SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

姉妹戦争 ( No.50 )

日時: 2019/06/08 03:56
名前: 塩鮭☆ユーリ

「……」

 冬。家の中。くすんだ茶色のコタツに下半身をつっこんで、よく似た姉妹が睨みあっていた。彼女らが狙うのはコタツの中央にあるひとつの蜜柑である。キラキラと電気の光を受けて瑞々しく輝く蜜柑に、二つの手がかけられて止まっていた。

「ここは年長者を尊重するべきじゃないかしら」

 姉の言葉に、妹は反撃する。

「年長者だからこそ譲るべきよ」

 そこからは、淡々としたやり取りが繰り広げられるのみである。しかし、集中を切らせばすかさずその隙をつかれ、巧みな言葉でたちまち蜜柑を奪われるのは目に見えている。

「蜜柑愛を語ろうかしら。蜜柑は冬の必需品ね。わたしは蜜柑なしにどう生きていけばいいというの」

「蜜柑愛を語ってどうなるのかしら。だいたい、お姉ちゃんは手がオレンジ色になるのが嫌なんじゃないの?」

「あら、それはあなたのことでしょう。わたしは手がオレンジ色になるのも含めて蜜柑を愛しているわ」

「どの口がそれを言うの。わたしなんて、蜜柑の皮をむく瞬間さえ愛しいわ。わたしに蜜柑を譲りなさい」

「まあ。白状したも同然よ。蜜柑の下のほうと上のほうを貫通させて楽しむのでしょう。ちょうど指輪のようになるものね。食べ物を粗末にしてはいけないのよ」

「粗末にしてはいないわ。わたしは蜜柑の皮をお風呂に浮かべるのもすきよ。ただそれだけ。皮をむくことからその遊びに走るなんて飛躍しすぎよ」

「貴方、むくのが好きで白い部分もむいてるでしょう?あれはどうなの。栄養がつまっているというのに」

「それはお姉ちゃんもでしょう。だいたい、お姉ちゃんが入ったあとの蜜柑風呂の蜜柑の皮がちぎれてるのよ。遊んでいるんでしょう」

「何のことかしら。あなたがやったのではなくて?」

 永遠に続くかと思われた口喧嘩の話題の中心ーーすなわち蜜柑がふいに消えた。

「「あ……」」

 目を丸くする二人のことを気に止めた様子もなく、しなやかな我が家の愛猫は蜜柑をさらっていった。

メンテ