

横に手を伸ばしたら誰かが僕の手を握った

親友が隣にいる

空を見上げれば綺麗な朱色

何時もの帰り道

彼が僕から手を離して何処かに走って行く

それを必死に追いかける

追いかけて追いかけて追いかけたところで彼が止まった

此方に手を伸ばしている

その手を握るために、またあの温もりに触れるために走った

ようやく彼の手を掴んだ。はずだったのに...

僕の体は下に下がっていた

見上げれば親友は居なかった

ただ綺麗な満月と見慣れたビルの窓が次から次へと動いていた

そこでようやく理解する

僕は今落ちているのだと

あのビルから飛び降りたのだと

月がどんどん小さくなっていく

次の瞬間、鈍い音と共に体が動かなくなった

体は動かないのに意識だけある

だが、その意識も段々薄れていく

視界が濁っていく中で唯一見えたのは.....嬉しそうに笑っている親友だった



                





                   





                   《これでようやくふたりぼっちだね》




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