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吸血鬼だって恋に落ちるらしい【完結】
作者: 妖狐  (総ページ数: 119ページ)
関連タグ: ファンタジー 吸血鬼 オリジナル 恋愛 
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*1*

私は吸血鬼 
今の世じゃ、ヴァンパイアとも言うらしい。

人間の血を吸って生きながらえる吸血鬼
「わたくしに血を捧げなさい」
って言ったら、そこらの男なんて転がるように逃げていく。まあ、逃げても無駄だけど。
いくら吸っても、『足りない』 お腹は空っぽ。いつも空腹。

 だから毎日のように血を吸わなくちゃ生きてけない。
はあ、いじわるな神様、 私だって一度くらい満腹感を味わいたいわ。
一日に何百人と食らったりしてみたし、 一週間血を吸うのを我慢してみたりもした。だけど、どれも全部ダメ。
一カ月我慢してた時なんて、気が狂いそうだった。実際に狂ってしまったけど……
町の人間を全て食らってしまうのはやっぱりだめだったかしら?

そんなこんなで三百年。私は空腹。いくら食らっても『足りない』

食らって、食らって、変わらない日々。でもここ最近ちょっぴり変わったことがある
それは五年に一度、私に人間が一人よこされるようになったこと。
「生贄」 そんな言葉がぴったりね。
生贄を捧げるからもう、他の者は食らうなということ。
私だって今まで罪悪感なく食らってきたわけじゃないのよ?  だから、そんな人間の考えにのってあげた
三百年生きてきたからか、一日一人単位の食事量が一日鳥一羽で済むようになった。

それからさらに百年。私は空腹。 いくら食らっても『足りない』

私のもとへ来たのは19人。性別も年も容姿もみんなバラバラだったけど、たった一つだけ共通点があった。
それは、背中にコウモリの焼き印があるということ。
「どういう意味なのかしら」 
いまだにその理由は分からないまま。
聞こうとしてみたことはあったけれども、みーんなおびえて死んでいった。
だから、今日は絶対に聞いてやる!
 そう、今日は20人目の生贄が来る日。

歳は四百歳。私は空腹。いくら食らっ……ああ、もうこのくだりはいらないって?

ついにやってきた。記念すべき20人目の『生贄』が。
どんな目で私を見るのかしら。憎悪の目?恐怖の目?それとももう壊れてしまってたり……
でも20人目の生贄は予想していたのとはどれも違っていた。
真っ黒いストレートな髪に黒い瞳。何もかも飲み込むようなその眼は、今までないような美しい瞳だった。

私の心の中の何かがコトリッと音をたてた。
人間の世じゃ『恋』と呼ぶらしい

私は吸血鬼 私は空腹。 いくら食らっても『足りない』……でも、もしかしたら
満腹になる日が来るかもしれない。

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