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*21*
人だかりから離れ、見回してはいるが一向にヒントは見つかりそうにない。鏡、鏡とショウは顎に手を当てながら何度も呟く。制限時間が少ないからだろう、ショウの目線は焦っている。
鏡、といえば。
「なんだ?」
「いや、鏡っていえばさ。『フタゴカガミ』って知らない?」
知らん、と即座にショウは答える。「続けてくれ」
「ああ、うん。渋谷のどこかに、フタゴカガミっていう呪われた大きな鏡がある、ってどっかで聞いたことがあるんだ。そこに自分を映して、ケータイでもなんでもいいから写真を撮る。写真に映る自分の横にもう1人自分がいたら、それはドッペルゲンガーって言って、その人の死期が近いってことなんだ。ただの都市伝説だけど……」
説明している最中に、私は思い出していた。それを教えてくれたのはネクだ。
私の友達に、桜庭ネクという男の子がいた。親が変わっていてテレビを見せてくれないらしく、ネクは暗くて内気な子だった。ネクに昔紫のヘッドフォンを誕生日プレゼントに買ってもらったことがある。
ネクは、元気だろうか。私はふいに、人ごみの中に友の姿を探した。
「都市伝説か……怪しいな、おそらくそれだろう。フタゴカガミを探すぞ」
「でも、どこにあるかはわからなくて……」
「場所か。チッ、インフィニティ。70分で渋谷中を駆け回るのはきつい……!」
「なら、手分けしませんか?」
突然聞こえたその声は、昨日の少女のものだ。ショウはあらわれた2人を睨む。たしかこの綺麗な格好のお姉さんが佳澄さんで、私と同じ歳のかわいい子ちゃんがひかりちゃんだったかな。
「ショウ、睨んじゃだめだ。昨日は悪かった、えっと、ひかりに佳澄さん……」
「佳澄でいいよ。盗み聞きしちゃったみたいで悪いから、こっちもいいこと教えてあげる。さっきぐるっと回って今日行けるエリアを大体把握したんだよね」
もうそんなことまで調べてあるのか。すごいな……。やっぱりこの2人と組めたら、すごい心強い。「でも!」とひかりちゃんは人差し指を私の顔の前に立てる。
「私達と組む、って約束してくれたらだよ!」