完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*1*
It’s a wonderful world
Prologue
ハイヒール。スニーカー。革靴。
ハイヒール。スニーカー。革靴。
そういったものが地上を行き交っているのがわかる。
目をあけると目の前は灰色の壁だった。すぐに自分がうつぶせになって倒れていることに気がついて、体を起こす。頭に痛みができてくらくらする。同時に、視界がぼやける。
やがて視界がはっきりしてきたのも、やはり痛みがひくのと同時だった。
ここはどこだ。
と場所を考える前に人の姿が目に入る。どこまで行っても人、人、人。人で景色が埋もれている。服装に誰もが気を使っているらしく、こんなに人がいても一人一人が別人なんだと認識させられる。川が流れるかのように動きは激しく、さきほどまで自分が寝ていた空間はすでに人の通り道となってしまっている。
辺りを見回す。104とおしゃれな数字が大きく書かれたビルがある。
「渋谷……!」
ここは渋谷だ。どうしてすぐに思い出せなかったんだろう。私が住んでる街なのに。この道も、毎日のように通る道なのに。
命をかけたゲームなのに
参加者は非参加者には姿が見えていない。だから私が倒れていても皆平気な顔をしていたんだ。
私は目的を思い出す。
すぐにパートナーを探さなきゃいけない。誰か、誰かいないか。だめだ、参加者と普通の人の区別がつかない。
そうだ。参加者バッジを使えば区別ができるんだ。
感覚を研ぎ澄ませろ
さまざまな思考がまるで自分の思考のように私の中に情報として入ってくる。誰も彼もが違うことを考えている。あたりまえか。
こんな大勢の人がそれぞれ違うことを考えている。渋谷は個性の集まる街だけど、本当に個性だらけだ。
人と人がすれ違うたびにわずかにだけど人の心に変化が起きる。
「あ、こいつの服なかなかイケてね?」
とか、
「今の人モデルみたいじゃね!? 超やばいかっこいい!」
とかいう感情が湧く。
いろんな感情がぶつかって、いろんな思考がざわめきあって、いろんな個性が行き交う。スクランブル交差点っていう名前を考えた人は素直にすごいと思える。
ネクなら、こんな状況をなんて表現するんだろう。まるでノイズだっていうかな。
私はクラシックみたいで素敵だなって思うけど。
はっとして本来の目的を思い出す。そうだ。ネクに会うためにも、今はゲームに集中しなきゃいけない。
ゲームの参加者だけに渡されるいくつかのバッジを使って私達はミッションをクリアしていかなきゃいけない。
この黒い髑髏のデザインの参加者バッジは、人の思考を読むバッジ。
ゲームの参加者はみんなこれを持っていて、参加者の思考は参加者バッジの効果でお互いに読み取れない。非参加者との区別をつけるためのバッジなのだろう。
―――――だめだ……。もう皆契約し終えてる。
遥か後ろから女性の悲鳴が聞こえた。後ろを振り返ると、人が一人ふっと消えた。敵にやられたんだ。もう私ももたもたしてられない。
他の場所に行けばまだ可能性はある。忠犬ハチ公前に行こう。あそこならきっと誰かいるはず。
ここは広いから敵に見つかりやすい。移動した方がいいかな。
携帯が鳴る。メールだ。差出人は「死神」。これがミッションってやつだね。
『ミッションナンバー1 ○死威に向かえ。制限時間は一時間とする』
「痛っ!」
思わず声を出してしまった。手の平に静電気に触れた時のような痛みが急に起きたのだ。
掌を見ると、59分51秒と血文字で書かれていた。そしてどうやらそれは、50秒、49秒と刻一刻と変化していることから制限時間のようだった。刻一刻の使い方が間違っていることを自分自身に指摘する暇はない。
もう一度参加者バッジを握りしめて、近くに敵がいないことを確認する。
始まったんだ。一週間の戦いが。絶対に生き残りたい。ハチ公前へと私は走り出す。
死神のゲームに勝つために。
ねぇねぇ聞いた? 最後にはhighになる
コレ? アレ? 賞味期限過ぎた
「苦しんでるフリした」いっつもそうだ
最後には世捨て
“Ah,似たりよったり”
コンクリート、コーナリング、フリースタイル灰きつくなる
Mr.twister「もっと」と疼くモンスター素敵だ敵なし手当たり次第さ偉い? で? 辛い?
てかもう凡人風
銘々雅懲りずに投資コレもアレもそうさ特別製
crystalシェルター? そんなoverな……
採光OK細工OKこれ見よがし?
もう逃げない ヘマはしない どうにもこうにもままならないなら、「ならおごれよ前代未聞」
ベルが鳴り響く成し得る前に 混乱していじけてるんなら散布しろ
腐乱する前に 動乱のパワーはscream
The power is yet unknown
もう止めだ、減らず口
どうして懲りずに舞い戻ってきた?
オゴレよ千里眼でスィープ
ベタな台詞でメタモルフォーゼ
こうなったらスベったって行こうぜ
振りかざした 綿のDreamはscream
The power is yet unknown
歌:すばこのからの引用