SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

彼女を追い越したい ( No.4 )

日時: 2020/07/13 16:20
名前: 紫葉





『高等学校生美術展入賞 千賀咲 玲』

『高等学校生美術展特選 大島 奈緒』

___________また先輩に負けた。

これで何回目だろうか。確かに、先輩の方が私より経験を積んでいて絵の知識も多いのは事実だ。けれども、負けると言うのは悔しい。だって私は先輩達にも負けないぐらいの力を着けたい。でも…それは上手く現実にならなかった。


タッ


「千賀咲さん。」

「…先輩。」

夕日の当たる方向に顔を向けると_____案の定、先輩が居た。…あぁ。老若男女が見ても、ほぼ完璧と言える容姿。絵の才能。…おまけに誰からも好かれる性格。今の私には到底追いつけない。そんな彼女が目の前に居てか、私は密かに劣等感を噛み締めていた。






「どうしたのよ。そんな暗い顔しちゃって。」

ガコン、と自販機が鳴り缶ジュースがコロリと落ちてくる。それを彼女の華奢な手が拾い上げ、私の手元に優しく置いた。

「いや…いつまで経っても先輩に追いつけなくて。最初っからもそうでしたけど、今回もそうだったじゃないですか。先輩は特選だったのに、私は入賞で。何と言うか…せめて貴方の横に並びたいのに、同等の絵を描くことも出来無い。それがやっぱり心に引っかかるんですよ。」

あまりにも冷え過ぎたのか、缶ジュースは結露を零しており私は自然と手が冷気に覆われるのを感じた。

…でも。愚痴を言ったって、絵が上手くなる訳では無い。そもそも、そんな人間なんてこの世には存在しない。こんな憂鬱な感情が吹き飛ばなんて___ホント、嫌なもんだ。

「それについて悩んでたの…。やっぱり千賀咲さんはストイックね。」

「ええっ、そんな。ストイックなんかじゃないですよ。私は出来る限りの事をやっているだけです。…だって、才能に恵まれなかったから。」

…自分でこんな事を言っていると、悲しくなる。
けれども。私は自分の事を責め続ける_________何でこんな…矛盾したことを私はしてしまうのだろう。

無情にも、空気は何も答えない。
そばにある木も、私の脳も。
けれども、私の隣に居る…先輩は答えた。

「今の貴方は十分素敵なのよ。それに、どの大会でも必ず入賞している。こんな凄い事、他の人には出来ないわ。貴方は私の事を凄い凄いと言っているけど、実はそうじゃないわ。私だって何回も賞を逃したことがある。でも、貴方はそうじゃない。だから貴方も来年の今頃には凄腕になっているわよ。」

そう言うと、彼女はニコッと笑う。
















「___________追いつけるはずないでしょう。私達人間が貴方達に。貴方は___________貴方達の部類は機械なんですから。」

私は彼女___________いや、私は“アンドロイド”に
向け、声をかけた。

西暦21xx年の今。世界は人間によく似たアンドロイドを生み出す事に成功した。それと同時に、アンドロイドにも人間と同じく人権が与えられ、人間と共存するようになった。

しかし。これは幸せな事では無かった。
人間よりもアンドロイドの方が知能が高いのは当たり前だ。それに加えて、今のアンドロイドは人間的思考力も携わっている。アンドロイド達は人間と同じように芸術を生み出し、数々の賞を総嘗めにした。そして、アンドロイドは瞬く間に脚光を浴びる事になったのだ___________

「…私達が作ったものを追い越せないなんて。悔し過ぎる。」

私は合金で作られた彼女の前で、呟いた。

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