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続き書いた! カゲプロ【カノキド】欺かない気持ち
作者: ちゅけすけお (総ページ数: 2ページ)
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*紹介文/目次*
「ねぇキドぉ、、、キドってば!」
自分でも気持ち悪いと思うくらい甘ったるい声で、僕 鹿野修哉は黒いソファーの上からキッチンでオムライスを作る木戸つぼみに話し掛けた。
「なんだよ、うるさいな」
冷たい、でも優しい、ハスキーな声の持ち主から苛立ちを覚えた鋭い声が聞こえた。
「今作ってる最中なんだ、話しかけんな」
「だってお腹減ったんだもん!もう12時30分になっちゃうよ?そりゃお腹くらい減るさ!」
キッチンからは卵を溶く音が響いて聞こえていた。その一定の音は僕のお腹をよりすかせ、そして唸らせる。
「わかったよ。急いで作るからちょっと待ってろ」
(キドっていつも冷たいけどその裏は優しいよねぇ)
彼女のエプロンをした後ろ姿を見つめながら僕はそう思った。
彼女の見た目は男らしく性格もさばさばしているせいか、よく初対面の人には男と間違えられる。
でも実は極度に怖がりで、家庭的で、恥ずかしがりで表情が面白い、とても可愛い女の子だ。
…僕は、そんなキドのかわいらしい所や男っぽい所にいつしか惹かれていた。
そして『その』思いは日に日に増していた。まあ、今は欺いているからばれてないけれど、いつか『その』思いを心の中で閉じ込められずに、伝えてしまったらー。僕がキドの事を本気で好きだと言ったら果たしてキドはどんな顔をするのだろうか。
考えても答えは出ない。いつもそうだ。答えは、キドに『この』気持ちを伝えない限り出ないだろう。
「ほらよ、できたぞ」
考え事に気をとられていた間に、どうやらオムライスは完成したらしい。
「ほら、冷めないうちにさっさと食べな」
そう言いながらキドは僕の前に出来たてのオムライスを丁寧に置いた。
せっかく作ってくれたのだ、冷めないうちに食べよう。
僕はスプーンでホカホカの卵とご飯を一緒にすくい、口の中へ突っ込んだ。
「んん!!ふぉんほにほぃひいお!」
熱くって上手く喋れない。はひはひしながら僕は次の一口を口の中に入れた。
「ははっ、そんな一気に食べたら駄目だろ」
キドは、ご飯と卵のせいでほっぺたが膨らんでいる僕を見て優しく微笑んだ。
その時一瞬僕の中の奥で『何か』が少しだけ弾けた気がした。
そんな事は気にせず、僕は食べる事をやめない。次から次へと口に運んで行き、大盛に盛られていたキドの手作りオムライスは皿に赤い跡だけを残し、完食された。
「ん…もう食べらんないよ…」
僕は皿の前でお腹を撫でながら言った。
「お疲れさん。綺麗に食べたな」
僕が ごちそうさま、と言うとキドは皿を持って立ち上がった。が
「あ、、カノ。ここについてるぞ」
キドはしゃがみながらそう言うと、皿を机に一旦置き僕の顔に触れる。
「ん、取れた」
どうやら口の近くにご飯粒がついてたらしい。僕はそんな事もわからず、そして欺くのを忘れ顔を真っ赤にさせていた。
(もう、我慢の限界だ)
「?カノ?顔、赤いがどうし…んっ!ちょっ、か、カノ!?」
心配そうにしていた彼女の腕を引っ張り無理矢理自分の胸の中に収め、そして力いっぱい抱き締めた。
「カ、カノ?」
キドが僕の名前を呼ぶだけで、キドの吐息が耳にかかるだけで僕の奥は何だかくすぐったくなった。
そして、くすぐったくなるたびに溢れそうになってた『この』思い。
もう伝えられずにはいられない。
何かを決意したようにぎゅっと、抱き締める力を強める。そして、彼女への言葉は意外に、自然と僕の口からこぼれていった。
「あのさ、キド。好きだよ」
END
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*1*
ーあのさ、キド。好きだよ
昔から、ずっと言えずに我慢していた言葉。言う勇気が、言うタイミングがなく溜め込んでたキドへの気持ち。
今、どうしてだかわからないけど、昔から言えずにいた言葉は案外すんなりと口から吐き出されていた。
「あ、ああああの、」
冷静な僕とは正反対の状態になっているキドは、さっきの僕と同じように顔を真っ赤に染め上げていた。なんだか顔から湯気が出てきそうな真っ赤ぶりだった。
「ねぇ…」
僕が声を少し出すだけでキドはビクッと肩を震わせた。
僕はひどい人間かもしれない…。さっきからびくびく怯えているキドの事が、何だかどうしようもないくらいいとおしく感じた。そしてもっと怯えてほしい、でも怯えないで僕に甘えてほしい。そんな色々な気持ちが僕の中で渦巻いて自分でもどうしたらいいかわからない。あぁ、僕もかなり切羽がつまっているんだと今気付かされた。
「ね、キド…返事、ちょうだい?」
キドの真っ赤な耳に顔を近付け、小さな声で呟く。だが、キドは何の反応もしない。聞こえなかったのだろうか。もう一度言った方がいいだろうか。そんな事を考えている時、キドの口が何かを伝えようと動いた。
「……から…………や…」
キドの口から発せられたその声は、近くにいる僕にさえ聞こえないほど小さい声だった。
「ごめん、もっかい言って?聞こえないや…」
僕が少々控えめにそう告げるとキドは手にぎゅっと力を込め、何か覚悟を入れたかのように背筋を伸ばしそして僕の顔をまっすぐ見つめた。
「わ、私も…私も…好きだから…修哉」
途切れ途切れで、少し小さい声ではあったがはっきり、そして素直に僕へ自分の気持ちをまっすぐ伝えてくれた。
それだけで僕の口元がにやけそうになる。
「…なんだ、我慢しなくてよかったんだね」
キドに聞こえないくらいの小ささで僕は呟いた。そしてまた、キドを僕のもとへ引き寄せる。
「おいで、キド」
僕がそう言うとキドは恥ずかしがりながらもゆっくり僕の元へ近づき、そして控えめではあったが ぎゅっとしてくれた。
それだけで 僕は泣きそうになる
本当にキドの事が…
「大好きだ、つぼみ」
そう言い、僕もキドの細い体をぎゅっと抱きしめた。
END