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偽装人間@000【完結しました】
作者: 朔良   (総ページ数: 115ページ)
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      第6章 撮影初日、少女は偽装する

 菊川澪の演技。
 どれくらいのものなのかと、共演者たちは期待していた。あれだけ騒がれたのだから当然なのだろう。
 かなりのプレッシャーになっているはず。なのに、澪は相変わらず無表情だった。

『美冬! 新作ケーキ発売してたから買ってきたぞ』
『智(とも)君! わーありがとう!』

 美冬は病弱だが明るく生きようとする女の子だ。澪の性格とはかけ離れている。
『苺のタルト? 美味しそう』

 ここで、智広は月音の話をする。美冬は少し動揺する。
『へえ……わ、私も会ってみたいな、その人に』
 台本では、美冬はぎこちなく笑う……としか書いてなかった。ここからが澪のアドリブだ。
『だろ? いつか会えるといいな』
『うん……』
 ここで、智広は自分もケーキを食べるために、下を向く。その瞬間、美冬は自分のスカートを握り下唇を噛む。
 
 ――なんで他の女の人の話なんかするの。

 澪は美冬のそんな想いをセリフなしで表した。

「カット!」
 監督の声が響く。
「澪ちゃん良かったよ! 美冬の感情がよく表わせてた!」
「……ありがとうございます」
 澪はそうとだけ告げて、一旦、楽屋へ向かった。
 
 智広を演じた颯は、澪を追い、歩きはじめた。

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