SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

星と涙 ( No.33 )

日時: 2018/06/01 00:15
名前: 一青色

あいつは頭が良い。
顔が良い。
性格も良い。
運動だってできる。
財産だってある。
俺が初めて敗北した相手で、憎くて憎くて仕方なかった。幼い頃からずっと。あいつさえいなければ俺は選んでもらえる立場なのに、あいつがいるから選んでもらえない。
「涙(るい)、一緒に帰ろう」
同じ学校で、同じクラスで、同じ部活で。
嫌で仕方ないはずなのにそれでも一緒にいる理由って一体何だ?
「涙、父さんとどう?」
「...関係ないだろ」
部活の帰り道。もうすぐ8時になる外は星が瞬いていた。
「母さんは、元気だよ」
「どーでも良い」
そっか、小さく言うこいつに罪悪感なんて覚える必要なんてない。それでも、胸が痛むのは何故なのか。
「俺ね、死のうと思うんだ」
「...理由は?財産があって、平和で過ごせる今の環境のどこに不満があるんだ?」
なぁ、教えてくれよ。
死のうと思う、そう言われて怒りがわくのに、殺意がわいたのに。それでも生きてくれと願うのは何でだ?
「死にたい?なら、俺が殺してやるよ?」
なのに矛盾した俺の行動。
そっと、細い首に手を掛ける。

本当はわかっていた。
嫌で仕方ないはずなのにそれでも一緒にいる理由。
「星、俺はな...」
こいつがただ羨ましかった。同じ日に産まれて、同じような顔なのに俺はどこか足りなくて。
父さんと母さんが離婚するときだって金持ちの母さんには当たり前のようにこいつがついていった。暴力の酷い父さんを俺に押し付けて。
「お前が大っ嫌いなんだよ」
だから、殺してやる。お前もそれを望んでいるから。
力を思いっきり込めて、首を締める。
苦しそうな呻き声。でも最後は幸せそうな笑顔で。
パクパクと口を動かして、力尽きた。
「でもな、お前はたった一人の俺の弟なんだよ」
双子の弟の星。嫌いになりきれなかったのは家族だから。そんな、綺麗事。

願わくばー...。
『涙兄、ありがとう』
最後の言葉がそうであったことを願う。
「俺も、すぐ行くよ」
パパーっと大型トラックのクラクションが鳴る。
まばゆい光が俺を照らす。
俺は、お前が憎いのと同時に愛しかった。
だからこそ、辛かった。
でも、それももう終わりー...。


〜遺書〜
僕は涙兄と二人が良い。
財産も、人望も、何もいらない。
生きていたくない。
息を吸うのさえ億劫だ。
なら、涙兄と死ぬしかない。
空っぽだ。


後日

「星くん、本当に死んだのかな」
「何、怖い。葬式だってしたじゃない」
「でもさ、涙君は生きてるじゃない?」
「植物状態だけどね」
「凄い、涙くんにコンプレックスあったんだっけ?」
「凄い執念ありそうだよね。まだここにいたりして...」
やだー、こわーい。
兄弟の美談だって周囲には格好のネタでしかないのだ。

(終)

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