SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

憶時 ( No.29 )

日時: 2018/04/12 23:20
名前: 飯尾沙 遥都

「−何もかも変えたくて、毎日ポストをのぞいてしまうの」

「−街を歩くときは、ヘッドフォンの音量を上げるの。だって何も聞きたくないから」

「−自分がまちがっていると言われたくなくて、意識したわけでもなくただ目をそらしちゃったの」

「−1人1人ちがう、なんて勝手な言葉だよ。1人1人ちがうなら戦争が終わるわけないの」

「−だって、みんな自分が正しいと思って行動してるんだもん」

「−ねぇ、」

「−本当に『正しい事』ってなんだろうね」


「−ごめんね」


「−    」

「−    」






「僕は、『正しい事』なんて…何ひとつ分からないよ…」

「僕は君を救えなかった…」

「何ひとつ出来ない僕に…そんな大切な事…言われたって…」


「『苦しい』なんて…、『死にたい』なんて…」

「そんな事…」


彼女は、僕に未来を教えてくれた。
彼女は、僕に明るさを教えてくれた。

僕にとって彼女が全てだったんだ。


最後に見た彼女の姿。

白い肌、長い黒髪。
全てを染めた赤。
痛々しく曲がる手足。



「彼女のいない世界なんて意味がない」


…なんてよくある台詞だけど。

僕のくだらない人生の最後にはお似合いの言葉だ。

そうして僕は自分の首に手をかけた。


最後見た世界は黒く、黒く煤けてる世界。

強者が弱者を殺める世界。

真実を知った者が前に進めなくなる世界。


彼女が教えてくれた明るい世界。


真っ赤に染まった暗い世界。


そんな世界から消えよう。



ばいばい、こんな暗い世界。

さようなら。




最後の一瞬。

一瞬だけあの大好きな彼女の顔が見えた気がしたんだ。



ーENDー

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