完結小説図書館
作者: 岡山 美涼 (総ページ数: 1ページ)
関連タグ:
*紹介文/目次*
第1話 〜呪われた騎士団と暇すぎる魔導士〜
昔々、とても美しい魔導士と優しい王様が治める国がありました。その国の名は、ステラといい平和で自然がとても綺麗な国でした。
そして時は流れ、ステラはどの国よりも栄える国へと姿を変えたのです。
第一章・退屈な店内
「いらっしゃいませ〜」
ほとんど棒読み状態でお客さんを迎えた私は、丁度疲れたため休憩用に造られた奥の部屋へと向かった。
ここの所、すっごく退屈だ。事件は起こらないし、とにかく平和すぎる。(起こったら、大変だけど・・・)
「まぁ、平和で何よりなんだけど・・・」
両親を早くに亡くした私は、とりあえず幼い頃から、働いていた。今では、店の看板でもある。が、暇なのは嫌いだ。なんだって、我慢できた・・・。
でも、一人になると鮮明に思い出してしまう。目の前で無残に殺された、両親のことを。
「仕方ない・・・、散歩でもしてこようかな」
外に出ると、そこは相変わらず賑わっていた。お店の人の声や、道行く人達の明るいお喋りは暗い心に灯を灯してくれるようだった。
「そうだ!ディーク達の元に行こう」
きっと、今は訓練場で稽古している時間だろうし。
王宮の訓練場までの間、色々な人達に声を掛けられながらやっとの思いで訓練場に着いた。
「はぁ、疲れたぁ〜」
一息ついて、辺りを見回すと騎士たちが一生懸命剣を振るっていた。
「わぁ〜、凄い。綺麗」
「何がだ?」
「っひ!」
行き成り置かれた、冷たい手に反応して後ろを振り向いた。
「よっ!久しぶりだな、ラピス」
「///っもう!びっくりしたっちゃじゃん、コウ」
責めまくるラピスを、コウは青い前髪をかきあげしらんぷりを決め込んでいる。
「というか、ラピス。お前、ジル達にも顔みせてやったのか?」
「・・・まだ、だよ。先に、ヒロやディーク達がいる騎士団に行くつもりだから」
「そう言って、・・・あいつ等に会ったらすぐ帰るのか?」
「・・・そんな事、私の勝手でしょ」
そう言って、思いっ切り顔をコウから背けた。
分かってる、我が儘だという事は・・・
「でも・・・」
「・・・でも、なんだよっ!」
コウの予想外の大きな声で、引き戻されたラピスは次起こる事態を予測できなかった。
手首を掴まれ、痛みに悲鳴を上げた。そんなラピスに構う事なく、コウは壁に押し付けた。
「・・・お前は、騎士じゃない。魔導士だろう!なのに、何であいつ等には会いに行くのに!俺たちのところにはっ」
真剣に言い放つコウに、驚きが隠せなかった。ラピスはコウから目を背け、震える声で泣いた。
ごめんなさい、ごめんなさい。コウ、皆。でも、私には貴方達に会う勇気がない・・・
「っごめんね、ごめんね」
私は呼び止めるコウの声を無視して、元来た道を全力で戻って行く。心の中で何度も、何度も謝り続けながら。