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自由無き者に対する力と大いなる渇望に伴う希望
とある中学校の一室で、よくある日常的な光景は起こり得る。
生徒達はとある教室内にある黒板を見て小さく笑ってみたり、「ヤバイんじゃね、これ?」などと言いながら黒板に写された文字、並びにチョークによる不格好な装飾を見ながら黒板の前から一向に離れようとはしない。
「いいじゃん、先公来たら消すで。てかこれマジウケるんだけど?」
「書いたの誰だよ、マジ天才だな!」
一斉の爆笑。
「◯◯のやつ来たらどうする?それまでに消しとくか?」
「はぁ!?意味わかんないし。消したら意味ないじゃん。これ◯◯に見せるもんっしょ」
「でも、ヤバイだろ、色々……」
「何だよ、お前◯◯の味方すんのか?」
「いや違う違う違う。先生来たらヤベェかなって思っただけだから」
「そ、ならいいや。何か書き足す?これでも十二分だけど」
「黒板の右端に似顔絵描いちゃおうぜ、絵うまいやつ……、あ、△△!ちょっとお前ここに◯◯の絵描いてくんね?」
「……お、いいぞ。ここだな」
「うん♪なるべく猿っぽくね!」
再びの爆笑。
「あぁわかった、わかった!!ちょいチョーク貸して!」
「そこらへんに下ネタ書いとけば?」
「いいね!得策すぎんじゃん!」
数多の方向からの千差万別の意見を元に、段々と緑色の黒板は色取り取りにコスチュームされ、数分した後。
「もう書けねぇな、描くとこもねぇよ」
「お、おい!◯◯が来るぞ!」
見張り役が声を上げる。
「うへ、やばっ!逃げろみんな!席につかんと!!」
「あいつどういう反応するかな?ま、なににしてもウケさせてくんないとなぁ」
「死んじゃうじゃね?」
三度の爆笑。
しかし、何も知らない◯◯の歩は確かな一歩を踏み込むが如く、迷いなく自らの教室に向かう。
一歩また一歩と教室に◯◯が近づく度に、数多の少年少女達の苦笑いは限界に来ていた。
もう、苦笑いなどでは抑えられない程に、日常的な学校に起こる日常的なそれはある程度の間合いをみることもなく、進行するのだった。