完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

SOUL COLOR(消えない罪)
作者: 璃蘭  (総ページ数: 53ページ)
関連タグ: SOUL COLOR  
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~

*35*


ⅢⅣ、長年の苦痛

「貴方は誰?」
「俺は病魔。生き物の病から生まれた存在…。だから憎い。この存在が憎い。健康な奴には分からない。この憎しみ…。」
「貴方は、何かの病気なの…?」
「心だ。」
「心?」
「魔族は、神に捨てられた種族。そして、誰もが俺達を避け、軽蔑する。それで俺達魔族が、どれほど辛い目に遭ったか…。幸せに生きる貴様らに、知るはずもない!」
「確かに…分からないわよ。辛さが誰にも分かってもらえない事。でもね、その辛さを抱えて生きているのは、貴方達だけじゃないのよ?」
「何だと?」
「人間の間でも貧富の差があって、貧しい人は冨がある人に蔑まれる。種族や文化、宗教の違いでも、受け入れたりしない人がいる。皆、同じなのよ。」
「それなら、滅びればいい!滅びてしまえば何も苦しまずに生きる事もない!」
 そう言うと、病魔はいきなり黒い球を作り出した。黒い球はだんだん大きくなっていく…。
「私の『SOUL WORLD』を荒らすのも、いい加減にして!」
 美波が物凄い剣幕で怒鳴ると、紺色の空が水色に輝いた。その光は地面である氷に反射して、黒い球をみるみる小さくさせた。
「私はもう貴方には負けない。確かに私は、禁忌を犯した罪人かもしれない。だけどその罪を償う為に、小さな努力をずっと繰り返しているの!」
「貴方も、その気になればできるはずよ。貴方の存在を、良い方向にする事も。」
「病気から生まれた、この俺が?」
「そうよ。ねぇ、貴方は予防摂取って知ってる?」
「なんか私聞いた事があるよ。確か、弱いけど悪い病気を入れるんでしょ?」
「そうなのか?でもそうしたらその人間は…。」
「ほんの微量よ。何も起きないわ。
でも、さっきも言ったように貧しい人には難しいのよ。予防摂取を受けたくても、お金がないから受けられない。そんな人を、貴方なら助けられる。」
「そっか!病魔がほんの微量の病気を与えれば、予防摂取になるんだ!」
「そうか…。まさか、人間と神の子によって俺の憎しみが消えるとは…思いもしなかった。ありがとう。これからは誰も苦しめない。魔族である事を誇り、生きていこう。」
 そう言うと、病魔は空気に吸い込まれるように消えた。

34 < 35 > 36