SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

竈の森 ( No.39 )

日時: 2018/10/09 14:02
名前: イチ


森の声を聞け

あの竈の森の声を聴け

彼女は大きなうなり声をあげ、もう、じきに私たちを押しつぶしてしまうだろう。

そうならないように

人間よ、聞け

あの森が、あなた方に何を与えたか

その賢い瞳で見よ、そして想起せよ

あなた方は太古の昔から、そうやって生きてきた

耳をふさぎながら生きてきた

どうどうと森の嘆きが聞こえる

あなた方には聞こえないのか

その指の間から、僅かばかりの森の涙を

どうか通して捕まえて

森の声を聴け

竈の森は焼き尽くす

あの悪しき女の体のように

おまえの心も焼き尽くす

焼かれたならば痛いだろう

火は涙では消えぬだろう

それでも竈は焼き尽くす

おまえの心を焼き尽くす

森の声を聴け

あの双生の姉弟のように

森の声を聴け

どうどう どうどう だらり だらり

来た

竈の森が迫ってきた

どうどう どうどう だらり だらり

もう待ちきれぬと迫っていた

森はお前らを焼き尽くす

幾多の時を超えて

お前の町を焼き尽くす

そこはかつての

森の故郷だから

森の声を聴け

森は我が子を失い泣いている

焼き場はそこにある

竈の中に


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